長期業績レポート(凸版印刷、大日本印刷)

長期業績レポート

7911 凸版印刷
7912 大日本印刷

日経225採用企業の長期業績レポート一覧

ひとくちメモ

本日取り上げた印刷会社大手の2社は、どちらも過去15年間投資すると損をしてしまいました。印刷業界全体が縮小傾向なので、大手はその影響から逃れることが難しいことが良くわかります。小規模な企業であれば、素早く方向転換することができるかもしれませんが、大手はなかなかそうはいきません。温暖な気候に適応しすぎで環境変化に負けてしまった大きな恐竜と、生き残った小さな哺乳類の話を思い出します。

私が尊敬する個人投資家の一人である角山さんが、「砂漠に咲く一輪の花」と称して、衰退産業の勝ち組企業を取り上げています。例えば、印刷業界でも、医療品のパッケージ印刷に特化した朝日印刷のようなキラリと光る企業があります。衰退産業で優れたビジネスモデルを提示することができれば、競争相手が弱いので圧勝する可能性があります。業界が悪いから、、、と先入観で決めつけることなく、事業単位でしっかりと評価していきたいです。

Happy Investing!!

長期業績レポート(三井造船)

長期業績レポート

7003 三井造船

日経225採用企業の長期業績レポート一覧

ひとくちメモ

kabutan.jpでは、三井造船の株価を1950年までさかのぼることができます。1950年1月に60円だったので、67年経っても株価が3倍にしかなっていないことに衝撃を覚えてしまいます。複利で年率1.7%のリターンしか出ていません。配当利回りが平均1.3%あったとしても、合計年率3%。期間を通しての銀行定期預金にも大幅に負け越していると思います。

私は、会社の長期業績を決める要素は、(1)事業環境 x (2)経営陣の能力 だと思っています。

(1)に関していえば、1990年に世界の船舶供給量の35%を担っていた日本の造船業界は韓国、中国の大型造船所の台頭を受けて、競争力を失っていきます。2012年の日本の建造シェアは15%に低下しています。造船は労働集約型ビジネスなので、人件費の上がった国では勝ち目がないと思います。

(2)に関していえば、このサイトでもたびたび指摘しているように、経営陣と株主の利害が一致していないことが、多くの日本企業の問題だと思っています。

上記の2016年3月末の大株主一覧を見てもわかるように、三井グループ各社(三井物産、三井生命、三井住友銀行)と信託口座(年金基金)がほとんどです。香川の地銀である百十四銀行も、三井造船が香川県高松市に造船所をもっているために、お付き合いで株式保有しているのでしょう。つまり、株主の中に純粋に株価を上げて稼ごうと思っている人が少ないのです。これでは、ガバナンスの改善も期待できません。

次に経営陣を見てみましょう。私が注目するのは、果たして株主の利益を代表して行動してくれる経営陣かどうかというところがポイントです。

会長の加藤さんは1973年から43年在社していますが、83000株しか保有していません。一株170円として、1400万円です。社長の田中さんも、1973年から43年在社していますが、64000株しか保有していません。一株170円として、1100万円です。副社長の山本さんの保有株式はさらに少ないです。

一方の役員報酬はというと、取締役14人で3億円、平均年収2100万円です。なぜ、年収2000万円以上ももらっている経営者が、1000万円少々しか自社株式を保有していないのでしょう??私には、株価が上がる気がしないからとしか思えません。自分が一番会社の内情をしっているわけですから、企業価値の向上=株価上昇に自信があれば、買いますよね。。。

三井造船の経営陣の個人収支にとって最も大事なのは、おそらく給与を守ることであって、株価は2の次でしょう。その事を裏付ける上のようなリリースが、4月28日に発表されました。

2017年3月期の度重なる業績下方修正の責任を取って、経営陣が給与を一部返上するという内容です。社長は、月額報酬の30%を3ヵ月に渡って返上するそうです。つまり、30% x 3ヵ月 = 月額報酬の90%。年収2100万とすれば、わずか150万円に過ぎません。冗談かと思うような少額です。

2016年3月期決算時点では2017年3月期の業績予想は営業利益で220億円と発表されていました。それが、2017年3月期の実績は83億円と、約140億円も下振れているのです。その責任の取り方が、わずか150万円の減俸とは、本当に株主をバカにしていると思います。

しかし、時価総額1000億円以上の大企業が、真面目にこのようなリリースを出しているのです(IR部門は止めないのでしょうか。。。いや、止めれないんでしょうね)。おそらく株価よりも給与の方が自分の懐にとって大事な三井造船の経営陣にとって給与カットを示すということは、何よりの誠意を見せているつもりなのでしょう。

ちなみに、AppleのSteve Jobsは1997年から2011年まで、14年間年棒$1で働いていました。その一方で、550万株を保有しており、その価値は1997年に一株$3から、2011年には$300まで上昇していました。保有株式の価値は、16億円から1600億円になったのです。

株主と利害が一致した状態で働いてくれる経営陣と同じ船に乗りたいものです。

Happy Investing!!

長期業績レポート(NSK、NTN、JTEKT)

長期業績レポート

6471 NSK
6472 NTN
6473 JTEKT

日経225採用企業の長期業績レポート一覧

ひとくちメモ

本日取り上げた3社は、どれもベアリング業界に所属しています。同業他社を比較するのは、勉強になることが多いです。それは、業界の追い風・向かい風の影響が各社ともに同じと考えられるため、各社独自の競争力の差が明らかになるからです。

違う業界に属している企業の独自競争力を比較をするためには、まず業界そのものが追い風・向かい風をどれほど受けているのかによってゴルフでいうところのハンディをつけて業績を評価する必要があり、なかなか難しいです。

さて、ベアリング3社の長期業績を見て、どんな特徴が見つかったでしょうか?

以下、私がポイントと思った点です。

・NSKのトップ経営陣は在任期間が長い。
・NSKの収益性が、利益率5%を超えられないNTNやJTEKTに比べて高い。
・ベアリング業界は景気変動の影響を受けるシクリカル業界である。拡大局面の持続期間は約6年。そこから2年の後退期があるのがこれまでのパターン。2017年3月期は減収減益が予定されているが、2018年3月期にも減収減益が続くのだろうか?

たくさん疑問を持ちながら業績を見ていると、色々な発見があると思います。

Happy Investing!!

長期業績レポート(荏原、千代田化工、ダイキン、日立造船)

長期業績レポート

6361 荏原
6366 千代田化工
6367 ダイキン
7004 日立造船

日経225採用企業の長期業績レポート一覧

メモ

株価 = EPS(一株あたり利益) x PER = 売上 x 利益率 / 株式数 x PER と書くことができます。

まず、株価を長期的に上げるためにはPERの拡大に頼るだけでは無理なので、必ずEPSの上昇が必要となります。次に、EPSを上げるためには、(1)売上を上げる、(2)利益率を上げる、(3)株式数を減らす(自社株買い)、という3つの選択肢があります。

2013年の株価上昇局面で、日本企業はEPSも改善していますが、その多くが(2)利益率の改善によるものだと感じます。不採算事業を切り離したり、コストカットをしたりした結果としての利益率上昇はもちろん素晴らしいことなのですが、ある一定レベルを超えた利益率の改善は持続的なのだろうかと思ってしまいます。

一般的に、日本の大企業の長期業績をみていると、継続的に売上を伸ばす力のある企業が少ない気がします。しかし、より大きな企業へと成長するためには売上成長が重要なのではないかという思いが強い今日この頃です。

本日紹介した企業の中で、ダイキン(6367)は海外競合他社の買収も含めて継続的に売上を伸ばすことができる(14年平均年率+10%)会社です。是非、各企業の長期業績レポートを見比べてみてください。

Happy Investing!!

長期業績レポート(日立建機、クボタ)

長期業績レポート

6305 日立建機
6326 クボタ

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メモ

日立建機の経営陣を見ていて、気になることがありました。

日立建機は、有価証券報告書が入手できた2006年3月期以来、『委員会設置会社制度』を利用しています。委員会設置会社とは、指名委員会、監査委員会、報酬委員会という3つの委員会を置く株式会社のことだそうです。ガバナンスの向上を狙っているのでしょうが、果たしてその効果をどのように測定すればいいのでしょうか?

特に、直近7年ほどは、2年ごとに取締役会の会長が代わっています。木川さんを除いて親会社である日立製作所OBが会長に就任していますが、これが果たして望ましい経営体制なのでしょうか?

そもそも、日立製作所は50.23%とギリギリ過半数の株式を保有しているだけです。経営陣を送り込んでくるなど、日立製作所の意向に沿って経営されることが、残り49.77%の株主にとって本当に望ましいことなのでしょうか?2年という短期間で交代してしまう取締役会長に責任が取れるのでしょうか?

まとめ

私は、このような親会社の意向を強く受けている子会社への投資に躊躇してしまいます。それよりも、創業社長や一族が大株主であり、我々少数株主と利害を一致させながら経営していく会社を好ましく思ってしまうのです。

Happy Investing!!

長期業績レポート(総合重機 その2)

長期業績レポート

6302 住友重機械
7011 三菱重工業
7012 川崎重工業(日経平均には採用されていません)
7013 IHI

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メモ

参考】長期業績レポート(総合重機 その1)

総合重機の決算資料を見ていると、多種多様な事業をどのように管理するのだろうかという疑問を持ちます。

みなさんが、事業を運営していると想像してください。経営者の最大の仕事は、資本配分です。余剰資金が100円あったとして、いくら、どの事業に投資すべきでしょうか?魅力的な投資先がないのであれば、資金のうちいくらかは株主に配当して返すべきでしょうか?それとも、多くの投資機会があるので、さらに借入や新株発行して手元の余剰資金以上に投資すべきでしょうか?

事業が1つか2つしかないのであれば、判断できる気がします。例えば、ファミリーレストランを直営展開しているとすれば、出店エリア分析に基づき、新店を出す判断はできそうです。しかし、総合重機はそうはいきません。例えば住友重機械には6つのセグメントがあり、それぞれのセグメント内にも多くの事業があります。一体どのように優先順位を決めるのでしょうか?

中期経営計画にみる、住友重機械の事業ポートフォリオ管理方法

まず、住友重機械の1998年度から2016年度までの中期経営計画のまとめを決算資料から抜き出しました。

躍進07(2005-2007年度)

グローバル21(2008-2010年度)

イノベーション21(2011-2013年度)

中期経営計画2016(2014-2016年度)

出典:2016年3月決算説明会資料

長期的な推移を見る重要性

20年近い変遷を見て、どのような感想を持ったでしょうか?例えば、直近の中期経営計画2016だけ見たならば、目標値を全て達成していて素晴らしい!と思うかもしれません。しかし、過去にさかのぼることで、よりよく現在の立ち位置が見えてきます。

住友重機械は2001年末に株式が額面50円を割れて取引されるほどの経営危機にありました。全従業員が給料カットを受け入れ、財務健全性を回復させていきました。スリムになったところにリーマンショック前には好況の追い風が吹き、躍進07ではROIC10%の目標を軽々と達成しました。

しかし、ここからはなかなかROIC10%の目標をクリアできなくなります。経営危機が過ぎ去ったことで、スリムになった事業に贅肉が付き始めたのでしょうか?挙句の果てには、中期経営計画2016ではROIC10%の目標の方を7%へと下方修正してしまいます。これまで長く掲げてきた10%目標とは何だったのでしょうか?

今回の中期経営計画はめでたく各目標値をクリアできそうです。ROIC7%に居心地がよくなってしまうのか、これからどこへ向かうのか次の中期経営計画が楽しみです。

Happy Investing!!

 

長期業績レポート(総合重機 その1)

長期業績レポート(総合重機)

6302 住友重機械
7011 三菱重工業
7012 川崎重工業(日経平均には採用されていません)
7013 IHI

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メモ

総合重機メーカーとは、要は金属で自動車(プリウスの車両重量は1.3トン)や建設機械(売れ筋の油圧ショベルは20トン)より重いものを作っている会社です。

主な製品

三菱重工のホームページから主な製品を抜粋させて頂きました。とにかく、重くて大きいです。男心をくすぐる製品ばかりです。

エネルギー(風力発電所の羽根+ローター+ハブ:50トン)

出典:三菱重工業

航空(ボーイング787:160トン)

出典:三菱重工業

宇宙開発(H-2A型ブースター4基搭載:445トン)

出典:三菱重工業

船舶・海洋(大型船舶エンジン:2000トン)

出典:三菱重工業

投資先としての総合重機メーカー

個人的にはとても惹かれる製品群を作っている総合重機メーカーですが、投資先としては魅力的なのでしょうか?

まず、現在の時価総額などを上にまとめました。時価総額では三菱重工が1兆5000億円と頭一つ抜けていて、それを残り3社は5000~6000億円です。売上対比では、住友重機械工業が高いバリュエーションで取引されている(=市場評価が高い)ことが印象的です。

製品を見ているだけで楽しいので、明日からはしばらく総合重機メーカーについて考えていきます。

Happy Investing!!

 

長期業績レポート(オークマ、アマダ)

長期業績レポート

6103 オークマ
6113 アマダ

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メモ

今回の長期業績レポートで取り上げた機械セクターの2社は、工作機械メーカーです。

工作機械とは何か

現代生活は、自動車など金属製品に囲まれています。プラスチック製品も多いじゃないかと思われるかもしれませんが、金属の金型に樹脂を流し込んで作っているので、やはり金属加工が必要になります。

工作機械は金属を加工するための道具です。機械を作るための機械であることから、「マザーマシン」と呼ばれることもあります。普段の生活で目にすることはありませんが、工場で大活躍して現代生活を支えてくれています。

旋盤工
(c)MASAAKI HORIMACHI/SEBUN PHOTO
出典:amanaimages

金属を加工すると聞いてイメージするのは上の写真のような旋盤工かもしれません。しかし、手作業では大量生産に限界があります。

そこで、1970年代からNC(数値制御)できる工作機械が主流となりました。パソコンのようなディスプレイが付帯された下のような工作機械です。

Image result for オークマ 工作機械 写真
出典:名古屋大学

需要の変動が大きい

みなさんが製造業の経営者だとして、どんなときに工作機械を買いたいと思うでしょうか?そんなに壊れるものではないので、工場の新設や増設のときが多いと想像できます。では、どんなときに工場の新設や増設をするでしょうか?景気の良いときです。つまり、工作機械の需要は景気の影響を強く受けてしまいます。

オークマの連結売上高
オークマの一株利益(EPS)

上にオークマの売上高とEPSの推移を長期業績レポートから抜粋しました。リーマンショックの前後では、売上が2008年3月期の2140億円から、2010年3月期には600億円まで、2年で70%も減少してしまいました。外部環境の影響が大きいので、経営するのが大変そうです。

景気サイクルのどこにいる?

工作機械メーカーへの投資には、景気サイクルの見通しが不可欠です。売上やEPSの動きを見ると、景気のピーク近くで投資すると確実に損をすることが想像できます。現在は景気サイクルのどこにいるのでしょうか?収益は2010年3月期を底に、6年間拡大局面が続いてきました。

2017年3月期には減収減益の会社予想が発表されていますが、まだまだ黒字です。過去2回の景気後退局面では、工作機械メーカーは軒並み赤字に陥りました。今回は違うのでしょうか?

Happy Investing!!

 

長期業績レポート(日本製鋼所)

長期業績レポート

5631 日本製鋼所

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メモ

日経平均の機械セクターは16社

今回から、長期業績レポートは機械セクターを扱っていきます。日経平均には機械セクターから、次の16社が採用されています。

私は2006年から2009年まで、キャピタル・グループという機関投資家のアナリストとして、機械セクターを担当していました。どの企業も、IR取材、経営陣への取材、工場見学など思い入れの深い企業です。

日本製鋼所の思い出

原子力ルネサンス

2007年ごろ、投資の世界では「原子力ルネサンス」という言葉が流行っていました。中国を中心とする新興国の経済発展によってエネルギー需要が高まるなか、原油の生産が頭打ちになるという「ピークオイル」説と相まって、原油価格は1990年代末の1バレル$20から$100以上に高騰していました。膨大なエネルギーを賄えるのは原子力発電しかないという論理展開で、1979年のスリーマイル島原子力発電所事故や1986年のチェルノブイリ原発事故以降は新設が減っていた原子力発電所が再び増えるという見通しだったのです。2006年の東芝によるウェスティングハウス買収も、このような時代背景に後押しされて行われたのでしょう。

WTI原油価格(出典:macrotrends.net)

ヤカンを作れるのは誰か?

出典:三菱原子燃料(株)

原子力発電所の仕組みそのものは単純です。原子力発電にはPWRとBWRという2種類ありますが、要は膨大な核分裂エネルギーを制御してお湯を沸かし、蒸気でタービンを回して発電します。バカでかいヤカンのようなものです。圧力容器と言われるこのヤカン、福島原子力発電所事故で耳にした方も多いと思います。

鍛造中の写真(出典:日本製鋼所)
鍛冶屋も小規模で鍛造中(出典:worldfolksong.com)

問題は、そんなバカでかくて危険物質を中に入れることができるヤカンを作ることです。そんな世界でも数社しかない技術と経験を持っているのが、日本製鋼所です(製品リンク)。作り方はいたって原始的です。鍛冶屋が熱した金属棒をトンカントンカンやって包丁を作ったのと原理的には同じですが、これまたバカでかい規模で行います。14000トンのプレスを使って、チェーンで大型鋼塊をグルグル回しては叩いていきます。

このように、我々の生活を支えてくれていながら、まず目にすることのない光景や人々に触れることができるのは投資の醍醐味だと感じます。工場見学を行っている企業も多いので、是非参加をお薦めします。身近なものがどうやってできているか知ると目から鱗のことが多いです。

投資と政治リスク

福島原子力発電所の事故は、日本製鋼所の作った圧力容器の問題ではなく、「原発安全神話」に基づき安全対策を怠った結果だと認識しています。そのようなお役人のミスによって、素晴らしい技術が発揮される機会が失われてしまうことが残念でなりません。政治家は資本の論理では動いていないので、投資家の立場で原子力発電のような政治リスクが大きい事業に投資することは難しいなと感じます。

Happy Investing!!

長期業績レポート(長谷工)

長期業績レポート

1808 長谷工

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メモ

長谷工は、おそらく日経平均採用企業の中で、過去15年間に最も新株発行をした会社だと思います。分割調整後ベースになりますが、2002年から2016年3月期末にかけて、発行済株式数が4300万株から3億株まで7倍に増えています。

株価の決定要素を確認してみます。
株価 = 一株利益(EPS)x株価収益率(PER)
EPS  = 利益 / 発行済み株式数

つまり、発行済み株式数が15年間で7倍に増えると、EPSを年率約15%押し下げる要因になってしまいます。以下、株価の動きです。

長谷工の株価(出典:Kabutan)

なぜこんなことになってしまったのでしょうか?

過去の失敗へのしがらみのない経営陣とステークホルダーの協力があれば、企業は潰れない

長谷工はバブル期の過剰投資の切り離しが遅れて1995年3月期に赤字になり、1998年3月期にメインバンクの大和銀行(現りそな銀行)専務の職にあった岩尾さんを副社長に迎えます。

長谷工の経営陣(2006年3月期有価証券報告書より)

1999年5月から、生え抜きの合田社長に変わって建設省出身の嵩さんを社長、岩尾さんを副社長とトップを外部人材に完全に切り替え、膨大な累積損失の処理が始まります。あまりに危機的な状況に、トップを完全に切り替えることができたことが長谷工復活の一因かと思います。銀行団も債務株式化(デット・エクイティ・スワップ)を受け入れ、1995年から20年という時間をかけて、優先株を全て消却することに成功します。

辻社長の言葉(出典:経済界の記事より)

長谷工の事例からは、企業再生に必要な要素が見えてくる気がします。

① 過去へのしがらみのない経営陣に刷新すること
② 株主、金融機関、取引先、従業員の協力が得られること

現在大きな課題を抱えている企業群はどうでしょうか?生え抜きの経営陣はダメだと決めつけるつもりはありませんが、東京電力や東芝の新経営陣は、どれほど上の要素を満たしているのでしょうか、

Happy Investing!!