日本電産とルネサスの危機対応から、疾風に勁草を知る。

疾風に勁草を知る

3月7日の日経新聞朝刊で、ルネサスエレクトロニクス(6723)が、車載向け半導体など工場を2か月停止すると報じられました。

それに対し、ルネサスは3月7日に「一時生産停止を検討している」とコメントしています。(コメントへのリンク

日経新聞の見出しからは、あたかも決定事実であるかのような印象を受けますが、観測記事であることも多いので、注意しましょう。

このニュースを読んで、「疾風に勁草を知る」ということわざを思い出しました。

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疾風に勁草を知る

読み:しっぷうにけいそうをしる
意味:困難や試練に直面したときに、はじめてその人の意思の強さや節操の堅固さ、人間としての値打ちがわかることのたとえ。

(出典:故事ことわざ辞典

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ルネサスの対応と、日本電産の対応

中国を筆頭に、世界的な景況感が悪化していることは周知の事実です。

受注環境の悪化をいくら嘆いても仕方なく、経営陣に求められるのは対応です。

名経営者と名高い、日本電産の永守さんは、1月17日に業績の下方修正+緊急記者会見を開きました。

「18年11月、12月は経験したことのない落ち込み」と述べ、さっそく全社コスト削減プランを開始しています。

「経営の方向性を変更しようという気持ちは全くない」、「ここでしゃがんでもう一度跳ぶ心構えだ。きょう現在で設備投資計画を見直すつもりはない」と危機には出来るだけ早く対応し、逆に強いバランスシートを活かして安値での買収を狙っていく、ピンチをチャンスに変えようという、非常に前向きな経営姿勢です。

それに対して、ルネサスの経営陣はどうでしょうか?

日本電産の会見から2か月遅れていますが、まだ生産停止すら決断できていません。

対応が後手に回るのではないかと不安になります。

私が大切な資金を託すのであれば、日本電産を選ぶかルネサスを選ぶか、明らかです。

ご参考までに、両社の長期株価を比べてみます。

ルネサス株価
 

日本電産株価

危機にこそ、真価が問われる  

景気が良いときは、どんな企業でも儲かります。

むしろ、固定費が高くてコスト構造が悪い企業ほど、オペレーティングレバレッジが効いて増益幅が大きくなります。

差が出るのは、不況の時です。

これは投資家にも当てはまります。

上げ相場の時は、どんな投資家でも儲かります。

下げ相場の時こそ、投資家の真価が問われます。

Happy Investing!!

投資10戒

Mohnish Pabraiの最新講義

Mohnish Pabraiは、毎年ボストン大学の学生に向けて講義を行っています。ありがたいことに内容がYoutubeにアップされますので、私は毎年楽しみに見ています。今年のトピックは、『投資10戒』でした。

投資10戒

1. Thou shall not skim off the top (資産運用業に向けて)稼いでいないのに、固定手数料を取ることなかれ

2. Thou shalt not have an investment team 投資をチームで行うことなかれ

3. Thou shalt accept that thou shalt be wrong at least one-third of the time 投資では、誰しも1/3は間違うということを受け入れろ

4. Thou shalt look for hidden PE of 1 stocks 明白ではないPE 1倍株を探せ

5. Thou shalt never use Excel エクセルを使わないと安いかどうか判断できないような案件は見送れ

6. Thou shalt always have a rope to climb out of the deepest well ひどい状況から抜け出すための用意をしておけ

7. Thou shalt be singularly focused 一つのことに集中しろ

8. Thou shalt never short a stock 空売りをするな

9. Thou shalt not introduce leverage レバレッジをかけるな

10. Thou shalt be a shameless cloner 優秀な投資家の真似をしろ

投資戦略、その先に

投資を続けていて思うのは、進む道を選ばなくてはいけないという事です。投資の稼ぎ方はたくさんあります。デイトレ、スイング、優待投資、増資ディスカウント、IPO抽選、バリュー、グロース、ロングショート、割安成長株、、、、どんな投資戦略であっても、統計的に裏打ちされた方法を続けていれば、最終的には勝つことができます。実際に、どの投資戦略にもそれを極めた猛者がいます。

しかし、どんな投資戦略でも勝つことができる一方、全ての投資戦略で勝つことはできないと考えます。継続的に勝とうとするには、投資戦略を選ぶ必要があると思います。実績ある個人投資家の人にお会いすると、総じて投資ルールが明確だと感じます。自分が取り組むべき局面、そうではない局面の判断がしっかりとしていますし、得意でないパターンで勝てなかったからと言って悔しがることもありません。他の投資戦略で稼いでいる人がいても、羨ましく思いません。自分が勝てる確率が高いときのみ、市場に参加するというスタンスです。

私は、Benjamin Graham、Warren Buffett、Charlie Munger、Mohnish Pabraiと続くバリュー投資戦略はもちろん、その背景にある考え方まで理解したいと思っています。投資家の性格、行動、そして投資戦略が一致してこそ、長期的に良い結果が生まれると考えます。例えば、短気な人がバリュー投資を採用するのは難しいでしょう。身体が拒否反応を起こすでしょうから、違う投資戦略を探すか、自己変革に挑戦する必要があります。私は、自己洗脳するかのように、目標とすべきバリュー投資家の写真を飾り、文章を読み、声に耳を傾け、オマハに詣でます。そこまでして近づきたいと思うほど、高く素晴らしい目標だと思っています。Mohnish Pabraiの投資10戒を胸に、さらに信心を深めたいです。

Happy Investing!!

私の投資ヒーロー(Mohnish Pabrai)

Mohnish Pabraiのカッコよさ

Mohnish Pabraiについては、当ブログでも何度か取り上げています。エンジニア出身で、1994年にバフェットの伝記を読んだことで投資家としてのキャリアをスタート。1999年からPabrai Investment Fundsを運用しています。私が彼を尊敬するところとは、師匠の教えに忠実であるということです。彼は機関投資家での勤務経験がないため業界の常識に染まっていないという見方もできますが、バフェットの初期パートナーシップと同じく、毎年の運用成績が6%を超えた部分の25%という成功報酬のみを受け取っています。仮に運用成績が10%であれば、(10%-6%)x 25% = 1%の成功報酬を得ることになります。

リーマンショックでは、ファンドの運用成績が前年比-70%まで悪化したそうです。年初に100あった運用資産が30にまで目減りしたわけで、成功報酬モデルにとっては悲惨な状況です。しかも、成功報酬をもらうためのハードルは年間6%づつ高くなっていくのです。100>106>112、、、という具合です。結局、Pabrai氏は2017年まで10年間、無報酬でファンドを運用していたそうです。Warren Bufefttの相棒Charlie Mungerは、取締役を務めるDaily Journalの2018年次総会で、Pabrai氏の行動について賛辞を送っています(書き起こし全編はこちら)。以下に抜粋します。

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Question 9: This question is for Mr. Kauffman.  You mentioned about the “five aces” and aligning the interests with investors with the right fee structure to benefit both.  What have you seen as a good fee structure, both from a start-up fund with say $50 million in assets, and then the larger funds with assets over billion?

Peter Kaufman: I’ll let Charlie answer that because he can describe to you what he thinks is the most fair fee formula that ever existed and that’s the formula in Warren Buffett’s original partnership.

Charlie: Yeah, Buffett copied that from Graham.  And Mohnish Pabrai is probably here…is Mohnish here?  Stand up and wave to them Mohnish.  This man uses the Buffett formula, and always has, he just copied it.  And Mohnish has just completed 10 years…where he was making up for a high water-mark.  So he took nothing off the top at all for 10 years, he sucked his living out of his own capital for ten long years, because that’s what a good money manager should be cheerfully willing to do.  But there aren’t many Mohnish’s.  Everybody else wants to scrape it off the top in gobs.  And it’s a wrong system.  Why shouldn’t a man who has to manage your money whose 40 years of age be already rich?  Why would you want to give your money to somebody who hasn’t accumulated anything by the time he was 40.  If he has some money, why should he on the downside suffer right along with you the investor?  I’m not talking about the employees under the top manager.  But I like the Buffett formula.  Here he is, he’s had these huge successes.  Huge in Buffett’s career.  But who is copying the Buffett formula?  Well we got Mohnish and maybe there are a few others, probably in the room.  But everybody wants to scrape it off the top, because that’s what everybody really needs, is a check every month.  That’s what is comforting to human nature.  And of course half the population, that’s all they have, they’re living pay check to pay check.  The Buffett formula was that he took 25% of the profits over 6% per annum with a high water mark.  So if the investor didn’t get 6%, Buffett would get nothing.  And that’s Mohnish’s system.  And I like that system, but it’s like many things that I like and I think should spread, we get like almost no successes spreading that system.  It’s too hard.  The people who are capable of attracting money on more lenient terms, it just seems too hard.  If it were easier, I think there would be more copying of the Buffett system.  But we still got Mohnish. (laughter)
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そんなMohnish PabraiのYouTube動画は、全てお薦めです(動画リンク)。


(Pabrai Investment Fund 年次総会にて@シカゴ)

Pabraiさん、本当にありがとうございます。

Happy Investing!!

2017年の振り返り

御礼

みなさまのお陰で、2017年も元気に年末を迎えることができました。今年も大変お世話になりました。

さて、みなさま投資家としての1年はいかがだったでしょうか?ジャスダック指数が年初来+42%となるなど、小型株中心に非常に強い相場環境でした。私のように現金比率が高い保守的な投資家にとっては、上げ相場についてくだけで精一杯だったなという感覚です。

良かった点

・サイジング。少しづつですが、大きなチャンスに大きな金額を投じることができるようになりました。投下資本の20%を投資した企業が、リターンを牽引してくれました。

・身近なアイディア。上記企業は、友人との会話の中から発見しました。どんな人も、働いている業界については相当詳しいはずです。伸びている競合、調子が悪い競合など、投資家が知るよりはるからに早い現場情報を持っています。そのような情報を良い投資アイディアにつなげられたことは嬉しかったです。

・投資家との交流。平日昼間から株主総会に出席している若者など、場違いな人に声をかけることで交流が広がりました。

反省点

・頻繁な売買。仮に2016年末のポートフォリオをそのまま1年間保有していたとしても、2017年末時点での運用成績はほとんど変わらなかったという悲しい現実があります。長期的な見通しの明るい企業群を保有している場合、何もしないというのも株式投資では重要な判断です。自分ではうまく立ち回っているつもりが、結果としてポートフォリオの質を低下させている危険性もあります。「株式投資は売買ではなく、待つことで稼ぐ」というチャーリー・マンガ―の言葉が身に染みた1年でした。

・いきなりステーキ。私はコストパフォーマンスにうるさい消費者だと思いますが、いきなりステーキには感激してリピーターになっていました。それほど良さを体感していながら、立食高回転率というビジネスモデルは都会の一部でしか成立しないと思いこんで株式購入に踏み切れなかったことが悔やまれます。俺のシリーズとは違い、拡大再生産しやすいというビジネスモデルの本質を理解できていませんでした。

2018年が、読者のみなさにとってますます良い1年になりますように。

Happy Investing!!

投資家にコントロールできること

コントロールできることに注力したい

現実世界は、自分がコントロールできることとできないことで構成されています。そしてこの世で起きるのほとんどのことは、自分のコントロール外にあります。例えば自分が挨拶をしたからと言って、相手が挨拶してくれるとは限りません。しかし、相手が挨拶しなかったという現実をどのように受け止めるのかはコントロールできます。同じ現実に直面しても、「ちょっと聞こえなかったのかな、次はもっと大きく挨拶しよう」と解釈する人もいれば、「あの人は自分のことを嫌っているのではないか」と解釈する人もいるでしょう。

自分でコントロール可能な領域を見極め、その領域に関してはしっかりと手綱を握ってしていくことが大切だと思っています。そして、それ以外のコントロールできない部分に関しては、流れに身を委ねる勇気を持ちたいものです。

上場株式の少数株主にコントロールできること

では、個人投資家のような上場株式の少数株主にコントロールできることは何でしょうか?私は、4つのしかないと思っています。①いつ、②どの銘柄を、③いくらで、④どれだけ 買うかというシンプルな勝負です。

①+②=企業の本質価値

①と②は企業の本質価値を表しています。例えば、トヨタ自動車を例にとります。トヨタ自動車の株価は、2008年、2013年、2016年に6000円でした。同じ株価だったからと言って、トヨタ自動車の本質価値が一定であるとは考えにくいです。もしかしたら、2008年の本質価値は一株4000円だったので、6000円の市場価格は割高だったかもしれません。2013年の本質価値は一株6000円だったので、妥当な金額だったかもしれません。そして、2016年の本質価値は9000円まで上昇しているので、一株6000円で購入しても割安だったのかもしれません。

チャート画像
トヨタ自動車の株価 (出典:ヤフーファイナンス)

大切なのは、自分が本質価値を評価できる企業と、できない企業を選別することです。私には、世の中のほんの一握りの企業の本質価値を評価する力しかないと自覚しています。謙虚に、分からないことを分からないと言えるかどうか、投資家のコントロール能力が問われます。例えば、仮想通貨市場が盛り上がっています。しかし、ビットコインの本質価値を論理的に説明できる人はあまりいないと思います。市場価格が上昇しているから買うというのは投機であって、もちろん投機を否定はしませんが、投資とは別物だと思います。

出典:ビットフライヤー

③+④=投資実行

企業の本質価値を算出できた一部の企業に対して、いくらで投資すればいいのでしょうか?本質価値が一株5000円として、4000円なら投資するのか、3000円なのか、2000円なのか。どれだけの安全域(つまりは上値余地)を求めるかは投資家が決めるしかありません。そして、その安全域が確保されるまで待たなくてはなりません。

現在のように株価が上昇してくると、当然広い安全域を確保した投資が難しくなります。上昇相場についていきたくて、投資がしたくて安全域を緩めたくもなります。そんな自分への警鐘も兼ねて、書きました。待つのはつらい!株価が割安になるまで冬眠できる仕組みが欲しいです。

投資はシンプルだが、簡単ではないというバフェット氏の言葉を噛み締める日々です。

Happy Investing!!

投資家として長く続けるために

投資家としての経験値を謙虚に受け止める

22000円という日経平均が絶対的に高いかどうかの議論はさておき、少なくとも3つの追い風を受けていると思います。(1)好景気、(2)世界的な低金利環境、(3)日銀による株式ETF購入。つまり、現在の株価はこの3つの追い風を既に織り込んでいるのかもしれません。そうなると、現在の価格からさらに上値を達成するためには、織り込まれている以上の材料が必要となります。

次の株価支援材料・抑制材料が何になるのかは良く分かりませんが、自分が運用してきた相場環境を冷静に見直す必要があるなと感じています。私は、2006年夏に機関投資家に就職して株式投資と出会いました。2009年夏に退職するまでの3年間は日経平均が16000円から8000円を割り込むような大幅な下落相場でした。対ベンチマーク相対評価される環境下で、保守的な運用のおかげで良い成績を残すことができました。しかし、アナリストとして勤務しながらお金や経済成長について考えすぎたあげく自爆気味に疲れてしまい、2013年末まで投資から離れていました。そして2014年から個人投資家として活動した間は、16000円から20000円の大きなレンジ相場になっています。

私は投資家として、2009年から2013年のような長期的な相場低迷や、2013年の急激な上げ相場を経験したことがありません。さらに、個人投資家としては2006年から2009年のような急激な下げ相場を経験したこともありません。こうして振り返ってみると、経験していないことだらけというのが正直な感想です。

個人投資家として長期低迷相場に耐えられるのか?

個人投資家は絶対リターンを出す必要があります。仮にある年に日経平均が-20%で、自分が-10%であったならば、機関投資家なら褒めてもえるかもしれません。しかし、個人投資家として相対リターンは全く無意味なことです。金融危機の後、2007年から2013年まで日経平均の回復には6年間もかかっています。もし仮に今回下げ相場が訪れるとすれば、中央銀行は金利を下げて金融緩和する余地がないため、さらに株価の低迷が長期化する可能性すらあります。最低5年、長くて10年耐える準備ができているのでしょうか?そんな思考実験を行っては、なかなか個人投資家も大変だなと思うのです。

心の準備、体の準備、資金の準備をお忘れなく。

Happy Investing!!

TECH::CAMPを終えて

私は、個人投資家と並行して副業を行い、安定収入源を確保することにしています。4月から起業の手伝いをしている一環として、プログラミング教室「TECH::CAMP」に通い、ウェブサービスのプロトタイプを作成することができました。

副業する理由

私は過去3年、個人投資家として生計を維持できるだけの収益を上げています。しかし、それは結果論でしかありません。毎年のように株式投資で稼げる保証はありませんし、逆に毎年稼がなくてはいけないと思ってしまうことは危険な発想だと思っています。私は株式現物買いしか行いません。つまり、株式投資で稼ぐためには、まず株式を買わなくては始まらないからです。株式市場は、熱狂と悲観の間を揺れ動く人間心理を映しています。企業の適正価格を大きく超える価格で株式が取引されていることもあれば、逆に大幅に安く取引されていることもあります。そのような現実がありながら、常に株式投資で稼がなくてはならないから、市場の高い安いに関わらず、常に株式市場に投資しなくてはならないと思ってしまうことには問題が多いと思います。

割高だと思うのであれば現金比率を高くして株価が安くなるのを待てばいいというのが正解ですが、実践するのは簡単ではありません。過去の経験上、市場が高値を付けてから安値に以降するまでには1.5~2年ほどの歳月がかかります。2015年夏に高値をつけた日経平均に照らせば、市場全体が安くなるのは2017年末から2018年夏かもしれません。もちろん、市場全体が調整する間にも割安な個別株式を見つけられることはありますが、総論としては、2年くらいは難易度の高い相場環境が続くことを想定してます。私は家族もいるので、毎月の固定費としてキャッシュが出ていきます。正しいと頭では分かりながらも、ただ座して投資資金が減っていくのを見ているのは、私にとっては精神的に厳しいものです。買うことを正当化するような企業価値評価を行ってポジションをとってしまった痛い経験もあります。

そこで、ここ1年ほどは、副業としてアルバイトをして週の半分ほど働き、ビジネス内部の動きに触れ、投資から離れた人間関係を気づき、何より安定収入を得ることで、投資における長期的な成功に不可欠な精神的安定を得られることがわかってきました。

2017年4月から友人の紹介で起業を手伝う

2017年3月までは、友人が取締役を務めるちとせバイオエボリューションというバイオベンチャーで、補助金申請の手伝いをしていました。4月からは、高校同級生の紹介で起業を手伝っています。バフェットの言葉に、「私は事業家だから、より優れた投資家になれた。私は投資家だったから、より優れた事業家になれた」というものがあります。たびたび紹介してきた、IT起業家からファンドマネージャーに転じたモニシュ・パブライも同じことを言っています。

今回の起業手伝いは、企業経営を身近に参加できるチャンスとして楽しみです。このようなチャンスを頂けて、とても有り難いことです。

ウェブサービスを作るには

本サイトはウェブエンジニアの方に開発を頼むのですが、最初の打ち合わせで、発注側が全くウェブサービスを理解していない状態で発注すると、共通言語がないために意思疎通に苦しみ、時間と費用が無駄になるであろうことが予想されました。

そこで、(1)エンジニアとの共通言語を学び、(2)投資家などに見せることのできるプロトタイプを創る、という2つの目的をもって最近増えているプログラミング教室に通うことにしました。幸い通う時間はたくさん確保できますので、TECH::CAMPという通学型を選択しました。

TECH::CAMPの感想

プログラミング言語の習得は、普通の言語習得と同じだと思います。カギは反復練習です。カリキュラムはよく作りこんであり、3度くらい繰り返すと、かなり理解が深まりました。ここまで10日くらいかかりました。そこから自分たちのウェブサービスのプロトタイプづくりに進むことができ、2週間ほどでRuby on Railsでのプロトタイプをウェブにアップすることができました。

TECH::CAMPの一か月だけで本格運用できるウェブサービスを作れるとは思いませんが、(1)他人にアイディアを伝えるプロトタイプを作り(動いているものを見せないと、なかなか他人にイメージを持ってもらえません)、(2)開発を頼むエンジニアの人が何を言っているのか理解できるようになります。

我々の最初の打ち合わせでは、プログラミングを理解しない顧客からのざっくりとした発注に、エンジニアも不安になっていたのことでしょう。大きなバッファーを見込んだ見積もりになるのは仕方なく、500万という見積もりを受けました。プログラミンを知らない顧客は、なぜ材料費ゼロなのに500万もかかるんだ?とこちらも疑心不安になります。お互いに不信感を持ってしまうという、良くない状態です。プログラミングをかじったことで、今は何が難しいかを理解することはできます。そのうえで、なぜ500万が高いと思うかも説明することができます。例えば、素人の私がつきっきり正味1週間でプロトタイプを作ったのです。プロの人であれば、似た事例を多数扱ってきているはずです。現在はデザイン料込みで200万とお願いしていますが、実際にいくらに落ち着くのか楽しみです。

いずれにせよ、TECH::CAMP代 13万 + パソコン代 9万 + 時間 2週間 で エンジニアの方々との話し合いがとてもスムーズになり、開発コストが少なくとも100万円は削減できるでしょう。とてもよい費用対効果でした。TECH::CAMPの創業のビジョンである、「難しいと思い込まれているプログラミングを多くの人に学んでほしい」は十分に達成できる仕組みだと思います。敷居の高いプログラミングを身近にして頂き、ありがとうございました!

チャーリー・マンガ―の伝記『DAMN RIGHT!』を読んで

チャーリー・マンガ―の伝記『DAMN RIGHT!』を読みました

チャーリー・マンガ―とは?

チャーリー・マンガ―は、世界最高の投資家の一人として名高いウォーレン・バフェットのパートナーであり、バークシャー・ハサウェイの副会長を務めています。弁護士としてキャリアを始めますが、仕事で知り合った人と組んだ不動産ビジネスで大儲けしたあと、バフェットの執拗な誘いもあり、1962年に投資家に転向します。1975年までヘッジファンドを運用した後、投資先企業の経営からバークシャーの経営へとつながっていきます。

チャーリー・マンガ―についての書籍は少ない

ウォーレン・バフェットが有名すぎるために、チャーリー・マンガ―は相応の注目を集めていないと感じます。実際に、マンガ―について書かれた本は、今回紹介した『DAMN RIGHT!』を含めても英語で実質3冊しかないようです。『Poor Charlie’s Almanack』は英語のみで、和訳されているのは『完全なる投資家の頭の中』一冊のみだと思います。バフェットが長年のパートナーとして認める人物の考え方を知るためにも、是非とも一読をお薦めします。

『DAMN RIGHT!』を読んで

マンガ―の生活は17年間変わっていない

この本は2000年に出版されたもので、1924年生まれのマンガ―は当時76歳でした。それから17年が経ち、マンガ―は現在93歳になりますが、87歳になったバフェットとともに今もバークシャー・ハサウェイを率いています。2000年から現在まで、マンガ―の生活はおそらくほとんど変わっていないという印象を受けます。それほど、習慣に基づいた生活を送っているということに驚きます。

複利効果は人生後半になるほど効いてくる

1962(38歳)140万ドル
1975(51歳)500万ドル
1998(74歳)12億ドル
2017(93歳)15億ドル

マンガ―の個人資産の推移を見ていくと、上のようになっています。特に51歳から74歳の間の増加が大きいことが分かります。日本のサラリーマン的発想からすれば、給料は50代まで上がり、そこから先は出世競争次第ということなのかもしれませんが、投資の世界は違います。全ての経験や知識が累積していく上に、運用資産も増えていきます。いくつかの市場サイクルを経験した50代を過ぎてからが勝負と言っても過言ではありません。

ちなみに、1998年から2017年の資産増加率が低いのは、バークシャー・ハサウェイの株価が上昇しなかったからではなく、マンガ―が株を贈与していることによるもの思われます。

バリュー投資+集中投資の効果

マンガ―のヘッジファンドは14年間で年率20%近い複利リターンを残し、最初の資産を12倍にしました。年率5%であったダウ平均を年率15%も上回る、文字通りの圧勝です。マンガ―は、気に入った企業へ集中投資していましたが、それを支えた投資戦略は、バリュー投資だったそうです。

素晴らしい投資家に相乗りしても素晴らしい成果が得られる

この本で一番印象的だったのは、Otis Boothという方です。マンガ―と不動産開発などを行ったあと、バフェットの評判を聞きます。1963年にバフェットに会ったOtis Boothは、当時の金額で100万ドルをバフェットに投資しました。そして、彼自身はただひたすら待つことで、1998年には10億ドルを超える資産を手にしました。

バフェットやマンガ―がやっていることは難しすぎると感じることもありますが、素晴らしい経営者を見つけて長期投資すれば、素晴らしいリターンが得られるという実例として、Otis Booth氏に感銘を受けました。

Happy Investing!!

 

 

日経平均先物を売って学んだこと

日経平均を空売りするには

日経平均株価(出典:kabutan.jp)

2016年後半からの株価上昇で、私の基準で割安と思える株は少なくなりました。このサイトでは日経平均採用銘柄の長期業績レポートをまとめていますが、長期的な利益成長実績の乏しい会社でもPER20倍は当たり前という状況です。

株価が価値よりも高いと思うときはどうすればいいか?答えは簡単で、株価が価値より低くなるまでひたすら待つしかありません。何もしないで投資余力を残しつつチャンスを待つのは、投資でおそらく一番重要かつ難しいことです。自分は値上がりすることのない大量の現金を抱えていながら、市場に参加している人が株価上昇を楽しんでいる姿を見るのは、気分の良いものではありません。しかし、これは長期的に高い運用成績を残すためには必要不可欠です。

私は、2015年夏に日経平均が2万円を超えたあたりで、保有株式を全て売却してポジションを100%現金にしました。おかげで株価下落を回避でき、2016年夏頃から投資を再開したことで満足のいくリターンを得ることができました。再び日経平均が2万円を目前にしている現状で割高だと感じているのであれば、また現金比率を高めればよいと思われるかもしれません。しかし、現在は大きな含み益を抱えた保有株式があるので、現時点で売却によって利益を確定して税金を払いたくはないのです。そこで、ヘッジファンドのロング・ショート戦略ではありませんが、「保有株式はそのままに、市場全体の下落リスクをヘッジすることはできないか」、と欲を出してしまいました。

日経平均の下落に備える方法は2つあります。

(1)インバース型ETFを買う

例えば、NEXT 日経ダブルインバース・インデックス(1357)という商品があります。日経平均の-2倍の値動きに連動することを目指しているので、例えば100万円分のリスクをヘッジしたいのであれば、この商品を50万円購入すればいいということになります。

NEXT日経ダブルインバース・インデックス(出典:kabutan.jp)

実際の値動きを見ると違和感を感じます。例えば、日経平均は2015年夏に2万円越えで、現在は2万円手前。インバース・インデックスからすれば、現在の方が2015年夏よりも高くなっているはずです。しかし、上の値動きを日経平均株価と比べてみると、そうなっていないことは明らかです。この商品の問題は、長期的に日経平均の値動きと乖離してしまうことです。目論見書にも次のような記載があります。

私は今後1年以内に日経平均が下落する可能性が高いと考えているのであり、短期的なことは分かりません。待てば待つほど負けていくインバース型商品では、私の用途には合いません。

(2)日経平均先物を売る

先物取引は、インバース型商品のような長期投資するとヘッジがズレる問題はありません。一方で、こちらの問題は課税方法にあります。

株式取引による税金は分離課税されます。しかし、先物は総合課税で雑所得として課税されます。課税するための分類が違うと、損益通算することができません。つまり、仮にヘッジが上手くいき、保有株価は下落したが、先物取引で儲かったとします。本来であれば株式での損失と先物の利益を相殺したいのですが、税法上はそうできないのです。

税金の問題はありますが、ヘッジがズレる方が大きな問題だと思うので、長期的に日経平均株価の下落に賭けるのであれば、日経平均先物を利用したほうがいいと思います。

日経平均先物を初めて売ってみました

日経平均株価(日足、kabutan.jp)

実際には、上記のような取引をしました。

結論としては、先物を持ち続けるのは精神的に非常に苦しかったです。その最大の理由は、自分自身が本来いくらであるべきかを分かっていないことです。日経平均が2万円では高いとは思っていますが、では適正水準が15000円なのか、16000円なのか?個別株式に投資するときには持っている根拠がないのです。価値の根拠という浮き輪がないままに市場の渦に飛び込んでしまい、値動きによる含み損益に翻弄されてしまいました。普段は見ないようにしている株価を頻繁に見てしまい、ただただ精神的に疲れる日々でした。

我慢に我慢をして、なんとか損益トントンで先物投資を終えることができ、本当にホッとしています。ようやく平穏な日々が帰ってきました。バリュー投資家として目標としている、ウォーレン・バフェットは、空売りについて次のように述べています。

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我々が取り組んだ空売り投資はどれも最後にはうまくいったが、とてもつらい経験だった。株を買って稼ぐほうがはるかに簡単だ。さらに、空売りは大きな損失リスクがあるために大きなポジションを持つことができないので、結果として大きな利益を上げることもできない。(ウォーレン・バフェット、2001年年次報告書より)

“Everything we’ve ever thought about shorting worked out eventually, but it’s very painful. It’s a whole lot easier to make money on the long side. You can’t make big money shorting because the risk of big losses means you can’t make big bets.” – Warren Buffett
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実際に自分でやってみてようやく、この言葉の意味を噛み締めました。どうして失敗してみないと学べないのか、達人の言葉から学べないのかと、自分の無知というか傲慢さが恥ずかしくなります。売りポジションがなくなってみると、買いポジションだけ持っていることでなんと心が落ち着くことでしょう。気がつくと、ロング側でもっとリスクが取れるようになった自分がいたので、全く無駄な経験ではなかったのかもしれません。

Happy Investing!!

バフェット氏の株主への手紙(2016年版)を読んで

バフェット氏の株主への手紙

Bershire Hathaway社を率いる稀代の投資家ウォーレン・バフェット氏は、年に1回、株主に向けて手紙を書きます。毎年12月で終わる会計年度を振り返る内容で、2月下旬に発表されます。Berkshire Hathaway社のホームページで、1977年から2016年まで40年分が公開されています。毎年20ページ以上に渡って世界最高の投資家の考えに触れることができるため、投資家にとっては必読書だと思っています。

原文は英語ですが、和訳されている方のサイトを発見しました。betseldom様、ありがとうございます。

2016年の手紙が発行されました

待ちに待った2016年の手紙が、2月下旬に発行されました。心に残った点を紹介させて頂きます。

① 自分が掲げた目標と達成度を開示する姿勢

手紙の冒頭には毎年、Berkshire Hathaway社のBPS成長率、株価リターンと、インデックス(配当込S&P500)リターン比較がのっています。バフェット氏は、経営者の仕事は「長期的に企業価値を上げることであり、それは結果として株価に反映される」と明言しています。さらに自分への評価基準として、「配当込S&P500を上回るリターンを目指す」ことも明言しています。

手紙の冒頭で、バフェット氏は自ら掲げた目標に対する達成度合いを、誰もが理解できる形で明示しています。本当に潔く、フェアで、カッコいいと思います。

Berkshire Hathaway

② 複利効果のすさまじさ

上記の表で、過去52年にでBerkshire Hathaway社のBPSは年率19.0%、株価は年率20.8%で増えたのに対して、配当込S&P500は年率9.7%で増えました。19.0%、20.8%、9.7%と並べると、19.0%と20.8%など大差ないように感じてしまうかもしれません。

しかし、52年の複利グラフにしてみると、その差は一目瞭然です。1965年頭に$1投資したとすると、2016年末にBPSは$8843に、株価は$19725に、S&Pは$127にそれぞれ増えています。S&Pにインデックス投資しているだけでも100倍以上に増えて嬉しいね、という見方もできますが、Berkshire Hathaway株はその感になんと20000倍に増えています。1年で10%の違いが50年積もり積もると、とんでもない差が生まれるのです。

BPSと株価の違いに至っては年率2%以下です。それでも50年積もり積もると、倍以上の差がついてしまうのです。長期的な資産形成においては、たかが数%と思わずに手数料を節約する努力がいかに大切か、再認識させられます。

複利効果はとにかく時間がかかるので、人間が体感することは難しいのです。実際に計算してみると、目を疑うような結果が出ることが多いです。私も長い時間軸を持って、小さなリターンを積み上げて大きな複利効果を上げていきます。

② アクティブ投資は難しい

Berkshire Hathaway

バフェット氏は2008年から10年間の賭けを行っています。ヘッジファンドと市場インデックス、10年間のリターンが高いのはどちらかという賭けです。バフェット氏はもちろん、インデックスに賭けています。Protege PartnersのTed Seidesさんが選んだヘッジファンド5社の平均リターンと競争しているのですが、9年たった2016年時点では、インデックスが年率7.1% vs 2.2%で圧勝しています。

年率7.1%で9年間運用すると、 $1.00  → $1.85
年率2.2%で9年間運用すると、 $1.00  → $1.22

2017年を残すのみですから、既に50%以上開いてしまった差をヘッジファンドが取り戻すことはほぼ不可能でしょう。

バフェット氏は多くのアクティブ・ファンドマネージャーが、手数料分の仕事をしていないと批判しています。市場の仕組み上、インデックス投資家は市場平均リターンを手にします。そして、アクティブ投資家全体ではやはり市場平均リターンになります。アクティブ投資家の誰かが市場リターンを上回っているという事は、誰かが市場リターンを下回っているのです。

私は、個人投資家として個別株式に投資しています。市場平均リターンを上回ることができると思っていますし、過去3年間は結果も伴ってきました。しかし、果たして本当に自分に競争優位性があるのでしょうか?この点については、冷静に見極める必要がありそうです。

Happy Investing!!