PSG Group (Piet Mouton)インタビューを聞いて

スイスの投資家、Rob Vinallという方をご存知でしょうか?RV Capitalという長期集中投資ファンドを1人で運用しており、バフェットさんやマンガ―さんと同様、私が理想とする運用体制を実践している方です。

Robさんは毎年スイスで年次総会を開いているのですが、そのyoutube動画は学びが多くお薦めです。2020年の動画が公開されているのですが、中でも南アフリカのPSG Groupという持ち株会社の2代目社長、Piet Moutonさんとの対談が印象に残りました。PSG Groupは南アフリカ最大の銀行、Capitec Bankなどを保有していますが、事業の立ち上げ段階から投資している点でユニークです。まだ海のものとも山のものとも分からない案件の中から、どのように選別しているのか、という質問にたいしてこう答えていました。

1、大きな潜在市場規模。小さい企業を作るのも、大きな企業を作るのも、手間は変わらない。となれば、成功した時のアップサイドが大きい分野、つまりは潜在市場規模の大きな分野を選びたい。例えば、金融、教育、エネルギーなど。

2、弱い既存プレイヤー。既存プレイヤーが怠惰な分野を好んでいる。政府サービスを代替することも魅力的(教育分野で実践中)。なぜ、後発銀行であるCapitec Bankがこれほど伸びたか。例えば、南アフリカの既存銀行の窓口は平日9時から15時までしか空いていなかった(日本の銀行と同じ。。。)し、中心部にばかり店舗があって、労働者にはアクセスが悪かった。Capitec Bankは、月~土の朝7時から夜7時まで店舗を開けているし、顧客アクセスの良い地域への出店を心がけた。

3、斬新なコンセプトを持つ経営陣。経営陣が既存プレイヤーと全く異なる発想を持っていることを重視している。例えば、Capitec Bankは小売り業の発想を銀行に持ち込んだ。小売店舗に行けば、店員が「お困りですか」などと声をかけてくる。同様に、Capitec Bankでは支店長が入口の一番近くに座っている。支店長は一番銀行のことを分かっているわけだから、一番に顧客の要望を聞き、適切なサービスに誘導すべきだと考えている。インタビューからは外れますが、Third Placeという発想をカフェに持ち込んだスターバックス、店舗がない小売業というコンセプトのAmazon、サーバーを保有しないというコンセプトのクラウドサービス、確かに大きく伸びた会社は、既存コンセプトをより良く実行するだけではない、斬新な発想を持っていると感じます。

英語にはなりますが、優秀な経営者の考えに触れることができる、素晴らしい動画です。

Robさん、ありがとうございます。

書評:The Three Rules (by Michael Raynor & Mumtaz Ahmed, 2013)

The Tree Rules: How Exceptional Companies Think

著者について

二人ともデロイトのコンサルティング部門の方です。

内容について

同じ事業領域にある企業を比べると、ずば抜けた企業、良い企業、普通の企業があることが分かる。長期的なROAやROEの推移、長期的な株主リターンを比べてみれば、その差は一目瞭然だ。もちろんずば抜けた企業を長期保有したいわけだが、どうすれば見分けることができるのか?持続的な競争優位性を発揮する企業には、3つの共通点があるというのが本書の主張。

1、Better before cheaper 価格を下げる前に、付加価値を上げることに集中しているか?

2、Revenue before cost 売上を上げることに集中しているか?ROAを上げるためには、売上を上げるか、費用を下げるか、資産を下げるか、の3つの選択肢しかない。ずば抜けた企業は多くの場合、売上を上げることによって、高いROAを維持している。さらに、売上を増やすためには、価格を上げるか、量を上げるかという選択肢になるが、多くの場合、価格を上げることによって増収を達成している。値上げできるということは、つまり#1の付加価値が高いと認められている証拠に他ならない。

3、There are no other rules 3つのルールと言っておきながら、最初の2つ以外にはありません!という話。

まとめ

長期的に繁栄する企業は、価格決定力があることが多いという話。価格決定力を付けるために、付加価値を高める不断の努力を行っているかどうか。そんなことは当たり前だけど、当たり前なことを当たり前に続けることが、どれほど難しいことか。。。