日本のテニスコートはガラパゴス?人は環境の産物だ

日本選手が世界で戦えない一因

日経新聞に、テニスプレーヤー伊達公子さんのインタビューが出ていました。

その中で、日本のテニスコート環境を、日本選手が世界で戦えない一因として挙げていました。

私はテニスをやらないので詳しく知らなかったのですが、テニスコートには主に5種類(ハード、クレー、砂入り人工芝、芝、カーペット)あるそうです(説明リンク)。

テニスの4大大会では、全豪、全米がハード、全仏がクレー、ウィンブルドンは芝ですが、芝は管理が大変なので、実際に世界レベルで普及しているのは、ハードとクレーということになるようです。

ところが、日本で普及しているのは、「砂入り人工芝コート」だそうです。

その理由は、雨の多い日本で、雨上がり後短時間で利用できるからのようで、稼働率を上げたいテニスコート経営者目線では、理にかなっています。

人工芝コートのメーカーも、住友ゴム、東レ、三菱化成など、日本企業が中心となっており、日本独特のガラパゴス業界が出来上がっています。

日本の気候風土にあった砂入り人工芝コートですが、世界標準のハードやクレーと比べると、球足が遅くなるそうです。

人工芝コートに慣れてしまった選手は、ハードやクレーが一般的な世界では戦いづらいことは想像ができます。

日本選手として活躍している錦織選手は中学生から、大坂選手は4歳からアメリカで練習しています。

考え事

日本の気候に合った砂入り人工芝コートは、日本でのテニス普及に貢献したと思います。

その一方、世界で活躍できる選手を育てる環境としては、確かに不適切なのでしょう。

解決方法は3つ考えられます:①世界基準に合わせて、日本にハードやクレーコートを増やす、②世界基準を日本に合わせてもらい、4大大会の一つを砂入り人工芝コートで行う、③世界基準に合った場所で練習する。

世界で活躍できる選手を育てようと思っている人は一握りですので、①はテニスコート経営者の理解が得られず、②も非現実的。

結局、③のように世界を目指す選手が個人レベルで日本を離れるということになります。

日本は国内市場がそこそこ大きいため日本基準が成立してしまい、例えばですが、砂入り人工芝メーカーも事業として成り立ってしまう。

日本の経済力が大きい証で嬉しい反面、日本基準と世界基準との乖離に苦しむケースが見られます。

そう考えると、アメリカのように自国の基準が世界基準になることが多い国は有利だな、と感じます。

まとめ

テニスコートのように、人は環境から強く影響を受けます。

国内トップを目指すのであれば、砂入り人工芝コートで、世界トップを目指すのであれば、ハードコートで練習した方がよさそうです。

それぞれの目的に合った環境が見つけられますように。

Happy Investing!!

ウォンテッドリー(3991)の本質価値を考えた

ウォンテッドリー(3991)の説明会に参加しました

ウォンテッドリーは、人材採用プラットフォームを提供している会社です。

一般的な転職サイトと違い、会社のビジョンや従業員の声を前面に押し出すことができます。

給与や勤務時間などの「条件」をベースにした採用ではなく、「共感」をベースにした採用を目指しているようです。

成功報酬ではなく、月額課金制を取っており、ストック売上が積みあがる事業モデルになっています。

本質価値を考えた

チャート画像

ウォンテッドリーの時価総額は400億円以上。

2019年8月期の会社予想利益が約2億円なので、PERはざっと200倍です。

PER200倍とだけ聞くと、高いように思いますが、どうなのでしょうか?

2018年8月の売上は22億円でした。

50%成長を続けることができたとして、2019年に33億、2020年に50億、2021年8月に75億円の売上です。

利益率ですが、2019年8月期第1四半期決算説明会資料の9ページ目に、広告宣伝費を除く営業利益率推移が載っています。

今後、ウォンテッドリーが広告なしで成長できたとして、営業利益率40%とします。

75億 x 40% x (1-税率30%)=2021年の利益は21億です。

PER20倍として420億、ちょうど今の時価総額と同じくらいです。

PER20倍が低すぎると感じるかもしれませんが、私は売却時のPERが高いことを期待して投資することはありません。

私の考えでは、現在の株価には、広告投資なしで年率50%成長が続くという、かなり楽観的な状況が織り込まれているように思います。

本質価値分析は、まずはざっくりとやることをお薦めします。

楽観的なシナリオで計算した本質価値に対しても現在の株価が安く見えないときは、投資を見送っていいのではないでしょうか。

ウォンテッドリー社のますますの活躍を祈念しています。

Happy Investing!!

カトリック教会のニュースで考えた

ローマ法王庁#3が、少年への性的虐待で有罪判決を受けた

ペル枢機卿が少年への性的虐待の罪で有罪判決を受けたというニュースが出ていました(BBC日経)。

現在ペル枢機卿はローマ法王庁で3番目の地位にあるということで、有罪を受けるカトリック教会聖職者としては最高位だということです。

Wikipediaによれば、21世紀に入ってから世界中でカトリック聖職者による性的虐待が発覚しているようです。

考え事

これまで隠してこれた不祥事が発覚しているカトリック教会の様子は、昨今の日本企業や政府の不祥事発覚と似たものを感じます。

当人たちにしてみれば、これまで通りの行動を続けているだけなのでしょうが、告発者を抑えきれなくなっているように感じます。

背景には、①個人に対して相対的に組織の力が低下していること、②SNSなどで個人の発信力が強くなっていること があるような気がします。

宗教に対しても、厳しいコンプライアンスの目が向けられ批判の声があがる現状は、良いことだなと思います。

ただし、問題の根絶は難しいと予想します。

不祥事を起こした企業を見ていると、1回の発覚で終わることは少なく、残念ながら氷山の一角であったことの方が多いように思います。

バフェットさん曰く「ゴキブリを一匹見たら、もっとたくさんいると思え」。

この問題を契機に、ますます透明性のある、ガバナンスの効いた組織になりますように。

Happy Investing!!

エルピーダ坂本社長、『不本意な敗戦』を読んで

『不本意な敗戦』を読んで

エルピーダメモリの社長だった、坂本さんの著書を読みました。エルピーダメモリと聞くと、懐かしい気分になります。1999年にNECと日立のDRAM事業を統合することで誕生した、日本の半導体メーカーです。1990年代に世界一だった日本の半導体産業ですが、大きな設備投資によるスケールメリットを追求する段階での競争に敗れ、シェアを大きく落としてしまいます。例えば、エルピーダメモリ誕生時のDRAM市場シェアは17%あったそうですが、2002年には4%台に落ち込んでしまったそうです。たったの3年で、シェアが1/3以下になってしまうとは、凄まじいスピードです。

エルピーダは1999年から3年連続赤字。NEC派や日立派が争って混乱していたようです。そんな火中の栗を拾いに、2003年に坂本さんが社長就任、2005年には黒字回復して株式上場に成功します。その後、2012年に経営破たんに至るまでのストーリーがまとめられています。

ポイント

この本を読んで、2つの点が心に残りました。一つは、坂本さんが優秀な経営者であること。経営破たんから再生したJALとの比較が出てきます(p.49)が、JALは全社員の1/3が希望退職し、これまで空港までタクシーで行っていたパイロットに公共交通機関を使うようにと、当たり前のコストカットを行いました。しかし、サムソンなど世界の巨人と戦っているエルピーダは、そんな無駄はとっくになくしていました。東京本社の応接室のソファは、広島工場でいらなくなったものを持ってきたそうです。

エルピーダ・ウェイも納得が行く内容(p.84)です。
・会議は1時間以内
・レポートはA4サイズ1枚以内
・メールの返事は24時間以内
・国内出張は全員エコノミーか普通車
・全員を名前で呼び、肩書で呼ばない

坂本さんは、当たり前のことを当たり前に実行できる優秀な経営者だと感じました。問題は、これだけ改善を行っても経営破綻するほど、半導体ビジネスが難しいということです。例えばですが、

・グローバル競争であること
・サムソンのような巨大な競争相手がいること
・市場環境が急変すること

3年後の収益予想はおろか、来年の収益予想を行うことすら難しいと思います。例えエルピーダの経営陣がいかに優秀であったとしても、厳しい結果になった可能性が高いと思います。バフェットは、「優秀と評判な経営者に、難しいと評判な事業を経営させると、だいたいの場合は事業の評判が勝つ」と述べていますが、エルピーダはその典型例だと思いました。

坂本さん、貴重な経験をシェアして頂き、ありがとうございました。
Happy Investing!!

 

サンバイオ株にみる、レバレッジの危険性

サンバイオ株の乱高下

ニュースに事欠かない株式市場ですが、最近のビッグニュースはサンバイオでしょう。脳神経細胞への再生医療を目指すバイオベンチャーです。事業内容はこちら

2018年11月1日に、外傷性脳損傷を対象にした治験で主要項目を達成したと発表(リンク)。外傷性に対して有効であったならば、脳梗塞に対しても有効なのではないかという期待が膨らみ、2018年10月末に4000円だった株価が、2019年1月末に3ヵ月で3倍に急騰します。しかし、2019年1月29日に、慢性期脳梗塞を対象にした治験で主要項目を達成できなかったと発表(リンク)。失望売りが売りを呼び、4日間ストップ安で株価は急落します。

nextir35さん

私がブログをチェックしている個人投資家の一人に、nextir35さんという方がいます(リンク)。ブログの開示を見る限り、圧倒的な運用実績を残してきました。これぞという投資チャンスに大きく賭けることができるようで、保守的な自分の運用結果と比べて羨ましく思ったこともあります。

2015年からの公開リターン(2015201620172018)をまとめると、2018年末までの4年間で40倍に増やしていることになります(税前だと思いますが)。圧倒的な運用成績です。

そのnextir35さん、2019年1月末のポートフォリオはサンバイオのみだったそうです(リンク)。そして、暴落に巻き込まれてしまいます。2月5日は、今後の運用実績開示を取りやめるとの投稿がありました(リンク)。nextir35さんが手がけた信用2階建てという取引は、100円の元本+260円を借金して、360円分の取引ができるそうです。今回のように360円で買った株価が1/3になったとすると、120円が残ります。自分の元手が無くなることはもちろん、140円の借金が残ってしまいます。元本を失うだけにとどまらず、借金が残ってしまうのが信用取引、レバレッジ取引の怖い点です。元手が大きいほど取引金額が大きくなっているので、残る借金額も大きくなってしまいます。

教訓

今回の達人の失敗に、100%が有り得ない投資の世界で、信用取引がいかに危険かを再確認しました。バフェットさん曰く、「レースに勝つためには、まずゴールまでたどり着く必要がある」。

有名なバフェットさん、マンガ―さんですが、初期の頃に、もう一人Rick Guerinというパートナーがいました。バフェットさんが成功したバリュー投資家をまとめた、The Superinvestors of Graham and Doddsville という文章にもPacific Partnersの運用者として登場します。19年間、複利32.9%という素晴らしい運用成績を残しました。そんなGuerinさんが表舞台から姿を消した理由も、信用取引にあったそうです。相場下落で、バークシャーハサウェイ株を安値で売却せざるを得なくなったそうです(リンク)。

私は信用取引を一度もしたことがないですが、今後も絶対にやめておこうと心を新たにしました。

nextir35さんが致命傷を負っていないこと、そして復活を願ってやみません。

Happy Investing!!

TTP(徹底的にパクる)

実社会はTTP(徹底的にパクる)してOK!

私たちは、学校生活を通して、テストのカンニングやレポート丸写しを禁じられてきます。その後遺症か、私は実社会に出てからしばらく、自分のオリジナル探しに拘り過ぎていたなと思います。しかし、新社会人がいくら頭をひねったところで、出てくるアイディアはたかが知れている確率が高いと思います。社会人になって15年くらい経ちましたが、今では逆に、TTP(徹底的にパクる)信者になってしまいました。圧倒的な成功例の行動様式を真似することに躊躇がなくなりました。それで圧倒的な成功例の結果に少しでも近づけるのであれば、自分のオリジナリティを捨てることなど安いものだと思えるようになりました。自分もようやく、オリジナリティから来る小さな成功に飽き足らず、オリジナリティを犠牲にしても圧倒的な結果を出したくなったのだと思います。

大事なのは、「都合よく」パクるのではなく、「徹底的に」パクること

2月11日の日経新聞朝刊の12面に、「官民ファンドのインセンティブ」について記事がありました(リンク)。人事でゴタゴタのあった産業革新機構(INCJ)については、私も2018年12月に記事を書きました(リンク)。しかし、インセンティブ面での特徴については、今回の記事で初めて学びました。

この官民ファンドは、政策的にイノベーションを後押ししようと、米国のベンチャーキャピタル(VC)をモデルに作られました。米国のVCは長い歴史の中で試行錯誤を続け、最も効果的と思われる報酬体系などを磨いてきたわけです。その特徴を取り出してみると

1、ファンドは10年期限。期限が来れば、損失も確定する。
2、成功報酬は、投資元本を全て返却してから発生(元本返還原則)し、青天井であること
3、成功報酬にクローバック条項があること。成功報酬が発生した後、別案件で損失が発生した場合、成功報酬を返却すること。

しかし、VCを模倣したはずのINCJのファンドを見てみると、

1、損失確定して国民負担を生じさせてはいけないと、ファンド解散を先延ばしする可能性がある。
2、元本返還原則がない。2018年1月までに、INCJは9093億円を投資し、6875億円を回収したそうです。元本返還原則に照らせば、成功報酬はゼロです。しかし、INCJは個別案件ごとに成功報酬を発生させているそうです。また、報酬が青天井であることも、ありえません。
3、クローバック条項がない。

あなたがINCJの運用者であれば、このインセンティブ設計を前にどのように行動するでしょうか?おそらく、利益は積極的に確定させて成功報酬を稼ぐ一方、含み損を抱えた案件はできるだけ先送りにするのではないでしょうか?これでは、イノベーションとは全く逆の結果になり、ゾンビ企業群を産んでしまいます。米国VCは報酬が青天井であるからこそ、含み益を抱えた投資先の保有を続け、10倍、100倍の利益を享受しようとします。10年期限とクローバック条項があるからこそ、含み損を抱えた案件を上手く処理しようとします。このあたりのインセンティブ設計を理解して真似することなく、イノベーションが起こせると思っているとしたら、甘すぎます。

「ファンド」などという言葉に惑わされず、細かい制度設計まで真似されているか、確認が必要です。

自分が誰かの真似しようとしたときも、都合よく真似していないか、チェックしようと思いました。

Happy Investing!!