ウェル・インベストメンツ・リサーチのSMCレポート
12月13日、弁護士兼投資家の荒井裕樹さん率いるウェル・インベストメンツ・リサーチから『会計神話をパンクさせよ』というSMC(6273)空売り推奨レポートが発行されました。
ウェル・インベストメンツ・リサーチは調査レポートを投資家に販売することを事業としており、自らポジションを取ることはしていないようです。
SMCは空気圧機器の世界トップシェア企業
【関連資料】SMC(6273)の長期業績レポート
SMCは5000億円近い売上の空気圧機器の世界トップシェア企業です。他社を圧倒する営業資源を投下し、また多くの在庫を抱えることで短納期を実現する戦略で、世界各地で着々とシェアを高めてきました。空気圧機器は自動化するために欠かせない製品なので、どんな工場へ行ってもSMC製品を見つけることができます。
私は機関投資家時代にSMCを調査した気になっていました
私はキャピタル・グループという米系投資顧問でアジアの機械セクターのアナリストをしていたことがあります。SMCも調査対象企業の一つで、時価総額も大きかったことから色々と調べました。経営陣への取材はもちろん、欧州、中国、米国の製造販売拠点を訪問した上で投資もさせて頂いていた、思い入れのある会社です。
スイスで会った欧州事業トップには、「ここまで足を運んでくれた投資家は初めてだ」などと持ち上げられ、自分ほどSMCについて知っている投資家はいないなどと思い込んでいました。しかし、今回のウェル・インベストメンツ・リサーチのレポートを読んで、自分の調査は実に足りなかったなと反省しました。
ウェル・インベストメンツ・リサーチのレポートから学んだこと
このレポートではSMCの在庫レベルを問題にしており、在庫評価損を計上すべきだとしています。さらに、グローバル企業になった今でも小さな会計事務所が会計監査を行っており、財務諸表の数字が実態を表していないとしています。
世界中の子会社が提出している財務諸表を実際に取り寄せ、有価証券報告書と辻褄が合うかを細かく調べており、素晴らしい内容です。私はSMCの高い在庫レベルを競争戦略の一環としかとらえていませんでしたが、このレポートの指摘に納得する点が多くありました。
まとめ
個人投資家が、高い水準の調査レポートを読める機会は滅多にありません。このようなレポートを読むと、自分の調査水準の低さを反省するとともに、調べれば調べるほど理解できる深い世界があるんだな希望を持ちます。
ウェル・インベストメンツ・リサーチのように、本当に独立した立場で調査レポートを書ける人は少ないです。例えば証券会社は、調査部門が客観的なレポートを書きたくても、投資銀行部門にとって上場企業はお客さんになります。今回のように企業を鋭く批判する内容を書けば、投資銀行部門としては仕事をもらえなくなるどころか、おそらく出入り禁止になるでしょう。
私は、多くの意見があればあるほどより良い資本市場につながると思っています。このようなレポートは市場の開示性や透明性を高めることつながると思い、高く評価しています。ウェル・インベストメンツ・リサーチのみなさま、ありがとうございます。
Happy Investing!!
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