長期業績レポート(横浜ゴム、ブリヂストン)

長期業績レポート

5101 横浜ゴム
5108 ブリヂストン

メモ

日本にはタイヤメーカーが3社あり、全て上場しています。売上規模で並べると以下のようになります。このうち2社を選ぶとして、1位と3位を選ぶあたりが日経平均の銘柄採用方法の良くわからないところです。

1位 3.8兆  ブリヂストン(世界最大の売上)
2位 8500億 住友ゴム(ダンロップ)
3位 6300億 横浜ゴム

タイヤメーカーの長期業績(特にEPS)を見ると、山谷がはっきりとした典型的な景気循環産業であることが分かります。例えば自動車用タイヤには新車需要と更新需要がありますが、不況時には新車需要が落ち込みます。しかし、更新需要によって一定の工場稼働率を維持できるので、新車需要の比重が高い自動車メーカーよりも収益が安定していることが想像できます。自動車各社の長期業績レポートと比べてみてください。

7201 日産自動車
7202 いすゞ自動車
7203 トヨタ自動車
7205 日野自動車
7211 三菱自動車
7261 マツダ
7267 ホンダ
7269 スズキ
7270 富士重工業

景気循環産業であるタイヤメーカーの収益水準を見る限り、現在は景気のピークから下降局面に入ったような印象を受けます。果たしてどうなるでしょうか。

長期業績レポート(昭和シェル石油、JXホールディングス)

長期業績レポート

5002 昭和シェル石油
5020 JXホールディングス

メモ

日本の石油元売りは5社あり、全て上場しています。現代生活の基盤といえるガソリンをはじめとする商品を扱っているので市場規模は大きく、各社とも兆円規模の売上があります。

1位 売上8.7兆円 JXホールディングス 
2位 売上3.5兆円 出光興産      
3位 売上2.6兆円 東燃ゼネラル石油
4位 売上2.2兆円 コスモエネルギー
5位 売上2.2兆円 昭和シェル石油

まず不思議なのが、石油セクターから2社が日経平均に採用されているわけですが、なぜ5位の昭和シェルなのかということです。私は分からないので、日経新聞社に聞いてください。

次に気付くのは、2位の出光以下は売上規模が近いということです。石油元売り事業は、製油所に大きな設備投資を行うことが必要です。日本国内の石油製品需要は既に減少に転じていることから余剰設備の廃棄が必要です。各社とも操業度を落としたくないので、仮にA社とB社の製油所がともに50%で操業しているくらいなら、合併したうえで2つある製油所の一つを閉め、もう一つを100%操業するという経営判断になります。

こうした背景で、出光+昭和シェル、JXホールディングス+東燃ゼネラル と2つの大きな合併話が進んでいます。しかし、出光の創業家が合併に反対(株式を約30%保有)していて先行き不透明です。合併が長引けば長引くほど各社が我慢比べによって体力を奪われていくという状況が見えます。

石油業界においては経営統合してスリム化する以外にどういう経営方針があるのか、2016年8月に創業家の出光昭介名誉会長の手記が公開されました(リンク)。私なりにまとめると、「出光は、社員を家族のように思い経営してきた。厳しい経営環境の中、自分の社員の面倒を見るだけでも大変なのに、他社と合併した上でその社員まで面倒を見切れないよ」ということでしょうか。戦後も人員整理をしなかったという文面から、リストラをしたくないという意思は強いようです。

家族の論理 vs 資本の論理に目が離せません。

Happy Investing!!

長期的に高い運用実績を残している投資信託の保有銘柄アップデート

クローニングのすすめ

日本に4000社、世界に4万社以上ある上場企業の海から、どうすれば効率的に投資先をみつけることができるのでしょうか?

有望な投資先を探す方法の一つに、クローニングがあります。過去によい運用成績を残している投資家からアイディアを拝借してしまおうという考えです。

詳細は、以下の投稿をご覧ください。

関連投稿】長期的に高い運用実績を残している投資家の真似をしよう

投資信託の月次レポートを活用しよう

投資信託の多くは毎月、保有している上位10銘柄についての情報を開示しています。資産の多くを投資しているということは自信の表れです。

投資信託の保有銘柄を研究することで、プロ投資家が企業分析した結果を無料で利用させて頂くことができるのです。投資先アイディアの発掘先として、これを利用しない手はありません。

ファンドのリターンを調べるには、モーニングスター

そもそもどのファンドの真似をすべきでしょうか?ファンドのリターンを調べるには、モーニングスターがお薦めです。このリンクからファンドランキングに進んでください。そして、分類は国内株式型、期間は10年間を選んでください。下のようなランキングが出てきます。

『SBI 中小型割安成長株ファンド ジェイリバイブ』の月次レポートをみてみよう

モーニングスターによる10年リターンで最上位に来ている『SBI 中小型株割安成長株ファンド ジェイリバイブ』の月次レポートをみてみましょう。

このリンクから、ファンドの説明ページに進んでください。下のようになります。

次に、「目論見書・定期レポート等」というタブをクリックすると、以下のようになります。

最後に、一番下の「週報」をクリックして開いてください。ほとんどの投資信託は月次で運用レポートを発行します。SBIアセットマネジメントは週次で運用レポートを出している珍しいケースです。週報の中に、下のような組入れ上位銘柄についての記載があります。

これこそ、日本で過去10年の運用成績トップの投資信託運用者が、今最も投資妙味を感じている10社なのです。優秀な投資家のお墨付きをもらった企業群ですので、企業調査を始める叩き台として非常に有効だと思いませんか?

釈迦に説法とは思いますが、これらの銘柄を盲目的に購入しないように注意してください。個別企業に投資する場合はしっかりと自分で納得できるまで調べることを忘れないでください。

ニュースレターで投資信託10本の銘柄データをお届けします

Nagatomo Investmentsでは、国内株式の投資信託10本について定期的に保有銘柄データをアップデートしています。直近ではこのようなファイルになります –> 2017.01.12 blog fund cloning

ニュースレターを通じて定期的にアップデートしたデータを送付していきますので、トップページから登録をお願いします。

Happy Investing!!

ポジション戦略を改善しました

投資対象が見つかった次は、投資額を決める必要がある

事業内容が理解でき、本質的価値の算定に自信を持てる会社が見つかったとします。さらに、現在市場で取引されている価格は本質価値の半値以下、つまり100%以上の上値余地が見込まれます。私の投資基準を満たしていますが、ポートフォリオ全体を100として、いくら買うべきでしょうか?

投資額が小さすぎては、株価が大幅に上昇してもポートフォリオ全体への貢献は限定的です。逆に投資額が大きすぎると、本質価値の算出が間違っていて損失を出した場合の被害が大きくなってしまいます。

みなさんは、投資額をどのように決めていますか?

2016年の投資額の決め方

Mohnish Pabraiの投資額の決め方

これまでも紹介しているように、私はMohnish Pabraiというバリュー投資家の投資戦略を真似しています。自分より優れた人の方法を真似することで、結果まで真似してしまおうと考えています。

上記のYoutube動画を4:04まで飛ばすと、下のポジション戦略が出てきます。

リーマンショック前のMohnish Pabraiはポートフォリオを10分割して、1社につき10%づつ投資していたそうです。しかし、リーマンショックのように大幅な株価下落局面では、安くて買いたいのに買付余力がない事態に直面してしまいます。その教訓から、上値余地に応じてポートフォリオの投資額を決定する方式に変更しました。

私もこのポジション戦略を採用していますが、上値余地が100%以上の企業にポートフォリオの75%を投資するようには教えてくれても、何社に投資するべきかは教えてくれません。

10社への投資は分散しすぎ

リーマンショック前のMohnish Pabraiが10社に投資していたという事から、私も最低10社に分散しようと考えました。まとめると、以下のようになります。ポートフォリオの75%は上値余地が100%あると思う会社へ投資します。10社へ分散するので、1社あたり7.5%を投資することになります。

2016年が終わってみると、私は元本の50%程度しか投資できませんでした。7.5%を満額購入できた会社は4社しかありませんでした。運よく投資した会社の株価が平均50%上昇したのでポートフォリオ全体としての運用成績は+25%以上を記録できましたが、上値余地100%以上あると思える投資対象を10社も見つけられないよ、というのが率直な感想です。

私は現金比率を下げたいがために、躍起になって新しい投資対象を探していましたし、買いたいという思いが強すぎて分析が甘くなるという悪影響の危険性を感じました。そもそも問題の根源は、10社へ均等に分散すると決めたことにあります。この決定は間違っていたと思います。

2017年の投資額の決め方

成功している投資家の教えは、最大5社、最低3社

投資額について多くの投資家が語っています。Warren Buffettは、「ポートフォリオの80%を5つの会社に投資する。最大の投資額は25%にする」と語っています。Charlie Mungerは「3社で十分」とも言っています。

13-Fで報告されたMohnish Pabraiの2016年9月末のポートフォリオを見てみます。詳細な現金比率は分からないのですが、自信ある投資アイディアにはポートフォリオの20%を投資していると考えられます。このことからも、私が2016年に採用していた1社7.5%はあまりに低かったと言わざるを得ません。自信がある投資先に十分な投資額を充てなかったことで、機会損失を生んでしまったことになります。

投資先を最大5社に絞ることにします

2017年からの投資額は以下の通りです。

上値余地2倍の会社にポートフォリオの75%を充てることは変わりませんが、投資先は最大5社とします。つまり、最低でも1社につきポートフォリオの15%を投資します。また、最低限の分散を行うために投資先は最低3社とします。Mohnish Pabrai、Warren Buffett、Charlie Mungerというスーパーバリュー投資家たちのポジション取りの英知を結集したポジション戦略だと悦に入ってます。

ポートフォリオの15%を投資することが怖いと思う企業は、おそらく少額でも保有すべきではありません。大量に買うほど自信のある投資先を厳選することが、よりよい投資リターンにつながると実感しています。

みなさんは、どのようなポジション戦略を採用しますか?

Happy Investing!!

2016年の振り返り

12月30日は大納会で、1年の株式取引が終わりました。みなさまにとって、2016年はどんな1年だったでしょうか?

私にとっては気づきの多い1年となりました。

高い絶対リターンを目指すことの大切さ

2014年から個人で投資をしてきましたが、特に数値目標を設けていませんでした。あまりに高い絶対リターンを目指すと過剰にリスクを取ってしまうことを懸念していたのです。しかし、2016年半ばから考え方を変えました。

私は『ダンドー』の著者であるバリュー投資家Mohnish Pabraiを尊敬しており、彼の投資戦略を出来る限り真似しようとしています。彼は1995年から運用しており2013年まで年率26%で18年間、複利運用することに成功しています。最初の資金が実に64倍になったことになります。

長期的に高い運用成績を残している人の投資手法を真似すればするほど、必然的に私の運用成績も似たものになるはずという単純な発想です。

上のYoutubeで、Mohnish Pabraiが投資の考え方を紹介しています。成功の秘訣として、「高い絶対リターンを目指すこと」を上げています。具体的には、年率26%で30年運用して資産を1000倍にすることを目指したそうです。ようやく謙虚に成功者を真似することに目覚めた私も、同じく年率26%で30年運用して資産を1000倍にしようと決めました。

年率26%で30年運用すると決めて変わったこと

年率26%で長期間運用できる投資家はほとんどいません。例えば、過去10年で最も運用成績が高かった日本の投資信託でも年率10%程度です。

関連投稿】長期的に高い運用実績を残している投資家の真似をしよう

どうすれば高いリターンを達成できるのか?必然的に投資プロセスを洗練させることにつながります。基本戦略としては、2-3年で最低2倍になると思えない会社には投資しないことです。以前の私であれば、「そんな投資先はない!」と反射的に思ってしまっていました。実際に、そんな投資先はほとんどありません。でも、全くないのと、ほとんどないことには天と地ほどの差があります。四季報の通読や、有力投資家の投資先をカンニングすることで、そうした投資先を見つけることができるという自信を得た1年でした。

2016年の運用成績は+25.9%

年末の株高にも助けられ、2016年の運用成績は+25.9%となりました。目標としている年率26%まであと一歩でした。12月に購入を始めた株の上昇スピードが速く焦ってしまい、自らの投資ルールを破って買い急いでしまったことで高値掴みとなり、年率26%を達成できなかったことが悔やまれます。2017年に向けて具体的な改善ポイントも見えているので、来年も楽しみです。

みなさまにとって、2017年がますますよい1年となりますように。

Happy Investing!!

SMC(6273)の空売り推奨レポートに感動しました

ウェル・インベストメンツ・リサーチのSMCレポート

12月13日、弁護士兼投資家の荒井裕樹さん率いるウェル・インベストメンツ・リサーチから『会計神話をパンクさせよ』というSMC(6273)空売り推奨レポートが発行されました。

ウェル・インベストメンツ・リサーチは調査レポートを投資家に販売することを事業としており、自らポジションを取ることはしていないようです。

SMCは空気圧機器の世界トップシェア企業

関連資料】SMC(6273)の長期業績レポート

SMCは5000億円近い売上の空気圧機器の世界トップシェア企業です。他社を圧倒する営業資源を投下し、また多くの在庫を抱えることで短納期を実現する戦略で、世界各地で着々とシェアを高めてきました。空気圧機器は自動化するために欠かせない製品なので、どんな工場へ行ってもSMC製品を見つけることができます。

私は機関投資家時代にSMCを調査した気になっていました

私はキャピタル・グループという米系投資顧問でアジアの機械セクターのアナリストをしていたことがあります。SMCも調査対象企業の一つで、時価総額も大きかったことから色々と調べました。経営陣への取材はもちろん、欧州、中国、米国の製造販売拠点を訪問した上で投資もさせて頂いていた、思い入れのある会社です。

スイスで会った欧州事業トップには、「ここまで足を運んでくれた投資家は初めてだ」などと持ち上げられ、自分ほどSMCについて知っている投資家はいないなどと思い込んでいました。しかし、今回のウェル・インベストメンツ・リサーチのレポートを読んで、自分の調査は実に足りなかったなと反省しました。

ウェル・インベストメンツ・リサーチのレポートから学んだこと

このレポートではSMCの在庫レベルを問題にしており、在庫評価損を計上すべきだとしています。さらに、グローバル企業になった今でも小さな会計事務所が会計監査を行っており、財務諸表の数字が実態を表していないとしています。

世界中の子会社が提出している財務諸表を実際に取り寄せ、有価証券報告書と辻褄が合うかを細かく調べており、素晴らしい内容です。私はSMCの高い在庫レベルを競争戦略の一環としかとらえていませんでしたが、このレポートの指摘に納得する点が多くありました。

まとめ

個人投資家が、高い水準の調査レポートを読める機会は滅多にありません。このようなレポートを読むと、自分の調査水準の低さを反省するとともに、調べれば調べるほど理解できる深い世界があるんだな希望を持ちます。

ウェル・インベストメンツ・リサーチのように、本当に独立した立場で調査レポートを書ける人は少ないです。例えば証券会社は、調査部門が客観的なレポートを書きたくても、投資銀行部門にとって上場企業はお客さんになります。今回のように企業を鋭く批判する内容を書けば、投資銀行部門としては仕事をもらえなくなるどころか、おそらく出入り禁止になるでしょう。

私は、多くの意見があればあるほどより良い資本市場につながると思っています。このようなレポートは市場の開示性や透明性を高めることつながると思い、高く評価しています。ウェル・インベストメンツ・リサーチのみなさま、ありがとうございます。

Happy Investing!!

 

会社四季報通読のすゝめ

会社四季報2017年新春号の発売日です

今日は会社四季報2017年新春号の発売日です。会社四季報は東洋経済が年4回発行しており、たったの2000円で日本のすべての上場企業を俯瞰することができる素晴らしい資料です。

四季報の通読が最もバイアスの少ない調査方法

私は、四季報の発売日が楽しみで仕方ありません。なぜなら、四季報を通読して投資対象企業を探すことが、最もバイアスの少ない投資調査方法だからです。

四季報の通読は、私が尊敬している個人投資家の角山智さんも一押しの手法です。

リンク】角山さんのホームページ。ショートコラムを愛読しています。メルマガ登録もお忘れなく。
リンク】角山さんが四季報通読に関して書いたメルマガ

2016年9月に購入して3か月間お世話になった四季報2016年冬号にお疲れ様でしたと言い、心機一転まっさらな四季報に向かいます。過去に調べたことのある企業に対しても思い込みを捨て、1社1社に思いを巡らすことで、毎回新しい発見があります。

日本の上場企業投資の対象は4000社しかありません。年に4回、自分に与えられた選択肢の全てに目を通す作業を繰り返すことで、企業の選別眼が養われていくと実感します。

何より、こうした地道な作業を行っている投資家は少ないです。当たり前のことを当たり前にやって、差別化していきましょう

Happy Investing!!

上場企業への株式投資は付加価値が薄い

上場企業への株式投資は付加価値が薄い

経営者と対話することで投資リターンの向上を目指す、みさき投資株式会社の中神社長が書いた『投資される経営 売買される経営』を読みました。コンサルタント出身の投資家である中神社長ならではの、投資と経営の世界を橋渡しする素晴らしい内容になっています。

本書の冒頭に、「投資事業は付加価値が薄い」という刺激的な文章が出てきます。機関投資家に勤めていたころの私が聞いたら、プライドも高かったので「そんなことはない!」と言い返していたと思います。でも、今は「本当にその通りだな」と思います。自分のやっていることは付加価値が薄いと言われると嬉しくはないのですが、事実は事実として受け入れた上で対処しないといけないと思います。

事業で大切なのは、変数をコントロールする力

私が事業において大切だと思うのは、変数をコントロールする力の有無です。例えば、ブランド力があるために価格決定力がある商品(例:コカ・コーラ)と、常に価格競争にさらされる商品(例:PBコーラ)があるとします。仮にコカ・コーラとPBコーラの味が全く同じであったとしても、2つが同じ価格で並んでいたら、ほとんどの人はコカ・コーラを選択します。これこそブランド力であり、それを維持拡大するため、コカ・コーラ社は世界で年間4000億円もの宣伝広告費を使っているのです。実際には、価格で競争する以前に商品スペースが限られる小売店にPBコーラを置いてもらうことさえ難しいでしょう。

コカ・コーラとPBコーラのどちらが事業として魅力的か言うまでもありません。ブランド力が高く価格決定力を持つ前者は付加価値が厚く、プライステイカーである後者は付加価値が薄いのです。私は投資家として、常に付加価値の厚い企業を探しています。付加価値が厚いほど、様々な経営環境に適応することができ、結果として収益性を維持できる可能性が高いと考えているからです。

上場企業への株式投資では、変数は6つしかない

上場企業への株式投資において、投資家がコントロールできる変数はたったの6つしかありません。付加価値が事業における選択肢の多さで測れるとすれば、これほど付加価値の薄い事業はないでしょう。

1、投資対象企業
2、購入時期
3、購入価格
4、ポートフォリオ全体のうちの投資比率
5、売却時期
6、売却価格

付加価値が薄いからどうするのか?

まず、株式投資は付加価値が低いという事実を良く認識する必要があります。結果として私は、株式投資には次の2つの方法しかないと思っています。

1、変数のコントロールを諦め、低コストで幅広く分散投資する(パッシブ投資)
2、変数が限られていることを認識した上で、その精度を高める(アクティブ投資)

変数をコントロールする自信がない、もしくはそんなことに自分の時間やお金を投資したくないのであれば、素直にそれを認めて分散投資すれば時間も無駄になりませんし、結果として中途半端な選択をしてしまうほとんどの投資家よりよい運用成績が残せるでしょう。逆に、変数を他の市場参加者よりうまくコントロールして稼ごうとするのであれば、そこには時間やお金の投資が必要となります。

中途半端な投資スタイルが一番危険

投資における①と②は全くの別世界です。①から徐々に②に移動することはできませんし、ほとんどの人は①にいるべきだと思います。プロの機関投資家が1日何時間もかけて企業調査をしている中で勝てる見通しを持つのは大変なことです。しかし、局所的には例外もあります。例えば製薬業界に勤めている人であれば、勝手知ったる製薬企業への個別投資に限定すれば、②の領域でも競争優位性があるのかもしれません。

まとめ

上場企業投資は本質的に付加価値の薄い事業です。その事業特性を理解した上でアクティブ投資を選ぶのであれば、自分に競争優位性があると自信を持てる戦略を見つけることが大切だと思います。

Happy Investing!!

 

 

 

 

 

調査対象企業の探し方:優秀な知り合いが転職した会社

モルガン・スタンレー証券の同期会で思い出すこと

先日、モルガン・スタンレー証券東京オフィス2004年入社同期の忘年会がありました。入社して10年以上が経ち同期の9割以上が転職していますが、初回から幹事を務めてくださるTさんのおかげで、今年もみんなの元気な顔を見ることができました。ありがとうございます。

さて、この忘年会で毎年思い出すことがあります。それは、「転職している同期がいたら、その企業を投資対象として調べる」ということです。このスクリーニング方法に気が付いたのは、エムスリー(2413)という医療従事者向けの情報サイトで製薬会社の情報提供支援をしている企業がきっかけです。実は、同期のうち2人が別のタイミングでこの会社に転職したのです。1人は2010年、1人は2013年だったと記憶しています。その時の私は、「へー、30人くらいしかいない同期が2人も同じ会社に転職するなんて珍しいこともあるんだな」くらいにしか考えていませんでした。ちなみに、2010年末の株価は350円、2013年末の株価は1300円、今の株価は2600円です。逃した魚は大きいのです。

関連資料】エムスリー長期業績レポート

優秀な知り合いによる企業調査の結果が分かるのが転職先

仕事人にとって、会社ほど多くの時間を過ごす場所はありません。どの会社を選ぶかによって仕事人生は大きく変わったものになります。そういう理由から就職先を真面目に選ばない人はいないし、選択肢が多い優秀な人であればあるほど、より綿密な企業調査の結果として転職していると考えることが出来ます自然です。まずは純粋に知り合いのキャリアアップを喜び、投資家の立場として彼らの企業調査の結果を利用させて頂くことができるのです。

社会人経験を積んだ後最初の転職先情報が特に有用

自らの経験を振り返っても、新卒のときには会社というものが分かっていないものです。一般的な評価に左右されて選びがちです。しかし、社会人になってビジネス上様々な企業と触れ合う中で、自分の企業観が出来上がっていきます。こうして選別力が高まったときに行う転職という行動にこそ、多くの情報価値が含まれていると思います。

まとめ

転職は、綿密な企業調査の結果です。その人が、自分の人生をよりよく導くために知恵を絞って考えた結果ですから、耳を傾ける価値があると思いますし、実際に自分の知り合いの転職先はよい投資候補となりうる企業ばかりです。

特に情報価値が高いのが、社会人経験を5年ほど積んで企業の選別眼を養い、かつ優秀なために引く手あまたという方が行う転職です。知人のキャリアアップを喜び、投資情報としても有り難く活用させて頂きましょう。

Happy Investing!!

調査対象企業の探し方:自社株買い

【注記】本投稿は、長友威倫が別のブログに書いた記事をアップデートしたものです。

大東建託にみる自社株買いの効果

調査対象企業として、自社株買いの有無が一つの目安になります。今日は、具体的な自社株買いの調べ方について書いていきます。対象企業は大東建託(1878)。私が知る限り、日本で最も積極的に自社株買いをしている企業です。

発行済み株式数の調べ方

さっそく、大東建託のIRページに行きます。右にある決算資料へのリンクをクリックして、さらに2016年3月期を選びます。 有価証券報告書をクリックして開きます。これが、上場企業が提出を義務付けられている書類のうちで一番詳細なものになります。2016年3月期の有価証券報告書は全166ページもありますが、どこに必要な情報が書いてあるか分かってくれば、慣れてきます。5~6ページに、過去5年間の経営状態のまとめが載っています。6ページに、「発行済株式総数」とあります。

f:id:tictactaka:20161006162151p:plain

この数字を、過去にさかのぼって集めます。ちょっと面倒ですが、コツコツ手作業でやっています。以下のようになります。

f:id:tictactaka:20161006162258p:plain

過去14年間、自社株買いによる大東建託のリターン押し上げ効果は年率4%!

過去14年間で、大東建託の当期純利益は年率8%で成長。自社株買いによって株式数が年率4%で減ったので、EPSは年率12%で成長。さらにPERが2002年の12xから直近では19xに拡大したことで、年率3%の株価押し上げ効果があります。利益 x 株数 x PERの力が合わさり、大東建託の株価は2000円から16000円まで、年率16%上昇してきました。株価を上げる大切な構成要素のうちの一つが自社株買いであること、伝わりましたでしょうか?

私も、このような3拍子そろった銘柄を見つけて長期保有したいです。長きにわたって日経平均は不調ですが、輝く個別銘柄は必ずあります。必ず見つかります。頑張って探しましょう!

大東建託のみなさま、素晴らしい事業運営と株主還元によって理想的な株価形成を見せて頂き、ありがとうございます!

Happy Investing!!