投資家の最大の敵は自分自身

新規事業:資産運用アドバイザー事業に対するよくある反応

これまでNagatomo Investmentsでは、①ブログでの情報発信、②投資セミナーの開催 という2本立てで運営してきました。2018年3月より、3本目の柱として、資産運用アドバイザー事業 を行います。資産運用アドバイザーで目指すことは、長期・分散・積立投資の徹底です。年間5万円のアドバイス料で、①現状把握、②資産運用計画の策定、③計画から脱線しないサポート を提供します。

この話を知人友人すると、よくある反応は、「5万円分の価値があるのか」ということです。長期・分散・積立投資は、基本的に何もしません。毎月積み立てるだけで、市場平均リターンを目指します。そんな投資なら自分でできる、5万円の価値はない、と思ってしまう人が多いようです。どうもみなさん、株価が堅調だからかアップサイドばかりに目が行くようです。しかし、私は資産運用アドバイザーの役割は、顧客に多く稼いでもらうことではなく、できるだけ損をしないようにすることだと思っています。

平均的な個人投資家の運用結果は市場インデックスに遠く及ばない 

みなさんは、市場インデックスの積立投資が簡単だと思うかもしれません。しかし悲しいことに、現実には平均的な個人投資家の運用結果は市場インデックスに遠く及ばないようです。

米国Dalbar社の調査による(レポート原文へのリンク)、2015年末までの個人投資家と市場インデックスの比較が下図です。例えば、過去20年において、株式投資信託に投資していた個人投資家は年率4.67%のリターンを獲得しました。日経平均に比べれば夢のような数字ですが、S&P500に20年間投資していれば、年率8.19%のリターンを獲得できたのです。なぜ、個人投資家のリターンは市場インデックスに対して年率3.5%も劣後しているのでしょうか?

出典:Dalbar

余談ですが、1年で3.5%と聞くと大したことないように思うかもしれませんが、複利効果になると話は別です。下図のように、20年間経つと、8.19%で増えたS&P500が5倍になったのに対して、4.67%しか増やせなかった個人投資家は2.5倍になっただけです。年率3.5%という差は、長期投資の世界では、非常に大きな差になります。

個人投資家のリターンが市場インデックスに劣後する理由

本題に戻りましょう。個人投資家が、積み立てるだけで簡単だと思われている市場インデックスリターンすら達成できない理由についてです。

Dalbar社のレポート10ページに、その理由が分析されています。一番大きいのは、Voluntary investor behavior underperformanceによる1.5%です。つまり、毎月決まった金額を積み立てて保有し続けようと思ってはいても、株価が下がれば怖くなって売却してしまったり、株価が上がれば嬉しくなって買い増してしまったり、余計な投資行動を行うことでリターンを低下させているということです。

出典:Dalbar

市場インデックスのリターンを獲得するだけでも、十分に難しい

平均的な個人投資家は、市場インデックスのリターンを獲得することが出来ていないのが現実です。長期・分散・積立による市場インデックス投資は簡単だと思われがちですが、過去20年間には、ITバブルも、金融危機もありました。このような大きな株価変動の中で、本当に淡々と予定通りに積立投資ができた人がどれだけいたでしょうか?市場インデックスのリターンを確保だけでも実は十分に難しいことなのではないでしょうか?

資産運用アドバイザーの役割と対価について

個人投資家にとって、市場インデックス並みのリターンを達成できない最大の要因は、自分自身です。市場インデックスに対する超過リターンを目指したい気持ちは分かりますが、まずは市場インデックスにすら大きく劣後しているという現実を直視して欲しいのです。資産運用アドバイザーは、個人投資家が市場インデックスを達成できるようにサポートすることが、目的です。

具体例でいいますと、1年ほど前でしょうか、毎月インデックスに積立投資をしている友人から、「米国株高が続いている。どうも株価が高すぎる気がして、売却したいが、どう思うか?」という質問を受けました。私は、「具体的にどうして高いと分かるのですか?どうなったら再び購入を始めるんですか?どれくらい売却するのですか?」などと、一連の質問を返しました。大半の投資家は、これらの質問に返答できないと思います。仮に返答できる自信があれば、毎月積み立てるインデックス投資ではなく、投資タイミングをコントロールするアクティブ投資をしていることでしょう。

米国株式はもっと値上がりするかもしれないし、ひょっとしたら値下がりして売却した方がよかったということになるのかもしれません。しかし、重要なのは、友人が投資戦略から脱線しなかったことです。例えば、一旦売却した価格から値上がりしてしまうと買い戻すことが難しいでしょう。一度脱線してしまうと、戻ることは容易ではないのです。

一般的な個人投資家の脱線コストがDalbar社の調査のとおり、年率1.5%だったとすれば、500万円を運用している人には、年間500万 x 1.5% = 7.5万円の脱線コストが発生しています。この脱線コストは複利で効いてくるので、1年目で7.5万円のコストは、20年後にはその数倍に膨れ上がっていることでしょう。年間7.5万円の脱線コストを削減するために、年間5万円は妥当ではないですか?資産運用アドバイザーとは、そういうご提案です。

Happy Investing!!

投資信託の地雷原を安全に進むために

投資信託を選ぶのは、個別株を選ぶより難しい?

昨日、久しぶりに投資セミナーを開催しました。『投資の基本』と題して、複利効果や長期投資に向いた金融資産の分類などについてお話ししました。参加者の方々、ありがとうございました。

質疑応答では、具体的な投資方法についてアドバイスしました。参加者の方は、楽天証券で投資信託の購入を始めたということでした。「投資信託の選び方も難しいんですよね」と言いながら、楽天証券ホームページの投資信託一覧を見て驚きました。下図です。

出所:楽天証券

なんと、楽天証券だけで2,500本以上の投資信託を扱っているのです!

一体、日本にはいくつの投資信託があるのだろうかと、一般社団法人投資信託協会のホームページにいきました。すると、2017年11月末時点で、6,200本以上の公募投信あるということです。あまりの多さに驚いてしまいました。

私は個人投資家として日本の個別株を中心に運用しています。約3,600社の上場企業から、これはと思う会社を選んでいきます。電話帳のような四季報を通読していると言うと物珍しがられます。しかし、お手軽に見える投資信託への投資も、実は全上場企業より多い中から選ばなくてはならず、母数が多いだけにもっと難易度の高い可能性があることを自覚した方がいいと思います。

地雷原を安全に通行するために

個別株を調べる興味も時間もない99%の人にとっては、投資信託やETFの長期分散積立投資が王道だと思います。しかし、せっかく王道を進もうと思っても、前述のように投資信託の数が多くて、どの商品を買ったらよいか迷うはずです。個人的には、その大半が長期投資に適さない商品だと思います。まさに投資信託は、初心者投資家から手数料を奪い取ろうとする地雷原という感覚です。非常に残念です。

楽天証券の場合ですが、取扱い2,500本のうち、長期投資に適していそうな投資信託は50本くらいしかないと思いました。正解が2%しかない訳で、なかなか髙いハードルです。地雷原を安全に通行するためにも、自分でしっかり準備するか、資産運用アドバイザーを味方につけることをおススメします。

Nagatomo Investmentsでも個別サポートサービスを始めましたので、お問い合わせください。

また、次回のセミナー(3月予定)では、長期分散積立投資という王道をベースに、具体的な商品の選び方を取扱います。お楽しみに!

Happy Investing!!

セミナー開催のお知らせ(1月30日)

2018年の第1弾として、5回シリーズのセミナーを開催します。

第1回 投資の基本     (1月30日)
第2回 ETF積立投資 実践編(3月上旬予定)
第3回 個別株投資 入門編 (3月下旬予定)
第4回 個別株投資 中級編 (4月上旬予定)
第5回 個別株投資 上級編 (4月下旬予定)

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第1回 投資の基本

2017年より給与所得者も加入できるようになった、iDeCo(個人型確定拠出年金)の利用を念頭に、投資の基本をお伝えします。ETFでほったらかし長期積立投資を目指す方も、個別株で高い運用リターンを目指す方も、最低限知っておいて欲しい内容をまとめました。

特に、次の3点の理解を目指します。

① 複利効果
② 金融資産の3分類
③ iDeCoをオススメする理由 

対象者:(1)投資に興味はあるが、具体的に何から始めたら良いか分からない初心者
    (2)投資は行っているが、投資戦略の方向性を再確認したい経験者

詳細

日時:1月30日(火) 19:00 – 21:00
場所:東京都千代田区神田錦町2丁目9番地 岡田ビル 201号室 (大手町駅5分)
料金:2,000円(当日払)
申込:info@nagatomoinvestments.com (先着5名)

 

ご参加をお待ちしております。

Happy Investing!!

資本主義から逃げ出して、回帰して思う事

資本主義とは何か?

Wikipediaによれば、資本主義とは「生産手段の私的所有および経済的な利潤追求行為を基礎とした経済体系」です。1980年代から日本やアメリカで育った身としては、資本主義社会を当たり前に感じてしまうわけですが、これはごく最近のことです。そもそもヨーロッパで資本主義という言葉が使われだしたのが1850年。つい150年前のことでしかありません。例えば1万年前に始まった農耕など人間の歴史の時間軸で考えても、非常に歴史が浅いと言わざるを得ません。

資本主義から逃げ出した

私は、大学を卒業した2004年から2009年まで資本主義の最前線である金融業界で働きました。それまでの人生経験から世の中を理解する多様な切り口の中で、お金という切り口がとても強力だと感じていたからです。しかし、機関投資家の株式アナリストとして、事業やお金について日々考える時間がありすぎる中で、色々と疑問に思ってしまいました。一番の疑問は、お金という切り口で人間の行動が説明できたからと言って、それに何の意味があるのだろうかという点です。人間が生まれるはるか昔から地球上にあるものを、人間は私的所有していいのでしょうか?政府は経済成長、企業は売上や利益の成長と当たり前のように言うが、そもそも成長することは絶対的に正しいことなのでしょうか?

そんなことを考えすぎ、歴史の浅い資本主義から離れ、人間が古くから行ってきた生きていくための営みにヒントを求めようと思いました。具体的には、①自分の先祖が全て子供を残してくれたこと、②自分の先祖が全て衣食住を確保してきたことは、絶対的に本当だと思えました。逆に言えば、自分の先祖が全て都会に住んで経済成長を目指したとは全く信じられませんでした。そんな訳で、2009年から2013年の間、結婚して子供2人授かり、農業や大工仕事をしていました。

資本主義に回帰した

2014年から個人投資家として都会生活に戻ってきました。肉体労働を楽しめなかったという事もありますが、それ以上に資本主義を肯定できるようになったことが大きいです。

  

今の私の考えは、上記The Passions and the Interestsを書いたアルバート・ハーシュマンという経済学者に近いものです。人間の男には動物的本能として、他の雄を倒し、できるだけ多くの雌を囲って子孫を残したいという純粋な欲求があると思います。しかし、個別最適が全体最適に一致するとは限りません。ホモ・サピエンスが身体的能力に勝るネアンデルタールなど他の類人猿に対して優位に立てたのは、身体的能力が弱いが故に集団で協力することを覚えたからだと言う説もあるようです。上記ハラリ氏のサピエンス全史などはこの立場だと理解しています。つまり、人間社会の歴史とは、いかに動物的欲求を抑えて集団活動を維持していくかというものだということです。

集団活動を維持する仕組みとして、宗教や王朝、法律、貨幣制度などが生まれたのでしょう。しかし、人間が地球上で一番強い種族の地位を確立してしまうと、やはり個人的本能欲求を押さえつけるだけではフラストレーションが溜まってしまいます。そのはけ口が、売春、コロセウム、酒、ギャンブル、スポーツ、さらにコントロール不能になると戦争になったりするのでしょう。

「みんなのため」というスローガンが失敗することは社会主義国家を見ても明白なのですが、個人的には宗教的集団生活を体験して実感しました。現代資本主義社会における私有の概念や競争に背を向けて共同生活を選ぶ人たちは、日本においてもいます。どの集団も、始まりは美しいようです。崇高な理念に共感する人々が集まり、精神的な豊かさを追求するための場を作っていきます。しかし、時が経つにつれて生活が安定してくると、フラットであったはずの集団内部で上下関係が生まれます。私有の概念がないために力のあるボスが総取り状態になってしまい、まさに人間版サル山です。女性もボスに気に入られることが生存戦略につながるためか、一夫多妻制状態になりやすいようですし、暴力もあるようです。これらの経験を通して、人間の本能的欲求を発散しつつ、かつ全体最適のために活動してもらうことの難しさを実感しましたし、そう考えれば現代資本主義社会は極めてよく回っているなと感心してしまいました。

アルバート・ハーシュマン氏いわく、『人間の本能欲求を宗教などで押さえつけることはできない。圧力が強すぎて、いつかは蓋が吹き飛んでしまうことは歴史が証明している。唯一できることは、お互いの本能欲求をぶつけ合って、摩耗させることだ。』つまり、毒をもって毒を制するのが資本主義の本質なのです。競争が嫌だと言っていると、抑圧された本能欲求がより醜い形で現れて驚くような気がします。

資本主義から逃げ出したことは、私にとっては間違いでした。慣れない農業や大工仕事に励んでは疲れて寝ていた日々の数年間は楽しめたのですが、少し慣れてくると頭でっかちな自給自足的生活で自分の本能欲求を満たすことはできなかったようです。

Happy Investing!!

インセンティブの大切さ

チャーリー・マンガ―の金言

I think I’ve been in the top 5% of my age cohort all my life in understanding the power of incentives, and all my life I’ve underestimated it. Never a year passes that I don’t get some surprise that pushes my limit a little farther. – Charlie Munger

私は、インセンティブの重要性を理解することにかけては同年代の上位5%に入っていると自負している。そんな私でも、毎年のようにインセンティブの重要性を過小評価していたことに気付かされる。ー チャーリー・マンガ―

サラリーマンのインセンティブ

投資家仲間と、「投資家がサンタさんへお願いするとしたら」というトピックで盛り上がりました。大量保有ルールの変更、競争過多な業界での再編、失敗を嫌う文化の刷新、株式持ち合いの解消、生え抜き社長文化の刷新など、色々なアイディアが出ました。私は、「日本企業の終身雇用制度を止めること」を提案しました。すると、「終身雇用制度は実質的に壊れている」、「残っている人は、居心地が良いと思っている」という意見をもらいました。私は日本企業で働いたことがないので、思い込みで話してしまっていたのかもしれません。

特に興味深かったのが、日本企業は会社都合で辞めた場合の退職金は手厚いが、自己都合になると80%カットになることもあるという点です。例えば、50歳の方が、60歳定年退職で5000万円の退職金をもらえるとします。自己都合で80%カットであれば、50歳で転職した場合には1000万円しか退職金がもらえません。差額の4000万円(5000万ー1000万)/ 10年(60歳ー50歳)=年間400万円 以上のメリットなければ経済合理性からは転職できないことになります。

大企業に勤めている人ほど、年収や退職金も高いはずです。さらには大企業なので組織がなくなることも考えにくいとなれば、ますます転職するインセンティブがなくなります。多くの人は、想像しうる未来(多くの場合は現状の延長線上)に合わせて合理的に行動しているのです。

まずインセンティブを変えよう

「人材の流動性を上げよう」や、「終身雇用制度をやめよう」という掛け声では何も変わらないということです。それを支えるインセンティブに手を付けてこそ、初めて人間は動くのです。例えば、退職金制度を廃止にすれば、大きなインパクトがあるでしょう。

アメリカのFedEx社(貨物運送)での実話を紹介します。FedEx社は、朝までに荷物の仕分けが間に合わなくて困っていました。色々な取り組みをしてみても結果が出ません。そこで、夜間シフトの労働者に対して時給支払いから、仕分けが終われば支払う形態に変えたところ、一気に問題が解決したそうです。時給では、労働者のインセンティブは長時間働くことになります。かかった時間に関わらずに仕分けが終われば支払う成果型に変えたことで、労働者に初めて早く作業を終えるインセンティブが芽生えたのです。

日本の労働者の潜在能力は、インセンティブによって押さえつけられているように感じます。扶養控除で人為的に年収103万以上稼ぐと手取りが減らすなど、勤労意欲を阻害する以外の何物でもありません。より多くの方々が力を発揮できるインセンティブが広まるように、サンタさんにお願いしたいです。

Happy Investing!!

CFA証券アナリストになって良かったこと

CFA証券アナリストとは?

CFA証券アナリストは、アメリカ発祥の資格です。1947年に生まれた資格で、現在では世界137か国に約13万人の資格保持者がいるそうです。金融業界とくに運用業界において、国際的な資格として認知されています。

日本では、約1500名の資格保持者がいるそうで、年間100名ほど増えています(私が合格した2016年の日本の合格者は88名でした)。日本で一般的に知られている証券アナリスト資格の合格者が年間1000名以上であることを考えると、まだまだ認知度が低い資格です。

なぜCFAを取得したのか?

2006年に1次試験合格

2006年にキャピタル・グループに入社した際、まったく資産運用経験のなかった私は上司にCFAを取得するよう言われました。同僚のほとんどが、MBAかCFA資格を保持していたからだと思います。私は2006年12月の1次試験に合格しましたが、その後の2次、3次試験は受験しませんでした。上司には「1次試験に合格しました」とだけ報告して、あとは黙っていました。上司はCFA資格を持っていなかったので、そもそも3次試験まであることすら知っていたのか怪しいものですが。このような生意気な態度をとっていた理由は、CFAの内容にあります。CFAを取得したからと言って、運用能力が向上するとは思えなかったのです。確かに試験勉強は大変ですから、①勉強に耐えることができる、②一定の知的水準をクリアしている、③英語力がある、という判断基準にはなると思います。しかし、外資系運用機関の従業員は、既に①~③が出来ているから職を得ることができたわけで、いまさらCFA取ってどうするのという気分でした。

2016年に3次試験合格

2014年に個人投資家として資産運用を再開しました。Warren BuffetやCharlie Munger、Mohnish Pabraiの考えを読むにつれ、自分の資金を預けたくない投資信託を顧客に販売することはできない、自分の納得いく運用スタイルを探したい、と理想は高くなりましたが、果たしてうまくいくものか不安もありました。機関投資家時代の成功は、組織の力があってのものではないかという疑念が常にありました。個人投資家として失敗した場合に少しでも再就職の可能性を高める方法として思いついたのが、CFA資格を取得することだったのです。こうして、最初の受験から10年も時間がかかりましたが、無事に合格することができました。

CFAの価値

CFA資格の維持には年会費がかかります。年4万円くらいです。会社員であれば、CFA取得者を雇用している会社側にも箔がつくというメリットがあるので、経費で落とせるのでしょうが、個人投資家の立場でこの費用を払うべきかは悩ましいところです。合格してから1年間お試し期間で会員資格を使ってみた結果、有料であっても加盟するメリットがあると思っています。日本CFA協会は、試験対策やセミナー企画、大学生向けにCFAリサーチチャレンジなど、様々なイベントを運営しています。興味のあるセミナーに参加し、リサーチチャレンジにもボランティアとして参加させて頂きました。これらを通して、運用業界の方々と知り合うことができたのが、何よりの収穫です。キャピタル・グループに在籍していたころは、企業調査とは自分1人で行うもので、他のセルサイドや運用者と交流することは百害あって一利なしかのように極端に考えていました。自分の世界を狭くしてしまったことも、機関投資家生活を長く続けられなかった理由の一つかもしれません。

これからもブログ発信、セミナー開催と並んでCFAの活動に関わりながら、少しでも運用業界の発展に貢献できれば嬉しいです。ボランティア2年目となりましたCFAリサーチチャレンジは、現役大学生の方々がファンダメンタル投資に触れる素晴らしい企画です。また次回に紹介したいと思います。

Happy Investing!!

エンジェルジャパン・アセットマネジメント社のご紹介

2017年8月末の投資信託クローニングレポート

私は毎月末に、過去5年、10年間の運用成績が良かった投資信託の保有上位企業を観察しています。

【参考リンク】長期的に高い運用実績を残している投資信託の保有銘柄アップデート

実績を残してきた投資家の考えを知ることができ、なぜこの企業を買ったのかを考えることは勉強になると思います。ご参考までに、2017年8月末に作成した資料を添付しました。

【参考リンク】2017年8月の投資信託クローニングレポート

中小型株に特化した投資信託は足元絶好調

9月4日時点で、日経平均のリターンが年初来+2%に対してJASDAQのリターンは年初来+24%を超えています。日本の大型株に対して、中小型株の大幅なアウトパフォームが続いています。投資信託クローニングレポートを見ても、過去5年のリターンが年率+40%を超えるものも散見されるなど、絶好調以外の何物でもありません。ちなみに、100円の元本を年率+40%で5年間投資できたとすると、5倍以上に増えています。素晴らしい成績です。

景気後退局面を含めた過去10年のリターンに注目

しかし、より注目したいのが過去10年のリターンです。なぜなら、リーマンショックなど景気後退局面を含んでいるからです。投資家の中には、上げ相場に強い人もいれば、私のように保守的で下げ相場に強い人もいます。どちらに偏ってしまっても、景気サイクルを通して高いリターンを上げることは難しくなります。過去10年のリターンが高いということは、攻守のバランスのよい投資家ということができます。

私は、10年以上の長期に渡って高い複利運用を達成することを目指しています。私にとって参考にすべきは、こうした長期リターンの高い投資家です。

10年リターン首位は、SBI中小型割安成長株ファンドジェイリバイブ

モーニングスターで以下のようなスクリーニングを行いました。SBI中小型割安成長株ファンドが年率+16.41%でぶっちぎりのトップです。2位とは年率3%も開きがあります。年率3%というと大したことないような気がするかもしれませんが、投資の世界では気が遠くなるような差です。100円を投資したとすると、年率+16.41%であれば、10年後に457円。年率+13.65%であれば、10年後に359円に増えています。どちらも満足いく結果には違いありませんが、年率3%の差を積み重ねる大きさを実感してください。

首位の投資信託を運用しているのは、エンジェルジャパン・アセットマネジメント社

首位のファンドはSBIという名前がついていますが、私はかねがね、なぜSBI証券にこのような優秀な運用能力があるのだろうかと不思議に思ってきました。今回、このファンドはエンジェルジャパン・アセットマネジメント社の投資助言を受けていることを知りました。

エンジェルジャパン・アセットマネジメント社は1981年から未公開株、中小型株調査に従事している宇佐美さんが2002年に設立した会社です。1981年と言えば、私が生まれた年です。私の人生と同じだけの時間を株式調査に充てられてきた宇佐美さんの継続力に頭が下がります。これだけ長く中小型株をカバーしている方は日本にいないでしょうし、宇佐美さんも対談のなかで、現在の上場企業の半数以上をIPOから見てきたと語っています。日本電産の永守さんや、ソフトバンクの孫さんなど、今を輝くカリスマ投資家も、IPOの過程で宇佐美さんとお会いしているそうです。まるで日本の株式市場のゲートキーパーのような方です。

エンジェルジャパン社の投資チームは4名(2017年7月から5名になるそうです)。うち3名は、2002年の創業時から15年間一緒に投資を行ってきたチームということです。少数精鋭、高い人材定着率で高い運用成果を残している機関投資家が日本にもいたんですね。こうした大先輩の存在を知ることで勇気づけられますし、高い目標に向かってまた頑張っていこうと思いました。エンジェルジャパン社の皆さま、ありがとうございます。

【参考リンク】モーニングスター社と宇佐美社長の対談
【参考リンク】エンジェルジャパン社、2017年新年の挨拶

Happy Investing!!

Berkshire Hathawayのバランスシートから分かること

パブライ氏がポッドキャストに登場

Berkshire Hathawayを率いるウォーレン・バフェットはバリュー投資家の憧れの存在です。私はモニシュ・パブライにならって、優れた投資家を積極的に真似(クローニング)しようとしています。

先日、The Investor’s Podcastという著名投資家が出演するポッドキャストに、モニシュ・パブライが出演しました。その中で、Berkshire Hathawayのキャッシュポジションについて次のようなやり取りがありました。

司会:バフェット氏は常々、企業価値の評価に集中しろと言っています。ミクロを正しく理解するだけでも難しいのだから、マクロの心配はするなと言います。しかし、私はバフェット氏がクレジットサイクルについて深い洞察を持っているように思えてなりません。その証拠として、バフェット氏はリーマンショック前にも大きなキャッシュポジションを持っていましたし、今もまた、80億ドル以上のキャッシュポジションを持っています。

モニシュ:私はバフェット氏とクレジットサイクルについて議論したことがありますが、ここでその内容を明かすわけにはいきません。ただ一つ言えることは、バフェット氏は何一つ隠そうとはしていないということです。彼は、リスクリターンに見合うと思えば投資するし、そう思えなければ動かない。ただ、それだけのことなのです。その結果がBerkshire Hathawayのバランスシートに表れています。

2016年9月末に85億ドル(約9兆円)のキャッシュポジション

実際にBerkshire Hathawayのキャッシュポジションを調べてみましょう。

まず、Berkshire Hathawayのホームページに行き、Annual&Interim Reportsをクリックすると下のようになります。シンプルに、各四半期の報告書を読むことができます。

2016年第3四半期(9月末)のレポートを開いてみましょう。PDFファイルの3ページ目にバランスシートがのっています。

3部門に分けて開示されていますが、Cash and cash equivalentsを合計すると、$68.2 + $3.89 + $12.67 = $85億米ドル(約9兆円)になります。

次に、時系列でみると、過去最高水準であることが分かります。S&P500の値動きと比べると、見事に連動しています。2008年まではキャッシュポジションを積み上げ、リーマンショックの安値で投資に踏み切っていることからキャッシュポジションが減少しています。バフェット氏のキャッシュポジションが大きく減ったとき(大型買収を除く)は株式市場の買い時ということは言えそうです。

S&P500 (Google Finance)

バランスシート比率でみると

キャッシュポジションは確かに過去最高ですが、同じく資産総額も日々増加しています。例えば、1000万円運用している人の500万キャッシュポジション(50%)と、その同じ人が後日3000万円運用しているときの1000万キャッシュポジション(33%)を比べても、投資の強気弱気は良くわからないということです。

そこで、キャッシュポジション / 総資産をみてみます。すると、現在は14%であり、過去と比べて非常に高いわけではありません。2004年代のバフェットは、25%ものキャッシュポジション(40億ドル以上)を抱えて、魅力的な運用先が見つからなかったことを示唆しています。

私はバークシャーのバランスシートを4つに分けて理解しています。(1)キャッシュ、(2)株式投資、(3)債券投資、(4)事業投資です。この4つを合わせてバランスシートの100%になります。それぞれの比率を見ていくと、いくつかの傾向がみられます。

1、債券投資が大幅に減少。中央銀行の低金利政策を受けて、債券投資の魅力は大きく減少していると判断しているようです。

2、事業投資にシフト。Berkshireの総資産は60兆円と巨大です。上場企業への投資では、資金の投資が間に合わないのでしょう。アメリカには時価総額が10兆円を超える上場企業が50社ほどあります。仮に1社の5%を購入したとしても5000億円、Berkshireにとっては資産の1%も投下できません。しかも、バフェット氏が買っているという大量保有報告書が出れば、多くの投資家が追随して価格を押し上げてしまいます。そこで、リーマンショック後のバフェット氏は、Berlington Northern Santa Fe(鉄道、2009、260億ドル)、Heinz(食品、2013、280億ドル)やPercision Cast Parts(鋳造品、2015、323億ドル)といった大企業を丸ごと買収しています。会計上連結されるこれら投資は株式投資ではなく、事業投資として現れるのです。

まとめ

バフェット氏が率いるBerkshire Hathawayのバランスシートを遡ると、たしかに現在のキャッシュポジションの絶対額は過去最大ですが、総資産対比では2008年以降に対して少し多くなってきたという程度です。徐々に買いたい資産が見つからなくなってきているのかもしれません。

一番明らかなトレンドは、債券投資を大きく減らしていることです。低金利環境で、リスクリターンが悪いと判断しているのでしょう。

世界一の投資家のバランスシートの動きから学ばせて頂きましょう!

Happy Investing!!

2016年の振り返り

12月30日は大納会で、1年の株式取引が終わりました。みなさまにとって、2016年はどんな1年だったでしょうか?

私にとっては気づきの多い1年となりました。

高い絶対リターンを目指すことの大切さ

2014年から個人で投資をしてきましたが、特に数値目標を設けていませんでした。あまりに高い絶対リターンを目指すと過剰にリスクを取ってしまうことを懸念していたのです。しかし、2016年半ばから考え方を変えました。

私は『ダンドー』の著者であるバリュー投資家Mohnish Pabraiを尊敬しており、彼の投資戦略を出来る限り真似しようとしています。彼は1995年から運用しており2013年まで年率26%で18年間、複利運用することに成功しています。最初の資金が実に64倍になったことになります。

長期的に高い運用成績を残している人の投資手法を真似すればするほど、必然的に私の運用成績も似たものになるはずという単純な発想です。

上のYoutubeで、Mohnish Pabraiが投資の考え方を紹介しています。成功の秘訣として、「高い絶対リターンを目指すこと」を上げています。具体的には、年率26%で30年運用して資産を1000倍にすることを目指したそうです。ようやく謙虚に成功者を真似することに目覚めた私も、同じく年率26%で30年運用して資産を1000倍にしようと決めました。

年率26%で30年運用すると決めて変わったこと

年率26%で長期間運用できる投資家はほとんどいません。例えば、過去10年で最も運用成績が高かった日本の投資信託でも年率10%程度です。

関連投稿】長期的に高い運用実績を残している投資家の真似をしよう

どうすれば高いリターンを達成できるのか?必然的に投資プロセスを洗練させることにつながります。基本戦略としては、2-3年で最低2倍になると思えない会社には投資しないことです。以前の私であれば、「そんな投資先はない!」と反射的に思ってしまっていました。実際に、そんな投資先はほとんどありません。でも、全くないのと、ほとんどないことには天と地ほどの差があります。四季報の通読や、有力投資家の投資先をカンニングすることで、そうした投資先を見つけることができるという自信を得た1年でした。

2016年の運用成績は+25.9%

年末の株高にも助けられ、2016年の運用成績は+25.9%となりました。目標としている年率26%まであと一歩でした。12月に購入を始めた株の上昇スピードが速く焦ってしまい、自らの投資ルールを破って買い急いでしまったことで高値掴みとなり、年率26%を達成できなかったことが悔やまれます。2017年に向けて具体的な改善ポイントも見えているので、来年も楽しみです。

みなさまにとって、2017年がますますよい1年となりますように。

Happy Investing!!

Nagatomo Investmentsへようこそ

Nagatomo Investmentsへようこそ。代表の長友です。

証券会社や投資顧問に勤務したのち、現在は個人投資家として活動しています。私の投資における目標は、年率26%で30年間複利運用して、元手を1000倍に増やすことです。

まだまだ発展途上の投資家ですが、これまで学んできたことを活かして、バリュー株投資によりあなたの長期的な資産形成をサポートします。

よろしくお願いします。