ワークマン土屋専務のインタビュー

ワークマンの土屋専務のインタビューを聞いて、Audrey Tang氏に続いてデジタル化が効果を生むための前提条件について考えました。どうやら、デジタル化がうまく言っている国や会社は共通点があるようです。

ワークマンの土屋専務は三井物産で情報系子会社社長を務めた後、親戚である創業者の土屋嘉雄氏に招かれ、2012年に入社しました。当時のワークマンは作業着業界で盤石のトップシェアで、データ活用など社内整備はできていたようです。問題は、作業着は成熟市場で、このままでは先細りになりこと。土屋専務は、作業着製造ノウハウを普段着に横展開することで、機能性ウェアを安く提供するワークマンプラス業態を生み出しました。

私の聞いたZoomインタビューは、マイクロソフトの方を司会に、ワークマン土屋専務と、ecbeing林社長が対談する形式でした。印象的だったのは、林社長が回答しているとき、土屋専務がメモを取り続けていることです。このように、経営陣の素顔が垣間見れるようになったのは、ビデオ会議のお陰ですね。さらに、林社長の回答で分からない点があれば、土屋専務はその場で質問をしています。まるで学生のように知識を吸収しようという姿勢に、ワークマンの社風を垣間見た気がしました。このような方が上司であれば、データに裏付けられた施策を提案して、受け入れてもらえる可能性が高いでしょう。

デジタル化によって物事が可視化されたとしても、(1)それがより良い意思決定につながるか、(2)その意思決定に基づいて行動できるか、は別問題です。客観的に見て撤退すべき店舗や事業を辞められるか。これはデジタル化とは関係ない話です。そもそも合理的な議論ができる環境なのかどうかによってデジタル化の効果は大きく変わるでしょう。結局、ITは技術に過ぎません。それ自体は、良いものでも悪いものでもない。活用できる企業とそうでない企業の差はますます開いていくなと確信に変わってきました。デジタル活用できる社風に後から変えるのは並大抵のことではないでしょう。そのような社風を持つワークマンやニトリのような会社の競争優位性は、さらに高まったと感じます。

 

ケチャップ戦線

昨日のマヨネーズ価格比較に続き、今日は近隣店舗のケチャップ価格比較です。

ローソン売場の写真です。

裏面を見ると、、、

カゴメ純正商品の隣に、カゴメが作ったPB商品が並んでいました。

同じ会社(カゴメ)が、同じ工場(小坂井工場)で、同じ原材料で作っているとなると、私は,「同じじゃん!」と安いほうのPB商品を買ってしまいますが、多くの消費者はどういう行動をするのでしょうか?

カゴメブランド故の価格差は、いつまで維持できるのでしょうか?

街中には、考える材料が溢れています。

Happy Investing!!

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PB商品に感じる、メーカーと小売店の力関係

コンビニ探索

私はコンビニ探索が大好きです。

コンビニという限られた空間に並んでいるのは、売上を最大化すべく選び抜かれた商品たち。

日本全国に約6万店あるコンビニに売場を確保することは、食品メーカーにとって大きなチャンスとなります。

↑ コンビニ店舗数推移(店)
(出典:http://www.garbagenews.net/archives/2392411.html)

マヨネーズ売場

例えば、セブンイレブンのマヨネーズ売場には、大小5つの商品が並んでいました。

・セブンイレブン PB商品 (大、小)
・キューピー (大、小)
・味の素 ピュアセレクト

裏を見て驚いたのは、セブンイレブンPB商品を、クノール(味の素)が作っていることです。

しかも、セブンPB商品の方が、価格が安い。。。

今はまだブランド価値で価格差を維持できているようですが、同じ会社が作っているという認識が広まれば、価格の安い方を買おうという流れが強くなると予想します。

ブランドだから信頼して買おう、という世界から、セブンイレブンにあるPB商品だから信頼して買おう、という世界にシフトしているように感じます。

付加価値が、ブランドからセブンイレブンに移転している可能性があり、食品メーカーにとっては厳しい状況かなと想像しました。

イノベーションの差

過去20年の食品メーカーとコンビニのイノベーションを比べると、競争優位性の移転も仕方ないのかなと思います。

私の知る限り、キューピーはひたすらマヨネーズを作ってきました。

国内では過半シェアを取ったあとのイノベーションは、スケールメリットを追求するために、買収 or 海外展開 するか、ブランドを他商品(ドレッシングとか)に展開するか。

しかし、海外展開に早期に取り組み結果を出したキッコーマンの醤油と違い、海外で日本のマヨネーズを見ることは少ないです。

一方のセブンイレブンは、店舗網の拡大+スーパー買収などで、年々販売能力を高めてきました。

その増大する販売力をもって、メーカー交渉で優位に立つことはもちろん、さらにPB商品に進出している訳です。

小さな個人商店しかなかった時代は、店に販売力・信用力がなく、商品ブランドが効果を発揮したと想像します。

しかし、店に販売力・信用力が付いてしまった状況になって、競争優位性の前提が崩れてしまったのかもしれません。

結局のところ、競争優位性を維持・拡大できない企業の収益性は長期的に低下していきます。

目の前にある事実の変遷を自分なりに理解し、将来の道筋を考えるのは、とても面白い。

私は投資が大好きです。

Happy Investing!!

従業員1人あたり時価総額100億円!初めて見た、PER1000倍銘柄

四季報通読

3月15日(金)に四季報が発売されました。

早速、通読に取り組んでいます。

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PER1000倍を超す、Kudan(4425)

AIやクラウドサービスなど、人気テーマ企業は、100倍を超すPERで取引されていることが散見されます。

PERが100倍ということは、現在の1年間の利益の100倍の価格で取引されている、ということです。

一般的な会社は、PER 10~20倍 で取引されていますから、PER100倍の会社は、利益が5~10倍に伸びることが株価に織り込まれていると考えます。

パラパラと四季報をめくっていて、目を疑いました。

2019年3月期利益に対してPER1397倍、2020年3月期利益に対してPER1274倍!!!!

Kudan(4425)という会社で、人工知覚の研究開発をしているそうです。

(出典:ヤフーファイナンス)

PER1200倍という株価には、利益が50倍になることが織り込まれていると思います。

驚くべきことに、Kudanの従業員数は14人だけ。従業員一人あたりの時価総額は100億円です。

時価総額100億円と言えば、立派な上場企業です。

ここまで従業員あたりの時価総額が高いと、従業員の方が風を引かないか、怪我をしないか、色々と心配してしまいそうです。

所感

利益が出ている会社で、PER1000倍以上という事例を、初めて見た気がします。

(特殊要因で利益が極端に低く押さえられていて、例えば100万円の利益に対して時価総額100億なので、PER10000倍という例はあります。)

あまりに高いバリュエーションには、人工知能分野のバブルの匂いがします。

Kudan社の今後の経営実績が楽しみです。

Happy Investing!!

追い風参考記録

拡大する銀行カードローン残高

日経新聞に、銀行カードローン残高の推移が出ていました。

下記の通り、2013年の3.5兆円から2018年には6兆円まで急拡大したようです。


(出典:3月18日 日経新聞 朝刊)

追い風参考記録

3.5兆円が6兆円に増えたということは、2.5兆円の増加です。

日本のGDP約500兆円に対して、2.5 / 500 = 0.5%の押し上げ効果があったと考えられます。

しかし、カードローンなどの債務はいずれ返済しなくてはなりません。

その際には、逆にGDP0.5%の押し下げ効果となります。

追い風が、向かい風に変わることもあります。

仮に銀行カードローンに依存している商品があれば、現在の需要が将来も続いていくと考えることは合理的ではないと思います。

銀行カードローンで購入するようなもの、比較的高額商品になるのでしょうか?

EPS補正

株価 = EPS(一株あたり利益)x PER と表現されます。

過去のEPSは、どのような追い風、向かい風を受けた数字なのでしょうか?

追い風、向かい風に対して正しく補正を行うことで、企業の真の稼ぐ力を理解したいものです。

Happy Investing!!

 

信越化学の金川会長が語る、株式会社の目的とは?

信越化学の金川会長

私は、信越化学の金川会長を、日本、いや世界を代表する経営者の一人と尊敬しています。

以下にプロフィールを添付しました。

金川千尋(かながわ ちひろ)
1926年3月15日生まれ
1950年3月:東京大学法学部卒業
1950年4月:極東物産(現・三井物産)入社
1962年2月:信越化学工業 入社
1975年1月:信越化学工業 取締役
1978年3月:米国シンテック社 社長
1983年8月:信越化学工業 副社長
1990年8月:信越化学工業 社長
2010年6月:信越化学工業 会長

株式会社の目的とは何か?

『危機にこそ、経営者は戦わなければならない!』という著書の69ページに、金川会長の考える、株式会社の目的が書いてありました。

以下、抜粋です。

[aside type=”normal”]

間違えてはいけないのは、社会のために大きな貢献をするのは、私企業にとってはあくまでも結果であり、目的ではないということです。「会社経営は社会のため」とか、「従業員のために」というのは、一種の偽善としか思えません。企業はあくまでも営利を目的とした組織です。株主は経営者を信頼して選んでくれたのであり、それに報いるというのは当たりまえのことです。この企業としての原則を忘れて、「従業員のため」「社会のため」などとおかしなことを言っていると、いずれ競争力を失い、企業の価値が下がることになりかねないのです。

[/aside]

さすが、実績を残してきた経営者のいう事は、シンプルです。

企業の中には、「会社はすべてのステークホルダーのためにある」と、株主を社員や顧客、サプライヤーと同列に並べることがあって、違和感を感じます。

株主の利益を最大化するという目的のために、社員や顧客、サプライヤーを満足させる必要があるということで、決して同列ではないと思います。

私は、金川会長のように、「株式会社は株主のためにある」、と明言できる経営者にこそ、大切な資金を託したいです。

Happy Investing!!

フィリピン雑感

フィリピンでの1ヵ月

セブシティーから入国し、セブ島の各所に滞在してきました。現地で生活を体験しながら、株式調査するのは楽しかったです。日中に街で見た企業について、上場しているのか?どれくらいのシェア・収益性があるのか?と妄想します。現地に滞在して、現地の人と話してこそ、なぜ、どのような需要があるのか、より良く理解できると思いました。

GDP3000ドルの世界

フィリピンの一人当たりGDPは約3000ドルです。一般的にGDPが3000ドルを超えると、耐久財消費が増えるなど、消費経済が活性化すると言われています(参考リンク)。田舎へ行っても、液晶テレビや冷蔵庫が普及していたことには驚きました(普及率40%くらい?)。住宅は狭い(6畳 x 2部屋)のですが、大型液晶テレビを置いた結果、家の中からでは近すぎてテレビを見ることができず、玄関のドアを開けて外に椅子を置いてみている家族もいて、笑ってしまいました。スマホの普及はまだ道半ばと感じました(20%くらい?)。おそらく、若者の欲しいものランキングの上位はスマホでしょう。世界中どこへ行っても、小さな画面を見つめる姿だらけになるのでしょう。

投資対象として

どの分野を見ても供給不足から大きな成長性が感じられ、需要が停滞しているのに供給過多で収益性が低下する日本に慣れた身としては新鮮でした。大企業が少なく、副業が当たり前の社会なので、現地運転手さんも「資金があれば、こういうビジネスを始めたい」とアイディアを熱く話してくれました。金融緩和で資本が溢れかえって行き場を失っている日本に対して、フィリピンのように資本不足で困っている国もある。収益機会のある国・分野へ、もっとうまく資本の融通ができればいいですね。私が日本で銀行を経営していたとしたら、国内事業だけでは頭打ちになるのが目に見えている訳で、早く海外に進出すると思います。日本で低金利で預金を集めて新興国で貸し出すことができれば、儲かる気がします。需要に対して供給不足の領域を探すのが、事業の基本だと思います。

フィリピンでは、銀行口座の保有率は35%(参考リンク)。保険の保有率は中高所得者層の16%(中高所得者が30%いるとして、全人口の5%?)(参考リンク)。株式市場参加者は1%しかいないそうです。(参考リンク)。シンプルに、業界トップの銀行、保険会社、証券会社を買って10年くらい保有していれば、儲かるんじゃないかと思いました。現在のフィリピンを日本に当てはめると、3種の神器(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)が普及した1960年代でしょうか。当時は、日本でも資本が不足していたはずで、業界トップの野村證券、日本生命などに投資していれば随分と儲かったのではないでしょうか。

具体的に見てみましょう。下図(株探より)は1960年からの野村證券の株価です。1960年の約20円から、バブルを除いても2000円を超えています。残念なのは、現在の株価が500円であること。1980年初頭(40年前)と同じ水準に低迷しています。供給過多・資本余剰の現在の環境では、資本アクセスがサービスである証券会社の付加価値が薄くなるのでしょう。どの国・産業・企業にも栄枯盛衰がありますので、成長フェーズで投資するようにしたいものです。

Happy Investing!!

善 vs 欲

福井コンピューター創業者の著書

福井コンピューターという会社をご存知だろうか?建築CADや測量CADの国内トップシェアメーカーである。建築基準法や消防法など、ややこしい日本の法律に完璧に対応することで、AutoCADなど全世界で通用するソフトを作る海外大手に対して競争優位性を維持している、国内ガラパゴスのガリバー企業だ。

そんな福井コンピューターを1979年の創業から率いた小林眞さんの著書を拝読した。

善か欲か

著書の中で、優秀な営業マンが他社に転職してしまった話が出てくる。給料が理由だったそうだ。驚いた小林さんは、「それなりに」できる平均的な営業マンには業界平均に負けない給与を払って来たつもりだった。しかし、「ずば抜けて」できる営業マンに、「ずば抜けた」給与を支払ってこなかったことに気が付いた。

「ずば抜けて」できる営業マンに「ずば抜けた」報酬という正当な評価を与えずとも、愛社精神によって会社のために精一杯頑張ってくれるだろうという善意に頼った経営をしていたことに気が付いた。賞与の上限を排除したところ、「できる」営業マンほどやる気になり、いきなり粗利が10%も増えたそうだ。それまでは、どうせ上限があるからと、無意識のうちに力をセーブして仕事をしてきたということだろう。

この話を聞いてどう思うだろうか?お金で動機付けることは汚いことなのだろうか?しかし、人には様々な欲がある。例えば、多くの給与を稼いでカッコいい車を買いたいという欲求を持つ人もいる。多くの給与を稼いで、家族に経済的に豊かな生活を提供したいという欲求を持つ人もいる。逆に、お金に関係なく、好きなことをしたいという欲求を持つ人もいる。

私は、給与に差をつけない経営は、一見フェアなようで、稼ぎたいという欲求を持つ人にとっては全くフェアではないと思う。人材の流動性が低く転職が難しかったひと昔前の日本では、そうした人材も仕方なく社内に留まっていたのだろうが、今は違うのではないか。少子高齢化で需要に対して恒常的に人材が不足する環境下では、転職のチャンスが増えるだろう。従業員の善意に頼っていた企業からは優秀な人材が流出し、長期的には人材の多様性が奪われると予想する。

多く給料をもらうためには、事業でそれ以上に稼ぐことが必要なはずだ。企業の成長=企業価値の増加、を願う株主の立場からすれば、みなさんドンドン稼いで、ドンドン給与をもらってくださいというのが正直が気持ち。企業のインセンティブ設計に注目していきたい。

Happy Investing!!

なぜROEが大切なのか?(その2)

ROEと適正価格

(関連)なぜROEが大切なのか?(その1)

企業(株式)への長期投資において一番大切な変数は、長期的なROEの水準です。高いROEを長期間に渡って維持できる企業ほど、複利エンジンをフル稼働させることができます。

A社(ROE8%)

A社は、2017年12月末の一株あたり株主資本(BPS)が100円だったとします。2017年12月末の株価は、1年先のEPS(2018年12月末のEPS)8円にPER15xを掛けた、一株120円でした。話を簡単にするために、税金や配当は考慮しないものとします。

この企業に9年間投資をして、2026年12月末になりました。株価は1年先EPS(2027年12月末のEPS)にPER15xを掛けた、240円に上昇しています。年率換算リターンは、ROEと同じく、8%です。

B社(ROE15%)

B社も2017年12月末のBPSが100円でしたが、A社と違い、ROE15%を達成し続けます。2017年12月末、2026年12月末のPERが両方とも15倍だったとすると、9年間投資した場合の年率リターンは年率15%となります。

2017年12月末の適正PERは?

もし、2017年12月末にA社、B社がともにPER15倍で取引されていれば、B社を購入した方が良いことは明白です。しかし、市場も企業の質の差を織り込みますので、B社が割高に取引されていることでしょう。では、どれくらい割高であれば許容範囲なのでしょう?

B社を2017年12月末PER26倍で購入したとしても、投資リターンは年率8.2%とA社をPER15倍で購入したときよりも高いリターンになります。

実際には、2026年12月末のB社のPERはA社よりも高く評価されているでしょう。仮にB社の売却時PERが20倍だったとすれば、購入時PERは35倍を支払っても、なおA社(購入時PER15倍、売却時PER15倍)よりもリターンが高いことになります。

長期投資になればなるほど、高いPERを支払える

私これまで、3年先の収益から企業価値算出してきたので、どんなに定性的に評価できる会社でも直近EPSベースでPER20~25倍が支払えるギリギリだなと思ってきました。しかし、10年先まで高ROEが維持されることを見通すことができる場合、PER30倍を超える価格でも十分にリターンが出る場合がありますし、バフェットなどはこのようなタイプの投資で大儲けしてきました(例:Coca-Cola)。

10年先を見て投資することが、どれほど希少なことなのでしょうか?一例ですが、2017年の東証1部上場銘柄の年間売買代金は680兆円でした。2017年の平均時価総額が600兆円なので、市場参加者の平均保有期間は約1年ということです。3年先を見て投資している市場参加者は5%程度でしょうか。5年先を見ていれば1%、10年先を見て投資している人は0.1%もいないと思います。遠くを見通すことができればできるほど、足元の価格変動に惑わされることなく、保有し続けることができます。

株価は、せいぜいこの先1年くらいの出来事しか織り込んでいません。短期的には先行投資で収益悪化するが、中長期的(3年先)の展望が明るいというケースなど、割安に評価してしまうことがあります。こうした近視眼的な株式市場の癖を利用して稼ぎたいものです。そして、間違っても自分が株式市場に釣られて近視眼的にならないようにと、言い聞かせています。

Happy Investing!!

なぜROEが大切なのか?(その1)

ろくすけさんのブログより

世の中には素晴らしい運用成績を残している個人投資家の方が多数います。私は、定期的に彼らのブログを訪問して勉強させてもらっています。そんな私が勝手に尊敬している個人投資家の一人に、ろくすけさんがいます。「私を形作る3冊」という3月5日のブログで、『バフェットの銘柄選択術』という本を紹介されていましたので、早速読んでみました。ろくすけさん、ありがとうございます。

長期投資に適するのは、持続的に高いROEを維持できる企業

バフェットの運用手法に対して、どのようなイメージをお持ちでしょうか?私であれば、バリュー投資、集中投資、競争優位性のある企業を探している、といったイメージです。それに対してこの本は、「なぜ、バフェットは競争優位性のある企業を探したのか?」という問いに応えてくれます。

会社の経営成績は、① ROEと② 配当性向の2つの変数のみで決まってしまいます。投資先として最高の企業は、ROEが高く、かつ配当性向の低い会社です。下図で考えてみましょう。A社は、1年目期初の一株あたり純資産(BPS)が100円です。ROE20%の経営を行った結果、一株あたり利益(EPS)は20円。成長余力が十分にあるA社は、配当を行うことなく、EPS全額を再投資に回します。その結果、2年目の期初BPSは120円に増え、またまたROE20%を達成して、EPSは24円にまで拡大します。配当を行わないことで、EPSがROEと同じ20%で成長していく様子が分かります。10年間でEPSは5倍に拡大しています。アマゾンやGoogleはこのパターンです。

次に、ROEも配当性向も高いB社を見てみます。既存事業の収益性は高いものの、再投資する余地が少ないので、EPSの80%を配当として払い出します。その結果、BPSとEPSは年率4%しか成長することができませんが、200円以上の配当を受け取ります。タバコ会社など優良高配当銘柄が、このパターンです。

最悪なのは、ROEが低く、かつ配当性向も低い企業です。投資家としては、資本効率の低い事業(ROEが低い事業)から資金を引き出し、資本効率の高い事業(ROEが高い事業)に投資したいところです。しかし、配当性向が低いと資本効率の低い事業に資金が滞留してしまうことになります。多くの日本企業が、これに当てはまると思います。

日本株と米国株の差はROE

参考までに実際の数字を調べてみると、2002年~2014年の日本企業の平均ROEは6.3%だったそうです。対する米国企業の平均ROEは13.4%。その差は歴然です。配当性向は、米国40%に対して、日本は30%となっています。

日本株に100円投資したら、10年後のPERが変わらない前提で、1.8倍に増えました。米国株に100円投資したら、10年後のPERが変わらない前提で、2.6倍に増えました。どちらが投資家にとって好ましいかは明白です。長期投資するなら米国株、というイメージがありますが、その根拠は、米国企業が長期に渡って世界で一番高いROE水準を維持してきたという事です。

Happy Investing!!