経営破綻前後の日本航空(JAL)の取締役会構成

フジテレビ問題を受け、実行力のある取締役会の変革について考えています。前回は2009年の大赤字から今日まで見事な復活を遂げた日立を取り上げました(リンク)。

過去20年の有名企業の破綻と復活と言えば、稲盛さんが尽力した、日本航空(JAL)を思い出します。2010年2月20日の上場廃止。2012年9月19日に再上場した前後の取締役会構成を比較してみました。

経営破綻前は、取締役21名のうち社外は約30%。再上場後は14名のうち社外が約40%。まだ過半数は社内出世組かつ全員日本人ということで、日立のように社内出身が25%、外国人40%の企業に比べれば独立性やガバナンスが弱いとは思いますが、改善はしています。特筆すべきは、取締役が全員入れ替わったことでしょう。比べて、フジメディアHDは、17名のうち会長、社長の2名しか退任を表明していません。後継社長は現在の取締役から。これでは、これまでの経営路線からの決別の表明にはならないと思うのです。Happy Investing!!

企業風土を変革できた日立製作所の取締役会構成

前回の投稿で、フジメディアHDの社内生え抜きとグループ企業が過半数を占める取締役構成を見て、会長と社長が辞めたくらいで企業風土が改善する可能性は低いと指摘しました(リンク)。

私が社会人になってから20年、企業風土の変革に成功した事例と聞かれたら、日立とJALと答えます。この2社の取締役構成の変遷を調べてみました。

今回は、日立です。2009年3月期、約8000億円の大赤字を出し、株主資本が2兆円から1兆円まで半減する危機に陥ります。2009年4月に社長が川村さんに交代。川村さんは当時取締役ではなく出世コースを外れていた方で、既存の生え抜き経営陣へ忖度しなくて良い立場にいました。比較すると、今回フジメディアHDの新社長となる清水さんは専務からの昇格ですから、既存経営陣路線が続きます。

取締役会の構成は以下の通りですが、2010年から激変しました。以前は過半数が日立社内+グループ企業出身者でしたが、今では社内+グループ企業はわずか25%。40%を外国人経営者が占め、彼らは日本の事情や阿吽の呼吸など全く関係なく発言してくれるでしょうから、日立の取締役会は、経営陣にとって緊張感のある場になっているだろうと想像できます。厳しい指摘もなく、シャンシャンと議案が通っていくとは思えません。取締役が株主価値の代弁者として機能するには、このような構成にする必要があると思います。

日立の復活の裏には、取締役会の構成もグローバルスタンダードに合わせて変化させてきたということが注目されて欲しいし、今回のフジメディアHDにも見習って欲しいです。海外の放送会社の経営者を取締役に入れるくらいの思い切った変化を見てみたいものです。

取締役は何を取り締まるのか?

フジテレビと中居さんの問題が大炎上して、昨日は午後4時から午前2時まで生中継で謝罪会見が行われていました。午後10時頃にテレビを付けたら、まだ続いていてビックリしました。いくら何でも、そんなに質問する内容がありますかね?

フジメディアHDの会長、社長の辞任が発表されましたが、そもそも取締役とは何をする人達なのでしょうか?日本においては、出世コースに勝利した先に「取締役」があるイメージなので、偉くなって社員を取り締まると思われている気がしますが、そもそもの目的は全く違います。取締役は、株主の代表として「経営陣を取り締まる」ことが仕事です。ですから、取締役は株主価値を代表する人たちで、取締役会が社長など経営陣を選び、報酬体系を決定して監視する役目を担っています。日本で良くある、サラリーマンが偉くなって取締役になるというのは、そもそもおかしな話なのです。サラリーマン社員は偉くなっても経営側の人ですから。

そんな成り立ちですから、日本の取締役会は株主ではなく経営陣側にいると勘違いしているケースが多いです。フジメディアHDの取締役会は、「経営陣を取り締まる」体制になっているのでしょうか?以下の表が2006年からの取締役構成です。例えば左端の2006年3月時点では、取締役の人数は24名。新卒入社から出世した人が16名(中途入社はゼロ)、株式持ち合いしているグループ企業で出世した人が6名、純粋に社外と言えるのはキッコーマンの茂木さんと東京電力の南さん2名だけです。直近の2024年3月は、社内出世組10名、グループ企業出世組3名、社外4名の計17名。この17名で多数決をしたら、株主ではなくフジテレビの経営陣よりの判断になると思うのが普通です。今回、社内出世組から2名(会長、社長)が退任しますが、社内出世組の専務が社長に昇格するわけですから、取締役の追加がなければ、合計15名(社内8名、グループ3名、社外4名)と引き続き多数決を取れば社内の論理が優先されてしまいます。こんな適当な対策で、「企業文化を刷新」なんて出来るわけがないでしょう。また、キッコーマンの茂木さんは2003年から現在まで、東京電力の南さんは2006年から2022年までと長期にわたって取締役を務めています。社外とは言え、20年もやっていたら親しくもなるでしょう。緊張感のある関係を維持するためにも社外取締役が過半数を占め、任期は4年くらいにするのが欧米のスタンダードです。問題は大きければ大きいほど、変わるチャンスです。長く続く日本的株式会社のずぶずぶな取締役会のガバガバなガバナンスという悪習から手を切って頂きたいです。Happy Investing!!

Om Swamiというインド聖人に感じた、インド社会の豊かな多様性

インド修行に向かう友人

友人が、インドに修行に出かけました。

数年間、ヒマラヤで山籠もりするそうです。

Om Swamiという師と思える人物に巡り会えたそうで、嬉しそうでした。(WikipediaリンクOm Swami HPリンク

自分が進むべき方向が見つかった、という高揚感が伝わってきて、こちらまで嬉しくなりました。

私はインドの聖人と聞くと、ガリガリに痩せ、ひげを伸ばした、ヨガマスターをイメージしてしまうのですが、Om Swamiさんの経歴はかなり異質です。

インド生まれで、幼少期から神に興味を持ち、自ら瞑想に取り組んできたそうです。

2000年に大学を卒業していますから、現在40代前半という若さでしょうか。

オーストラリアに大学留学、MBA、IT業界で起業して成功・・・物欲を否定せず、一般的な聖人のイメージとはかけ離れています。

豪邸に住み、世界を飛び回り、スポーツカーを乗る生活を楽しみ、物的生活を極めたところで、全ての所有物を放棄して出家したそうです。

幼少期から心的生活を極める(=悟りを開く)ことを最終目標に、途中目標として物的生活も極めてしまう。

出家後、インドを巡って修行を続け、悟りを得るまでの自伝を、楽しく読みました。

たくさんの聖人が暮らせる、多様性あふれるインド

インドには、たくさんの聖人がいるようです。

自称聖人という方も多く、玉石混交でしょうが、多くの聖人が暮らしていけていることは事実です。

日本で、自ら出家・修行して悟りを開いたという人がいたとして、果たして生活していけるでしょうか?

新興宗教として怪しまれるのが関の山ではないでしょうか?

個人的判断で出家・修行した多くの聖人に信者がつき、生活していけるところにインドの豊かさを感じました。
 
日本で宗教家といえば、○○教の△大学に行って××寺で修行して、みたいな話になり、随分と肩書が先行する社会になってしまったなと感じました。
 
インド人は宗教的な肩書に惑わされず、目の前の個人の資質を自ら判断して信じるかどうかを決めているようで、それはそれで多様で豊かな社会だなと思いました。
 

まとめ

Om Swamiさんのように、個人で修行・会得した人は、組織色に染まっていなく、教えや言葉が分かりやすいです。

肩書に物言わせるのではなく、自分の体験から語ってくれる聖人の話を聞いてみたくなりました。
 
ヒマラヤで修行に向かう、友人を応援しています。
 
土産話が楽しみです。

Happy Investing!!

エルピーダ坂本社長、『不本意な敗戦』を読んで

『不本意な敗戦』を読んで

エルピーダメモリの社長だった、坂本さんの著書を読みました。エルピーダメモリと聞くと、懐かしい気分になります。1999年にNECと日立のDRAM事業を統合することで誕生した、日本の半導体メーカーです。1990年代に世界一だった日本の半導体産業ですが、大きな設備投資によるスケールメリットを追求する段階での競争に敗れ、シェアを大きく落としてしまいます。例えば、エルピーダメモリ誕生時のDRAM市場シェアは17%あったそうですが、2002年には4%台に落ち込んでしまったそうです。たったの3年で、シェアが1/3以下になってしまうとは、凄まじいスピードです。

エルピーダは1999年から3年連続赤字。NEC派や日立派が争って混乱していたようです。そんな火中の栗を拾いに、2003年に坂本さんが社長就任、2005年には黒字回復して株式上場に成功します。その後、2012年に経営破たんに至るまでのストーリーがまとめられています。

ポイント

この本を読んで、2つの点が心に残りました。一つは、坂本さんが優秀な経営者であること。経営破たんから再生したJALとの比較が出てきます(p.49)が、JALは全社員の1/3が希望退職し、これまで空港までタクシーで行っていたパイロットに公共交通機関を使うようにと、当たり前のコストカットを行いました。しかし、サムソンなど世界の巨人と戦っているエルピーダは、そんな無駄はとっくになくしていました。東京本社の応接室のソファは、広島工場でいらなくなったものを持ってきたそうです。

エルピーダ・ウェイも納得が行く内容(p.84)です。
・会議は1時間以内
・レポートはA4サイズ1枚以内
・メールの返事は24時間以内
・国内出張は全員エコノミーか普通車
・全員を名前で呼び、肩書で呼ばない

坂本さんは、当たり前のことを当たり前に実行できる優秀な経営者だと感じました。問題は、これだけ改善を行っても経営破綻するほど、半導体ビジネスが難しいということです。例えばですが、

・グローバル競争であること
・サムソンのような巨大な競争相手がいること
・市場環境が急変すること

3年後の収益予想はおろか、来年の収益予想を行うことすら難しいと思います。例えエルピーダの経営陣がいかに優秀であったとしても、厳しい結果になった可能性が高いと思います。バフェットは、「優秀と評判な経営者に、難しいと評判な事業を経営させると、だいたいの場合は事業の評判が勝つ」と述べていますが、エルピーダはその典型例だと思いました。

坂本さん、貴重な経験をシェアして頂き、ありがとうございました。
Happy Investing!!

 

サンバイオ株にみる、レバレッジの危険性

サンバイオ株の乱高下

ニュースに事欠かない株式市場ですが、最近のビッグニュースはサンバイオでしょう。脳神経細胞への再生医療を目指すバイオベンチャーです。事業内容はこちら

2018年11月1日に、外傷性脳損傷を対象にした治験で主要項目を達成したと発表(リンク)。外傷性に対して有効であったならば、脳梗塞に対しても有効なのではないかという期待が膨らみ、2018年10月末に4000円だった株価が、2019年1月末に3ヵ月で3倍に急騰します。しかし、2019年1月29日に、慢性期脳梗塞を対象にした治験で主要項目を達成できなかったと発表(リンク)。失望売りが売りを呼び、4日間ストップ安で株価は急落します。

nextir35さん

私がブログをチェックしている個人投資家の一人に、nextir35さんという方がいます(リンク)。ブログの開示を見る限り、圧倒的な運用実績を残してきました。これぞという投資チャンスに大きく賭けることができるようで、保守的な自分の運用結果と比べて羨ましく思ったこともあります。

2015年からの公開リターン(2015201620172018)をまとめると、2018年末までの4年間で40倍に増やしていることになります(税前だと思いますが)。圧倒的な運用成績です。

そのnextir35さん、2019年1月末のポートフォリオはサンバイオのみだったそうです(リンク)。そして、暴落に巻き込まれてしまいます。2月5日は、今後の運用実績開示を取りやめるとの投稿がありました(リンク)。nextir35さんが手がけた信用2階建てという取引は、100円の元本+260円を借金して、360円分の取引ができるそうです。今回のように360円で買った株価が1/3になったとすると、120円が残ります。自分の元手が無くなることはもちろん、140円の借金が残ってしまいます。元本を失うだけにとどまらず、借金が残ってしまうのが信用取引、レバレッジ取引の怖い点です。元手が大きいほど取引金額が大きくなっているので、残る借金額も大きくなってしまいます。

教訓

今回の達人の失敗に、100%が有り得ない投資の世界で、信用取引がいかに危険かを再確認しました。バフェットさん曰く、「レースに勝つためには、まずゴールまでたどり着く必要がある」。

有名なバフェットさん、マンガ―さんですが、初期の頃に、もう一人Rick Guerinというパートナーがいました。バフェットさんが成功したバリュー投資家をまとめた、The Superinvestors of Graham and Doddsville という文章にもPacific Partnersの運用者として登場します。19年間、複利32.9%という素晴らしい運用成績を残しました。そんなGuerinさんが表舞台から姿を消した理由も、信用取引にあったそうです。相場下落で、バークシャーハサウェイ株を安値で売却せざるを得なくなったそうです(リンク)。

私は信用取引を一度もしたことがないですが、今後も絶対にやめておこうと心を新たにしました。

nextir35さんが致命傷を負っていないこと、そして復活を願ってやみません。

Happy Investing!!

オマハ詣で(その4)

UBERの便利さに驚いた

バークシャーの年次総会当日は、会場近くで駐車場を確保できる見通しが立ちません。そこで、人生初めてUBERを利用しました。早朝に捕まるのか、などの心配は全くの杞憂で、配車からものの5分で宿泊先の前に来てくれました。こちらの準備が間に合わないほどのスピードです。事前登録したクレジット決済のため、支払時間もなく到着してから時間ロスもありません。運転手と乗客が双方に評価する仕組みになっているため、運転手の方もとてもフレンドリーでした。

結局、年次総会当日だけでUBERを5回は利用しました。①配車までの時間を心配しなくて良い点、②あらかじめ価格が明らかになっている安心感、③タクシーより安いことが多い価格競争力 によって、既存のタクシーとはくらべものにならない付加価値を実感しました。UBERに慣れてしまうと、待ち時間に対するストレスや価格の不透明感から、タクシーは乗れなくなりますね。

2017年12月の東洋経済の記事によれば、77か国で1日1000万回利用されているとのことです。

日本のタクシー業界の現状

日本では、UBERを使うことはできません。タクシー業界の反対や、規制緩和が進まないことが背景にあるようです。しかし、アメリカで体感してからは、UBERを使わないことのデメリットばかり見えてしまいます。

下がり続けるタクシー需要

出典:http://www.taxi-japan.or.jp/pdf/toukei_chousa/eigyousyuunyuu_suii.pdf

UBER以前に、日本のタクシー需要は右肩下がりです。バブル期に30億人以上あった輸送人員は、15億人を下回っています。

なかなか減らないタクシー供給

出典:http://www.taxi-japan.or.jp/pdf/toukei_chousa/jigyousya_syaryou_suii29.pdf

不思議なことに、需要が半減したにも関わらず、日本のタクシー台数は25万台から23万台に10%程度減っただけです。タクシー業界は明かな供給過多であり、UBER以前に経営が厳しいことが想像できます。私が知る限り、日本のタクシーサービスは20年前から全く変わっていません。つまり、需要が長期間減り続けても新しいサービスを提供して付加価値を上げようとはせず、供給を減らすこともしなければ経営が苦しくなるのは当たり前でしょう。

このような統計を見ると、あまりタクシー業界に同情する気にはなれません。むしろ、現在の経営環境でも事業を続けられるということは、逆に言えば20年前は途方もなく儲かっていたと想像します。

ユーザーのコスト

デメリット① 待ち時間

仕事でタクシーに乗ろうと思っても、なかなか空車を拾えないことがあります。UBERであれば、配車を確認してから外に出るので、路肩での待ち時間はありません。ギリギリまで作業することが可能です。仮に15億人が路肩でタクシーを平均5分間待つとします。75億分=125万時間 です。タクシーは乗って急ぎたい人が多いですから、時給4000円換算で5000億円の経済コストが発生しています(比較のため、タクシー業界の総運賃収入は1.7兆円です)。

デメリット② 決済時間

仕事でタクシーに複数人で乗ると、1人が支払するのを、残り全員が待つという無駄な時間が発生します。スイカ支払で改善されたとは言え、事前登録クレジット決済してくれるUBERには遠く及びません。上記の例から、仮に支払に1分かかっているとすると、1000億円の経済コストと考えられます。

UBERやAirbnbを排除する国

今回のオマハ旅行では、UBERやAirbnbの恩恵をフルに受けることができました。Airbnbを通して普通の民家に泊まることができ、アメリカならではの広い庭を体験できるなど、ホテルにはない貴重な体験でした。バークシャー年次総会の時期はオマハ中のホテルの価格が高騰するわけですが、Airbnbを通して3人で2泊2万円という内容でした。1人1泊3000円。素晴らしいコストパフォーマンスです。

消費者として、選択肢が多いことは豊かさだと思います。ホテルに泊まりたい人は、少し高い料金を払って、良いサービスを受ければいいと思います。しかし、Airbnbのおかげでこれまでは考えられなかった宿泊体験ができるようになりました。UBERも同じです。行政認可されたタクシーに安心する人は、利用すればいいと思います。業界の都合を優先して一律に規制してしまう日本のやり方は、本当に残念です。あるサービスを利用するかどうかは、消費者が決めればいいことです。

Happy Investing!!

オマハ詣で(その3)

オマハは実店舗見学に最適な街

“20 minute city”と呼ばれるオマハは、市内のどこに移動するにも車で20分以内で行けます(空港を含む)。この利便性を利用して、実店舗見学を行いました。

・Walmart
・Home Depot
・Whole Foods
・Chipotle Mexican Grill
・Nebraska Furniture Mart
・Costco
・ショッピングモール

店舗を見ていると、自分の肌間隔がどのように経営指標に反映されているのか、財務状況が知りたくなります。

米国企業も調べるようになった

私はこれまで、バフェットの「理解できる企業に投資せよ」という教えを守ろうとするあまり、日本企業にばかり投資してきました。米国企業の年次報告書を真面目に読んだこともありませんでした。私が米国企業を調べたところで、競争優位性は全くないと感じていたからです。

それが、今回のオマハ詣でのおかげで変わりました。自分に競争優位性があるかどうか、調べることで稼げるチャンスが増えるかはさておき、まずはシンプルにもっと知りたいな、と思えるようになりました。私にとって最大の課題は、ゆっくりでもいいから一定の成長スピードを長期間持続させて、一つのことを続けることだと認識しています。その結果として、長期的な複利効果が発現します。しかし、あまりに稼ごうとする意識が強いと運用がつまらなくなる危険性を感じています。個人投資家で4年も経てば、日本のめぼしい企業については一通り調べています(正しくは、調べた気になっています)。そこで、海外企業の同業企業との比較など、新しい視点を取り入れていきたいと思えるようになりました。

米国企業のROEの高さに驚く

米国企業を調べてすぐに気付くのが、圧倒的なROEの高さです。日本企業のROEが低いと指摘されますが、その差は歴然としています。日本であれば、景気循環を通して継続的にROE10%を上回る企業は稀だと言ってよいと思いますが、米国ではそれがむしろ普通です。日本企業に慣れた目で米国企業を見ると、正直眩しすぎると感じるくらいです。逆に、米国を主力にしている運用者が日本企業を見ると、お眼鏡にかなう会社は少ないだろうと想像します。

日々お世話になっているIT業界の覇者のほとんど(マイクロソフト、アップル、グーグル、フェースブック、アマゾン)がアメリカ発である事実だけを見ても、米国企業を調べる価値があると思います。なぜ、米国企業は強いのか?日本企業とはどこが、どの程度違うのか?このような質問に答えられるようになると、より投資家として成長できると思います。

より広い視点を与えてくれたバークシャーハサウェイの株主総会に感謝で一杯です。また来年も参加したいです。

Happy Investing!!

オマハ詣で(その2)

いよいよ株主総会

5月5日、いよいよ株主総会当日です。CenturyLink Centerは7時開場ということで、6時に到着するように移動しました。既に写真のような長蛇の列・・・美しい朝焼けの中、待ちます。

この時点で良い席を取ることは諦め、2階席に陣取りました。8時半に会社説明動画が始まるまで入場者は増え続け、とうとうバフェットとチャーリーが座る台座の裏手2階まで満席になってしまいました。近隣のホテルにも特設会場が設けられているようで、完全に会場のキャパオーバーです。

8時半から会社説明ビデオが流れます。有名人が多数ボランティア出演している関係上、一般公開されていません。常連さん曰く、鉄板ネタが多いらしいですが、私は初見だったのでとにかく面白かったです。笑って笑って、バフェットさんのサービス精神を垣間見ることができました。その一部、コメディアンConan O’Brien氏による動画はyoutubeにありました。是非大笑いしてください。

9時から総会がスタート(動画はこちら)。バフェット氏による独壇場が始まります。そして話すこと、話すこと、、、、チャーリーも一応横にいるんですが、最初の10分間は一言もしゃべってないんじゃないでしょうか。ときどき口を開いては、皮肉っぽいユーモア満載のチャーリーでしたが、常連さん曰く、「今回のチャーリーはよくしゃべっていた!」そうです。

雑感

(1)まずバフェットとチャーリーの知力・体力に驚きました。昼食を挟んで6時間の質疑応答。何一つ書類を見ることなく、立て板に水のごとくあらゆる質問に答えていきます。私は時差ボケ+狭い椅子に座り、午後2時くらいに疲れ果てていましたが、お二人は全く変わる様子もなく続けていきます。御年87歳と94歳とは信じられません。現実離れしすぎています。こういう経営者に長期投資すると良いことがあるんだな、と納得できました。どんな分野でも、一流のものに触れることの大切さを再確認しました。数多くの企業の有価証券報告書や経営者に触れることで、少しづつ審美眼が磨かれていくと思いたい。私も少しでも近づけるように頑張ります。

(2)バフェットは中国で大変人気があるようで、チェリーコークの缶に似顔絵がのっているほど。その甲斐あってか、中国からの団体が数多く参加していました。質問者も、1/3は中国人だったのではないでしょうか。私は機関投資家時代から、中国は日本より資本主義が浸透していると感じていました。世界最大の共産主義国で、資本主義で最も成功した投資家が大人気とは、世の中面白いですね。

Influential investor Warren Buffett appears on cans of Cherry Coke in China in an image Coca-Cola promises is not an April Fool's prank.

Happy Investing!!

 

 

 

オマハ詣で(その1)

バークシャーの年次総会に参加しました

GW中の5月5日に行われた、バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイの年次総会に参加してきました。バフェット氏は私にとって憧れの存在で、参加したいなと思う事数年、ようやく思い切ることができました。日本の証券会社経由で購入しても参加資格が得られるのか、などと躊躇していたのですが、尾藤さんというフィナンシャル・アドバイザーの方が参加したという記事(こちら)を読んで踏ん切りがつきました。尾藤さん、背中を押して頂きありがとうございました。

日本の証券会社経由で株式を購入すると証券会社名義になるので、直接申込証は届きません。しかし、日本の証券会社が発行する残高証明書を持参すれば、現地で参加証を受け取ることができます。実際に参加してみると手続きは驚くほどスムーズでした。

バフェット氏のシンプル過ぎるライフスタイルに驚く

ネブラスカ州オマハはアメリカの真ん中の穀倉地帯にあります。ネブラスカ州は人口190万人ですが、東のはずれに位置するオマハ(45万人)と州都リンカーン(28万人)に人口の40%ほどが集中しています。この2大都市以外は広大な農業地帯です。実際にオマハから20分ほどドライブしただけでも、地平線が見えるほどでした。オマハには、大学、病院など文化的施設が集まっています。また、Costco、Walmart、Wholefoods、Home Depotなどなど、アメリカ中のチェーンストアがコンパクトに大集合していて、店舗見学には最適でした。「20 minute city」と言われてるそうで、市内のどこへ行っても20分かからないそうです。空港までも20分ということで、東京から比べると羨ましい生活です。オマハで育ったバフェット氏が、ワシントンDCやニューヨークの生活に馴染めずにオマハに戻った理由が少しだけ分かった気がしました。

バフェット氏のシンプルな生活については理解していたつもりですが、これほどまでとは驚きました。まず、1958年に購入した住宅に、60年経った今も住んでいます。本当に普通の家で、隣の人が日曜大工していました。ここに世界有数の大富豪が住んでいるとは絶対に思いません。さらに、自宅オフィスを卒業した1962年にKiewit Plazaに入居してから56年間経った今も、バークシャーの本社は同じ場所にあります。そして、驚くことに、自宅からオフィスまではFarnam Streetという道をまっすぐに運転するだけ。所要時間は5分です。バフェット氏は、この同じ5分通勤を50年以上も続けているのです。


(バフェット氏の自宅前にて)


(バフェット氏のオフィスビルにて。14階だそうです。最上階かもしれないので、眺望には少しだけお金をかけているのか?!)

イチロー選手は朝カレーや、球場入りから出番までの細かいルーチーンで知られていますが、バフェット氏は50年間以上もルーチーンを崩していないのです。「うまく行っているのであれば、変えるな」という言葉の通り、成功パターンを愚直に繰り返し、長期的に高い複利効果を実現することに成功しています。オマハという飾り気のない街の、変化の少ないシンプルな日々生活が、バフェットの成功の一助になっていると強く感じました。適切な環境を構築して、長期間そこに身を置くことの大切さを実感しました。

年次総会そのものも素晴らしいのですが、私にとっては、オマハという場所でのバフェット氏の日々の生活についてを垣間見れたことが一番の収穫でした。次回は、年次総会について書きます。

Happy Investing!!