長期業績レポート(住友商事、三菱商事)

長期業績レポート

8053 住友商事
8058 三菱商事

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メモ

無印良品を展開する良品計画(7453)を2001年から率いてV字回復に導いた松井忠三さんの著書を読んでいます。その中に、「会社は社長の人格以上に大きくならない」という言葉が出てきます。

企業によって、経営陣の数はまちまちです。例えば今日取り上げた三菱商事は、2016年3月期に取締役と監査役合わせて16名の経営陣がいました。さらには過去にさかのぼって経営陣の変遷を見ていくことでも、会社の社風をよりよく感じ取ることができます。

2004年3月以降に三菱商事の社長は3名いましたが、それぞれ6年勤めたあと、会長職を6年勤めるようです。つまり計12年間経営トップにいます。それに対して、副社長や常務はコロコロ変わっていることが印象的です。常務を一年のみ勤めている人も散見されます。降格理由まで調べていませんが、商社という事業に投資して育てるビジネスモデルの中、数年で結果を残せるものでしょうか?そんな素人感覚の素直な感想を持つことが大事だと思います。なぜなら、経営陣も人間だからです。3年で結果を出さなければいけないというプレッシャーにさらされている取締役がどんな行動を取るかは想像に難くありません。

三菱商事の取締役+監査役(出典:有価証券報告書)

開示資料だけではよい運用成果は望めないという人もいますが、私はそうは思いません。業績や経営陣の長期的な変遷まで踏み込んで調べている人は、投資家の10%もいないと思います。ハッキリ言って面倒くさいですし、たいていの場合は特に分かることもないですから。でも、私としては当たり前のことを当たり前に続けて、10%の勝ち組に入りたいと思っています。

Happy Investing!!

長期業績レポート(豊田通商、三井物産)

長期業績レポート

8015 豊田通商
8031 三井物産

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メモ

私は、「企業の強さ=ビジネスモデル x 経営者」だと思っています。

ウォーレン・バフェットが、「厳しい業界に優秀な経営者が取り組んだ場合、たいていは業界の厳しさが上回る」と語っていることからも、投資においてはビジネスモデルの優劣の見極めが最重要課題だと思っています。そして、次の課題が優れたビジネスモデルのポテンシャルを最大限に引き出せるかどうかに関わる、経営者の資質の見極めになります。

最近興味があるのが、適切な経営陣の任期です。今回の長期業績レポートで取り上げた2社のトップ経営陣を見てみましょう。三井物産は5-6年で社長が会長になり、会長が退任します。

三井物産の経営陣

豊田通商は、生え抜きが社長、会長になるケースと同時に、大株主であるトヨタ自動車から転向してくる経営陣がいます。過去15年ほどは、会長か社長のどちらかがトヨタ自動車出身となっています。

豊田通商の経営陣(赤字がトヨタ自動車出身者

上記の2社のどちらの経営陣のあり方がよいでしょうか?私は、生え抜きしか経営陣になれない三井物産に比べて、外部の風(トヨタ自動車と決まっていますが。。。)が入ってくる豊田通商の方が好感が持てます。前例にとらわれない大胆な決断ができる気がします。

経営陣の経歴を見ると、よりよく企業文化を理解できると思います。

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長期業績レポート(伊藤忠、丸紅)

長期業績レポート

8001 伊藤忠
8002 丸紅

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メモ

今回から商社を取り上げます。給与水準や就職人気度が高く、実際に勤務している友人も多いです。何かと耳にすることが多い日本を代表する企業群なので、長期業績レポート作りが楽しみです。

日経平均には7社の商社が採用されています。7社を合計すると、時価総額で約14.5兆円、連結従業員数約50万人を擁しています。

私の中では、商社を投資会社として理解しています。株式保有だけではなく自分たちで事業を運営することもあるので、プライベートエクイティ―に近いでしょうか。

事業が多岐にわたるため、投資家の立場で企業の本質価値を見極めることが難しいです。経営陣が果たして自社のことをどこまで理解しているのだろうかと思うときがあります。

伊藤忠を例にとると、2016年3月期に開示されている子会社や関連会社は900社以上ありました。

2010年より社長を務める岡藤さんは、繊維畑の出身です。つまり、繊維セグメントの100社については予備知識を持っていると想像できます。

しかし、残りの800社についてはどの程度理解しているのでしょうか?6つの主要セグメントがある中、岡藤さんに土地勘が乏しいと想像される、金属事業とエネルギー事業への投資バランスをどのように判断するのでしょうか?

商社の事業ポートフォリオは分散投資されているから安心だと言えば聞こえが良いですが、私は経営資源を集中させて特定の事業領域で突出している企業の方がよく理解できると感じます。

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長期業績レポート(住友電気工業、フジクラ、東洋製缶)

長期業績レポート

5802 住友電気工業
5803 フジクラ
5901 東洋製缶

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メモ

先日、友人と中小型株についてああでもないこうでもないと情報交換していました。ふと友人が、「日経225銘柄だけで運用してと言われたらどうする?」と聞いてきました。

これまで日経225銘柄のうち、160以上の銘柄について長期業績レポートをまとめてきました。その感想ですが、日経225銘柄での資産運用は難易度が高いと思います。

EPSを継続的に成長させる力のある企業が少ないので、そのような企業の株をただ持ち続けても稼げません。必然的に株価が安くなるまで待って買い、適正価格に戻ったら売る戦略をとることになります。

成長力のある企業(例:ソフトバンク、ファストリテイリング)はあることにはありますが、数少ない大型成長株として機関投資家の資金が流入するため、常に高いバリュエーションで取引されており、なかなか買い場が訪れません。

残念ながら日経平均銘柄での運用は、5年に一度の不景気を待って買い、好景気で売るということを繰り返さざるを得ないのではないでしょう。

Happy Investing!!

長期業績レポート(古河機械金属、古河電気工業)

長期業績レポート

5715 古河機械金属
5801 古河電気工業

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メモ

今日の2社は古河グループに属しています。古河市兵衛(1832 – 1903)が1877年に足尾銅山を買収。大鉱脈を掘り当てたことから多角化が始まります。親会社の一部門として新規事業に取り組んではスピンオフするのが古河グループの特徴です。

以下が、古河機械金属から派生した主要5社です。現在の時価総額を比べると、子が親を超え、孫が子を超えて、、、ファナックまでつながっていることが分かります。ファナックから次の大企業が生まれるのでしょうか?

1875年 古河機械金属(鉱山開発)       970億円
1884年 古河電機工業(電線製造)       2900億円
1923年 富士電機  (電気機器製造)     4800億円
1935年 富士通   (通信機器製造)     1兆4000億円
1972年 ファナック (工作機械制御機器製造) 4兆6000億円

古河グループには、時流を捉えて形にすることできるDNAがあるのかもしれません。そして、こうした歴史を知るにつれ、「スピンオフした企業は投資対象として面白い」とするCharlie Mungerの言葉を思い出します。

関連投稿】調査対象企業の探し方:スピンオフ

Happy Investing!!

長期業績レポート(住友金属鉱山、DOWA)

長期業績レポート

5713 住友金属鉱山
5714 DOWA

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メモ

長期業績レポートのフォーマットを更新しました。

社員数やバランスシートの情報を加え、ROEやROAなどの効率性指標が分かるようにしました。ROEやROAを売上、利益率、資産回転率、レバレッジと要因分解することで、より良く経営方針が理解できると思います。

お役に立てて頂ければ幸いです。

Happy Investing!!

長期業績レポート(東邦亜鉛、三菱マテリアル)

長期業績レポート

5707 東邦亜鉛
5711 三菱マテリアル

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メモ 

直島訪問の思い出

 

直島の衛星写真(出典:Google Maps)

私は「三菱マテリアル」と聞くと、直島を思い出します。安藤忠雄設計の地中美術館を見学に出かけましたが、何故か三菱マテリアルに勤めるおじさんと仲良くなり、直島精錬所を案内して頂きました。勝手に精錬所の中を歩き回ってたから、かなり偉い方だったのかもしれません。驚いたのは地中美術館のある美しい島の南側とは違い、精錬所のある北側は禿山になっていたことです。精錬所で鉱石を溶練する際に発生する亜硫酸ガスが原因だそうです。大正9年(1920)創業ですから、当時は環境基準も脱硫装置もなく駄々漏れ状態だったのでしょう。

精錬所受入の経緯について、Wikipediaからの抜粋です。
ーーーーーー
前近代的な産業基盤のまま明治中期から人口が増加した直島村では次第に経済が停滞し、都市へ向けて人口が流出し始めるが、そのような直島にも近代化の波が押し寄せる。1916年大正5年)、農漁業の不振で財政難に陥った村は三菱合資会社の打診した銅製錬所を受け入れる決断を行う[4]製錬の際に出る亜硫酸ガスは、足尾銅山別子銅山など各地で、山の木々をすべて枯らし下流で水害を起こすなどの煙害を起こしており、瀬戸内海の犬島四阪島契島などの離島に各社の精錬所が移されつつあった。三菱も煙害の心配の少ない離島を探したが、農業や石材業などを抱える豊島は断り、農漁業が零細な直島は三菱の打診に最後の望みを託した。翌1917年(大正6年)、島の北端で三菱合資会社の中央製錬所が操業を開始すると、直島は三菱金属鉱業の企業城下町として急速に発展し、働き口が確保されたことによる人口流出の歯止めや豊富な税収によって、瀬戸内の離島においてだけでなく香川県内でも有数の裕福な自治体となっている。一方で、島の北半分および周囲の島々の木々がほとんど枯れるという煙害に悩んだ。(中略)

三菱金属鉱業は1967年に新製錬所の建設の方針を打ち出し、小名浜と直島を候補地とした。条件的に不利であった直島から製錬事業を流出させないため、直島町、香川県、直島製錬所労働組合などが本社に陳情を行った結果、直島製錬所を近代化することに決まり、1969年に新製錬所が稼動した[5]。しかし、この頃を境に金属製錬事業の高度化と平行して合理化が進み、以来従業員数や島の人口は減少し続けている。また銅の国際価格の低迷から製錬事業そのものが低迷し、直島製錬所はリサイクル事業など、金属製錬以外の新規事業開拓を迫られていた。
ーーーーーー

財政難や人口流出に直面した自治体が、長期的なリスクを知りながらも「背に腹は代えられない」と誰も欲しくはないお荷物資産を受け入れてしまうという構図は、鉱山や精錬所、原子力発電所と同じようです。直島では植林などの対策をとっているそうですが、衛星写真からも後遺症が100年後も続いていることをまざまざと見せつけられます。私にとっては、日本の産業史の負の一面を思い出させてくれる経験です。

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長期業績レポート(SUMCO、日本軽金属、三井金属鉱業)

長期業績レポート

3436 SUMCO
5703 日本軽金属
5706 三井金属鉱業

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メモ

SUMCO(3436)はシリコンウェーハの世界シェア2位(Wikipediaによると、2013年にシェア30%)企業です。シェア1位は信越化学です。

下の写真のようにシリコンインゴッドを厚さ1mmに薄くスライスして研磨・洗浄することでシリコンウェーハができます。このシリコンウェーハの上に、集積回路が作られて半導体となります。現代のIT生活の根幹を支える製品です。

出典:SUMCO

IT機器が増えている、つまりシリコンウェーハの使用量が増えているはずなのに、SUMCOの売上は伸びていない

身の回りを見ても、10年前からIT機器が増えています。つまり、シリコンウェーハの使用量が増えているはずです。しかし、SUMCOの売上高は横ばいです。これはどういうことなのでしょうか?

シリコンウェーハの使用量は増えているが、伸びはGDP成長率程度

調べてみると、予想通りにシリコンウェーハ出荷面積は過去15年間で右肩上がりに成長しています。成長率は長期的に年率2-3%と世界のGDP成長率と大差なく、過去5年間にスマホの普及などがあったことを考えると成長率が低い気がします。

半導体の微細化で、同じ性能を持つ半導体がより少ないシリコンウェーハ面積で製造可能になった

原因の一つは、上図のように回路の集積度が上がっていることでしょう。半導体に使われる線の幅は、2005年に主流だった90nmから、現在は20nmにまで微細化が進展しています。つまり、同じ半導体を作る場合には、2次元製品なので、(20/90) x (20/90) = 従来の5%の面積に収まってしまう可能性があるのです。

付加価値の薄いシリコンウェーハは価格下落の荒波に

出典:東京エレクトロン

現在の半導体サプライチェーンにおいて、イノベーションを起こしてきたのは微細化工程だと思います。2001年から300mmの大型シリコンウェーハサイズに移行して以来、シリコンウェーハメーカー発の大きなイノベーションはなかったようです。

付加価値がないと、当然のように価格競争が始まります。その結果として、シリコンウェーハの面積あたり単価は2007年から2015年にかけて半減してしまいました。結果として、SUMCOの売上が伸び悩んでいるようです。自社の製品価格が10年で半減してしまうとは、何とも経営の難しい業界ですね。

バフェットの言葉

「厳しい業界に優秀な経営者が挑んだ場合、たいていの場合は業界の厳しさが経営者の優秀さを上回る」

Happy Investing!!

長期業績レポート(日新製鋼、大平洋金属)

長期業績レポート

5413 日新製鋼
5541 大平洋金属

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メモ

大平洋金属はニッケル鉱石を購入製錬し、ステンレス鋼を作るときに必要なフェロニッケル製品を製造しています。

大ざっぱに利益を考えると、次のような式になります。

(フェロニッケル単価ーニッケル単価 x 歩留まり) x 販売量

4つある変数のうちの歩留まりは自助努力でコントロールできるでしょうが、残りの3つはお天気次第です。

コントロールできない要素を前提にした中期経営計画はあてにならない

コントロールできない主要変数が3つあるにも関わらず、大平洋金属は3年に1回中期経営計画を発表しています。そして、2007年度から2015年度の計画と実績を比較する限り、下図のようにさっぱり当たりません。つまり、コントロールできない主要変数を予測することは、専門家である事業会社でも難しいということでしょう。

業績予想は難しい

会社が立てた3年先の中期計画ですら大きく外れてしまう事業への投資は、私は難しいと感じました。ニッケルについては素人同然ですし、仕方なしにBS上の清算価値に基づいた価値判断をすることになるでしょうか。

Happy Investing!!

長期業績レポート(新日本製鉄、神戸製鋼、JFE)

長期業績レポート

5401 新日鉄住金
5406 神戸製鋼
5411 JFE

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メモ

長期業績レポートをまとめていて、鉄鋼業は本当に経営が難しい産業だと感じました。

多額の設備投資が必要

まず、鉄鉱石から銑鉄を取り出す高炉を作るには千億円単位の設備投資がかかります。一度高炉に火を入れれば、20年ほど稼働し続けなくてはならず需給調整ができません。火を止められない理由は、溶けた鉄が途中で冷えて固まってしまうからです。さらに、改修する場合でも、下の神戸製鋼加古川製鉄所第3高炉のプレスリリースに書かれているように、数百億円単位のお金がかかります。

出典:神戸製鋼プレスリリース

商品としての差別化はなく、資金があれば参入できる

多額の設備投資をして鉄ができたとしても、悲しいかな商品としての差別化は難しいようです。

その根拠として、2007年から2016年までの世界の銑鉄生産量を見ると、2007年に9.6億トンから2016年に11.6億トンまで2億トン増えています。国別にみると、なんと中国だけで2.2億トンも生産量が増加しています。ほかに2007年から2016年にかけて生産量が増えた主要国はインドと韓国だけ。その他の主要生産国、ドイツ、アメリカ、ロシア、ブラジル、日本などは全て減産しています。この事実から、「製鉄所はお金を払えば作れる」ということが言えると思います。

出典:Wikipedia

中国の過剰設備による輸出増加で国際価格が低迷

中国鉄鋼メーカーの生産量増加スピードが内需スピードを超えてしまい、輸出が始まります。中国による2015年の鉄鋼輸出量は1億トン以上(参照リンク)と日本の生産量より多かったそうです。その結果が下の鉄鋼価格に表れています。

直近では価格が反発しているように見えるが?

2016年初めから、鉄鋼の国際価格は2倍ほどに反発しています。では、鉄鋼メーカーは投資先として魅力的なのでしょうか?私にはそうは思えません。鉄鋼価格が高値圏に戻れば、再び設備投資合戦が始まるでしょう。

最後に、買収を繰り返して世界最大の鉄鋼メーカーとなったアセロールミタルの長期株価を載せました。 現在の株価を短期的な安値とみることもできるかもしれませんが、長期投資の難しそうな業界だという印象がぬぐえません。

アセロールミタルの株価(Google Finance)

Happy Investing!!