長期的に高い運用実績を残している投資信託の保有銘柄アップデート

クローニングのすすめ

日本に4000社、世界に4万社以上ある上場企業の海から、どうすれば効率的に投資先をみつけることができるのでしょうか?

有望な投資先を探す方法の一つに、クローニングがあります。過去によい運用成績を残している投資家からアイディアを拝借してしまおうという考えです。

詳細は、以下の投稿をご覧ください。

関連投稿】長期的に高い運用実績を残している投資家の真似をしよう

投資信託の月次レポートを活用しよう

投資信託の多くは毎月、保有している上位10銘柄についての情報を開示しています。資産の多くを投資しているということは自信の表れです。

投資信託の保有銘柄を研究することで、プロ投資家が企業分析した結果を無料で利用させて頂くことができるのです。投資先アイディアの発掘先として、これを利用しない手はありません。

ファンドのリターンを調べるには、モーニングスター

そもそもどのファンドの真似をすべきでしょうか?ファンドのリターンを調べるには、モーニングスターがお薦めです。このリンクからファンドランキングに進んでください。そして、分類は国内株式型、期間は10年間を選んでください。下のようなランキングが出てきます。

『SBI 中小型割安成長株ファンド ジェイリバイブ』の月次レポートをみてみよう

モーニングスターによる10年リターンで最上位に来ている『SBI 中小型株割安成長株ファンド ジェイリバイブ』の月次レポートをみてみましょう。

このリンクから、ファンドの説明ページに進んでください。下のようになります。

次に、「目論見書・定期レポート等」というタブをクリックすると、以下のようになります。

最後に、一番下の「週報」をクリックして開いてください。ほとんどの投資信託は月次で運用レポートを発行します。SBIアセットマネジメントは週次で運用レポートを出している珍しいケースです。週報の中に、下のような組入れ上位銘柄についての記載があります。

これこそ、日本で過去10年の運用成績トップの投資信託運用者が、今最も投資妙味を感じている10社なのです。優秀な投資家のお墨付きをもらった企業群ですので、企業調査を始める叩き台として非常に有効だと思いませんか?

釈迦に説法とは思いますが、これらの銘柄を盲目的に購入しないように注意してください。個別企業に投資する場合はしっかりと自分で納得できるまで調べることを忘れないでください。

ニュースレターで投資信託10本の銘柄データをお届けします

Nagatomo Investmentsでは、国内株式の投資信託10本について定期的に保有銘柄データをアップデートしています。直近ではこのようなファイルになります –> 2017.01.12 blog fund cloning

ニュースレターを通じて定期的にアップデートしたデータを送付していきますので、トップページから登録をお願いします。

Happy Investing!!

会社四季報通読のすゝめ

会社四季報2017年新春号の発売日です

今日は会社四季報2017年新春号の発売日です。会社四季報は東洋経済が年4回発行しており、たったの2000円で日本のすべての上場企業を俯瞰することができる素晴らしい資料です。

四季報の通読が最もバイアスの少ない調査方法

私は、四季報の発売日が楽しみで仕方ありません。なぜなら、四季報を通読して投資対象企業を探すことが、最もバイアスの少ない投資調査方法だからです。

四季報の通読は、私が尊敬している個人投資家の角山智さんも一押しの手法です。

リンク】角山さんのホームページ。ショートコラムを愛読しています。メルマガ登録もお忘れなく。
リンク】角山さんが四季報通読に関して書いたメルマガ

2016年9月に購入して3か月間お世話になった四季報2016年冬号にお疲れ様でしたと言い、心機一転まっさらな四季報に向かいます。過去に調べたことのある企業に対しても思い込みを捨て、1社1社に思いを巡らすことで、毎回新しい発見があります。

日本の上場企業投資の対象は4000社しかありません。年に4回、自分に与えられた選択肢の全てに目を通す作業を繰り返すことで、企業の選別眼が養われていくと実感します。

何より、こうした地道な作業を行っている投資家は少ないです。当たり前のことを当たり前にやって、差別化していきましょう

Happy Investing!!

調査対象企業の探し方:優秀な知り合いが転職した会社

モルガン・スタンレー証券の同期会で思い出すこと

先日、モルガン・スタンレー証券東京オフィス2004年入社同期の忘年会がありました。入社して10年以上が経ち同期の9割以上が転職していますが、初回から幹事を務めてくださるTさんのおかげで、今年もみんなの元気な顔を見ることができました。ありがとうございます。

さて、この忘年会で毎年思い出すことがあります。それは、「転職している同期がいたら、その企業を投資対象として調べる」ということです。このスクリーニング方法に気が付いたのは、エムスリー(2413)という医療従事者向けの情報サイトで製薬会社の情報提供支援をしている企業がきっかけです。実は、同期のうち2人が別のタイミングでこの会社に転職したのです。1人は2010年、1人は2013年だったと記憶しています。その時の私は、「へー、30人くらいしかいない同期が2人も同じ会社に転職するなんて珍しいこともあるんだな」くらいにしか考えていませんでした。ちなみに、2010年末の株価は350円、2013年末の株価は1300円、今の株価は2600円です。逃した魚は大きいのです。

関連資料】エムスリー長期業績レポート

優秀な知り合いによる企業調査の結果が分かるのが転職先

仕事人にとって、会社ほど多くの時間を過ごす場所はありません。どの会社を選ぶかによって仕事人生は大きく変わったものになります。そういう理由から就職先を真面目に選ばない人はいないし、選択肢が多い優秀な人であればあるほど、より綿密な企業調査の結果として転職していると考えることが出来ます自然です。まずは純粋に知り合いのキャリアアップを喜び、投資家の立場として彼らの企業調査の結果を利用させて頂くことができるのです。

社会人経験を積んだ後最初の転職先情報が特に有用

自らの経験を振り返っても、新卒のときには会社というものが分かっていないものです。一般的な評価に左右されて選びがちです。しかし、社会人になってビジネス上様々な企業と触れ合う中で、自分の企業観が出来上がっていきます。こうして選別力が高まったときに行う転職という行動にこそ、多くの情報価値が含まれていると思います。

まとめ

転職は、綿密な企業調査の結果です。その人が、自分の人生をよりよく導くために知恵を絞って考えた結果ですから、耳を傾ける価値があると思いますし、実際に自分の知り合いの転職先はよい投資候補となりうる企業ばかりです。

特に情報価値が高いのが、社会人経験を5年ほど積んで企業の選別眼を養い、かつ優秀なために引く手あまたという方が行う転職です。知人のキャリアアップを喜び、投資情報としても有り難く活用させて頂きましょう。

Happy Investing!!

調査対象企業の探し方:自社株買い

【注記】本投稿は、長友威倫が別のブログに書いた記事をアップデートしたものです。

大東建託にみる自社株買いの効果

調査対象企業として、自社株買いの有無が一つの目安になります。今日は、具体的な自社株買いの調べ方について書いていきます。対象企業は大東建託(1878)。私が知る限り、日本で最も積極的に自社株買いをしている企業です。

発行済み株式数の調べ方

さっそく、大東建託のIRページに行きます。右にある決算資料へのリンクをクリックして、さらに2016年3月期を選びます。 有価証券報告書をクリックして開きます。これが、上場企業が提出を義務付けられている書類のうちで一番詳細なものになります。2016年3月期の有価証券報告書は全166ページもありますが、どこに必要な情報が書いてあるか分かってくれば、慣れてきます。5~6ページに、過去5年間の経営状態のまとめが載っています。6ページに、「発行済株式総数」とあります。

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この数字を、過去にさかのぼって集めます。ちょっと面倒ですが、コツコツ手作業でやっています。以下のようになります。

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過去14年間、自社株買いによる大東建託のリターン押し上げ効果は年率4%!

過去14年間で、大東建託の当期純利益は年率8%で成長。自社株買いによって株式数が年率4%で減ったので、EPSは年率12%で成長。さらにPERが2002年の12xから直近では19xに拡大したことで、年率3%の株価押し上げ効果があります。利益 x 株数 x PERの力が合わさり、大東建託の株価は2000円から16000円まで、年率16%上昇してきました。株価を上げる大切な構成要素のうちの一つが自社株買いであること、伝わりましたでしょうか?

私も、このような3拍子そろった銘柄を見つけて長期保有したいです。長きにわたって日経平均は不調ですが、輝く個別銘柄は必ずあります。必ず見つかります。頑張って探しましょう!

大東建託のみなさま、素晴らしい事業運営と株主還元によって理想的な株価形成を見せて頂き、ありがとうございます!

Happy Investing!!

 

調査対象企業の探し方:スピンオフ

【注記】本投稿は、長友威倫が別のブログに書いた記事をアップデートしたものです。

スピンオフとは

スピンオフとは、ある企業から部門が切り離され、独立した企業となることです。切り離す理由は様々ですが、本業に集中するため、利益が出ないため、など。問題を抱えた事業であることも多いのですが、一方では本質価値との乖離が起きやすい構造的要因も抱えています。

企業Aが部門Bを企業Bとしてスピンオフすると仮定します。この場合、企業Aの株主には、新しく産まれた企業Bの株式が付与されることが多いです。しかし、機関投資家のなかには、企業Bの時価総額が小さすぎるなどの理由により、強制的に売却させられることがあります。この売り圧力によって、企業Bの本質価値に対して株価が安くなる可能性が高まります。

私は、スピンオフを理想的な起業形態だと感じます。サラリーマンの枠に収まりきらない人物が、親会社のサポートを受けて起業する。つまり、社長は組織内でも評価される人物だということです。さらに事業が軌道に乗ったところで、資本関係を超えてより広く取引したいと独立企業となる。顧客基盤もできていますし、あとはより大きな市場を狙うだけです。経営者にしても、今後は親会社の社内規定を超えて、成功しただけ自分にリターンがある訳ですから、モチベーションも高そうです。良いことづくめに思えます。

スピンオフ事例:富士電機 → 富士通 → ファナック

著名な例として、1923年に設立された富士電機の電話部所が分社化して、1935年に富士通となります。さらに、富士通の計算制御部から、1972年にファナックが子会社として独立します。

現在の時価総額は:

親:富士電機 (6504) 4500億円
子:富士通  (6702) 1兆5000億円
孫:ファナック(6954) 4兆1000億円

子が親を超え、孫が子を超える。このようなスピンオフの可能性に、常に目を光らせておきたいです。

Happy Investing!!

長期業績レポートの提供をはじめました

分析ツール > 長期業績推移レポートの提供をはじめました

『何年分の業績を調べればいいのか?』という記事では、入手しやすい2005年度までの有価証券報告書を元に、過去15年分の業績推移を確認することをお薦めしました。慣れてくれば1社10分で完成できますが、みなさまの一助になればと、長期業績レポートの提供をはじめました。企業調査のお役に立てて頂ければ嬉しいです。

ホームページ上部のメニューから、分析ツール > 長期業績レポート と進んでください。日経225採用銘柄からレポートを作成していきます。追加して欲しい情報などコメントを頂けると有り難いです。よろしくお願いします。

長期業績レポートの見方(例:トヨタ自動車)

出典:Nagatomo Investments

まず決算期、経営陣、会計基準をのせました。次に、PLを中心に決算実績をまとめました。さらに、実効株式数(発行済み株式数 – 自己株式数)からEPS(一株利益)、バリュエーション(PER, POCF=営業CF倍率)、配当額をのせました。

一番下に、投資家として一番興味のある投資リターンを、配当再投資あり・なしの2パターンで計算しました。例えば2002年3月末にトヨタ自動車株を購入した場合、2016年3月末に約2倍(14年複利で年率5%少々)になったことが分かります。

投資リターンを要素分解して理解を深めましょう

右の14yr複利という項目ではリターンを要素分解しています。

リターンを要素分解すると、トヨタ自動車は年率11%でEPSを成長させたことが分かります。15兆円という売上規模からでも年率10%以上でEPS成長したという結果は、素晴らしいと思います。さすがはトヨタのオペレーション力です。しかし、PERが21xから8xまで切り下がったことから、投資リターンとしては年率5%と見劣りします。

要素分解から投資のポイントが見えてきます

今後の投資リターンを考える際には、(1)売上、(2)利益率、(3)バリュエーションの見通しがポイントになります。

(1)トヨタ自動車は世界最大の自動車会社になったが、どれくらいの売上成長が見込めるのか(全世界需要 x シェア)?

(2)過去最高の利益率にあるが、この水準を維持できるのか(電気自動車など商品ミックスの影響は)?

(3)バリュエーションは過去最低水準にあるが、本質価値に対して十分に低いか?

Value Line社の長期業績推移レポートを目指しています

アメリカではValue Line社が上場企業各社の長期業績レポートを提供しています。下が、Value Line社の参考レポートです。Johnson&Johnson社の過去16年分の業績推移や経営指標が網羅されていて、これ1枚を見れば企業の概要が分かるようになっています。

出典:Value Line

まとめ

日本では、アメリカのValue Lineレポートのように、会社の長期業績の推移を手軽にみる方法がありません。投資調査の参考にして頂ければ嬉しいです。よりよい資料にしていくためにコメント、アドバイスをお願いします。

何年分の業績を調べればいいのか?

どんな企業かを知る上で、過去の業績を調べます。いったい何年分さかのぼって調べればいいのでしょうか?

35歳の転職者には15年超の経歴を求め、なぜ企業には長期経歴を求めないのか?

バリュー投資の基本は、将来のキャッシュフローの総和である企業の本質価値を算出することです。私は、将来は過去から続く流れの中にあるので、過去を良く理解することは将来の予測精度の向上につながると思っています。そこで、可能なかぎり長く過去の業績を調べるようにしています。

会社ではなく個人について調べると置き換えてみます。履歴書を読むとき、あなたは何年分の経歴を求めますか?過去5年で納得しますか?しませんよね?転職者であれば、高校からの学歴と職歴を求められます。つまり、私のように35歳であれば15年以上の人生について説明を求められるのです。では、大事な資金を預けようという企業について、同じような熱意で調べないのはどうしてでしょうか? 

ほとんどの企業は、長期的な業績を投資家が見やすい形で提示をしてくれません。企業に都合よく景気回復局面を切り取って、右肩上がりの綺麗な業績拡大トレンドを見せてきたりします。そこで、投資家自身が業績をつなぎ合わせて長期経歴を作る必要があります。

手軽に調べられる業績は過去15年分

主な業績データの入手先として、以下のものがあります。

(1)四季報(本): 過去3年分

紙ベースの四季報は安価で調べやすいですが、過去3年分の業績しか記載されていません。3年では景気サイクルを含んでいないため、企業の実力を測るには短すぎます。

(2)四季報(CD): 過去10年分

CDベースの四季報は定価7000円ほどしますが、手軽に10年の業績を調べることができます。景気サイクルを1回は含んでいるので、企業の景気敏感度を測ることができます。

(3)有価証券報告書: 過去15年分

一つの有価証券報告書の冒頭には、サマリーページとして過去5年分の財務データがのっています。株主プロという素晴らしい無料サイトでは、各企業の有価証券報告書を2005年度までさかのぼって入手することができます。現在であれば2015年度から2001年度まで、過去15年分の財務データを入手できます。15年あれば景気サイクルを約2回含んでいるので、業績下降局面での企業の対応がどう改善したかを含めて構造的な変化を伺い知ることができます。

(4)会社ホームページ: まちまち

より長期の業績を開示している素晴らしい企業もありますが、残念ながら少数です。

例:日産自動車の15年業績サマリー

私は、15年業績サマリーを作るところから企業分析を開始しています。10分で作れます。

日産自動車を例に見てみます。EPSや営業キャッシュフローが15年間で横ばいです。2002年3月末に日産に投資した場合、2016年3月末までのリターンは複利3%と寂しい結果です。カルロス・ゴーン社長の経営手腕は高く評価されがちですが、客観的には業績が伸び悩んでいるとみるのが自然です。今回の景気回復局面でも、2005年の業績を上回れていません。このような背景を理解した上で三菱自動車へ出資した理由を考えると、より深い理解につながります。

(出典:有価証券報告書)
(出典:有価証券報告書)

Charlie MungerはGeneral Motors社創業(1908年)以来全ての年次報告書を読んでいる

Mohnish Pabraiというバリュー投資家がカリフォルニア大学アーバイン校のビジネススクールで行った講演(YouTubeリンク参照)で、Warren BuffetのパートナーであるCharlie Mungerが、General Motors社が1908年に創業して以来すべての年次報告書を読んでいると語っています。Charlie Mungerは90代になっても、純粋な好奇心から100年以上の社史を紐解こうしているのです。これが、世界最高峰のバリュー投資家の行動パターンです。

 まとめ

長期的な業績推移に注意を払う投資家は少ないのが現実です。大事な資金を提供するというのに、簡単な調べものをしない投資家が多いことに驚きますが、そのぶん努力をいとわない投資家にはチャンスが広がっています。

有価証券報告書の入手方法

有価証券報告書とは何か?

有価証券報告書(通称、有報)は、金融商品取引法で1年ごとの作成が義務付けられた企業内容の外部への開示資料です。法的に定められた資料なので、虚偽の記載があれば裁判沙汰になります。会社も気を使って作ってくる一番信頼できる情報源であり、企業分析の基礎となるものです。

3つの入手経路

私が使っている有報の入手経路は次の3つです。

1、会社ウェブサイト

IR情報として、何年分もの有報をダウンロードできるようにしてくれている親切な企業もあれば、全くみあたらない不親切な企業もあります。有報の会社ウェブサイト上での掲載は義務付けられていないのでしょうが、このようなところにも企業の情報開示への姿勢を感じることができます。

2、EDINET

EDINETは金融庁の情報開示システムです。届け出られたすべての書類を閲覧することができます。社名を入力し、有価証券報告書、過去3年分と選択します。問題は、過去3年分しか閲覧できないことです。

3、株主プロ

株主プロは有報データマイニング社が管理するウェブサイトで、上場企業の開示情報をまとめてくれた大変便利なものです。直近の資料が少し抜けているところがあります。古い有報を株主プロで、新しいものを会社ウェブサイトやEDINETで探せば、合わせて10年分の有報が読めます。

何年分の有価証券報告書を読むべきか?

私が企業分析する際には、景気サイクルより長い期間について過去の実績を検証するように心がけています。一般的な景気サイクルが5~8年であることを考え、10年分の有報を読むことを目標にしています。市場の構造変化を理解したい場合には、さらに長期にわたって有報を読む必要があるかもしれませんが、大きな図書館に出向く以外の入手方法が分かりません。