2026年2月20日の日経新聞のニュース(リンク)で、国際決済銀行(BIS)が発表した最新の2026年1月時点での実質実効為替レートで、日本円が過去最低水準を更新したと報じられました。
実質実効為替レートという難しそうな言葉だからか一般人受けが悪く、一般メディアでは相変わらず名目ドル円レートが代表的な為替レートとして扱われています。しかし、名目為替レートでは国ごとの物価水準の変化が加味されないから、一番大切な購買力の変化を完全に捉え切れないことが問題だと思っています。

日本で普段目にするチャートは円高方向を上に見せていますが、このチャートは逆にドル主体で書かれていて、チャートの下ほど円高、上ほど円安であることに注意してください。
https://www.macrotrends.net/datasets/2550/dollar-yen-exchange-rate-historical-chart

日本経済新聞
上にあるのは名目ドル円チャートと、実質実効為替レートのチャートです。戦後から1971年までは1ドル360円という固定相場制でしたが、1971年のニクソンショックを経て、1973年から変動相場制に移行します。名目上は2012年が過去最高の円高局面と思われていますが、実質レートで見れば、既に1995年から10年以上円安になっていました。1995年も2012年も名目レートでは同じ80円。しかし、17年間の間に日本は物価があがらず、アメリカのインフレ率が2%だったとすると、17年で物価は40%上がります。同じ1円から両替できるドルの量は不変ながら、それで買えるものは70%になっているから、実質実効為替レート(これは米ドル以外の通貨も貿易量に応じて含めています)は190から125まで65%の水準になっているのです。
為替レートの議論をするときには、通貨が実際にモノを買うためにあるという当たり前のことを考慮して、名目為替レートと物価変動を含めた実質為替レートで議論するべきです。それで見ると、現在の日本円は30年前に比べて1/3の購買力しかない。毎年3.5%の小さな差が30年も積み重なってとてつもなく大きな差になってしまいました。複利の力の大きさに驚愕するとともに、日々に小さなプラスを積み重ねる重要性を再認識します。また、メディアでも名目為替レートではなく実質為替レートを使って話をして、円安水準が名目チャートで見るよりも圧倒的に悪い状況であることを多くの方に正しく認識して危機感を持って欲しいです。政策についても、手取りを増やすとかそういう小手先の話も良いのですが、より大事な本質的な話としては、「なぜ30年間も実質為替レートが円安に振れ続けてきて、どうすれば反転させられるのか」という議論が聞きたいです。
原因は複合的でしょうが、私は、補助金や金利水準を低く維持して収益性の低い企業を甘やかして温存しすぎたからだと思っています。結果として目先の企業倒産などは抑えられたのでしょうが、長期的には企業の新陳代謝が滞り、いわゆるゾンビ企業が低賃金をベースに生き残ってしまいました。経済を含めてほぼすべての分野で短期と長期はトレードオフの関係にあります。目先の楽さを追求し続けることにならないか、心配しています。



















