数値目標の功罪(ポジション戦略再考)

関連投稿】ポジション戦略を改善しました

数値目標に縛られて、年初に大失敗

数値目標がないことによる問題点

私は2016年半ばより、「年率26%で30年複利運用して資産を1000倍にする」という、尊敬するバリュー投資家であるMohnish Pabraiの目標を真似して運用に取り組んできました。

それまでは、運用収益で生活していければいいというくらいの考えでした。農業や大工など自給自足系の取り組みを通して生活コストを下げる技術を身に着けることで、生活に必要な運用リターンも低下させることを基本戦略として年率5%も出れば十分と思っていました。しかし、この考え方では自分自身の成長が感じにくいために、投資に飽きてしまうという致命的な欠点がありました。

数値目標の良いところ

「年率26%で30年複利運用して資産を1000倍にする」という数値目標を導入したことで、投資に規律が生まれました。年率26%を達成するには、3年で2倍になる投資をしなくてはなりません。そうしたチャンスは稀なので、見つけたときには大きく投資しなくてはいけません。数値目標を導入したことで、ポジションルールや売買ルールを設定することができ、より感情を排した投資ができるようになりました。

単年度の運用結果は運次第のところが大きいですが、2016年末のトランプラリーの追い風もあり、年率25.9%のリターンを達成できました。

数値目標の悪いところ

2016年にたまたまうまくいってしまったので、「油断するなよ」と自分に言い聞かせていましたが、やはり2017年初に失敗してしまいました。新しい年に入ると、投資家は昨年どんなに良かろうが悪かろうが、年率0%というスタート地点に戻されてしまいます。私にとって年率26%は高い目標であり、勝手にそびえたつ山を前にするように感じてしまっていました。「また今年も登れるだろうか?達成できるだろうか?」という焦りが無意識のうちに生まれていました。稼がなくてはいけないと思っている時点で、精神的には投資に負ける要素がてんこ盛りになっていました。

2016年末に、エムビーエス(1401)という建造物やインフラ補修を行う企業を見つけました。競争力のある製品群に加えて全国への営業所展開により、大きな参入障壁と成長余地があると評価しました。私はエムビーエスの本質価値を一株10000円と試算し、2016年中に投資元本の10%を平均取得価格3000円で購入しました。2017年に入りエムビーエスの株価がジリジリと高くなります。すると、本来は喜ぶべきところが、不思議なことに逆に焦りを感じてしまいました。「チャンスに対して十分な資金を投じたのか?」という焦りです。3倍以上の上値余地があると評価していたのに、投資元本の10%しか買っていないことが原因でした。2016年末のトランプラリーによって、自分が価値算出できると感じていた企業の株価は軒並み上昇してしまいました。「エムビーエスのようなチャンスに大きく投資できないと、年率26%はとても達成できないぞ」という声が心の中で大きくなってしまいました。

私の取引ルールには、以下のようなルールがあります。

(1)取引時間中(9時から15時)は株価をみない
(2)取引時間中は注文発注しない
(3)買い注文は、昨日終値以下でしか発注しない

全て、2016年の高リターンに寄与したルールでした。しかし、エムビーエスが上方修正を発表して株価は2日連続ストップ高を付けたことで私の理性は完全に吹っ飛んでしまい、上記の取引ルールを全て破ってしまいます。1月6日には当ブログで、より集中投資を行うべくポジション戦略の変更を宣言してしまいます(投稿へのリンク)。この投稿は理性的に書いているつもりでしたが、振り返ると稼ぎたくて株を買いたい自分の行動を正当化しているだけだったようです。典型的な高値掴み(PTSで5400円、6300円で購入)をしてしまった私は、上昇力を失って下がる株価を見てようやく現実に戻されました。勝手に自分で自分を追い込んでしまい、機能していたルールを変更した挙句の失敗となりました。この痛みを忘れず、次に生かしたいです。

エムビーエス(1401)の株価、Kabutan.jp

バランスの取れた数値目標を探して

年率26%という目標は、Mohnish PabraiやWarren Buffettの実績から導いた数字です。今回の経験で、私にとっては過度な目標であったことが実感できました。野球に例えるならば、昨年4割打ってしまったバッターの気分でしょうか。新シーズンは0割から始まるわけで、「今年は打てるだろうか?打てなかったら?」などと考えてしまったのです。そこで、「2割9分打てればいいや」と思えれば、随分と気が楽になることでしょう。私にとって、「過度に緊張せず、かと言って努力しなくては到達できない」ラインはどの程度なのか考えてみました。

1年に見つか投資先は2社か3社。私にとって現実的な目標は年率16%

これまで3年間個人投資家としてやってきた中で、これはと思える投資先は1年に2,3社みつかるというのが実感です。投資期間は3年を前提とします。さらに、売却ルールとして本質価値の90%で売却することとします。例えば200の価値があると思う企業を100で購入した場合、180(200 x 90%)で売却して80の利益(180 – 100)に20%の税金がかかるので、税後リターンは64となります。64を3年で割ると、年換算で21.3の利益となります。

私は2倍の上値余地がある銘柄に対してポートフォリオの75%を投資し、かつ7銘柄に投資しようと考えています。1銘柄に10%は投資したいが、75% / 6銘柄 = 12.5%は高いと感じるからです。この辺りに科学的な根拠はありません。肌間隔としてそう思うということです。このポジション戦略であれば、ポートフォリオの75%を上値余地2倍で7銘柄に投資して、想定リターンは年率16%です。

3倍以上の上値余地のある銘柄が見つかるときは1銘柄あたりのポジション量を増やすことでリターンが向上するかもしれませんし、逆に間違いもあるでしょう。この2つがお互いに相殺されるとして、税金効果を含めて考えたときの現実的な目標は年率16%だと思っています。この目標であれば、年に2,3社自信を持てる会社を探せばよいと思えて気が楽です。同時に、根気強く探さないと魅力的な投資対象が見つからないことも経験上分かっているので、怠けすぎる危険も抑えられます。

年率26%の設定によって、間違いが許されない状況に自分を追い込んでしまっていた

同じように年率26%を売却ルールや税効果込みで考えてみます。すると、下のように、上値余地3倍、4倍、5倍、6倍の投資先を見つけることができることはもちろん、間違いを一切しないという前提で、ようやく年率26%が達成できることが分かります。私にはプレッシャーが強すぎます。投資に間違いが付き物なので、間違えられないと思ってしまうことで逆に自分の行動が制約されてしまいます。このように冷静に数字をシミュレーションしていれば、過度に高い目標を掲げて自分にプレッシャーをかけすぎ、結果として大きく間違えるという事を避けられたかもしれません。

自分のリスク許容度に向き合おう

人間はみなリスク許容度が違いますし、大人になってから修正するのは難しいと思います。慎重な人もいれば、大きな不確実性に動じない人もいます。どちら良いということはなく、大切なことは自分のリスク許容度を受け入れ、それにあった投資戦略やポジション戦略を採用することです。私は他者のポジション戦略を真似してきましたが、中には自分のリスク許容度に合わないものが含まれていましたので、今回のように失敗しては調整を重ねています。

自分の許容度以上にリスクを取ると、短期的には大きく稼げるかもしれませんが、長期的にはダメージが高いように思います。何より精神的に疲れてしまい、投資を続けられない危険性もあります。投資で何より優先すべきは生き残ることです。是非、自分自身のリスク許容度に適合したポジション戦略を採用してください。

Happy Investing!!

ポジション戦略を改善しました

投資対象が見つかった次は、投資額を決める必要がある

事業内容が理解でき、本質的価値の算定に自信を持てる会社が見つかったとします。さらに、現在市場で取引されている価格は本質価値の半値以下、つまり100%以上の上値余地が見込まれます。私の投資基準を満たしていますが、ポートフォリオ全体を100として、いくら買うべきでしょうか?

投資額が小さすぎては、株価が大幅に上昇してもポートフォリオ全体への貢献は限定的です。逆に投資額が大きすぎると、本質価値の算出が間違っていて損失を出した場合の被害が大きくなってしまいます。

みなさんは、投資額をどのように決めていますか?

2016年の投資額の決め方

Mohnish Pabraiの投資額の決め方

これまでも紹介しているように、私はMohnish Pabraiというバリュー投資家の投資戦略を真似しています。自分より優れた人の方法を真似することで、結果まで真似してしまおうと考えています。

上記のYoutube動画を4:04まで飛ばすと、下のポジション戦略が出てきます。

リーマンショック前のMohnish Pabraiはポートフォリオを10分割して、1社につき10%づつ投資していたそうです。しかし、リーマンショックのように大幅な株価下落局面では、安くて買いたいのに買付余力がない事態に直面してしまいます。その教訓から、上値余地に応じてポートフォリオの投資額を決定する方式に変更しました。

私もこのポジション戦略を採用していますが、上値余地が100%以上の企業にポートフォリオの75%を投資するようには教えてくれても、何社に投資するべきかは教えてくれません。

10社への投資は分散しすぎ

リーマンショック前のMohnish Pabraiが10社に投資していたという事から、私も最低10社に分散しようと考えました。まとめると、以下のようになります。ポートフォリオの75%は上値余地が100%あると思う会社へ投資します。10社へ分散するので、1社あたり7.5%を投資することになります。

2016年が終わってみると、私は元本の50%程度しか投資できませんでした。7.5%を満額購入できた会社は4社しかありませんでした。運よく投資した会社の株価が平均50%上昇したのでポートフォリオ全体としての運用成績は+25%以上を記録できましたが、上値余地100%以上あると思える投資対象を10社も見つけられないよ、というのが率直な感想です。

私は現金比率を下げたいがために、躍起になって新しい投資対象を探していましたし、買いたいという思いが強すぎて分析が甘くなるという悪影響の危険性を感じました。そもそも問題の根源は、10社へ均等に分散すると決めたことにあります。この決定は間違っていたと思います。

2017年の投資額の決め方

成功している投資家の教えは、最大5社、最低3社

投資額について多くの投資家が語っています。Warren Buffettは、「ポートフォリオの80%を5つの会社に投資する。最大の投資額は25%にする」と語っています。Charlie Mungerは「3社で十分」とも言っています。

13-Fで報告されたMohnish Pabraiの2016年9月末のポートフォリオを見てみます。詳細な現金比率は分からないのですが、自信ある投資アイディアにはポートフォリオの20%を投資していると考えられます。このことからも、私が2016年に採用していた1社7.5%はあまりに低かったと言わざるを得ません。自信がある投資先に十分な投資額を充てなかったことで、機会損失を生んでしまったことになります。

投資先を最大5社に絞ることにします

2017年からの投資額は以下の通りです。

上値余地2倍の会社にポートフォリオの75%を充てることは変わりませんが、投資先は最大5社とします。つまり、最低でも1社につきポートフォリオの15%を投資します。また、最低限の分散を行うために投資先は最低3社とします。Mohnish Pabrai、Warren Buffett、Charlie Mungerというスーパーバリュー投資家たちのポジション取りの英知を結集したポジション戦略だと悦に入ってます。

ポートフォリオの15%を投資することが怖いと思う企業は、おそらく少額でも保有すべきではありません。大量に買うほど自信のある投資先を厳選することが、よりよい投資リターンにつながると実感しています。

みなさんは、どのようなポジション戦略を採用しますか?

Happy Investing!!

長期的に高い運用実績を残している投資家の真似をしよう

長期的に高い運用実績を出している人がいたら、何を真似できるか考える

日経新聞に出ていた、5本のアクティブ型日本株投信

今朝の日経新聞19面に、過去10年のリターンが高かったアクティブ型日本株投信5本が掲載されていました。最もリターンが高かったのは大和住銀投信のJ-Stockアクティブ・オープンの年率10.04%。100円が10年後に260円に増えたことになります。TOPIX連動型投信の平均10年リターンが年率-0.6%であったことを考えると、超過リターンは年率10%以上と素晴らしい運用成績です。

【出典】日経新聞

成功には必ず要因がある。成功者の行動を観察して真似をすることで、成功を真似したい

私は、長期的に高い運用実績を出している人にまぐれはなく、必ず勝因があると考えています。大勢と同じことをしていては平凡な運用成績に終わります。高い運用実績を出している人の行動を観察して真似をすることで、彼らの成功を真似したいのです。

5つのファンドを比べて見える、2つの共通点

(1)少ない運用資産と(2)集中投資

 5つのファンドの月次運用報告書から特徴をまとめると、私には2つの共通点が見えました。

(共通点1)運用資産が小さい。JPMザ・ジャパンを除いて100億円以下。
(共通点2)自信のある銘柄に集中投資している。最も自信がある銘柄に資産の4~8%を投資する。

個人投資家の立場にあてはめる

個人投資家である自分の立場を振り返ると、(1)運用資産が小さいという項目は、残念ながらしばらくの間は満たし続けそうです。あとは、(2)自信のある投資機会に集中投資できるかどうかです。

私の過去の運用を振り返ると、魅力的な投資機会だと感じていながら少額しか投資していなかったので悔しい思いをしたことが何度もあります。その反省から、この半年はポジション取りや売買ルールの徹底をしています。その結果、今は銘柄につき最低でも資産の7%を投資することに決めています

まとめ

長期的に高い運用実績を残している人がいたら、その要因を分析することをお薦めします。そして、行動を真似できるところは取り入れて、結果も真似しちゃいましょう。

Happy Investing!

年率21.6%の29年複利リターンを達成した8人の破天荒な経営者に共通すること

経営者の能力は、在任中の相対株価リターンで測ることができる

経営者の能力はどうすれば測れるでしょうか?経営者もプロスポーツ選手のように数量的な戦いをしているはずなのに、野球投手の防御率や、外科医の合併症発生率のようにパフォーマンスを測定する基準がないのが現状です。

『破天荒な経営者たちー8人の型破りなCEOが実現した桁外れの成功』によると、経営者の偉大さを評価するために必要な数字は三つしかありません。

(1)在任中の株価の年間リターン率(複利)
(2)同じ期間の同業者のリターン率(複利)
(3)幅広いマーケットのリターン率(複利)

もし経営者が同業他社とマーケットの両方を大きく上回るリターンを上げていれば、その人は「優れた」経営者と言えるのです。

年率21.6%の29年複利リターンを達成した8人の破天荒な経営者

出典:『破天荒な経営者たち』

本書に登場する8人の経営者を平均すると、年率21.6%の29年複利リターンを達成しています。1円が、29年後に290円になって返ってきたのです。彼らは、同業他社リターン(年率13.9%)や市場平均リターン(年率10.2%)を大幅に上回っています。

運用の世界では、長期間(10年以上)にわたって市場平均リターンを年率1%上回れば称賛を浴びます。例えば、私が以前勤めたキャピタル・グループの旗艦ファンドの一つ、EuroPacific Growth Fund(運用資産12兆円)は10年間でインデックスを年率1.2%上回っており、高い評価を受けています。それに比べてこの経営者たちは、同業他社リターンを年率8%上回り、さらに市場リターンを年率11%上回っているのです。まさに、規格外の結果を残しています。

出典:EuroPacific Growth Fund (American Funds)

破天荒な経営者の共通点

経営者として成功するために必要な二つのこと

(1)事業を効率的に運営すること
(2)そこで得た現金をうまく使うこと

ほとんどの経営者は(1)に力を注いでいますが、(2)についてはトップクラスのビジネススクールでさえ教えていないそうです。この状況を、ウォーレン・バフェットは以下のようにまとめています。

[aside type=”normal”] 企業のトップの多くは、資本配分のスキルを持っていません。ただ、彼らの力不足は驚くことではないのです。社長になる人は、販売や製造や技術や管理など何らかの分野で優れていたり、なかには社内の駆け引きがうまかったりしたことでその地位まで上り詰めた人が多いからです。しかし、CEOになれば新しい任務として資本配分の決断を下す必要に迫られます。ところが、これは重要な仕事であるにもかかわらず、彼らの多くはまったく経験がないし、簡単に極められることでもありません。 [/aside]

破天荒な経営者たちの共通点

(1)経営者の最も重要な仕事は資産配分
(2)長期的に重要なことは、全社的な成長や規模ではなく、一株あたりの価値
(3)長期的な価値を決めるのは、報告利益ではなくキャッシュフロー
(4)分権組織は起業家的エネルギーを放出し、コストと「怨念」を減らす
(5)長期的な成功には独自の考え方が不可欠で、外部からの助言は気が散るし時間の無駄
(6)最高の投資先が自社株のこともある
(7)買収においては忍耐が肝心だが、ときには大胆さも必要

まとめ

多くの経営者は事業を効率的に運営することに力を注いでいて、「過去最高売上」や「過去最高益」と誇らしく語る姿からも、会社規模の拡大が社会的地位や自己評価の向上につながると考えているようです。しかし、投資リターンの観点から大切なのは規模や成長ではなく、一株あたりの価値を長期的に上げてくれるかどうかです。

長期的なリターンの原動力は、強い事業 x 優れた資本配分 の両輪です。どちらが欠けていても、長期的に高いリターンは望めません。業績だけではなく、株価が安いときにタイミングよく自社株買いをしているか?企業買収に高いバリュエーションを払いすぎていないか?このような基本的な質問をすることで、経営者の資本配分能力を推察できます。長期間の業績推移を見るために、Nagatomo Investmentの長期業績レポートをご活用ください。

資本配分の優れている日本企業:第一興商(7458)

関連】第一興商(7458)長期業績レポート

最後に私が日本企業で特に資本配分が優れていると思っている第一興商(7458)を紹介します。通信カラオケDAMでトップシェアを持っており、潤沢なキャッシュフローがあります。資本配分として積極的な自社株買いを行っていますが、PERの高かった2005~2007年度は自社株買いを控えるなど規律が感じらる素晴らしい企業です。結果として、過去14年複利で年率20%以上のリターンを株主にもたらしています。

 

 

バリュー投資をお薦めする理由

さまざまな投資戦略で成功した投資家がいる

世の中には、さまざまな投資戦略で成功した投資家がいます。日本の個人投資家では、160万を200億以上にしたBNFこと小手川隆さんのスイングトレード、65万を25億以上にした五月こと片山晃さんの適時開示情報投資などが有名です。世界に目を向ければ、George SorosやRay Dalioのグローバル・マクロ投資、Bill Ackmanのアクティビスト投資、Howard Marksのディストレスト投資、とリストはまだまだ続きます。

どんな投資戦略でも成功できる可能性があるのかもしれませんが、大切なのは期待リターン(=リターン x 成功確率)の高い投資戦略を採用することです。たとえ高いリターン実績のある投資戦略でも、それが少数の人に限定されていては、期待リターンとしては見劣りします。

多くの投資家が長期的に高いリターンを出してきた投資戦略という点から、バリュー投資をお薦めします。

バリュー投資とは何か?

バリュー投資は、Benjamin GrahamとDavid Doddが1928年に米国コロンビア大学で教え始めた投資戦略です。バリュー投資の真髄は、投資対象の価値と、その価格の差で稼ぐという事に尽きます。言い換えれば、50円で売られている100円玉を探すのです。社会的には褒められた行動ではないのかもしれませんが、実践できれば大儲けできそうです。

そんな美味しい話は有り得ないと思うかもしれません。主流派経済学の効率市場仮説は、市場価格にはすべての情報が織り込まれているので、価格は常に正しい価値を表していると教えます。効率市場仮説の世界では、誰も日経平均やTOPIXの市場インデックスには勝てません。

一方のバリュー投資は、市場は概ね効率的で市場価格はだいたい正しいが、時として大きく間違えるという考え方です。50円で売られている100円玉がそこらじゅうに転がっていることはありませんが、よくよく探せば見つかると思っているのがバリュー投資家で、絶対に見つからないと思っているのが効率市場仮説信者。そこには天と地ほどの違いがあります。

長期間市場平均を上回るリターンを記録した投資家の多くがバリュー投資を採用している。あなたはどうする?

最も著名なバリュー投資家であり、世界最高の投資家と名高いWarren Buffetが1984年に The Super Investors of Graham-and-Doddsville という記事を書きました。「長期に渡って市場平均を上回るリターンを記録した投資家の多くがバリュー投資を採用している」と指摘しています。統計的にもバリュー投資の投資戦略としての優位性が明らかなのに、バリュー投資を認めようとしない人たちがいる事は理解に苦しむ、とWarren Buffettは首を捻っています。

Buffettの記事に登場するバリュー投資家7人は、平均年率23.5%で16年複利運用。超過リターンは年率16%!

記事に出てくるバリュー投資家7人の運用実績は以下の通りです。青いセルが、運用期間です。

出典:The Superinvestors of Graham-and-Doddsville

平均年率23.5%で16年複利運用したことになります。同時期の市場リターンが年率7.5%だったことを考えると、年に16%も超過リターンを生み出しています。

年率16%の複利効果を噛み締める

年率16%と聞くと、大した差ではないような気がするかもしれません。確かに、日常生活ではより大きな割引を目にすることがあります。セールであれば30%OFF、スーパーでは売れ残り惣菜が50%OFFは当たり前です。では、100円を16年間複利で年率23.5%と年率7.5%で運用するとどうなるでしょうか?

出典:Nagatomo Investments

元手100万のバリュー投資に週末の1日を使っても、16年間で年収800万円の価値がある

バリュー投資家が100円を2900円に増やした一方、市場平均では300円にしかなりません。元手100万から始めると、2900万円と300万円と2600万円の差が出ます。16年で2600万円の差が付く(その後、差はさらに広がっていく)のであれば、2600万 / 16年 = 160万円。バリュー投資のために週末の1日を使ったとして、160万 x 5日/1日 = 週5日勤務の年収換算で800万になります。

元手500万、年率10%(市場は6%)で20年複利運用した超過リターンは年収400万円以上

年率23.5%は著名バリュー投資家の残した数字であり、自分に当てはめるのは非現実的だと思った方もいると思います。そこで、複数のシナリオを比べてみました。投資期間を20年、市場平均リターンが6%(2016年11月現在のTOPIXの平均PERは17倍なので、逆数(=1/17)が期待リターン)と仮定します。

バリュー投資で年率10%を稼いだとするとリターンは3364万円となり、市場平均に投資した場合との差額は1760万円です。これを20年で割ると、1年あたりの超過リターンは年88万円。週1日を投資調査に使った場合の年収換算は440万円です。500万円を投資して年収換算で440万円を生み出せる仕事は、なかなかないと思います。

出典:Nagatomo Investments

 次の表は、様々な元手とバリュー投資リターンについて、超過リターンと、バリュー投資に週1日を使った場合の年収換算です。あなたは、どの升目を目指すしますか?

出典:Nagatomo Investments

まとめ

私は長期的に高い利回りで複利効果を出し、経済的に豊かな人生を送りたいです。年数ごとに差が開いていく複利効果を理解しているので、30代の今から時間を使って努力する覚悟があります。

どの投資戦略でも成功者がいるのは確かですが、成功確率の高さではバリュー投資が群を抜いていると感じます。さらには、Benjamin Graham、Warren Buffett、Charlie Munger、Mohnish Pabrai、Guy Spierなど、ノウハウ提供をためらわない素晴らしい先達に恵まれています。

インデックス投資のリターンでは満足できないという方には、バリュー投資に興味を持って欲しいです。Nagatomo Investmentsでは長期的に高い利回りで複利運用するために必要な情報提供でサポートさせて頂きます。一緒に頑張りましょう。

大勢の投資家が短期志向だからこそ、逆に長期志向を目指す

他人と同じことをして、違う結果を期待するのは無理筋

Nagatomo Investmentsは、『年率26%で30年複利運用して資産を1000倍にする』ための情報提供を行っています。伝説的なファンドマネージャーであるJohn Templetonが言ったように、大多数の人々と違うことをしなければ、高いパフォーマンスをあげることはできないのです。

大勢の行動パターンを知ろう

日本の機関投資家の多くはトレンド追っかけ型、保有期間は数か月

みさき投資株式会社の資料によると、日本の機関投資家の60%以上がトレンド追っかけ型の投資スタイルで、その結果として投資期間も数か月と短いことが分かります。

img_5822696541c32
出典:みさき投資株式会社

日本の個人投資家の平均保有期間は約1年

日本の個人投資家は機関投資家より保有期間が長いようで、約1年です。

出典:日経新聞

時間軸を思いっきり伸ばす

5年先まで将来性を見通せる会社を探す

多くの投資家は先行き1年くらいを考えているとすれば、私たちはどのくらい先まで考えるべきでしょうか?2年先?3年先?圧倒的な差別化をするためには、最低でも5年先まで将来性を見通せる数少ない会社を見つけたいものです。

長期業績レポートを活用して事業を見る目線を伸ばす

普段の生活において、5年先をイメージするのは難しいことです。5年後の自分がどうなりたいのか明確なビジョンを持ち、そこから逆算して日々を過ごしている人が少ないからです。

メニュー > 分析ツール > 長期業績レポートに15年分の企業業績を載せました。色々な会社の長期業績を眺めていると、次第に長い時間軸で考えられるようになります。長期的に株価が上がる会社と上がらない会社の違いは何だろう?短期的な株価変動を超えた、より本質的な構造要因を考えていきましょう。

まとめ

株式市場において、参加者の大多数と同じ投資行動をしながら平均リターンを上回ることはできません。市場平均リターンを上回ることを目指すのであれば、投資戦略の差別化ポイントを明確にする必要があります。

短期的な投資家が多い日本市場において、長期的視野を持つのは一つの差別化戦略になると思います。日本には、アメリカのValue Lineレポートのように長期業績をまとめた資料がないのが現状ですので、ぜひ15年業績をまとめた、Nagatomo Investmentsの長期業績レポートを活用してください。

長期投資すればいいのか?

長期投資とは何か?

パッシブ投資全盛の今ではあまり聞かれなくなりましたが、長期投資という言葉が流行った時期があります。澤上篤人さんが1999年8月に立ち上げた『さわかみ投信』が積極的に発信していた、優良企業の株式を景気循環を超えて長期間にわたって保有すれば高リターンが得られるという投資哲学です。長期にわたって投資先企業を応援しようという、素晴らしい発想に思えますが、果たしてリターンは伴っていたのでしょうか?

長期投資を推奨する『さわかみ投信』の運用成績は? 

1999年からのリターンは年率4.2%。TOPIXの年率-0.5%を大幅に上回っている

長期投資を推奨する『さわかみ投信』の運用成績はどうだったのでしょうか?2016年10月26日の基準価格は20279円で、17.2年の投資リターンは年率4.2%でした。同期間のTOPIXリターンは、1500円から1383円で、年率-0.5%。配当再投資を含めるとリターンが1.5%改善して年率1.0%としても、さわかみ投信はTOPIXを大幅に上回る運用成績を残しています。

市場ベンチマークを長期間に渡って年率3%も上回ることはとても難しいことです。そのようなファンドはほとんどないはずです。さわかみ投信の発足期から投資していれば、日本株に投資しているファンドの運用成績として十分に納得できると思います。

さわかみ投信の基準価格
TOPIX

さわかみ投信の発足時からのリターンは、S&P500へのパッシブ投資とも遜色ない

パッシブ投資の代表格が米国S&P500です。同期間のS&Pリターンは円換算で年率2.8%。配当再投資でリターンが1.5%改善すると仮定して年率4.3%。さわかみ投信のリターンは、S&P500のパッシブ投資とも遜色ないリターンが出ています。

日本株アクティブ vs 米国株パッシブ

日本株へのパッシブ投資は厳しい

ここまで見て来たリターンの順位は、さわかみ投信=米国株パッシブ>日本株パッシブ です。まず、日本株へのパッシブ投資は避けた方が良さそうです。私が考えるその理由は、TOPIXに長期パッシブ投資をしたとしても競争力のない大企業が数多く含まれており、さらには市場の自浄作用が作用しにくいためリターンが出ません。

さわかみ投信より、米国株パッシブ

仮にさわかみ投信と米国株パッシブが同じリターンを出るとすれば、どちらに投資すべきでしょうか?私であれば、米国株パッシブを選びます。判断すべきは、さわかみ投信の運用能力と米国大企業の競争力のどちらが持続性があるかという点です。私は、米国大企業全体の競争力を選びます。

では、日本株への長期投資に可能性はないのでしょうか?

日本株のアクティブ投資で勝つにはどうすればいいのか?

さわかみ投信の保有株式は大企業中心

さわかみ投信の保有株式上位10社は以下の通りです。ある事業領域で世界的に高シェアを持つ競争力ある企業が並んでおり、長期投資を有言実行していると感じます。しかし、大企業に偏っているとも感じます。さわかみ投信の運用資産は2500億円あるので、ある銘柄を資産の2%買おうと思えば、購入金額は50億円になります。大量保有報告書提出基準以下の時価総額5%以下で50億円買おうと思うと、最低でも時価総額1000億円必要です。

さわかみ投信保有株式上位10社(2016年9月30日)

時価総額1000億以上は約700社に対して、1000億以下は約3000社

現在、時価総額1000億以上の企業は現在700社。1つの企業を資産の2%買うとすれば合計50社必要だから、1/14の確率で投資しなくてはいけません。逆に、時価総額1000億以下は3000社もあります。このうち10社投資すれば、1/300の確率でいい会社を探せばいいだけで、一気に投資機会が広がります。

中小型株への長期集中投資で個人投資家の特徴を最大限に活かす

個人投資家は運用資産が小さいので、時価総額の小さな流動性の低い企業にも投資できます。また、自己資金を運用しているので、短期的な株価変動が大きくても文句を言うお客さんはなく、厳選した企業への集中投資ができます。日本の中小型株への長期集中投資では、個人投資家の特徴が最大限に活かせるのです。

まとめ

時間のない個人投資家は、米国株パッシブ投資を

日本の優良大企業への長期投資は、さわかみ投信が実践してくれたように日本株パッシブ投資よりよい運用成績を残せるようです。しかし、日本企業の競争力や日本市場の自浄能力そのものが弱いため、米国株パッシブ投資と遜色ない運用成績となってしまい、それであれば私は米国株パッシブ投資を選びます。

時間をかけても高いリターンを目指す個人投資家は、日本株の優良中小企業への長期集中投資を

私が考える日本株投資の解決策は、優良中小型株への長期集中投資。そもそも良い企業は少ないので、投資対象の母集団を増やすか、投資する企業数を減らすしかありません。これは運用資産の小さい個人投資家の強みが生きる分野です。埋もれた宝石を探すために、頑張りましょう!

複利の力を味方につける

アインシュタイン博士の格言

20161019-einstein-compound-interest

アインシュタイン博士は、「複利はこの世でもっとも強い力だ。理解するものは富み、理解しないものは失う」という言葉を残しています。

投資期間が長くなるほど、追いつけなくなる

100万円を、複利で運用した結果が以下の通りです。10年運用した時点では、年率4%で148万円と12%で311万円の差は2.1倍です。まだ追いつけそうな気がします。ところが、30年たつと年率4%で311万円、年率12%で2996万円!差は9.2倍に拡大します。このようになってから追いつくことは、ほぼ不可能です。

  4% 8% 12%
10年 148 216 311
    1.5x 2.1x
20年 219 466 965
    2.1x 4.4x
30年 324 1,006 2,996
    3.1x 9.2x

複利の効果を最大化する3つのポイント、6つの変数

複利の効果を最大化するには、3つのポイントがあり、6つの変数があります。あなたはどの変数を積極的にコントロールしますか?

1、元手を大きく 

→ 収入を大きく / 支出を小さく

2、利回りを大きく

→ リターンを大きく / 税金や運用コストを小さく

3、投資期間を長く

→ 若いうちに始める / 高齢まで続ける