コロナ対策の成功例として語られる台湾。人口2400万に対して、コロナ感染者は約500人、死者10人以下だそうだ(データ)。日本は欧米と比べてうまくやっていると言うものの、感染者は8万人を超えている(データ)。台湾から学ぶことが多いのは間違いない。
台湾のコロナ対策の成功を語る時に、必ずデジタル大臣のAudrey Tang氏の名前が出てくる(wikipedia)。1981年生まれで、2016年よりデジタル大臣を務めている。肉体的には男性だが、精神的には女性というTang氏のインタビューを聞く機会に恵まれた。
まず、説明が具体的で分かりやすい。威張ったところが全くなく、まるで友達に説明されているかのような印象を受ける。上下関係が強い行政世界の中に、デジタル的な水平関係を持ち込むことが役目なのだろう。これまで国民が情報発信する行政プロセスは4年に1回の投票行動だけだったが、スマホ社会においては、多種多様な行動データを行政プロセスに生かすことができるという。デジタルによってさらに民主主義が進化する。投票という民主プロセスしか経験のない自分としては、目から鱗の感覚だった。明るい将来を示してくれるリーダーとは、こういう人のことを言うのだろう。
台湾では、1月1日から武漢からのフライトで検疫。感染症対策本部による毎日の会見を始めたそうだ。フリーダイヤル「1922」にかければ、誰でもアイディアを出せるという。ある日、マスク不足から小学生が、「ピンクのマスクしかなくて学校でいじめられないか心配です」と投書したら、翌日の会見では、感染症対策本部の幹部が全員ピンクのマスクをして登場したそうだ。IT技術を使って、政治をより身近にするのは、心がけ次第なんだなと再認識した。技術そのものに良いも悪いもなく、使う人次第。
想像するに、台湾は政治家と国民の間に信頼関係があるのだろう。その感覚が、羨ましかった。日本の自民党幹部の多くは具体的な話が少なく、何を言っているのかよく分からない。「俺たちが決めてやる」という上から目線が感じられ、デジタル時代特有のフラットさがない。その挙句、都合が悪くなると情報を隠したり、さらに悪いことには改ざんしてしまう。政治と国民の信頼作りから始めないことには、デジタル庁を作っても、仕組みを作ってもなかなかうまくいかないのではないか。作り手を信頼できないシステムに、大事な情報を預けようとは思わないだろう。
日本でデジタルが進まない理由が、ようやく少し分かった気がする。政治に限らず、多くの場面でデータをやり取りするための基盤である信頼関係ができていないのだろう。投資目線でも、顧客、会社、従業員の間に信頼関係があるからデータ利活用が進み、IT技術の恩恵を活かせる企業と、そうでない企業の差が歴然としてきた。国レベルでも同じ話のようだ。
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