NTTドコモの自社株買い実績を評価する

NTTドコモは2016年1月に5000億円の自社株買いを発表しました

自社株買いが増えているときは株の買い時なのかという投稿、企業による自社株買いの実績を調べる大切さを紹介しました。下の写真は、10月19日の日経新聞に出ていた、2016年に入って発表があった主な自社株買いです。最高金額はトヨタ、ソフトバンク、NTTドコモがそれぞれ5000億円です。

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NTTドコモの自社株買い実績を調べてみました

1、有価証券報告書をあつめる

NTTドコモの自社株買い実績を調べてみました。まず、NTTドコモの有価証券報告書を集めます。1999年3月期から2016年3月期まで17年分(1998年10月に上場してから全期)の有価証券報告書(入手方法はこちら)が会社ウェブサイト上で閲覧できる有難い会社です。

2、毎年の発行済み株式数をグラフにする

有報の第一部【企業情報】の2ページ目に、提出会社の経営指標等とあります。この中の発行済株式数の推移を見ていきます。自社株買いをしてその株式を消却すると、発行済株式数が減少していくからです。

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NTTドコモの発行済株式数を見ると、2001年まで株式発行して資金を集め、その後は段階的に自己株買いを行っていることが分かります。1年ごとの変化を見てみると、自社株買いを積極的に行う時期と、そうでない時期があります。

2004- 2009 あり
2010 – 2013 なし
2014 – 2016 あり

3、株価と比較する

株価と比べてみると、株価が安かった2010-2013には自社株買いをせず、より株価が高い時期に買っていることが分かります。株式投資で儲けようと思えば、株価が安い時に買う必要があります。つまり、NTTドコモが自社株買いをしているからと言って、必ずしも株価が安いとは限らなかったのです。

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まとめ

自社株買いは株主還元の姿勢として評価できますが、株価が安いときにやって欲しいものです。

有価証券報告書の入手方法

有価証券報告書とは何か?

有価証券報告書(通称、有報)は、金融商品取引法で1年ごとの作成が義務付けられた企業内容の外部への開示資料です。法的に定められた資料なので、虚偽の記載があれば裁判沙汰になります。会社も気を使って作ってくる一番信頼できる情報源であり、企業分析の基礎となるものです。

3つの入手経路

私が使っている有報の入手経路は次の3つです。

1、会社ウェブサイト

IR情報として、何年分もの有報をダウンロードできるようにしてくれている親切な企業もあれば、全くみあたらない不親切な企業もあります。有報の会社ウェブサイト上での掲載は義務付けられていないのでしょうが、このようなところにも企業の情報開示への姿勢を感じることができます。

2、EDINET

EDINETは金融庁の情報開示システムです。届け出られたすべての書類を閲覧することができます。社名を入力し、有価証券報告書、過去3年分と選択します。問題は、過去3年分しか閲覧できないことです。

3、株主プロ

株主プロは有報データマイニング社が管理するウェブサイトで、上場企業の開示情報をまとめてくれた大変便利なものです。直近の資料が少し抜けているところがあります。古い有報を株主プロで、新しいものを会社ウェブサイトやEDINETで探せば、合わせて10年分の有報が読めます。

何年分の有価証券報告書を読むべきか?

私が企業分析する際には、景気サイクルより長い期間について過去の実績を検証するように心がけています。一般的な景気サイクルが5~8年であることを考え、10年分の有報を読むことを目標にしています。市場の構造変化を理解したい場合には、さらに長期にわたって有報を読む必要があるかもしれませんが、大きな図書館に出向く以外の入手方法が分かりません。