私の投資ヒーロー(Mohnish Pabrai)

Mohnish Pabraiのカッコよさ

Mohnish Pabraiについては、当ブログでも何度か取り上げています。エンジニア出身で、1994年にバフェットの伝記を読んだことで投資家としてのキャリアをスタート。1999年からPabrai Investment Fundsを運用しています。私が彼を尊敬するところとは、師匠の教えに忠実であるということです。彼は機関投資家での勤務経験がないため業界の常識に染まっていないという見方もできますが、バフェットの初期パートナーシップと同じく、毎年の運用成績が6%を超えた部分の25%という成功報酬のみを受け取っています。仮に運用成績が10%であれば、(10%-6%)x 25% = 1%の成功報酬を得ることになります。

リーマンショックでは、ファンドの運用成績が前年比-70%まで悪化したそうです。年初に100あった運用資産が30にまで目減りしたわけで、成功報酬モデルにとっては悲惨な状況です。しかも、成功報酬をもらうためのハードルは年間6%づつ高くなっていくのです。100>106>112、、、という具合です。結局、Pabrai氏は2017年まで10年間、無報酬でファンドを運用していたそうです。Warren Bufefttの相棒Charlie Mungerは、取締役を務めるDaily Journalの2018年次総会で、Pabrai氏の行動について賛辞を送っています(書き起こし全編はこちら)。以下に抜粋します。

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Question 9: This question is for Mr. Kauffman.  You mentioned about the “five aces” and aligning the interests with investors with the right fee structure to benefit both.  What have you seen as a good fee structure, both from a start-up fund with say $50 million in assets, and then the larger funds with assets over billion?

Peter Kaufman: I’ll let Charlie answer that because he can describe to you what he thinks is the most fair fee formula that ever existed and that’s the formula in Warren Buffett’s original partnership.

Charlie: Yeah, Buffett copied that from Graham.  And Mohnish Pabrai is probably here…is Mohnish here?  Stand up and wave to them Mohnish.  This man uses the Buffett formula, and always has, he just copied it.  And Mohnish has just completed 10 years…where he was making up for a high water-mark.  So he took nothing off the top at all for 10 years, he sucked his living out of his own capital for ten long years, because that’s what a good money manager should be cheerfully willing to do.  But there aren’t many Mohnish’s.  Everybody else wants to scrape it off the top in gobs.  And it’s a wrong system.  Why shouldn’t a man who has to manage your money whose 40 years of age be already rich?  Why would you want to give your money to somebody who hasn’t accumulated anything by the time he was 40.  If he has some money, why should he on the downside suffer right along with you the investor?  I’m not talking about the employees under the top manager.  But I like the Buffett formula.  Here he is, he’s had these huge successes.  Huge in Buffett’s career.  But who is copying the Buffett formula?  Well we got Mohnish and maybe there are a few others, probably in the room.  But everybody wants to scrape it off the top, because that’s what everybody really needs, is a check every month.  That’s what is comforting to human nature.  And of course half the population, that’s all they have, they’re living pay check to pay check.  The Buffett formula was that he took 25% of the profits over 6% per annum with a high water mark.  So if the investor didn’t get 6%, Buffett would get nothing.  And that’s Mohnish’s system.  And I like that system, but it’s like many things that I like and I think should spread, we get like almost no successes spreading that system.  It’s too hard.  The people who are capable of attracting money on more lenient terms, it just seems too hard.  If it were easier, I think there would be more copying of the Buffett system.  But we still got Mohnish. (laughter)
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そんなMohnish PabraiのYouTube動画は、全てお薦めです(動画リンク)。


(Pabrai Investment Fund 年次総会にて@シカゴ)

Pabraiさん、本当にありがとうございます。

Happy Investing!!

最高益は更新して当たり前

連続最高益アピール

新聞や決算説明資料で、「○○年連続最高益!」という文章に出会うことがあります。あたかも凄いことを成し遂げたような印象を与えようという意図が見えて、私は嫌いです。

最高益は更新して当たりまえ

金利1%で100万円貯金したとしましょう。1年後には1万円増えて、101万円になります。資金を引き出さなければ、2年後には1.01万円増えます。最高益更新です。3年後には1.02万円増えます。またまた最高益更新です。最高益とは、預金などを通して誰にでも達成できるものです。

最高益よりROE

私が気にするのは、最高益よりもROEです。前例では金利1%ということで、100万円の資本を使って1万円しか生み出していません。全世界の経済成長率が2~3%あることから考えても、全く魅力を感じないリターンです。

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私は、ROE(=事業に使用している資本に対するリターン)10%が一つの目安だと思っています。株主資本100万円の会社であれば、10万円利益として稼ぎ、平均的な日本企業は30%を配当として支払います。残った資本は7万円で、来期は株主資本107万円に対して10.7万円の利益を稼ぎます。株主資本は7%で増えていきますが、これは長期的な株式市場リターンに近い数字です。

値上がりと配当を合計したトータルリターンは長期的にROEに近似します。投資先企業にROE10%を求める以上、投資家である私も年率10%以上のリターンは必達目標です。

Happy Investing!!

フィリピン雑感

フィリピンでの1ヵ月

セブシティーから入国し、セブ島の各所に滞在してきました。現地で生活を体験しながら、株式調査するのは楽しかったです。日中に街で見た企業について、上場しているのか?どれくらいのシェア・収益性があるのか?と妄想します。現地に滞在して、現地の人と話してこそ、なぜ、どのような需要があるのか、より良く理解できると思いました。

GDP3000ドルの世界

フィリピンの一人当たりGDPは約3000ドルです。一般的にGDPが3000ドルを超えると、耐久財消費が増えるなど、消費経済が活性化すると言われています(参考リンク)。田舎へ行っても、液晶テレビや冷蔵庫が普及していたことには驚きました(普及率40%くらい?)。住宅は狭い(6畳 x 2部屋)のですが、大型液晶テレビを置いた結果、家の中からでは近すぎてテレビを見ることができず、玄関のドアを開けて外に椅子を置いてみている家族もいて、笑ってしまいました。スマホの普及はまだ道半ばと感じました(20%くらい?)。おそらく、若者の欲しいものランキングの上位はスマホでしょう。世界中どこへ行っても、小さな画面を見つめる姿だらけになるのでしょう。

投資対象として

どの分野を見ても供給不足から大きな成長性が感じられ、需要が停滞しているのに供給過多で収益性が低下する日本に慣れた身としては新鮮でした。大企業が少なく、副業が当たり前の社会なので、現地運転手さんも「資金があれば、こういうビジネスを始めたい」とアイディアを熱く話してくれました。金融緩和で資本が溢れかえって行き場を失っている日本に対して、フィリピンのように資本不足で困っている国もある。収益機会のある国・分野へ、もっとうまく資本の融通ができればいいですね。私が日本で銀行を経営していたとしたら、国内事業だけでは頭打ちになるのが目に見えている訳で、早く海外に進出すると思います。日本で低金利で預金を集めて新興国で貸し出すことができれば、儲かる気がします。需要に対して供給不足の領域を探すのが、事業の基本だと思います。

フィリピンでは、銀行口座の保有率は35%(参考リンク)。保険の保有率は中高所得者層の16%(中高所得者が30%いるとして、全人口の5%?)(参考リンク)。株式市場参加者は1%しかいないそうです。(参考リンク)。シンプルに、業界トップの銀行、保険会社、証券会社を買って10年くらい保有していれば、儲かるんじゃないかと思いました。現在のフィリピンを日本に当てはめると、3種の神器(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)が普及した1960年代でしょうか。当時は、日本でも資本が不足していたはずで、業界トップの野村證券、日本生命などに投資していれば随分と儲かったのではないでしょうか。

具体的に見てみましょう。下図(株探より)は1960年からの野村證券の株価です。1960年の約20円から、バブルを除いても2000円を超えています。残念なのは、現在の株価が500円であること。1980年初頭(40年前)と同じ水準に低迷しています。供給過多・資本余剰の現在の環境では、資本アクセスがサービスである証券会社の付加価値が薄くなるのでしょう。どの国・産業・企業にも栄枯盛衰がありますので、成長フェーズで投資するようにしたいものです。

Happy Investing!!

フィリピンに行ってきます

1ヵ月@フィリピン

1ヵ月ほどフィリピンに行ってきます。個人的な目標として、毎年知らない国に家族で長期滞在して現地生活を垣間見たいと思っています。第1回目の2018年はフィリピンです。訪問を株式投資とも絡めたいので、どうしても英語圏外は開示資料が読めなくてハードル高いです。ベトナム株など興味あるのですが、会社HPを訪問すると、全く読めないのためにやる気がなくなります。当面は、新興国+英語圏+株式市場があるというのが選定軸になりそうです。

フィリピンには約270社が上場しているので、1日10社 x 27日で全企業に目を通すことが目標です。フィリピンは既に人口1億人以上ですが、中絶を許さないカトリック教徒が多いため、ピラミッド型の人口分布をしています(https://www.populationpyramid.net/ より)。

日本にいると人口減少が当たり前に感じてしまいますが、それは投資家として片手落ちになる危険性があると感じています。なぜなら、世界全体の人口分布はピラミッド型に近く、まだまだ人口増加過程にあるからです。人口が増えていく過程にある経済を実感することで、新興国へ展開する日本企業の成長ストーリーをより良く理解したいです。山梨という日本の地方に住んでいると、高齢化を肌で感じます。家の近くで道路工事している人ですら全員65歳以上で、一体10年後は誰が工事するんだろうと思ってしまいます(なぜか肉体負担の少ない交通誘導員は40代っぽい)。若者を見ると、「珍しい!」という感覚は世界的には異質なものです。

気が早いですが、2019年はアフリカ大陸に挑戦したいです。例えば、ナイジェリアの人口分布を見てください。指数関数的に子供が増えている状況など、日本に住んでいては全く想像できません。自分の中の体験の引出しを増やしたいです。

Happy Investing!!

善 vs 欲

福井コンピューター創業者の著書

福井コンピューターという会社をご存知だろうか?建築CADや測量CADの国内トップシェアメーカーである。建築基準法や消防法など、ややこしい日本の法律に完璧に対応することで、AutoCADなど全世界で通用するソフトを作る海外大手に対して競争優位性を維持している、国内ガラパゴスのガリバー企業だ。

そんな福井コンピューターを1979年の創業から率いた小林眞さんの著書を拝読した。

善か欲か

著書の中で、優秀な営業マンが他社に転職してしまった話が出てくる。給料が理由だったそうだ。驚いた小林さんは、「それなりに」できる平均的な営業マンには業界平均に負けない給与を払って来たつもりだった。しかし、「ずば抜けて」できる営業マンに、「ずば抜けた」給与を支払ってこなかったことに気が付いた。

「ずば抜けて」できる営業マンに「ずば抜けた」報酬という正当な評価を与えずとも、愛社精神によって会社のために精一杯頑張ってくれるだろうという善意に頼った経営をしていたことに気が付いた。賞与の上限を排除したところ、「できる」営業マンほどやる気になり、いきなり粗利が10%も増えたそうだ。それまでは、どうせ上限があるからと、無意識のうちに力をセーブして仕事をしてきたということだろう。

この話を聞いてどう思うだろうか?お金で動機付けることは汚いことなのだろうか?しかし、人には様々な欲がある。例えば、多くの給与を稼いでカッコいい車を買いたいという欲求を持つ人もいる。多くの給与を稼いで、家族に経済的に豊かな生活を提供したいという欲求を持つ人もいる。逆に、お金に関係なく、好きなことをしたいという欲求を持つ人もいる。

私は、給与に差をつけない経営は、一見フェアなようで、稼ぎたいという欲求を持つ人にとっては全くフェアではないと思う。人材の流動性が低く転職が難しかったひと昔前の日本では、そうした人材も仕方なく社内に留まっていたのだろうが、今は違うのではないか。少子高齢化で需要に対して恒常的に人材が不足する環境下では、転職のチャンスが増えるだろう。従業員の善意に頼っていた企業からは優秀な人材が流出し、長期的には人材の多様性が奪われると予想する。

多く給料をもらうためには、事業でそれ以上に稼ぐことが必要なはずだ。企業の成長=企業価値の増加、を願う株主の立場からすれば、みなさんドンドン稼いで、ドンドン給与をもらってくださいというのが正直が気持ち。企業のインセンティブ設計に注目していきたい。

Happy Investing!!

オマハ詣で(その4)

UBERの便利さに驚いた

バークシャーの年次総会当日は、会場近くで駐車場を確保できる見通しが立ちません。そこで、人生初めてUBERを利用しました。早朝に捕まるのか、などの心配は全くの杞憂で、配車からものの5分で宿泊先の前に来てくれました。こちらの準備が間に合わないほどのスピードです。事前登録したクレジット決済のため、支払時間もなく到着してから時間ロスもありません。運転手と乗客が双方に評価する仕組みになっているため、運転手の方もとてもフレンドリーでした。

結局、年次総会当日だけでUBERを5回は利用しました。①配車までの時間を心配しなくて良い点、②あらかじめ価格が明らかになっている安心感、③タクシーより安いことが多い価格競争力 によって、既存のタクシーとはくらべものにならない付加価値を実感しました。UBERに慣れてしまうと、待ち時間に対するストレスや価格の不透明感から、タクシーは乗れなくなりますね。

2017年12月の東洋経済の記事によれば、77か国で1日1000万回利用されているとのことです。

日本のタクシー業界の現状

日本では、UBERを使うことはできません。タクシー業界の反対や、規制緩和が進まないことが背景にあるようです。しかし、アメリカで体感してからは、UBERを使わないことのデメリットばかり見えてしまいます。

下がり続けるタクシー需要

出典:http://www.taxi-japan.or.jp/pdf/toukei_chousa/eigyousyuunyuu_suii.pdf

UBER以前に、日本のタクシー需要は右肩下がりです。バブル期に30億人以上あった輸送人員は、15億人を下回っています。

なかなか減らないタクシー供給

出典:http://www.taxi-japan.or.jp/pdf/toukei_chousa/jigyousya_syaryou_suii29.pdf

不思議なことに、需要が半減したにも関わらず、日本のタクシー台数は25万台から23万台に10%程度減っただけです。タクシー業界は明かな供給過多であり、UBER以前に経営が厳しいことが想像できます。私が知る限り、日本のタクシーサービスは20年前から全く変わっていません。つまり、需要が長期間減り続けても新しいサービスを提供して付加価値を上げようとはせず、供給を減らすこともしなければ経営が苦しくなるのは当たり前でしょう。

このような統計を見ると、あまりタクシー業界に同情する気にはなれません。むしろ、現在の経営環境でも事業を続けられるということは、逆に言えば20年前は途方もなく儲かっていたと想像します。

ユーザーのコスト

デメリット① 待ち時間

仕事でタクシーに乗ろうと思っても、なかなか空車を拾えないことがあります。UBERであれば、配車を確認してから外に出るので、路肩での待ち時間はありません。ギリギリまで作業することが可能です。仮に15億人が路肩でタクシーを平均5分間待つとします。75億分=125万時間 です。タクシーは乗って急ぎたい人が多いですから、時給4000円換算で5000億円の経済コストが発生しています(比較のため、タクシー業界の総運賃収入は1.7兆円です)。

デメリット② 決済時間

仕事でタクシーに複数人で乗ると、1人が支払するのを、残り全員が待つという無駄な時間が発生します。スイカ支払で改善されたとは言え、事前登録クレジット決済してくれるUBERには遠く及びません。上記の例から、仮に支払に1分かかっているとすると、1000億円の経済コストと考えられます。

UBERやAirbnbを排除する国

今回のオマハ旅行では、UBERやAirbnbの恩恵をフルに受けることができました。Airbnbを通して普通の民家に泊まることができ、アメリカならではの広い庭を体験できるなど、ホテルにはない貴重な体験でした。バークシャー年次総会の時期はオマハ中のホテルの価格が高騰するわけですが、Airbnbを通して3人で2泊2万円という内容でした。1人1泊3000円。素晴らしいコストパフォーマンスです。

消費者として、選択肢が多いことは豊かさだと思います。ホテルに泊まりたい人は、少し高い料金を払って、良いサービスを受ければいいと思います。しかし、Airbnbのおかげでこれまでは考えられなかった宿泊体験ができるようになりました。UBERも同じです。行政認可されたタクシーに安心する人は、利用すればいいと思います。業界の都合を優先して一律に規制してしまう日本のやり方は、本当に残念です。あるサービスを利用するかどうかは、消費者が決めればいいことです。

Happy Investing!!

オマハ詣で(その3)

オマハは実店舗見学に最適な街

“20 minute city”と呼ばれるオマハは、市内のどこに移動するにも車で20分以内で行けます(空港を含む)。この利便性を利用して、実店舗見学を行いました。

・Walmart
・Home Depot
・Whole Foods
・Chipotle Mexican Grill
・Nebraska Furniture Mart
・Costco
・ショッピングモール

店舗を見ていると、自分の肌間隔がどのように経営指標に反映されているのか、財務状況が知りたくなります。

米国企業も調べるようになった

私はこれまで、バフェットの「理解できる企業に投資せよ」という教えを守ろうとするあまり、日本企業にばかり投資してきました。米国企業の年次報告書を真面目に読んだこともありませんでした。私が米国企業を調べたところで、競争優位性は全くないと感じていたからです。

それが、今回のオマハ詣でのおかげで変わりました。自分に競争優位性があるかどうか、調べることで稼げるチャンスが増えるかはさておき、まずはシンプルにもっと知りたいな、と思えるようになりました。私にとって最大の課題は、ゆっくりでもいいから一定の成長スピードを長期間持続させて、一つのことを続けることだと認識しています。その結果として、長期的な複利効果が発現します。しかし、あまりに稼ごうとする意識が強いと運用がつまらなくなる危険性を感じています。個人投資家で4年も経てば、日本のめぼしい企業については一通り調べています(正しくは、調べた気になっています)。そこで、海外企業の同業企業との比較など、新しい視点を取り入れていきたいと思えるようになりました。

米国企業のROEの高さに驚く

米国企業を調べてすぐに気付くのが、圧倒的なROEの高さです。日本企業のROEが低いと指摘されますが、その差は歴然としています。日本であれば、景気循環を通して継続的にROE10%を上回る企業は稀だと言ってよいと思いますが、米国ではそれがむしろ普通です。日本企業に慣れた目で米国企業を見ると、正直眩しすぎると感じるくらいです。逆に、米国を主力にしている運用者が日本企業を見ると、お眼鏡にかなう会社は少ないだろうと想像します。

日々お世話になっているIT業界の覇者のほとんど(マイクロソフト、アップル、グーグル、フェースブック、アマゾン)がアメリカ発である事実だけを見ても、米国企業を調べる価値があると思います。なぜ、米国企業は強いのか?日本企業とはどこが、どの程度違うのか?このような質問に答えられるようになると、より投資家として成長できると思います。

より広い視点を与えてくれたバークシャーハサウェイの株主総会に感謝で一杯です。また来年も参加したいです。

Happy Investing!!

オマハ詣で(その2)

いよいよ株主総会

5月5日、いよいよ株主総会当日です。CenturyLink Centerは7時開場ということで、6時に到着するように移動しました。既に写真のような長蛇の列・・・美しい朝焼けの中、待ちます。

この時点で良い席を取ることは諦め、2階席に陣取りました。8時半に会社説明動画が始まるまで入場者は増え続け、とうとうバフェットとチャーリーが座る台座の裏手2階まで満席になってしまいました。近隣のホテルにも特設会場が設けられているようで、完全に会場のキャパオーバーです。

8時半から会社説明ビデオが流れます。有名人が多数ボランティア出演している関係上、一般公開されていません。常連さん曰く、鉄板ネタが多いらしいですが、私は初見だったのでとにかく面白かったです。笑って笑って、バフェットさんのサービス精神を垣間見ることができました。その一部、コメディアンConan O’Brien氏による動画はyoutubeにありました。是非大笑いしてください。

9時から総会がスタート(動画はこちら)。バフェット氏による独壇場が始まります。そして話すこと、話すこと、、、、チャーリーも一応横にいるんですが、最初の10分間は一言もしゃべってないんじゃないでしょうか。ときどき口を開いては、皮肉っぽいユーモア満載のチャーリーでしたが、常連さん曰く、「今回のチャーリーはよくしゃべっていた!」そうです。

雑感

(1)まずバフェットとチャーリーの知力・体力に驚きました。昼食を挟んで6時間の質疑応答。何一つ書類を見ることなく、立て板に水のごとくあらゆる質問に答えていきます。私は時差ボケ+狭い椅子に座り、午後2時くらいに疲れ果てていましたが、お二人は全く変わる様子もなく続けていきます。御年87歳と94歳とは信じられません。現実離れしすぎています。こういう経営者に長期投資すると良いことがあるんだな、と納得できました。どんな分野でも、一流のものに触れることの大切さを再確認しました。数多くの企業の有価証券報告書や経営者に触れることで、少しづつ審美眼が磨かれていくと思いたい。私も少しでも近づけるように頑張ります。

(2)バフェットは中国で大変人気があるようで、チェリーコークの缶に似顔絵がのっているほど。その甲斐あってか、中国からの団体が数多く参加していました。質問者も、1/3は中国人だったのではないでしょうか。私は機関投資家時代から、中国は日本より資本主義が浸透していると感じていました。世界最大の共産主義国で、資本主義で最も成功した投資家が大人気とは、世の中面白いですね。

Influential investor Warren Buffett appears on cans of Cherry Coke in China in an image Coca-Cola promises is not an April Fool's prank.

Happy Investing!!

 

 

 

オマハ詣で(その1)

バークシャーの年次総会に参加しました

GW中の5月5日に行われた、バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイの年次総会に参加してきました。バフェット氏は私にとって憧れの存在で、参加したいなと思う事数年、ようやく思い切ることができました。日本の証券会社経由で購入しても参加資格が得られるのか、などと躊躇していたのですが、尾藤さんというフィナンシャル・アドバイザーの方が参加したという記事(こちら)を読んで踏ん切りがつきました。尾藤さん、背中を押して頂きありがとうございました。

日本の証券会社経由で株式を購入すると証券会社名義になるので、直接申込証は届きません。しかし、日本の証券会社が発行する残高証明書を持参すれば、現地で参加証を受け取ることができます。実際に参加してみると手続きは驚くほどスムーズでした。

バフェット氏のシンプル過ぎるライフスタイルに驚く

ネブラスカ州オマハはアメリカの真ん中の穀倉地帯にあります。ネブラスカ州は人口190万人ですが、東のはずれに位置するオマハ(45万人)と州都リンカーン(28万人)に人口の40%ほどが集中しています。この2大都市以外は広大な農業地帯です。実際にオマハから20分ほどドライブしただけでも、地平線が見えるほどでした。オマハには、大学、病院など文化的施設が集まっています。また、Costco、Walmart、Wholefoods、Home Depotなどなど、アメリカ中のチェーンストアがコンパクトに大集合していて、店舗見学には最適でした。「20 minute city」と言われてるそうで、市内のどこへ行っても20分かからないそうです。空港までも20分ということで、東京から比べると羨ましい生活です。オマハで育ったバフェット氏が、ワシントンDCやニューヨークの生活に馴染めずにオマハに戻った理由が少しだけ分かった気がしました。

バフェット氏のシンプルな生活については理解していたつもりですが、これほどまでとは驚きました。まず、1958年に購入した住宅に、60年経った今も住んでいます。本当に普通の家で、隣の人が日曜大工していました。ここに世界有数の大富豪が住んでいるとは絶対に思いません。さらに、自宅オフィスを卒業した1962年にKiewit Plazaに入居してから56年間経った今も、バークシャーの本社は同じ場所にあります。そして、驚くことに、自宅からオフィスまではFarnam Streetという道をまっすぐに運転するだけ。所要時間は5分です。バフェット氏は、この同じ5分通勤を50年以上も続けているのです。


(バフェット氏の自宅前にて)


(バフェット氏のオフィスビルにて。14階だそうです。最上階かもしれないので、眺望には少しだけお金をかけているのか?!)

イチロー選手は朝カレーや、球場入りから出番までの細かいルーチーンで知られていますが、バフェット氏は50年間以上もルーチーンを崩していないのです。「うまく行っているのであれば、変えるな」という言葉の通り、成功パターンを愚直に繰り返し、長期的に高い複利効果を実現することに成功しています。オマハという飾り気のない街の、変化の少ないシンプルな日々生活が、バフェットの成功の一助になっていると強く感じました。適切な環境を構築して、長期間そこに身を置くことの大切さを実感しました。

年次総会そのものも素晴らしいのですが、私にとっては、オマハという場所でのバフェット氏の日々の生活についてを垣間見れたことが一番の収穫でした。次回は、年次総会について書きます。

Happy Investing!!

運用形態と競争優位性

バフェットのファンド運用形態

世界で最も有名な投資家と言えば、おそらくウォーレン・バフェットでしょう。バフェットはバリュー投資という投資戦略で有名ですが、私はそれ以上に彼の運用形態に競争優位性があったのではないかと考えています。

バフェットは1956年(25歳)から1969年(38歳)まで、13年間に渡って投資ファンドを運用していました。個人投資家としては、運用資産が小さく、バフェットが人生最高のリターンを叩き出していた時期から学べることの方が、会社形態となったBerkshire Hathawayから学べることよりも多いと思っています。

バフェットのファンドには以下の特徴があったようです。
① アナリストがいない
② 成功報酬しか取らない
③ 投資先について話さない
④ 年に1回しか解約できない

① アナリストがいない

バフェットには、今も昔もアナリストがいません。”No part of the investment process should be outsourced(投資プロセスの一部を外注することはできない)”と語っています。「自分が理解できる事業に投資する」と言っているのに、アナリストが推奨するというだけで銘柄を購入する訳にはいきません。アナリストの持ってくるアイディアに対して来る日も来る日も「ダメ」と言い続けるのも精神的に負担がかかります。悪いなと思ってアナリストの推奨銘柄を購入してしまえば、投資スタイルが崩れます。結局、アナリストはいない方がいいという結論に落ち着いたようです。バフェットには、チャーリー・マンガ―という相棒がいます。しかし、マンガ―は自らも投資ファンドの経営に成功しており、あくまで相談相手という対等な立場のようです。

② 成功報酬しか受け取らない

大半の投資信託は、運用成果に関わらず固定手数料を取ります。大半のヘッジファンドは、固定手数料を取った上に成功報酬を取ります。しかし、バフェットのファンドは真逆で、固定手数料を取らなかったどころか、運用リターンが6%を超えた部分に対して25%の成功報酬を取りました。つまり、運用リターンが6%を下回れば、1円も受け取ることがありませんでした。「出資者が儲かってからしか、運用者はお金をもらうべきではない」という当たり前の思想が表現されています。バフェットのファンドは、アナリストもいないために、固定費が低く運営されていました。固定費が低いからこそ、安定収入を度外視した報酬体系を採用できるのでしょう。そして、他のファンドは真似することができないような報酬体系を提示することは、投資家集めにおける大きな競争優位性となったことは想像に難くありません。

③ 投資先について話さない

大半の投資信託は、月次報告書で上位10投資先を開示しています。しかし、バフェットが出資者に対して投資先を開示することはありませんでした。一つには、流動性の低い株式を買っているときに情報が漏れると、安い価格で買えなくなること。また、出資者に対して投資先を公開すると、仮に間違えていたときに、他人の目が気になってその事実を認められないという心理バイアスが働くことを避けるためです。

④ 年に1回しか解約できない

大半の投資信託は、毎日購入できるし、いつでも解約できます。便利なのですが、そのためにバックオフィスの人件費やシステム費用が発生してしまいます。アシスタントもいなかったバフェットは、年1回しか購入・解約できなくすることで、手間を省き、コストを低く維持して報酬体系面での競争優位性につなげることができました。また、運用資産規模が大きく増減することは、すなわち銘柄を売買する頻度が増えるので、取引コストも増大します。多くの投資信託にとって、毎日購入・解約できることはメリットなのでしょうか?

なかなか真似できない成功例

バフェットの成功例は、広く知れ渡っていながら、なかなか真似できることができません。多くの機関投資家は、6%を超えるリターンをコンスタントに出す自信がなかったり、何よりライセンス取得・維持コストを考えると固定費を低く抑えることが難しいでしょう。こうしてみると、バフェットの運用形態は機関投資家というより個人投資家に近いなと思います。

参考図書

   

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