長期業績レポート(日本碍子NGK)

長期業績レポート

5333 日本碍子NGK

メモ

企業のIRページを見比ていると、その企業の開示姿勢が伝わってきます。私は株式市場の役割を、「企業価値をできるだけ正確に反映し、その結果として社会における資本分配を効率的に行うこと」だと思っています。企業価値を正確に反映するには判断材料が必要であり、企業による開示が必要不可欠です。

日本碍子のIRページを見ていきましょう。

IRトップページ(リンク

特筆すべき点はありません

トップメッセージ(リンク

IRリンクの一番上にある、社長からのメッセージです。日本碍子の場合、有価証券報告書の【対処すべき課題】の丸写しです。有価証券報告書は、【事業内容】などの説明があった後に【対処すべき課題】が書かれています。このホームページを日本碍子について何も知らない個人投資家がまず読んだとして、どういう印象を受けるでしょうか?残念ながら、そういう想像力が感じられません。

財務ハイライト(リンク

IRリンク上から2番目にある、主要財務指標をまとめたグラフです。日本碍子の場合は5年分が掲載されています。なぜ5年分なのでしょうか?これも、有価証券報告書の報告形態を真似しただけなのかもしれませんが、私には不誠実とうつります。下の15年分の長期業績レポートと比べてみてください。

15年分の業績を見れば、日本碍子の業績が景気循環の影響を受けることは一目瞭然です。しかし、財務ハイライトを見ただけの人は、高成長企業かと勘違いする可能性があります。投資は自己責任で行うものなので、長期業績や事業特性を調べなかった投資家が悪いのはもちろんです。しかし、会社側としてはそれくらいの基本的な情報は開示してくれてもいいのではないでしょうか?

長期業績を確認しよう

 

19年の業績推移を見ると、丸をつけた2001年3月、2008年3月に売上がピークを迎え、2017年3月の会社予想を参考にすれば、すでに2016年3月に売上は頭打ちになっています。そして、過去が参考になるのであれば、売上がピークを迎えた年から3年間は売上減少が続いています。そうした先行事例がありながら、もし2018年3月に売上が増えると思って投資するのであれば、それは過去のトレンドに反することでありしっかりとした根拠が必要です。

私ならどういうIRメッセージを出すか?

私が日本碍子の経営者であれば、投資家に向けて次のようなメッセージを出すと思います。

1、事業特性上、設備投資や自動車新車購入の景気変動の影響を受けます。
2、景気循環をコントロールすることはできません。そこで、景気後退局面が5年は続く前提でバランスシートに余力を残し、次の景気ピークで売上・利益が更新できるように事業運営していきます。

よりよいIRへの期待

投資家の方は、企業によりよい情報開示を求めていきましょう。企業IR担当の方が読んでくれていたら、是非、事業特性の本質を分かりやすくまとめたIRサイトの運営をお願いします。

Happy Investing!!

長期業績レポート(TOTO)

長期業績レポート

5332 TOTO

日経225採用企業の長期業績レポート一覧

メモ

TOTOは典型的なバフェット銘柄

TOTOは日本のトイレ市場で60%シェアを持ち(2位はINAXで30%)、日本人であれば誰もが製品を毎日のように利用している企業です。排泄行動を考えてみると、人はトイレにこだわりを持つように思います。トイレにある芳香剤は100均で買ったとしても、安物のトイレを使う人は日本では見かけません。治外法権である大使館のような場所をのぞくと、日本でTOTOとINAX以外のトイレを見た記憶がありません。

バフェットは、Wrigley’sという米国トップシェアのチューインガム会社の買収について、その競争優位性を説明しています。「人にとって口というのはこだわりのある場所だ。よく知らない食べ物を口に入れたくはない。慣れ親しんだWrigley’sガムが100円で売っていて、隣に聞いたこともないプライベートブランドのガムが90円で売っていたとしても、ほとんどの人はWrigley’sを選ぶだろう。」

トイレについて言い換えてみます。「人にとって排泄というのはこだわりのある行動だ。よく知らないトイレにお尻を載せたくはない。慣れ親しんだTOTOのトイレが6万円で売っていて、聞いたこともない海外メーカーのトイレが4万円で売っていたとしても、ほとんどの人はTOTOを選ぶだろう。」

私にもよく理解できる事業を展開する企業であり、かつブランド力という競争優位性が存在することは明らかです。20年後も人間の排泄方法に大変革は起きていないでしょうし、TOTOのトイレにお世話になっている可能性が高い。つまり、高い確度で収益の見通しを持てる典型的なバフェット銘柄と評価できます。こうした企業は数少ないですから、よく調べて理解することをお薦めします。

私の考えるTOTOのポイント

TOTOは、2012年に世界90億ドル市場のうち、17%シェアをもつ世界最大のトイレメーカーでした。

しかし、地域によってシェアは違い、それによって収益率にも大きな差があります。

 

TOTOは中国・アジアの高級トイレ市場でトップシェア(2005年時点で、中国の高級市場で30%以上のシェア。参考記事)です。そして、20%近い営業利益率を叩きだしています。

それに比べて、ウォッシュレットの普及率が低く、地場トイレメーカーが浸透している米国や欧州市場では苦戦が続いています。シェアが高いが低成長の日本事業からのキャッシュを、中国・アジア市場に投資していくことが続くのでしょう。

LIXIL(INAXブランド)と比較してみると

トップシェアが大きく稼げることを理解しているLIXIL(INAXブランド)は、2013年に米国2位の米アメリカン・スタンダード、2014年に欧州水栓金具に強く世界シェア8%ある独グローエを買収して規模を拡大している。

LIXILは2015年3月からIFRS会計基準を採用しており、セグメント利益の調整額が大きいのでTOTOの業績と単純比較はできないが、営業利益率は5%前後だと思われる。私は、高級ブランドイメージを確立できているTOTOの利益率が高く維持されると考えている。さらにLIXILは買収の巧拙が試されるので、経営者の資本分配力の見極めがさらに重要になる。

経営者の資本分配力を測るのは難しい。新しくLIXIL社長に就任した瀬戸さんは、MonotaRoを育てるなど経営者としての実績は素晴らしい。しかし、2位以下のトイレメーカーの経営は価格決定力がないので難しいことは述べた通り。優秀な経営者が凡庸な事業を経営するときにどうなるのか楽しみだ。個人的にどちらを経営したいかと言われれば、間違いなくやるべきことが明確なTOTOだ。

ウォッシュレットはどこまで普及するのか?

日本はウォッシュレット大国です。1980年の発売以来、30年をかけて普及率は80%を超えました。私は普段ウォッシュレットを使わないので、その良さが全く理解できないのできません。蓋の自動開閉に自動洗浄、音が鳴ってみたり、ほとんど余計なお世話だとすら感じてしまい、ハイテクトイレでなかなか落ち着けません。

ウォッシュレットになると、トイレはハイテク製品に様変わりします。普及率が1%以下と言われる欧州などで、果たしてどこまで普及するのでしょうか?最初に述べたようにトイレは地域特性が強く、文化的背景と相まって変化が緩やかな業界です。中国やアジアのようにポットン便所から洋式へ移行するときにはウォッシュレットを導入するチャンスの窓が開きますが、先進国ではどうなるのでしょうか?海外のトイレ事情から目が離せません。

Happy Investing!!

長期業績レポート(花王、資生堂、日東電工)

長期業績レポート

4452 花王
4911 資生堂
6988 日東電工

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メモ

花王

2016年12月まで27年連続増配を予定しており、これは日本の最長記録です。長期にわたり増配を続けるには利益成長が必要です。つまり、花王の増配記録は日用品ブランド事業の安定性の表れです。20年後も人は清潔でありたいという欲求を持ち続けるでしょう。さらに、そのための手法が劇的に変わるとは考えにくいです。おそらくは風呂に入り続け、歯を磨き続けるのでしょう。

米国では、American States Waterという水道・インフラ企業が62年連続増配という最長記録を持っているようです。日用品ブランドを展開する企業では、Procter & Gambleが60年、Johnson & Johnsonが54年とやはり長期間の増配を達成しています。

参考リンク:日本の連続増配ランキング)
参考リンク:米国の連続増配ランキング)

資生堂

2014年から魚谷さんが社長を務めています。以前は日本コカ・コーラ社長を務めていた方です。コカ・コーラが強力なブランド力を持つ製品を売る優良事業であるのに対して、デパートの化粧品コーナーに行けば分かるように、化粧品は多くのブランドであふれかえっています。そのため、多くの販促費を必要とする競争の厳しい事業です。

ウォーレン・バフェット氏は、「優秀な経営者が難しい事業を経営した場合、たいていは事業の難しさが上回る」と述べています。魚谷さんはまさにこのケースに当てはまっているような気がして、注目しています。

Happy Investing!!

長期業績レポート(三菱ケミカル、宇部興産、日本化薬)

長期業績レポート

4188 三菱ケミカル
4208 宇部興産
4272 日本化薬

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メモ

日経225採用企業のうち、何社が化学に分類されているでしょうか?答えは17社です。電気機器に分類される29社に次いで多いのです。そんなに多いのか、と意外な気がします。

電気機器に分類される企業は、パナソニックや日立、ソニー、東芝など、個人向け製品を作っていることから日常的に名前を耳にすることが多いです。しかし、化学メーカーは日常生活では影が薄い存在です。社名を聞いても何をしているのかイメージが湧かず、事業内容を読んでもカタカナの化学製品名が並んでおり、理解を深めるにはハードルの高い分野だと感じます。

一例として、三菱ケミカルの2016年3月期有価証券報告書より、【事業の内容】を抜粋してみました。ちょっとカタカナ多すぎませんかね。

ウォーレン・バフェット氏は常々、”Stay within your circle of competence” 「理解できる領域から出るな」とアドバイスしています。私にとって化学会社は、まさに理解できない会社の典型例です。逆に多くの人になじみがないからこそ、化学業界に精通する人にとっては投資チャンスが溢れていように見えるのかもしれません。

Happy Investing!!

長期業績レポート(東海カーボン)

長期業績レポート

5301 東海カーボン

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メモ

東海カーボンの2大事業は、

(1)カーボンブラック:主にタイヤの添加剤として使用
(2)黒鉛電極:電炉での粗鋼生産に使用

カーボンブラック事業は中国次第

カーボンブラックの国内消費量は1990年から年80万トンで頭打ちになっています。国内生産が約3/4、輸入量が約1/4です。

東海カーボンの有価証券報告書を読むと、コモディティー製品を扱うグローバルな事業が、中国の過剰生産にさらされるとどうなるかをよく理解することができます。以下、2015年12月期有価証券報告書からの抜粋です。

中国で過剰生産 → 輸出 → 日本市場の需給バランスが崩れる → 東海カーボンは価格決定力を失う → 減益

ウィキペディアによると、2012年時点で中国が世界のカーボンブラック生産量の約40%を占めていました。現在はさらにシェアが高まっているでしょう。東海カーボンが日本トップシェアと言ったところで、そもそも日本の世界シェアが5%しかありません。このようなグローバル事業において国内シェアを語る意味はなく、要は中国での需給次第で国際価格が決まっていきます。

では、私に中国の国内需給が見通せるのか?自信はありません。中国が不況に陥り、設備廃棄のニュースが世間を賑わすようなことがあれば、買い時なのかもしれません。

地理的な参入障壁のあるローカル事業を探そう

ここ数日の長期業績レポートでは、ガラス業界、セメント業界、カーボンブラック業界を取り上げました。グローバルに製品が動くガラス業界とカーボンブラック業界は、中国の過剰生産を受けて価格決定力を失い、厳しい経営環境です。一方のセメント業界は、輸入量がほぼゼロという対照的な業界です。輸入量ゼロという状況が今後も継続するための条件については理解する必要がありますが、経営者にとってどちらが経営しやすい事業かは一目瞭然ですし、そういう当たり前な気づきに応じて投資していけばいいのではないでしょうか。

Happy Investing!!

長期業績レポート(住友大阪セメント、太平洋セメント)

長期業績レポート

5232 住友大阪セメント
5233 太平洋セメント

メモ

日本のセメント業界には太平洋セメント、宇部三菱セメント(非上場)、住友大阪セメントの大手3社があり、太平洋セメントのシェア30%を筆頭に、上位3社でシェア80%を占める寡占化の進んだ業界です。

出典:決算発表資料

セメントはコンクリートなどの原材料になるので、需要が建設投資とリンクしていることが想像できます。統計を見てみると、予想通りに需要は1990年度バブルの8600万トンをピークに、2015年度には4300万トンまで半減しています。バブルが終わってもしばらくは熱狂が忘れらずに増産を続けてしまい、生産量がピークを迎えるのは1996年度です。このころはセメント会社にとって厳しい経営環境だったことでしょう。各社の社史をみていると、この頃に大型合併が起きています。需要が半減する中、生産設備も統廃合が進んでいる業界だという印象を受けます。

出典:セメント協会 http://www.jcassoc.or.jp/cement/1jpn/jc5.html

セメントの製品特性

1、原料が国内調達できる(出典:セメント協会
2、輸入量が少ない >なぜ?
3、国内で需給バランスしないから、仕方なく輸出している >大きな輸出先は、シンガポールとオセアニア

セメント輸出先 (出典:セメント協会)

昨日紹介したガラス業界と比較して欲しい(関連投稿)。ガラス業界は次のような負の連鎖に悩んでいる。

中国企業が増産 > 中国国内の需給バランスが崩れる > 中国企業が操業度を維持するために輸出を始める > 世界中のガラス価格が低下 > 世界中のガラスメーカーの収益を圧迫

セメント業界も、中国の建築ラッシュが一巡した段階で中国産セメントのダンピングが始まりそうなものだが、現実には輸入はほぼない。次のような疑問に納得できる答えを得ることができ、セメントを統廃合が続くローカル産業と捉えることができれば、投資チャンスは訪れるのかもしれないなと思った。

過当競争を続けた日本国内のセメント価格が国際的に安いからなのか?
どこから買っても一緒と思うセメントにも商品差違があるのか?例えば、日本での建築基準法クリアにはある品質以上のセメントが必要とか。

答えを知っている方、是非教えてください!

Happy Investing!!

長期業績レポート(旭硝子、日本板硝子、日本電気硝子)

長期業績レポート

5201 旭硝子
5202 日本板硝子
5214 日本電気硝子

メモ

過去15年を見ると、ガラス業界は厳しい経営環境であった。2006年に売上規模が2倍もあるピルキントン社を大型買収して経営が迷走した日本板硝子の過去14年の株式リターンは年率-10%以下と目を覆いたくなるような状況になっている(100円投資したら20円になっていた・・・)。比較的地道に経営してきたと思われる旭硝子と日本電気硝子の株式リターンも年率1%程度しかない。

日本企業だけが鳴かず飛ばずだったかというと、そういうことではない。ガラスの世界トップ企業である米国のCorning社の株価を見ても、ITバブル以降は横ばいが続いている。

Corning社の株価(Google Finance)

なぜガラス業界はかくも悲惨な状況なのか?

経済産業省のレポートを見ると、ガラス企業の売上は板ガラス(建築用)と自動車ガラスに大別できる。

板ガラスは商品レベルでの差別性が少ない上に、世界最大手の旭硝子ですらシェアが7%しかない。ガラス製品は既に普及して需要が大幅に増えることは考えにくい成熟産業にも関わらず、コスト競争力を武器に中国企業が増産してしまい、需給バランスを破壊してくる。その結果、価格で競争するしかなくなる。統計をみても、中国からの輸出が爆発的に伸び、日本からの平均出荷価格が2004年から2014年から20%ほど下落している。経営者ならどうするか?現状維持すれば、価格が下落しただけ利益が削られる。最新鋭の設備を導入してコスト競争に参加すれば、ますますコスト下落に拍車をかけてしまう。なかなかに難しいかじ取りだ。

自動車ガラスにしても、購入企業が限られているから価格決定権は握られている。

ガラス業界は難しいことだらけです。例をあげれば、

(1)価格決定権がない
(2)寡占化が進んでいない
(3)大きな設備投資が必要
(4)中国勢からの低価格競争にさらされる
(5)商品で差別化できない

ウォーレン・バフェットが、「優秀な経営者が難しい事業に取り組んだとしても、たいていの場合は事業の特性が持続する」と言っている通りです。このような難しい業界にある企業は、仮に資産ベースで割安に見えても投資はしない方がいいような気がします。

Happy Investing!!

長期業績レポート(横浜ゴム、ブリヂストン)

長期業績レポート

5101 横浜ゴム
5108 ブリヂストン

メモ

日本にはタイヤメーカーが3社あり、全て上場しています。売上規模で並べると以下のようになります。このうち2社を選ぶとして、1位と3位を選ぶあたりが日経平均の銘柄採用方法の良くわからないところです。

1位 3.8兆  ブリヂストン(世界最大の売上)
2位 8500億 住友ゴム(ダンロップ)
3位 6300億 横浜ゴム

タイヤメーカーの長期業績(特にEPS)を見ると、山谷がはっきりとした典型的な景気循環産業であることが分かります。例えば自動車用タイヤには新車需要と更新需要がありますが、不況時には新車需要が落ち込みます。しかし、更新需要によって一定の工場稼働率を維持できるので、新車需要の比重が高い自動車メーカーよりも収益が安定していることが想像できます。自動車各社の長期業績レポートと比べてみてください。

7201 日産自動車
7202 いすゞ自動車
7203 トヨタ自動車
7205 日野自動車
7211 三菱自動車
7261 マツダ
7267 ホンダ
7269 スズキ
7270 富士重工業

景気循環産業であるタイヤメーカーの収益水準を見る限り、現在は景気のピークから下降局面に入ったような印象を受けます。果たしてどうなるでしょうか。

長期業績レポート(昭和シェル石油、JXホールディングス)

長期業績レポート

5002 昭和シェル石油
5020 JXホールディングス

メモ

日本の石油元売りは5社あり、全て上場しています。現代生活の基盤といえるガソリンをはじめとする商品を扱っているので市場規模は大きく、各社とも兆円規模の売上があります。

1位 売上8.7兆円 JXホールディングス 
2位 売上3.5兆円 出光興産      
3位 売上2.6兆円 東燃ゼネラル石油
4位 売上2.2兆円 コスモエネルギー
5位 売上2.2兆円 昭和シェル石油

まず不思議なのが、石油セクターから2社が日経平均に採用されているわけですが、なぜ5位の昭和シェルなのかということです。私は分からないので、日経新聞社に聞いてください。

次に気付くのは、2位の出光以下は売上規模が近いということです。石油元売り事業は、製油所に大きな設備投資を行うことが必要です。日本国内の石油製品需要は既に減少に転じていることから余剰設備の廃棄が必要です。各社とも操業度を落としたくないので、仮にA社とB社の製油所がともに50%で操業しているくらいなら、合併したうえで2つある製油所の一つを閉め、もう一つを100%操業するという経営判断になります。

こうした背景で、出光+昭和シェル、JXホールディングス+東燃ゼネラル と2つの大きな合併話が進んでいます。しかし、出光の創業家が合併に反対(株式を約30%保有)していて先行き不透明です。合併が長引けば長引くほど各社が我慢比べによって体力を奪われていくという状況が見えます。

石油業界においては経営統合してスリム化する以外にどういう経営方針があるのか、2016年8月に創業家の出光昭介名誉会長の手記が公開されました(リンク)。私なりにまとめると、「出光は、社員を家族のように思い経営してきた。厳しい経営環境の中、自分の社員の面倒を見るだけでも大変なのに、他社と合併した上でその社員まで面倒を見切れないよ」ということでしょうか。戦後も人員整理をしなかったという文面から、リストラをしたくないという意思は強いようです。

家族の論理 vs 資本の論理に目が離せません。

Happy Investing!!