ノルウェーのFykseという小さな村の住人と話していたとき、自宅の改装を行っていて、ドイツ人職人を雇っていると聞きました。わざわざドイツから職人を呼んだのかと思ったら、「2人の職人とフェリーで知り合った」とか、「彼らはスマホを持ってはいけない」とか、「2年間の武者修行の間は故郷には帰れない」と聞いて、全く知らない世界に興味を持ちました。
あとで調べてみると、ドイツには「ヴァルツ」という旅修行制度があるそうです。ゲゼレという職人になったあと、3年と1日の旅修行を行うことで、マイスター(親方)に昇格できる仕組みで、800年以上の歴史があるそうです。
決まった仕事着を着ること(ベストにある8つのボタンは8時間労働、ジャケットの6つのボタンは週6日労働を意味する)、故郷から50キロ以内に立ち入り禁止、スマホ・パソコンの所持禁止(借りて使うことはOK)などなど、他人と交流して技術・人間性を高める工夫がなされています。今では旅修行を行う職人は全体の1%しかいないそうですが、私はこうした何百年も続く伝統が大好きです。中世から歴史の荒波を乗り越えてなお残っている制度には何か本質的な意味・価値があると思うからです。こうした伝統に身を預けること、伝統の一部になることには帰属意識と安心感があるのだろうなと憧れを感じます。
こちらのブログに、日本で旅修行していたドイツ大工職人との交流がまとめてありました。ご参考まで。