長期業績レポート(花王、資生堂、日東電工)

長期業績レポート

4452 花王
4911 資生堂
6988 日東電工

日経225採用企業の長期業績レポート一覧

メモ

花王

2016年12月まで27年連続増配を予定しており、これは日本の最長記録です。長期にわたり増配を続けるには利益成長が必要です。つまり、花王の増配記録は日用品ブランド事業の安定性の表れです。20年後も人は清潔でありたいという欲求を持ち続けるでしょう。さらに、そのための手法が劇的に変わるとは考えにくいです。おそらくは風呂に入り続け、歯を磨き続けるのでしょう。

米国では、American States Waterという水道・インフラ企業が62年連続増配という最長記録を持っているようです。日用品ブランドを展開する企業では、Procter & Gambleが60年、Johnson & Johnsonが54年とやはり長期間の増配を達成しています。

参考リンク:日本の連続増配ランキング)
参考リンク:米国の連続増配ランキング)

資生堂

2014年から魚谷さんが社長を務めています。以前は日本コカ・コーラ社長を務めていた方です。コカ・コーラが強力なブランド力を持つ製品を売る優良事業であるのに対して、デパートの化粧品コーナーに行けば分かるように、化粧品は多くのブランドであふれかえっています。そのため、多くの販促費を必要とする競争の厳しい事業です。

ウォーレン・バフェット氏は、「優秀な経営者が難しい事業を経営した場合、たいていは事業の難しさが上回る」と述べています。魚谷さんはまさにこのケースに当てはまっているような気がして、注目しています。

Happy Investing!!

長期業績レポート(三菱ケミカル、宇部興産、日本化薬)

長期業績レポート

4188 三菱ケミカル
4208 宇部興産
4272 日本化薬

日経225採用企業の長期業績レポート一覧

メモ

日経225採用企業のうち、何社が化学に分類されているでしょうか?答えは17社です。電気機器に分類される29社に次いで多いのです。そんなに多いのか、と意外な気がします。

電気機器に分類される企業は、パナソニックや日立、ソニー、東芝など、個人向け製品を作っていることから日常的に名前を耳にすることが多いです。しかし、化学メーカーは日常生活では影が薄い存在です。社名を聞いても何をしているのかイメージが湧かず、事業内容を読んでもカタカナの化学製品名が並んでおり、理解を深めるにはハードルの高い分野だと感じます。

一例として、三菱ケミカルの2016年3月期有価証券報告書より、【事業の内容】を抜粋してみました。ちょっとカタカナ多すぎませんかね。

ウォーレン・バフェット氏は常々、”Stay within your circle of competence” 「理解できる領域から出るな」とアドバイスしています。私にとって化学会社は、まさに理解できない会社の典型例です。逆に多くの人になじみがないからこそ、化学業界に精通する人にとっては投資チャンスが溢れていように見えるのかもしれません。

Happy Investing!!

長期業績レポート(東海カーボン)

長期業績レポート

5301 東海カーボン

日経225採用企業の長期業績レポート一覧

メモ

東海カーボンの2大事業は、

(1)カーボンブラック:主にタイヤの添加剤として使用
(2)黒鉛電極:電炉での粗鋼生産に使用

カーボンブラック事業は中国次第

カーボンブラックの国内消費量は1990年から年80万トンで頭打ちになっています。国内生産が約3/4、輸入量が約1/4です。

東海カーボンの有価証券報告書を読むと、コモディティー製品を扱うグローバルな事業が、中国の過剰生産にさらされるとどうなるかをよく理解することができます。以下、2015年12月期有価証券報告書からの抜粋です。

中国で過剰生産 → 輸出 → 日本市場の需給バランスが崩れる → 東海カーボンは価格決定力を失う → 減益

ウィキペディアによると、2012年時点で中国が世界のカーボンブラック生産量の約40%を占めていました。現在はさらにシェアが高まっているでしょう。東海カーボンが日本トップシェアと言ったところで、そもそも日本の世界シェアが5%しかありません。このようなグローバル事業において国内シェアを語る意味はなく、要は中国での需給次第で国際価格が決まっていきます。

では、私に中国の国内需給が見通せるのか?自信はありません。中国が不況に陥り、設備廃棄のニュースが世間を賑わすようなことがあれば、買い時なのかもしれません。

地理的な参入障壁のあるローカル事業を探そう

ここ数日の長期業績レポートでは、ガラス業界、セメント業界、カーボンブラック業界を取り上げました。グローバルに製品が動くガラス業界とカーボンブラック業界は、中国の過剰生産を受けて価格決定力を失い、厳しい経営環境です。一方のセメント業界は、輸入量がほぼゼロという対照的な業界です。輸入量ゼロという状況が今後も継続するための条件については理解する必要がありますが、経営者にとってどちらが経営しやすい事業かは一目瞭然ですし、そういう当たり前な気づきに応じて投資していけばいいのではないでしょうか。

Happy Investing!!

長期業績レポート(住友大阪セメント、太平洋セメント)

長期業績レポート

5232 住友大阪セメント
5233 太平洋セメント

メモ

日本のセメント業界には太平洋セメント、宇部三菱セメント(非上場)、住友大阪セメントの大手3社があり、太平洋セメントのシェア30%を筆頭に、上位3社でシェア80%を占める寡占化の進んだ業界です。

出典:決算発表資料

セメントはコンクリートなどの原材料になるので、需要が建設投資とリンクしていることが想像できます。統計を見てみると、予想通りに需要は1990年度バブルの8600万トンをピークに、2015年度には4300万トンまで半減しています。バブルが終わってもしばらくは熱狂が忘れらずに増産を続けてしまい、生産量がピークを迎えるのは1996年度です。このころはセメント会社にとって厳しい経営環境だったことでしょう。各社の社史をみていると、この頃に大型合併が起きています。需要が半減する中、生産設備も統廃合が進んでいる業界だという印象を受けます。

出典:セメント協会 http://www.jcassoc.or.jp/cement/1jpn/jc5.html

セメントの製品特性

1、原料が国内調達できる(出典:セメント協会
2、輸入量が少ない >なぜ?
3、国内で需給バランスしないから、仕方なく輸出している >大きな輸出先は、シンガポールとオセアニア

セメント輸出先 (出典:セメント協会)

昨日紹介したガラス業界と比較して欲しい(関連投稿)。ガラス業界は次のような負の連鎖に悩んでいる。

中国企業が増産 > 中国国内の需給バランスが崩れる > 中国企業が操業度を維持するために輸出を始める > 世界中のガラス価格が低下 > 世界中のガラスメーカーの収益を圧迫

セメント業界も、中国の建築ラッシュが一巡した段階で中国産セメントのダンピングが始まりそうなものだが、現実には輸入はほぼない。次のような疑問に納得できる答えを得ることができ、セメントを統廃合が続くローカル産業と捉えることができれば、投資チャンスは訪れるのかもしれないなと思った。

過当競争を続けた日本国内のセメント価格が国際的に安いからなのか?
どこから買っても一緒と思うセメントにも商品差違があるのか?例えば、日本での建築基準法クリアにはある品質以上のセメントが必要とか。

答えを知っている方、是非教えてください!

Happy Investing!!

数値目標の功罪(ポジション戦略再考)

関連投稿】ポジション戦略を改善しました

数値目標に縛られて、年初に大失敗

数値目標がないことによる問題点

私は2016年半ばより、「年率26%で30年複利運用して資産を1000倍にする」という、尊敬するバリュー投資家であるMohnish Pabraiの目標を真似して運用に取り組んできました。

それまでは、運用収益で生活していければいいというくらいの考えでした。農業や大工など自給自足系の取り組みを通して生活コストを下げる技術を身に着けることで、生活に必要な運用リターンも低下させることを基本戦略として年率5%も出れば十分と思っていました。しかし、この考え方では自分自身の成長が感じにくいために、投資に飽きてしまうという致命的な欠点がありました。

数値目標の良いところ

「年率26%で30年複利運用して資産を1000倍にする」という数値目標を導入したことで、投資に規律が生まれました。年率26%を達成するには、3年で2倍になる投資をしなくてはなりません。そうしたチャンスは稀なので、見つけたときには大きく投資しなくてはいけません。数値目標を導入したことで、ポジションルールや売買ルールを設定することができ、より感情を排した投資ができるようになりました。

単年度の運用結果は運次第のところが大きいですが、2016年末のトランプラリーの追い風もあり、年率25.9%のリターンを達成できました。

数値目標の悪いところ

2016年にたまたまうまくいってしまったので、「油断するなよ」と自分に言い聞かせていましたが、やはり2017年初に失敗してしまいました。新しい年に入ると、投資家は昨年どんなに良かろうが悪かろうが、年率0%というスタート地点に戻されてしまいます。私にとって年率26%は高い目標であり、勝手にそびえたつ山を前にするように感じてしまっていました。「また今年も登れるだろうか?達成できるだろうか?」という焦りが無意識のうちに生まれていました。稼がなくてはいけないと思っている時点で、精神的には投資に負ける要素がてんこ盛りになっていました。

2016年末に、エムビーエス(1401)という建造物やインフラ補修を行う企業を見つけました。競争力のある製品群に加えて全国への営業所展開により、大きな参入障壁と成長余地があると評価しました。私はエムビーエスの本質価値を一株10000円と試算し、2016年中に投資元本の10%を平均取得価格3000円で購入しました。2017年に入りエムビーエスの株価がジリジリと高くなります。すると、本来は喜ぶべきところが、不思議なことに逆に焦りを感じてしまいました。「チャンスに対して十分な資金を投じたのか?」という焦りです。3倍以上の上値余地があると評価していたのに、投資元本の10%しか買っていないことが原因でした。2016年末のトランプラリーによって、自分が価値算出できると感じていた企業の株価は軒並み上昇してしまいました。「エムビーエスのようなチャンスに大きく投資できないと、年率26%はとても達成できないぞ」という声が心の中で大きくなってしまいました。

私の取引ルールには、以下のようなルールがあります。

(1)取引時間中(9時から15時)は株価をみない
(2)取引時間中は注文発注しない
(3)買い注文は、昨日終値以下でしか発注しない

全て、2016年の高リターンに寄与したルールでした。しかし、エムビーエスが上方修正を発表して株価は2日連続ストップ高を付けたことで私の理性は完全に吹っ飛んでしまい、上記の取引ルールを全て破ってしまいます。1月6日には当ブログで、より集中投資を行うべくポジション戦略の変更を宣言してしまいます(投稿へのリンク)。この投稿は理性的に書いているつもりでしたが、振り返ると稼ぎたくて株を買いたい自分の行動を正当化しているだけだったようです。典型的な高値掴み(PTSで5400円、6300円で購入)をしてしまった私は、上昇力を失って下がる株価を見てようやく現実に戻されました。勝手に自分で自分を追い込んでしまい、機能していたルールを変更した挙句の失敗となりました。この痛みを忘れず、次に生かしたいです。

エムビーエス(1401)の株価、Kabutan.jp

バランスの取れた数値目標を探して

年率26%という目標は、Mohnish PabraiやWarren Buffettの実績から導いた数字です。今回の経験で、私にとっては過度な目標であったことが実感できました。野球に例えるならば、昨年4割打ってしまったバッターの気分でしょうか。新シーズンは0割から始まるわけで、「今年は打てるだろうか?打てなかったら?」などと考えてしまったのです。そこで、「2割9分打てればいいや」と思えれば、随分と気が楽になることでしょう。私にとって、「過度に緊張せず、かと言って努力しなくては到達できない」ラインはどの程度なのか考えてみました。

1年に見つか投資先は2社か3社。私にとって現実的な目標は年率16%

これまで3年間個人投資家としてやってきた中で、これはと思える投資先は1年に2,3社みつかるというのが実感です。投資期間は3年を前提とします。さらに、売却ルールとして本質価値の90%で売却することとします。例えば200の価値があると思う企業を100で購入した場合、180(200 x 90%)で売却して80の利益(180 – 100)に20%の税金がかかるので、税後リターンは64となります。64を3年で割ると、年換算で21.3の利益となります。

私は2倍の上値余地がある銘柄に対してポートフォリオの75%を投資し、かつ7銘柄に投資しようと考えています。1銘柄に10%は投資したいが、75% / 6銘柄 = 12.5%は高いと感じるからです。この辺りに科学的な根拠はありません。肌間隔としてそう思うということです。このポジション戦略であれば、ポートフォリオの75%を上値余地2倍で7銘柄に投資して、想定リターンは年率16%です。

3倍以上の上値余地のある銘柄が見つかるときは1銘柄あたりのポジション量を増やすことでリターンが向上するかもしれませんし、逆に間違いもあるでしょう。この2つがお互いに相殺されるとして、税金効果を含めて考えたときの現実的な目標は年率16%だと思っています。この目標であれば、年に2,3社自信を持てる会社を探せばよいと思えて気が楽です。同時に、根気強く探さないと魅力的な投資対象が見つからないことも経験上分かっているので、怠けすぎる危険も抑えられます。

年率26%の設定によって、間違いが許されない状況に自分を追い込んでしまっていた

同じように年率26%を売却ルールや税効果込みで考えてみます。すると、下のように、上値余地3倍、4倍、5倍、6倍の投資先を見つけることができることはもちろん、間違いを一切しないという前提で、ようやく年率26%が達成できることが分かります。私にはプレッシャーが強すぎます。投資に間違いが付き物なので、間違えられないと思ってしまうことで逆に自分の行動が制約されてしまいます。このように冷静に数字をシミュレーションしていれば、過度に高い目標を掲げて自分にプレッシャーをかけすぎ、結果として大きく間違えるという事を避けられたかもしれません。

自分のリスク許容度に向き合おう

人間はみなリスク許容度が違いますし、大人になってから修正するのは難しいと思います。慎重な人もいれば、大きな不確実性に動じない人もいます。どちら良いということはなく、大切なことは自分のリスク許容度を受け入れ、それにあった投資戦略やポジション戦略を採用することです。私は他者のポジション戦略を真似してきましたが、中には自分のリスク許容度に合わないものが含まれていましたので、今回のように失敗しては調整を重ねています。

自分の許容度以上にリスクを取ると、短期的には大きく稼げるかもしれませんが、長期的にはダメージが高いように思います。何より精神的に疲れてしまい、投資を続けられない危険性もあります。投資で何より優先すべきは生き残ることです。是非、自分自身のリスク許容度に適合したポジション戦略を採用してください。

Happy Investing!!

長期業績レポート(旭硝子、日本板硝子、日本電気硝子)

長期業績レポート

5201 旭硝子
5202 日本板硝子
5214 日本電気硝子

メモ

過去15年を見ると、ガラス業界は厳しい経営環境であった。2006年に売上規模が2倍もあるピルキントン社を大型買収して経営が迷走した日本板硝子の過去14年の株式リターンは年率-10%以下と目を覆いたくなるような状況になっている(100円投資したら20円になっていた・・・)。比較的地道に経営してきたと思われる旭硝子と日本電気硝子の株式リターンも年率1%程度しかない。

日本企業だけが鳴かず飛ばずだったかというと、そういうことではない。ガラスの世界トップ企業である米国のCorning社の株価を見ても、ITバブル以降は横ばいが続いている。

Corning社の株価(Google Finance)

なぜガラス業界はかくも悲惨な状況なのか?

経済産業省のレポートを見ると、ガラス企業の売上は板ガラス(建築用)と自動車ガラスに大別できる。

板ガラスは商品レベルでの差別性が少ない上に、世界最大手の旭硝子ですらシェアが7%しかない。ガラス製品は既に普及して需要が大幅に増えることは考えにくい成熟産業にも関わらず、コスト競争力を武器に中国企業が増産してしまい、需給バランスを破壊してくる。その結果、価格で競争するしかなくなる。統計をみても、中国からの輸出が爆発的に伸び、日本からの平均出荷価格が2004年から2014年から20%ほど下落している。経営者ならどうするか?現状維持すれば、価格が下落しただけ利益が削られる。最新鋭の設備を導入してコスト競争に参加すれば、ますますコスト下落に拍車をかけてしまう。なかなかに難しいかじ取りだ。

自動車ガラスにしても、購入企業が限られているから価格決定権は握られている。

ガラス業界は難しいことだらけです。例をあげれば、

(1)価格決定権がない
(2)寡占化が進んでいない
(3)大きな設備投資が必要
(4)中国勢からの低価格競争にさらされる
(5)商品で差別化できない

ウォーレン・バフェットが、「優秀な経営者が難しい事業に取り組んだとしても、たいていの場合は事業の特性が持続する」と言っている通りです。このような難しい業界にある企業は、仮に資産ベースで割安に見えても投資はしない方がいいような気がします。

Happy Investing!!

長期業績レポート(横浜ゴム、ブリヂストン)

長期業績レポート

5101 横浜ゴム
5108 ブリヂストン

メモ

日本にはタイヤメーカーが3社あり、全て上場しています。売上規模で並べると以下のようになります。このうち2社を選ぶとして、1位と3位を選ぶあたりが日経平均の銘柄採用方法の良くわからないところです。

1位 3.8兆  ブリヂストン(世界最大の売上)
2位 8500億 住友ゴム(ダンロップ)
3位 6300億 横浜ゴム

タイヤメーカーの長期業績(特にEPS)を見ると、山谷がはっきりとした典型的な景気循環産業であることが分かります。例えば自動車用タイヤには新車需要と更新需要がありますが、不況時には新車需要が落ち込みます。しかし、更新需要によって一定の工場稼働率を維持できるので、新車需要の比重が高い自動車メーカーよりも収益が安定していることが想像できます。自動車各社の長期業績レポートと比べてみてください。

7201 日産自動車
7202 いすゞ自動車
7203 トヨタ自動車
7205 日野自動車
7211 三菱自動車
7261 マツダ
7267 ホンダ
7269 スズキ
7270 富士重工業

景気循環産業であるタイヤメーカーの収益水準を見る限り、現在は景気のピークから下降局面に入ったような印象を受けます。果たしてどうなるでしょうか。

長期業績レポート(昭和シェル石油、JXホールディングス)

長期業績レポート

5002 昭和シェル石油
5020 JXホールディングス

メモ

日本の石油元売りは5社あり、全て上場しています。現代生活の基盤といえるガソリンをはじめとする商品を扱っているので市場規模は大きく、各社とも兆円規模の売上があります。

1位 売上8.7兆円 JXホールディングス 
2位 売上3.5兆円 出光興産      
3位 売上2.6兆円 東燃ゼネラル石油
4位 売上2.2兆円 コスモエネルギー
5位 売上2.2兆円 昭和シェル石油

まず不思議なのが、石油セクターから2社が日経平均に採用されているわけですが、なぜ5位の昭和シェルなのかということです。私は分からないので、日経新聞社に聞いてください。

次に気付くのは、2位の出光以下は売上規模が近いということです。石油元売り事業は、製油所に大きな設備投資を行うことが必要です。日本国内の石油製品需要は既に減少に転じていることから余剰設備の廃棄が必要です。各社とも操業度を落としたくないので、仮にA社とB社の製油所がともに50%で操業しているくらいなら、合併したうえで2つある製油所の一つを閉め、もう一つを100%操業するという経営判断になります。

こうした背景で、出光+昭和シェル、JXホールディングス+東燃ゼネラル と2つの大きな合併話が進んでいます。しかし、出光の創業家が合併に反対(株式を約30%保有)していて先行き不透明です。合併が長引けば長引くほど各社が我慢比べによって体力を奪われていくという状況が見えます。

石油業界においては経営統合してスリム化する以外にどういう経営方針があるのか、2016年8月に創業家の出光昭介名誉会長の手記が公開されました(リンク)。私なりにまとめると、「出光は、社員を家族のように思い経営してきた。厳しい経営環境の中、自分の社員の面倒を見るだけでも大変なのに、他社と合併した上でその社員まで面倒を見切れないよ」ということでしょうか。戦後も人員整理をしなかったという文面から、リストラをしたくないという意思は強いようです。

家族の論理 vs 資本の論理に目が離せません。

Happy Investing!!

長期的に高い運用実績を残している投資信託の保有銘柄アップデート

クローニングのすすめ

日本に4000社、世界に4万社以上ある上場企業の海から、どうすれば効率的に投資先をみつけることができるのでしょうか?

有望な投資先を探す方法の一つに、クローニングがあります。過去によい運用成績を残している投資家からアイディアを拝借してしまおうという考えです。

詳細は、以下の投稿をご覧ください。

関連投稿】長期的に高い運用実績を残している投資家の真似をしよう

投資信託の月次レポートを活用しよう

投資信託の多くは毎月、保有している上位10銘柄についての情報を開示しています。資産の多くを投資しているということは自信の表れです。

投資信託の保有銘柄を研究することで、プロ投資家が企業分析した結果を無料で利用させて頂くことができるのです。投資先アイディアの発掘先として、これを利用しない手はありません。

ファンドのリターンを調べるには、モーニングスター

そもそもどのファンドの真似をすべきでしょうか?ファンドのリターンを調べるには、モーニングスターがお薦めです。このリンクからファンドランキングに進んでください。そして、分類は国内株式型、期間は10年間を選んでください。下のようなランキングが出てきます。

『SBI 中小型割安成長株ファンド ジェイリバイブ』の月次レポートをみてみよう

モーニングスターによる10年リターンで最上位に来ている『SBI 中小型株割安成長株ファンド ジェイリバイブ』の月次レポートをみてみましょう。

このリンクから、ファンドの説明ページに進んでください。下のようになります。

次に、「目論見書・定期レポート等」というタブをクリックすると、以下のようになります。

最後に、一番下の「週報」をクリックして開いてください。ほとんどの投資信託は月次で運用レポートを発行します。SBIアセットマネジメントは週次で運用レポートを出している珍しいケースです。週報の中に、下のような組入れ上位銘柄についての記載があります。

これこそ、日本で過去10年の運用成績トップの投資信託運用者が、今最も投資妙味を感じている10社なのです。優秀な投資家のお墨付きをもらった企業群ですので、企業調査を始める叩き台として非常に有効だと思いませんか?

釈迦に説法とは思いますが、これらの銘柄を盲目的に購入しないように注意してください。個別企業に投資する場合はしっかりと自分で納得できるまで調べることを忘れないでください。

ニュースレターで投資信託10本の銘柄データをお届けします

Nagatomo Investmentsでは、国内株式の投資信託10本について定期的に保有銘柄データをアップデートしています。直近ではこのようなファイルになります –> 2017.01.12 blog fund cloning

ニュースレターを通じて定期的にアップデートしたデータを送付していきますので、トップページから登録をお願いします。

Happy Investing!!

ポジション戦略を改善しました

投資対象が見つかった次は、投資額を決める必要がある

事業内容が理解でき、本質的価値の算定に自信を持てる会社が見つかったとします。さらに、現在市場で取引されている価格は本質価値の半値以下、つまり100%以上の上値余地が見込まれます。私の投資基準を満たしていますが、ポートフォリオ全体を100として、いくら買うべきでしょうか?

投資額が小さすぎては、株価が大幅に上昇してもポートフォリオ全体への貢献は限定的です。逆に投資額が大きすぎると、本質価値の算出が間違っていて損失を出した場合の被害が大きくなってしまいます。

みなさんは、投資額をどのように決めていますか?

2016年の投資額の決め方

Mohnish Pabraiの投資額の決め方

これまでも紹介しているように、私はMohnish Pabraiというバリュー投資家の投資戦略を真似しています。自分より優れた人の方法を真似することで、結果まで真似してしまおうと考えています。

上記のYoutube動画を4:04まで飛ばすと、下のポジション戦略が出てきます。

リーマンショック前のMohnish Pabraiはポートフォリオを10分割して、1社につき10%づつ投資していたそうです。しかし、リーマンショックのように大幅な株価下落局面では、安くて買いたいのに買付余力がない事態に直面してしまいます。その教訓から、上値余地に応じてポートフォリオの投資額を決定する方式に変更しました。

私もこのポジション戦略を採用していますが、上値余地が100%以上の企業にポートフォリオの75%を投資するようには教えてくれても、何社に投資するべきかは教えてくれません。

10社への投資は分散しすぎ

リーマンショック前のMohnish Pabraiが10社に投資していたという事から、私も最低10社に分散しようと考えました。まとめると、以下のようになります。ポートフォリオの75%は上値余地が100%あると思う会社へ投資します。10社へ分散するので、1社あたり7.5%を投資することになります。

2016年が終わってみると、私は元本の50%程度しか投資できませんでした。7.5%を満額購入できた会社は4社しかありませんでした。運よく投資した会社の株価が平均50%上昇したのでポートフォリオ全体としての運用成績は+25%以上を記録できましたが、上値余地100%以上あると思える投資対象を10社も見つけられないよ、というのが率直な感想です。

私は現金比率を下げたいがために、躍起になって新しい投資対象を探していましたし、買いたいという思いが強すぎて分析が甘くなるという悪影響の危険性を感じました。そもそも問題の根源は、10社へ均等に分散すると決めたことにあります。この決定は間違っていたと思います。

2017年の投資額の決め方

成功している投資家の教えは、最大5社、最低3社

投資額について多くの投資家が語っています。Warren Buffettは、「ポートフォリオの80%を5つの会社に投資する。最大の投資額は25%にする」と語っています。Charlie Mungerは「3社で十分」とも言っています。

13-Fで報告されたMohnish Pabraiの2016年9月末のポートフォリオを見てみます。詳細な現金比率は分からないのですが、自信ある投資アイディアにはポートフォリオの20%を投資していると考えられます。このことからも、私が2016年に採用していた1社7.5%はあまりに低かったと言わざるを得ません。自信がある投資先に十分な投資額を充てなかったことで、機会損失を生んでしまったことになります。

投資先を最大5社に絞ることにします

2017年からの投資額は以下の通りです。

上値余地2倍の会社にポートフォリオの75%を充てることは変わりませんが、投資先は最大5社とします。つまり、最低でも1社につきポートフォリオの15%を投資します。また、最低限の分散を行うために投資先は最低3社とします。Mohnish Pabrai、Warren Buffett、Charlie Mungerというスーパーバリュー投資家たちのポジション取りの英知を結集したポジション戦略だと悦に入ってます。

ポートフォリオの15%を投資することが怖いと思う企業は、おそらく少額でも保有すべきではありません。大量に買うほど自信のある投資先を厳選することが、よりよい投資リターンにつながると実感しています。

みなさんは、どのようなポジション戦略を採用しますか?

Happy Investing!!