長期業績レポート(凸版印刷、大日本印刷)

長期業績レポート

7911 凸版印刷
7912 大日本印刷

日経225採用企業の長期業績レポート一覧

ひとくちメモ

本日取り上げた印刷会社大手の2社は、どちらも過去15年間投資すると損をしてしまいました。印刷業界全体が縮小傾向なので、大手はその影響から逃れることが難しいことが良くわかります。小規模な企業であれば、素早く方向転換することができるかもしれませんが、大手はなかなかそうはいきません。温暖な気候に適応しすぎで環境変化に負けてしまった大きな恐竜と、生き残った小さな哺乳類の話を思い出します。

私が尊敬する個人投資家の一人である角山さんが、「砂漠に咲く一輪の花」と称して、衰退産業の勝ち組企業を取り上げています。例えば、印刷業界でも、医療品のパッケージ印刷に特化した朝日印刷のようなキラリと光る企業があります。衰退産業で優れたビジネスモデルを提示することができれば、競争相手が弱いので圧勝する可能性があります。業界が悪いから、、、と先入観で決めつけることなく、事業単位でしっかりと評価していきたいです。

Happy Investing!!

TECH::CAMPを終えて

私は、個人投資家と並行して副業を行い、安定収入源を確保することにしています。4月から起業の手伝いをしている一環として、プログラミング教室「TECH::CAMP」に通い、ウェブサービスのプロトタイプを作成することができました。

副業する理由

私は過去3年、個人投資家として生計を維持できるだけの収益を上げています。しかし、それは結果論でしかありません。毎年のように株式投資で稼げる保証はありませんし、逆に毎年稼がなくてはいけないと思ってしまうことは危険な発想だと思っています。私は株式現物買いしか行いません。つまり、株式投資で稼ぐためには、まず株式を買わなくては始まらないからです。株式市場は、熱狂と悲観の間を揺れ動く人間心理を映しています。企業の適正価格を大きく超える価格で株式が取引されていることもあれば、逆に大幅に安く取引されていることもあります。そのような現実がありながら、常に株式投資で稼がなくてはならないから、市場の高い安いに関わらず、常に株式市場に投資しなくてはならないと思ってしまうことには問題が多いと思います。

割高だと思うのであれば現金比率を高くして株価が安くなるのを待てばいいというのが正解ですが、実践するのは簡単ではありません。過去の経験上、市場が高値を付けてから安値に以降するまでには1.5~2年ほどの歳月がかかります。2015年夏に高値をつけた日経平均に照らせば、市場全体が安くなるのは2017年末から2018年夏かもしれません。もちろん、市場全体が調整する間にも割安な個別株式を見つけられることはありますが、総論としては、2年くらいは難易度の高い相場環境が続くことを想定してます。私は家族もいるので、毎月の固定費としてキャッシュが出ていきます。正しいと頭では分かりながらも、ただ座して投資資金が減っていくのを見ているのは、私にとっては精神的に厳しいものです。買うことを正当化するような企業価値評価を行ってポジションをとってしまった痛い経験もあります。

そこで、ここ1年ほどは、副業としてアルバイトをして週の半分ほど働き、ビジネス内部の動きに触れ、投資から離れた人間関係を気づき、何より安定収入を得ることで、投資における長期的な成功に不可欠な精神的安定を得られることがわかってきました。

2017年4月から友人の紹介で起業を手伝う

2017年3月までは、友人が取締役を務めるちとせバイオエボリューションというバイオベンチャーで、補助金申請の手伝いをしていました。4月からは、高校同級生の紹介で起業を手伝っています。バフェットの言葉に、「私は事業家だから、より優れた投資家になれた。私は投資家だったから、より優れた事業家になれた」というものがあります。たびたび紹介してきた、IT起業家からファンドマネージャーに転じたモニシュ・パブライも同じことを言っています。

今回の起業手伝いは、企業経営を身近に参加できるチャンスとして楽しみです。このようなチャンスを頂けて、とても有り難いことです。

ウェブサービスを作るには

本サイトはウェブエンジニアの方に開発を頼むのですが、最初の打ち合わせで、発注側が全くウェブサービスを理解していない状態で発注すると、共通言語がないために意思疎通に苦しみ、時間と費用が無駄になるであろうことが予想されました。

そこで、(1)エンジニアとの共通言語を学び、(2)投資家などに見せることのできるプロトタイプを創る、という2つの目的をもって最近増えているプログラミング教室に通うことにしました。幸い通う時間はたくさん確保できますので、TECH::CAMPという通学型を選択しました。

TECH::CAMPの感想

プログラミング言語の習得は、普通の言語習得と同じだと思います。カギは反復練習です。カリキュラムはよく作りこんであり、3度くらい繰り返すと、かなり理解が深まりました。ここまで10日くらいかかりました。そこから自分たちのウェブサービスのプロトタイプづくりに進むことができ、2週間ほどでRuby on Railsでのプロトタイプをウェブにアップすることができました。

TECH::CAMPの一か月だけで本格運用できるウェブサービスを作れるとは思いませんが、(1)他人にアイディアを伝えるプロトタイプを作り(動いているものを見せないと、なかなか他人にイメージを持ってもらえません)、(2)開発を頼むエンジニアの人が何を言っているのか理解できるようになります。

我々の最初の打ち合わせでは、プログラミングを理解しない顧客からのざっくりとした発注に、エンジニアも不安になっていたのことでしょう。大きなバッファーを見込んだ見積もりになるのは仕方なく、500万という見積もりを受けました。プログラミンを知らない顧客は、なぜ材料費ゼロなのに500万もかかるんだ?とこちらも疑心不安になります。お互いに不信感を持ってしまうという、良くない状態です。プログラミングをかじったことで、今は何が難しいかを理解することはできます。そのうえで、なぜ500万が高いと思うかも説明することができます。例えば、素人の私がつきっきり正味1週間でプロトタイプを作ったのです。プロの人であれば、似た事例を多数扱ってきているはずです。現在はデザイン料込みで200万とお願いしていますが、実際にいくらに落ち着くのか楽しみです。

いずれにせよ、TECH::CAMP代 13万 + パソコン代 9万 + 時間 2週間 で エンジニアの方々との話し合いがとてもスムーズになり、開発コストが少なくとも100万円は削減できるでしょう。とてもよい費用対効果でした。TECH::CAMPの創業のビジョンである、「難しいと思い込まれているプログラミングを多くの人に学んでほしい」は十分に達成できる仕組みだと思います。敷居の高いプログラミングを身近にして頂き、ありがとうございました!

長期業績レポート(三井造船)

長期業績レポート

7003 三井造船

日経225採用企業の長期業績レポート一覧

ひとくちメモ

kabutan.jpでは、三井造船の株価を1950年までさかのぼることができます。1950年1月に60円だったので、67年経っても株価が3倍にしかなっていないことに衝撃を覚えてしまいます。複利で年率1.7%のリターンしか出ていません。配当利回りが平均1.3%あったとしても、合計年率3%。期間を通しての銀行定期預金にも大幅に負け越していると思います。

私は、会社の長期業績を決める要素は、(1)事業環境 x (2)経営陣の能力 だと思っています。

(1)に関していえば、1990年に世界の船舶供給量の35%を担っていた日本の造船業界は韓国、中国の大型造船所の台頭を受けて、競争力を失っていきます。2012年の日本の建造シェアは15%に低下しています。造船は労働集約型ビジネスなので、人件費の上がった国では勝ち目がないと思います。

(2)に関していえば、このサイトでもたびたび指摘しているように、経営陣と株主の利害が一致していないことが、多くの日本企業の問題だと思っています。

上記の2016年3月末の大株主一覧を見てもわかるように、三井グループ各社(三井物産、三井生命、三井住友銀行)と信託口座(年金基金)がほとんどです。香川の地銀である百十四銀行も、三井造船が香川県高松市に造船所をもっているために、お付き合いで株式保有しているのでしょう。つまり、株主の中に純粋に株価を上げて稼ごうと思っている人が少ないのです。これでは、ガバナンスの改善も期待できません。

次に経営陣を見てみましょう。私が注目するのは、果たして株主の利益を代表して行動してくれる経営陣かどうかというところがポイントです。

会長の加藤さんは1973年から43年在社していますが、83000株しか保有していません。一株170円として、1400万円です。社長の田中さんも、1973年から43年在社していますが、64000株しか保有していません。一株170円として、1100万円です。副社長の山本さんの保有株式はさらに少ないです。

一方の役員報酬はというと、取締役14人で3億円、平均年収2100万円です。なぜ、年収2000万円以上ももらっている経営者が、1000万円少々しか自社株式を保有していないのでしょう??私には、株価が上がる気がしないからとしか思えません。自分が一番会社の内情をしっているわけですから、企業価値の向上=株価上昇に自信があれば、買いますよね。。。

三井造船の経営陣の個人収支にとって最も大事なのは、おそらく給与を守ることであって、株価は2の次でしょう。その事を裏付ける上のようなリリースが、4月28日に発表されました。

2017年3月期の度重なる業績下方修正の責任を取って、経営陣が給与を一部返上するという内容です。社長は、月額報酬の30%を3ヵ月に渡って返上するそうです。つまり、30% x 3ヵ月 = 月額報酬の90%。年収2100万とすれば、わずか150万円に過ぎません。冗談かと思うような少額です。

2016年3月期決算時点では2017年3月期の業績予想は営業利益で220億円と発表されていました。それが、2017年3月期の実績は83億円と、約140億円も下振れているのです。その責任の取り方が、わずか150万円の減俸とは、本当に株主をバカにしていると思います。

しかし、時価総額1000億円以上の大企業が、真面目にこのようなリリースを出しているのです(IR部門は止めないのでしょうか。。。いや、止めれないんでしょうね)。おそらく株価よりも給与の方が自分の懐にとって大事な三井造船の経営陣にとって給与カットを示すということは、何よりの誠意を見せているつもりなのでしょう。

ちなみに、AppleのSteve Jobsは1997年から2011年まで、14年間年棒$1で働いていました。その一方で、550万株を保有しており、その価値は1997年に一株$3から、2011年には$300まで上昇していました。保有株式の価値は、16億円から1600億円になったのです。

株主と利害が一致した状態で働いてくれる経営陣と同じ船に乗りたいものです。

Happy Investing!!

長期業績レポート(NSK、NTN、JTEKT)

長期業績レポート

6471 NSK
6472 NTN
6473 JTEKT

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ひとくちメモ

本日取り上げた3社は、どれもベアリング業界に所属しています。同業他社を比較するのは、勉強になることが多いです。それは、業界の追い風・向かい風の影響が各社ともに同じと考えられるため、各社独自の競争力の差が明らかになるからです。

違う業界に属している企業の独自競争力を比較をするためには、まず業界そのものが追い風・向かい風をどれほど受けているのかによってゴルフでいうところのハンディをつけて業績を評価する必要があり、なかなか難しいです。

さて、ベアリング3社の長期業績を見て、どんな特徴が見つかったでしょうか?

以下、私がポイントと思った点です。

・NSKのトップ経営陣は在任期間が長い。
・NSKの収益性が、利益率5%を超えられないNTNやJTEKTに比べて高い。
・ベアリング業界は景気変動の影響を受けるシクリカル業界である。拡大局面の持続期間は約6年。そこから2年の後退期があるのがこれまでのパターン。2017年3月期は減収減益が予定されているが、2018年3月期にも減収減益が続くのだろうか?

たくさん疑問を持ちながら業績を見ていると、色々な発見があると思います。

Happy Investing!!

長期業績レポート(荏原、千代田化工、ダイキン、日立造船)

長期業績レポート

6361 荏原
6366 千代田化工
6367 ダイキン
7004 日立造船

日経225採用企業の長期業績レポート一覧

メモ

株価 = EPS(一株あたり利益) x PER = 売上 x 利益率 / 株式数 x PER と書くことができます。

まず、株価を長期的に上げるためにはPERの拡大に頼るだけでは無理なので、必ずEPSの上昇が必要となります。次に、EPSを上げるためには、(1)売上を上げる、(2)利益率を上げる、(3)株式数を減らす(自社株買い)、という3つの選択肢があります。

2013年の株価上昇局面で、日本企業はEPSも改善していますが、その多くが(2)利益率の改善によるものだと感じます。不採算事業を切り離したり、コストカットをしたりした結果としての利益率上昇はもちろん素晴らしいことなのですが、ある一定レベルを超えた利益率の改善は持続的なのだろうかと思ってしまいます。

一般的に、日本の大企業の長期業績をみていると、継続的に売上を伸ばす力のある企業が少ない気がします。しかし、より大きな企業へと成長するためには売上成長が重要なのではないかという思いが強い今日この頃です。

本日紹介した企業の中で、ダイキン(6367)は海外競合他社の買収も含めて継続的に売上を伸ばすことができる(14年平均年率+10%)会社です。是非、各企業の長期業績レポートを見比べてみてください。

Happy Investing!!

株の教科書.comに、『脱・株初心者のための「バリュー投資法のススメ」』が掲載されました

バリュー投資を紹介するコラム

『脱・株初心者のための「バリュー投資法のススメ」』

 友人の紹介で、株の教科書.comにバリュー投資を紹介するコラムを執筆する機会を頂きました。ご一読頂けると嬉しいです。

内容

私はバリュー投資には次の3つのアプローチがあると考えています。

① 統計的アプローチ
② 本質価値アプローチ(資産価値)
③ 本質価値アプローチ(収益価値)

今回のコラムでは、それぞれのアプローチを具体例を使って説明することに重点を置きました。

統計的アプローチであれば、実際にどのサイトで低PER/低PBR銘柄のスクリーニングができるのかを書きました。本質価値アプローチであれば、具体的に決算書類から資産価値や収益価値に基づく企業価値を算出する方法を紹介しています。

バリュー投資の全体像の把握にご活用ください。

『脱・株初心者のための「バリュー投資法のススメ」』

Happy Investing!!

 

チャーリー・マンガ―の伝記『DAMN RIGHT!』を読んで

チャーリー・マンガ―の伝記『DAMN RIGHT!』を読みました

チャーリー・マンガ―とは?

チャーリー・マンガ―は、世界最高の投資家の一人として名高いウォーレン・バフェットのパートナーであり、バークシャー・ハサウェイの副会長を務めています。弁護士としてキャリアを始めますが、仕事で知り合った人と組んだ不動産ビジネスで大儲けしたあと、バフェットの執拗な誘いもあり、1962年に投資家に転向します。1975年までヘッジファンドを運用した後、投資先企業の経営からバークシャーの経営へとつながっていきます。

チャーリー・マンガ―についての書籍は少ない

ウォーレン・バフェットが有名すぎるために、チャーリー・マンガ―は相応の注目を集めていないと感じます。実際に、マンガ―について書かれた本は、今回紹介した『DAMN RIGHT!』を含めても英語で実質3冊しかないようです。『Poor Charlie’s Almanack』は英語のみで、和訳されているのは『完全なる投資家の頭の中』一冊のみだと思います。バフェットが長年のパートナーとして認める人物の考え方を知るためにも、是非とも一読をお薦めします。

『DAMN RIGHT!』を読んで

マンガ―の生活は17年間変わっていない

この本は2000年に出版されたもので、1924年生まれのマンガ―は当時76歳でした。それから17年が経ち、マンガ―は現在93歳になりますが、87歳になったバフェットとともに今もバークシャー・ハサウェイを率いています。2000年から現在まで、マンガ―の生活はおそらくほとんど変わっていないという印象を受けます。それほど、習慣に基づいた生活を送っているということに驚きます。

複利効果は人生後半になるほど効いてくる

1962(38歳)140万ドル
1975(51歳)500万ドル
1998(74歳)12億ドル
2017(93歳)15億ドル

マンガ―の個人資産の推移を見ていくと、上のようになっています。特に51歳から74歳の間の増加が大きいことが分かります。日本のサラリーマン的発想からすれば、給料は50代まで上がり、そこから先は出世競争次第ということなのかもしれませんが、投資の世界は違います。全ての経験や知識が累積していく上に、運用資産も増えていきます。いくつかの市場サイクルを経験した50代を過ぎてからが勝負と言っても過言ではありません。

ちなみに、1998年から2017年の資産増加率が低いのは、バークシャー・ハサウェイの株価が上昇しなかったからではなく、マンガ―が株を贈与していることによるもの思われます。

バリュー投資+集中投資の効果

マンガ―のヘッジファンドは14年間で年率20%近い複利リターンを残し、最初の資産を12倍にしました。年率5%であったダウ平均を年率15%も上回る、文字通りの圧勝です。マンガ―は、気に入った企業へ集中投資していましたが、それを支えた投資戦略は、バリュー投資だったそうです。

素晴らしい投資家に相乗りしても素晴らしい成果が得られる

この本で一番印象的だったのは、Otis Boothという方です。マンガ―と不動産開発などを行ったあと、バフェットの評判を聞きます。1963年にバフェットに会ったOtis Boothは、当時の金額で100万ドルをバフェットに投資しました。そして、彼自身はただひたすら待つことで、1998年には10億ドルを超える資産を手にしました。

バフェットやマンガ―がやっていることは難しすぎると感じることもありますが、素晴らしい経営者を見つけて長期投資すれば、素晴らしいリターンが得られるという実例として、Otis Booth氏に感銘を受けました。

Happy Investing!!

 

 

長期業績レポート(日立建機、クボタ)

長期業績レポート

6305 日立建機
6326 クボタ

日経225採用企業の長期業績レポート一覧

メモ

日立建機の経営陣を見ていて、気になることがありました。

日立建機は、有価証券報告書が入手できた2006年3月期以来、『委員会設置会社制度』を利用しています。委員会設置会社とは、指名委員会、監査委員会、報酬委員会という3つの委員会を置く株式会社のことだそうです。ガバナンスの向上を狙っているのでしょうが、果たしてその効果をどのように測定すればいいのでしょうか?

特に、直近7年ほどは、2年ごとに取締役会の会長が代わっています。木川さんを除いて親会社である日立製作所OBが会長に就任していますが、これが果たして望ましい経営体制なのでしょうか?

そもそも、日立製作所は50.23%とギリギリ過半数の株式を保有しているだけです。経営陣を送り込んでくるなど、日立製作所の意向に沿って経営されることが、残り49.77%の株主にとって本当に望ましいことなのでしょうか?2年という短期間で交代してしまう取締役会長に責任が取れるのでしょうか?

まとめ

私は、このような親会社の意向を強く受けている子会社への投資に躊躇してしまいます。それよりも、創業社長や一族が大株主であり、我々少数株主と利害を一致させながら経営していく会社を好ましく思ってしまうのです。

Happy Investing!!

日経平均先物を売って学んだこと

日経平均を空売りするには

日経平均株価(出典:kabutan.jp)

2016年後半からの株価上昇で、私の基準で割安と思える株は少なくなりました。このサイトでは日経平均採用銘柄の長期業績レポートをまとめていますが、長期的な利益成長実績の乏しい会社でもPER20倍は当たり前という状況です。

株価が価値よりも高いと思うときはどうすればいいか?答えは簡単で、株価が価値より低くなるまでひたすら待つしかありません。何もしないで投資余力を残しつつチャンスを待つのは、投資でおそらく一番重要かつ難しいことです。自分は値上がりすることのない大量の現金を抱えていながら、市場に参加している人が株価上昇を楽しんでいる姿を見るのは、気分の良いものではありません。しかし、これは長期的に高い運用成績を残すためには必要不可欠です。

私は、2015年夏に日経平均が2万円を超えたあたりで、保有株式を全て売却してポジションを100%現金にしました。おかげで株価下落を回避でき、2016年夏頃から投資を再開したことで満足のいくリターンを得ることができました。再び日経平均が2万円を目前にしている現状で割高だと感じているのであれば、また現金比率を高めればよいと思われるかもしれません。しかし、現在は大きな含み益を抱えた保有株式があるので、現時点で売却によって利益を確定して税金を払いたくはないのです。そこで、ヘッジファンドのロング・ショート戦略ではありませんが、「保有株式はそのままに、市場全体の下落リスクをヘッジすることはできないか」、と欲を出してしまいました。

日経平均の下落に備える方法は2つあります。

(1)インバース型ETFを買う

例えば、NEXT 日経ダブルインバース・インデックス(1357)という商品があります。日経平均の-2倍の値動きに連動することを目指しているので、例えば100万円分のリスクをヘッジしたいのであれば、この商品を50万円購入すればいいということになります。

NEXT日経ダブルインバース・インデックス(出典:kabutan.jp)

実際の値動きを見ると違和感を感じます。例えば、日経平均は2015年夏に2万円越えで、現在は2万円手前。インバース・インデックスからすれば、現在の方が2015年夏よりも高くなっているはずです。しかし、上の値動きを日経平均株価と比べてみると、そうなっていないことは明らかです。この商品の問題は、長期的に日経平均の値動きと乖離してしまうことです。目論見書にも次のような記載があります。

私は今後1年以内に日経平均が下落する可能性が高いと考えているのであり、短期的なことは分かりません。待てば待つほど負けていくインバース型商品では、私の用途には合いません。

(2)日経平均先物を売る

先物取引は、インバース型商品のような長期投資するとヘッジがズレる問題はありません。一方で、こちらの問題は課税方法にあります。

株式取引による税金は分離課税されます。しかし、先物は総合課税で雑所得として課税されます。課税するための分類が違うと、損益通算することができません。つまり、仮にヘッジが上手くいき、保有株価は下落したが、先物取引で儲かったとします。本来であれば株式での損失と先物の利益を相殺したいのですが、税法上はそうできないのです。

税金の問題はありますが、ヘッジがズレる方が大きな問題だと思うので、長期的に日経平均株価の下落に賭けるのであれば、日経平均先物を利用したほうがいいと思います。

日経平均先物を初めて売ってみました

日経平均株価(日足、kabutan.jp)

実際には、上記のような取引をしました。

結論としては、先物を持ち続けるのは精神的に非常に苦しかったです。その最大の理由は、自分自身が本来いくらであるべきかを分かっていないことです。日経平均が2万円では高いとは思っていますが、では適正水準が15000円なのか、16000円なのか?個別株式に投資するときには持っている根拠がないのです。価値の根拠という浮き輪がないままに市場の渦に飛び込んでしまい、値動きによる含み損益に翻弄されてしまいました。普段は見ないようにしている株価を頻繁に見てしまい、ただただ精神的に疲れる日々でした。

我慢に我慢をして、なんとか損益トントンで先物投資を終えることができ、本当にホッとしています。ようやく平穏な日々が帰ってきました。バリュー投資家として目標としている、ウォーレン・バフェットは、空売りについて次のように述べています。

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我々が取り組んだ空売り投資はどれも最後にはうまくいったが、とてもつらい経験だった。株を買って稼ぐほうがはるかに簡単だ。さらに、空売りは大きな損失リスクがあるために大きなポジションを持つことができないので、結果として大きな利益を上げることもできない。(ウォーレン・バフェット、2001年年次報告書より)

“Everything we’ve ever thought about shorting worked out eventually, but it’s very painful. It’s a whole lot easier to make money on the long side. You can’t make big money shorting because the risk of big losses means you can’t make big bets.” – Warren Buffett
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実際に自分でやってみてようやく、この言葉の意味を噛み締めました。どうして失敗してみないと学べないのか、達人の言葉から学べないのかと、自分の無知というか傲慢さが恥ずかしくなります。売りポジションがなくなってみると、買いポジションだけ持っていることでなんと心が落ち着くことでしょう。気がつくと、ロング側でもっとリスクが取れるようになった自分がいたので、全く無駄な経験ではなかったのかもしれません。

Happy Investing!!

四季報を通読しました

3月17日に四季報が発売されました

参考リンク】四季報通読のすゝめ

私は年に4回の四季報発売を心待ちにしています。四季報の一冊には、日本のすべての上場企業がまとまっています。日本株投資をしている私にとって、すべての選択肢を手元に置けることには安心感があります。泣いても笑っても選択肢はこの一冊の中にしかないと実感することで、余計なことを考えなくてすむように思います。

四季報通読を終了しました

3月19日はスタバやサイゼリヤに缶詰になり、四季報を通読しました。計8時間くらいかかったでしょうか。これまでは1000番台から読み始めて、9000番台に行く頃には疲れて適当に見てしまっていたので、今回は趣向を変えて逆に9000番台から始めてみました。終わったのは夜11時回っていたのですが、早く終わりたくて1000番台はちょっと適当に見てしまったことは否めません。

約4000社の中から、約300社を調査対象としてピックアップできました。次の四季報発売まで90日(実働60日)あるので、1日5社(300社 / 実働60日)の分析を続けていこうと思っています。

四季報通読の意味

私は、四季報通読が野球における素振りのようなものだと思っています。通読したからすぐに儲かるとは思いませんが、すべての選択肢に目を通すことで、①世の中には多様なビジネスモデルがあること、②バリュエーションには大きな振れ幅があること、などを実感できると思っています。多様な企業群を生み出してくれる資本主義に感謝するとともに、バリュー投資家として市場価格と企業価値の差違を探していく気持ちが新たになります。

私が大きな収益を上げてきた投資先は、ほぼ全て四季報から見つけてきました。1冊税込み2060円という価格で、大きな価値を頂いてきました。東洋経済新報社のみなさま、本当にありがとうございます!

Happy Investing!!