長期業績レポート(古河機械金属、古河電気工業)

長期業績レポート

5715 古河機械金属
5801 古河電気工業

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メモ

今日の2社は古河グループに属しています。古河市兵衛(1832 – 1903)が1877年に足尾銅山を買収。大鉱脈を掘り当てたことから多角化が始まります。親会社の一部門として新規事業に取り組んではスピンオフするのが古河グループの特徴です。

以下が、古河機械金属から派生した主要5社です。現在の時価総額を比べると、子が親を超え、孫が子を超えて、、、ファナックまでつながっていることが分かります。ファナックから次の大企業が生まれるのでしょうか?

1875年 古河機械金属(鉱山開発)       970億円
1884年 古河電機工業(電線製造)       2900億円
1923年 富士電機  (電気機器製造)     4800億円
1935年 富士通   (通信機器製造)     1兆4000億円
1972年 ファナック (工作機械制御機器製造) 4兆6000億円

古河グループには、時流を捉えて形にすることできるDNAがあるのかもしれません。そして、こうした歴史を知るにつれ、「スピンオフした企業は投資対象として面白い」とするCharlie Mungerの言葉を思い出します。

関連投稿】調査対象企業の探し方:スピンオフ

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長期業績レポート(住友金属鉱山、DOWA)

長期業績レポート

5713 住友金属鉱山
5714 DOWA

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メモ

長期業績レポートのフォーマットを更新しました。

社員数やバランスシートの情報を加え、ROEやROAなどの効率性指標が分かるようにしました。ROEやROAを売上、利益率、資産回転率、レバレッジと要因分解することで、より良く経営方針が理解できると思います。

お役に立てて頂ければ幸いです。

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長期業績レポート(東邦亜鉛、三菱マテリアル)

長期業績レポート

5707 東邦亜鉛
5711 三菱マテリアル

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メモ 

直島訪問の思い出

 

直島の衛星写真(出典:Google Maps)

私は「三菱マテリアル」と聞くと、直島を思い出します。安藤忠雄設計の地中美術館を見学に出かけましたが、何故か三菱マテリアルに勤めるおじさんと仲良くなり、直島精錬所を案内して頂きました。勝手に精錬所の中を歩き回ってたから、かなり偉い方だったのかもしれません。驚いたのは地中美術館のある美しい島の南側とは違い、精錬所のある北側は禿山になっていたことです。精錬所で鉱石を溶練する際に発生する亜硫酸ガスが原因だそうです。大正9年(1920)創業ですから、当時は環境基準も脱硫装置もなく駄々漏れ状態だったのでしょう。

精錬所受入の経緯について、Wikipediaからの抜粋です。
ーーーーーー
前近代的な産業基盤のまま明治中期から人口が増加した直島村では次第に経済が停滞し、都市へ向けて人口が流出し始めるが、そのような直島にも近代化の波が押し寄せる。1916年大正5年)、農漁業の不振で財政難に陥った村は三菱合資会社の打診した銅製錬所を受け入れる決断を行う[4]製錬の際に出る亜硫酸ガスは、足尾銅山別子銅山など各地で、山の木々をすべて枯らし下流で水害を起こすなどの煙害を起こしており、瀬戸内海の犬島四阪島契島などの離島に各社の精錬所が移されつつあった。三菱も煙害の心配の少ない離島を探したが、農業や石材業などを抱える豊島は断り、農漁業が零細な直島は三菱の打診に最後の望みを託した。翌1917年(大正6年)、島の北端で三菱合資会社の中央製錬所が操業を開始すると、直島は三菱金属鉱業の企業城下町として急速に発展し、働き口が確保されたことによる人口流出の歯止めや豊富な税収によって、瀬戸内の離島においてだけでなく香川県内でも有数の裕福な自治体となっている。一方で、島の北半分および周囲の島々の木々がほとんど枯れるという煙害に悩んだ。(中略)

三菱金属鉱業は1967年に新製錬所の建設の方針を打ち出し、小名浜と直島を候補地とした。条件的に不利であった直島から製錬事業を流出させないため、直島町、香川県、直島製錬所労働組合などが本社に陳情を行った結果、直島製錬所を近代化することに決まり、1969年に新製錬所が稼動した[5]。しかし、この頃を境に金属製錬事業の高度化と平行して合理化が進み、以来従業員数や島の人口は減少し続けている。また銅の国際価格の低迷から製錬事業そのものが低迷し、直島製錬所はリサイクル事業など、金属製錬以外の新規事業開拓を迫られていた。
ーーーーーー

財政難や人口流出に直面した自治体が、長期的なリスクを知りながらも「背に腹は代えられない」と誰も欲しくはないお荷物資産を受け入れてしまうという構図は、鉱山や精錬所、原子力発電所と同じようです。直島では植林などの対策をとっているそうですが、衛星写真からも後遺症が100年後も続いていることをまざまざと見せつけられます。私にとっては、日本の産業史の負の一面を思い出させてくれる経験です。

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長期業績レポート(SUMCO、日本軽金属、三井金属鉱業)

長期業績レポート

3436 SUMCO
5703 日本軽金属
5706 三井金属鉱業

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メモ

SUMCO(3436)はシリコンウェーハの世界シェア2位(Wikipediaによると、2013年にシェア30%)企業です。シェア1位は信越化学です。

下の写真のようにシリコンインゴッドを厚さ1mmに薄くスライスして研磨・洗浄することでシリコンウェーハができます。このシリコンウェーハの上に、集積回路が作られて半導体となります。現代のIT生活の根幹を支える製品です。

出典:SUMCO

IT機器が増えている、つまりシリコンウェーハの使用量が増えているはずなのに、SUMCOの売上は伸びていない

身の回りを見ても、10年前からIT機器が増えています。つまり、シリコンウェーハの使用量が増えているはずです。しかし、SUMCOの売上高は横ばいです。これはどういうことなのでしょうか?

シリコンウェーハの使用量は増えているが、伸びはGDP成長率程度

調べてみると、予想通りにシリコンウェーハ出荷面積は過去15年間で右肩上がりに成長しています。成長率は長期的に年率2-3%と世界のGDP成長率と大差なく、過去5年間にスマホの普及などがあったことを考えると成長率が低い気がします。

半導体の微細化で、同じ性能を持つ半導体がより少ないシリコンウェーハ面積で製造可能になった

原因の一つは、上図のように回路の集積度が上がっていることでしょう。半導体に使われる線の幅は、2005年に主流だった90nmから、現在は20nmにまで微細化が進展しています。つまり、同じ半導体を作る場合には、2次元製品なので、(20/90) x (20/90) = 従来の5%の面積に収まってしまう可能性があるのです。

付加価値の薄いシリコンウェーハは価格下落の荒波に

出典:東京エレクトロン

現在の半導体サプライチェーンにおいて、イノベーションを起こしてきたのは微細化工程だと思います。2001年から300mmの大型シリコンウェーハサイズに移行して以来、シリコンウェーハメーカー発の大きなイノベーションはなかったようです。

付加価値がないと、当然のように価格競争が始まります。その結果として、シリコンウェーハの面積あたり単価は2007年から2015年にかけて半減してしまいました。結果として、SUMCOの売上が伸び悩んでいるようです。自社の製品価格が10年で半減してしまうとは、何とも経営の難しい業界ですね。

バフェットの言葉

「厳しい業界に優秀な経営者が挑んだ場合、たいていの場合は業界の厳しさが経営者の優秀さを上回る」

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長期業績レポート(日新製鋼、大平洋金属)

長期業績レポート

5413 日新製鋼
5541 大平洋金属

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メモ

大平洋金属はニッケル鉱石を購入製錬し、ステンレス鋼を作るときに必要なフェロニッケル製品を製造しています。

大ざっぱに利益を考えると、次のような式になります。

(フェロニッケル単価ーニッケル単価 x 歩留まり) x 販売量

4つある変数のうちの歩留まりは自助努力でコントロールできるでしょうが、残りの3つはお天気次第です。

コントロールできない要素を前提にした中期経営計画はあてにならない

コントロールできない主要変数が3つあるにも関わらず、大平洋金属は3年に1回中期経営計画を発表しています。そして、2007年度から2015年度の計画と実績を比較する限り、下図のようにさっぱり当たりません。つまり、コントロールできない主要変数を予測することは、専門家である事業会社でも難しいということでしょう。

業績予想は難しい

会社が立てた3年先の中期計画ですら大きく外れてしまう事業への投資は、私は難しいと感じました。ニッケルについては素人同然ですし、仕方なしにBS上の清算価値に基づいた価値判断をすることになるでしょうか。

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報酬体系に御用心:富士フイルムによる和光純薬買収の場合

和光純薬の買収価格のバリュエーションに触れた報道がみつからない

関連】富士フィルム(4901)長期業績レポート
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2016年12月15日に、富士フィルムによる和光純薬(武田薬品の子会社)の買収が正式に発表されました(会社リンク)。

インターネットで『和光純薬 買収』と検索すると、「1547億円」という数字が目につきます。しかし、この数字は富士フィルムが支払う予定の買付代金であり、和光純薬全体の企業価値ではありません。そこで、今回の取引における和光純薬のバリュエーションについてまとめてみました。

上の表にあるように、和光純薬の発行済み株式数は33.3百万株あります。このうち、自己株式12百万株を除いた流動株式数は21.3百万株。さらに、富士フィルムは既に3.2百万株を保有しているので、今回の買収で購入する必要のある株数は18.1百万株です。この株数に、買収価格である一株8535円を掛けると、1547億円という報道される金額が算出できます。つまり、これは和光純薬の一部分の価格であることが分かります。

では、和光純薬全体はいくらで評価されたのでしょう?一般的に、時価総額=発行済み株式数 x 株価 で計算されます(日経新聞リンク)。 つまり、和光純薬は2842億円の時価総額で取引されることになりました。

2016年3月の純利益が57億円だったので、PERは50倍を超えていますし、仮にバランスシート上のネットキャッシュを除いたとしてもPERは40倍以上です。40~50倍というPERは、高成長企業に許されるバリュエーションです。果たして和光純薬にその価値があるのでしょうか?

和光純薬の業績

和光純薬の有価証券報告書をまとめてみました(EDINETより取得)。

2008年3月期以降、売上は約750億円、経常利益は約80億円で安定的に推移していることが分かります。和光純薬は研究で使われる試薬で高いシェアを持つ安定した優良事業であることは分かりますが、高成長企業とは呼べないと思います。

価値評価をする人の報酬体系に気を付けよう

和光純薬の買収発表資料には、第三者算定期間(SMBC日興証券)、ファイナンシャルアドバイザー(メリルリンチ)、経営陣による3つの価値算定が出てきます。私(Nagatomo Investments)による価値評価を含めて上にまとめました。

気付くことは、私とSMBC日興による価値評価が1株4000~5000円(時価総額1300~1700億円)と近いこと。和光純薬の安定した事業実績を元にDCFを行うとすれば、誰がやっても大差ない評価になると思います。それに比べて、メリルリンチと富士フィルム経営陣は非常に高い評価をしています。

ここで、価値評価をする人の動機付けを考えることが大切です。私は個人投資家であり、投資リターンが報酬です。SMBC日興は固定報酬を受け取る第三者算定期間なので、無理に値段を高く見せる動機付けはありません。自然体での評価になると思います。

問題はメリルリンチと経営陣です。メリルリンチは、買収成立価格に応じた手数料を受け取ります。仮に取引金額の1%としても、15億円の収入です。メリルリンチとしては取引を成立させないことには始まりません。さらに、価格が吊り上がることには自分たちの手数料が増えるだけだという事で、自然体で価値評価する動機付けは全くありません。

出典:有価証券報告書(2016年3月)

最後に富士フィルム経営陣です。富士フィルムを2000年から経営している古森会長をみてみると、2016年3月に22,300株を保有しています。現在の株価4500円換算で、約1億円の富士フィルム株式を保有しています。その一方で、給与として年間2億円以上を受け取っています。

そもそも富士フィルムを15年以上経営しながら1億円しか自社株を保有していないことに驚きます。15年で受け取った給与は軽く10億円を超えているでしょうから、自社の株には投資先として魅力を感じていないということではないでしょうか?

まとめ

こうした材料を見ていくと、古森会長や富士フィルムの目的が株主価値の最大化にあるとは考えにくいです。そんな経営陣に雇われているメリルリンチに正しい価値評価を期待することもできません。投資リターンでしか稼ぐことのできない投資家の立場としては、価値評価をしている人の報酬体系、動機付けに気を付けましょう。

ちなみに、ウォーレン・バフェットは時価総額40兆円のBerkshire Hathawayを経営しながら、給与は年間1000万円です。そして自ら大株主として、少数株主と全く同じリスクを背負っています。株主の立場であれば、どちらの経営者に資金を託したいですか?

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長期業績レポート(新日本製鉄、神戸製鋼、JFE)

長期業績レポート

5401 新日鉄住金
5406 神戸製鋼
5411 JFE

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メモ

長期業績レポートをまとめていて、鉄鋼業は本当に経営が難しい産業だと感じました。

多額の設備投資が必要

まず、鉄鉱石から銑鉄を取り出す高炉を作るには千億円単位の設備投資がかかります。一度高炉に火を入れれば、20年ほど稼働し続けなくてはならず需給調整ができません。火を止められない理由は、溶けた鉄が途中で冷えて固まってしまうからです。さらに、改修する場合でも、下の神戸製鋼加古川製鉄所第3高炉のプレスリリースに書かれているように、数百億円単位のお金がかかります。

出典:神戸製鋼プレスリリース

商品としての差別化はなく、資金があれば参入できる

多額の設備投資をして鉄ができたとしても、悲しいかな商品としての差別化は難しいようです。

その根拠として、2007年から2016年までの世界の銑鉄生産量を見ると、2007年に9.6億トンから2016年に11.6億トンまで2億トン増えています。国別にみると、なんと中国だけで2.2億トンも生産量が増加しています。ほかに2007年から2016年にかけて生産量が増えた主要国はインドと韓国だけ。その他の主要生産国、ドイツ、アメリカ、ロシア、ブラジル、日本などは全て減産しています。この事実から、「製鉄所はお金を払えば作れる」ということが言えると思います。

出典:Wikipedia

中国の過剰設備による輸出増加で国際価格が低迷

中国鉄鋼メーカーの生産量増加スピードが内需スピードを超えてしまい、輸出が始まります。中国による2015年の鉄鋼輸出量は1億トン以上(参照リンク)と日本の生産量より多かったそうです。その結果が下の鉄鋼価格に表れています。

直近では価格が反発しているように見えるが?

2016年初めから、鉄鋼の国際価格は2倍ほどに反発しています。では、鉄鋼メーカーは投資先として魅力的なのでしょうか?私にはそうは思えません。鉄鋼価格が高値圏に戻れば、再び設備投資合戦が始まるでしょう。

最後に、買収を繰り返して世界最大の鉄鋼メーカーとなったアセロールミタルの長期株価を載せました。 現在の株価を短期的な安値とみることもできるかもしれませんが、長期投資の難しそうな業界だという印象がぬぐえません。

アセロールミタルの株価(Google Finance)

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長期業績レポート(日本碍子NGK)

長期業績レポート

5333 日本碍子NGK

メモ

企業のIRページを見比ていると、その企業の開示姿勢が伝わってきます。私は株式市場の役割を、「企業価値をできるだけ正確に反映し、その結果として社会における資本分配を効率的に行うこと」だと思っています。企業価値を正確に反映するには判断材料が必要であり、企業による開示が必要不可欠です。

日本碍子のIRページを見ていきましょう。

IRトップページ(リンク

特筆すべき点はありません

トップメッセージ(リンク

IRリンクの一番上にある、社長からのメッセージです。日本碍子の場合、有価証券報告書の【対処すべき課題】の丸写しです。有価証券報告書は、【事業内容】などの説明があった後に【対処すべき課題】が書かれています。このホームページを日本碍子について何も知らない個人投資家がまず読んだとして、どういう印象を受けるでしょうか?残念ながら、そういう想像力が感じられません。

財務ハイライト(リンク

IRリンク上から2番目にある、主要財務指標をまとめたグラフです。日本碍子の場合は5年分が掲載されています。なぜ5年分なのでしょうか?これも、有価証券報告書の報告形態を真似しただけなのかもしれませんが、私には不誠実とうつります。下の15年分の長期業績レポートと比べてみてください。

15年分の業績を見れば、日本碍子の業績が景気循環の影響を受けることは一目瞭然です。しかし、財務ハイライトを見ただけの人は、高成長企業かと勘違いする可能性があります。投資は自己責任で行うものなので、長期業績や事業特性を調べなかった投資家が悪いのはもちろんです。しかし、会社側としてはそれくらいの基本的な情報は開示してくれてもいいのではないでしょうか?

長期業績を確認しよう

 

19年の業績推移を見ると、丸をつけた2001年3月、2008年3月に売上がピークを迎え、2017年3月の会社予想を参考にすれば、すでに2016年3月に売上は頭打ちになっています。そして、過去が参考になるのであれば、売上がピークを迎えた年から3年間は売上減少が続いています。そうした先行事例がありながら、もし2018年3月に売上が増えると思って投資するのであれば、それは過去のトレンドに反することでありしっかりとした根拠が必要です。

私ならどういうIRメッセージを出すか?

私が日本碍子の経営者であれば、投資家に向けて次のようなメッセージを出すと思います。

1、事業特性上、設備投資や自動車新車購入の景気変動の影響を受けます。
2、景気循環をコントロールすることはできません。そこで、景気後退局面が5年は続く前提でバランスシートに余力を残し、次の景気ピークで売上・利益が更新できるように事業運営していきます。

よりよいIRへの期待

投資家の方は、企業によりよい情報開示を求めていきましょう。企業IR担当の方が読んでくれていたら、是非、事業特性の本質を分かりやすくまとめたIRサイトの運営をお願いします。

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長期業績レポート(TOTO)

長期業績レポート

5332 TOTO

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メモ

TOTOは典型的なバフェット銘柄

TOTOは日本のトイレ市場で60%シェアを持ち(2位はINAXで30%)、日本人であれば誰もが製品を毎日のように利用している企業です。排泄行動を考えてみると、人はトイレにこだわりを持つように思います。トイレにある芳香剤は100均で買ったとしても、安物のトイレを使う人は日本では見かけません。治外法権である大使館のような場所をのぞくと、日本でTOTOとINAX以外のトイレを見た記憶がありません。

バフェットは、Wrigley’sという米国トップシェアのチューインガム会社の買収について、その競争優位性を説明しています。「人にとって口というのはこだわりのある場所だ。よく知らない食べ物を口に入れたくはない。慣れ親しんだWrigley’sガムが100円で売っていて、隣に聞いたこともないプライベートブランドのガムが90円で売っていたとしても、ほとんどの人はWrigley’sを選ぶだろう。」

トイレについて言い換えてみます。「人にとって排泄というのはこだわりのある行動だ。よく知らないトイレにお尻を載せたくはない。慣れ親しんだTOTOのトイレが6万円で売っていて、聞いたこともない海外メーカーのトイレが4万円で売っていたとしても、ほとんどの人はTOTOを選ぶだろう。」

私にもよく理解できる事業を展開する企業であり、かつブランド力という競争優位性が存在することは明らかです。20年後も人間の排泄方法に大変革は起きていないでしょうし、TOTOのトイレにお世話になっている可能性が高い。つまり、高い確度で収益の見通しを持てる典型的なバフェット銘柄と評価できます。こうした企業は数少ないですから、よく調べて理解することをお薦めします。

私の考えるTOTOのポイント

TOTOは、2012年に世界90億ドル市場のうち、17%シェアをもつ世界最大のトイレメーカーでした。

しかし、地域によってシェアは違い、それによって収益率にも大きな差があります。

 

TOTOは中国・アジアの高級トイレ市場でトップシェア(2005年時点で、中国の高級市場で30%以上のシェア。参考記事)です。そして、20%近い営業利益率を叩きだしています。

それに比べて、ウォッシュレットの普及率が低く、地場トイレメーカーが浸透している米国や欧州市場では苦戦が続いています。シェアが高いが低成長の日本事業からのキャッシュを、中国・アジア市場に投資していくことが続くのでしょう。

LIXIL(INAXブランド)と比較してみると

トップシェアが大きく稼げることを理解しているLIXIL(INAXブランド)は、2013年に米国2位の米アメリカン・スタンダード、2014年に欧州水栓金具に強く世界シェア8%ある独グローエを買収して規模を拡大している。

LIXILは2015年3月からIFRS会計基準を採用しており、セグメント利益の調整額が大きいのでTOTOの業績と単純比較はできないが、営業利益率は5%前後だと思われる。私は、高級ブランドイメージを確立できているTOTOの利益率が高く維持されると考えている。さらにLIXILは買収の巧拙が試されるので、経営者の資本分配力の見極めがさらに重要になる。

経営者の資本分配力を測るのは難しい。新しくLIXIL社長に就任した瀬戸さんは、MonotaRoを育てるなど経営者としての実績は素晴らしい。しかし、2位以下のトイレメーカーの経営は価格決定力がないので難しいことは述べた通り。優秀な経営者が凡庸な事業を経営するときにどうなるのか楽しみだ。個人的にどちらを経営したいかと言われれば、間違いなくやるべきことが明確なTOTOだ。

ウォッシュレットはどこまで普及するのか?

日本はウォッシュレット大国です。1980年の発売以来、30年をかけて普及率は80%を超えました。私は普段ウォッシュレットを使わないので、その良さが全く理解できないのできません。蓋の自動開閉に自動洗浄、音が鳴ってみたり、ほとんど余計なお世話だとすら感じてしまい、ハイテクトイレでなかなか落ち着けません。

ウォッシュレットになると、トイレはハイテク製品に様変わりします。普及率が1%以下と言われる欧州などで、果たしてどこまで普及するのでしょうか?最初に述べたようにトイレは地域特性が強く、文化的背景と相まって変化が緩やかな業界です。中国やアジアのようにポットン便所から洋式へ移行するときにはウォッシュレットを導入するチャンスの窓が開きますが、先進国ではどうなるのでしょうか?海外のトイレ事情から目が離せません。

Happy Investing!!

長期業績レポート(花王、資生堂、日東電工)

長期業績レポート

4452 花王
4911 資生堂
6988 日東電工

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メモ

花王

2016年12月まで27年連続増配を予定しており、これは日本の最長記録です。長期にわたり増配を続けるには利益成長が必要です。つまり、花王の増配記録は日用品ブランド事業の安定性の表れです。20年後も人は清潔でありたいという欲求を持ち続けるでしょう。さらに、そのための手法が劇的に変わるとは考えにくいです。おそらくは風呂に入り続け、歯を磨き続けるのでしょう。

米国では、American States Waterという水道・インフラ企業が62年連続増配という最長記録を持っているようです。日用品ブランドを展開する企業では、Procter & Gambleが60年、Johnson & Johnsonが54年とやはり長期間の増配を達成しています。

参考リンク:日本の連続増配ランキング)
参考リンク:米国の連続増配ランキング)

資生堂

2014年から魚谷さんが社長を務めています。以前は日本コカ・コーラ社長を務めていた方です。コカ・コーラが強力なブランド力を持つ製品を売る優良事業であるのに対して、デパートの化粧品コーナーに行けば分かるように、化粧品は多くのブランドであふれかえっています。そのため、多くの販促費を必要とする競争の厳しい事業です。

ウォーレン・バフェット氏は、「優秀な経営者が難しい事業を経営した場合、たいていは事業の難しさが上回る」と述べています。魚谷さんはまさにこのケースに当てはまっているような気がして、注目しています。

Happy Investing!!