会員制スキー場

週末に、Devil’s Glenというスキー場に行ってきた。トロントから北に車で1.5時間のこのスキー場、なんと会員制だそうだ。ゴルフ場の会員権と同じく、会員か、会員の紹介を受けた人でないと利用できない。聞いた話では、会員制スキー場は、世界でもトロント北部にしか存在しないとか。スキー場によって会費はピンキリだが、入会金100万円+年会費100万円はくだらないそうだ。会員が何人いるのか分からないが、リフト5本+素敵なメインロッジのあるスキー場を会員だけで維持できるというのは、どういうことなのだろう。1000家族として、10億円の運営費と考えれば良いだろうか?

多民族都市トロントだが、スキー場は白人中心。特に会員制スキー場となると、さらに白人比率が高い。そして、Devil’s Glenはみなさんスキーが上手いこと。ほぼ全員スキーで、ボーゲンしている人が全くいない。。。パラレルはもちろん、ほぼ全員カービングできます、というような不思議な場所だった。4時以降はapre skiとロッジでお酒と社交を楽しむ。欧米のスキー文化とはこういうことなんだなと体感したが、日本のように温泉があればなおよい。

 

コロナウィルス致死率の計算方法

コロナウィルスのことが気になって仕方がない。目下、最大のリスク要因だと思っている。私は、貿易量の増大、人的交流の拡大など、グローバル化は良いことだと思ってきた。例えば日中間で政治的対立が続こうとも、互いにサプライチェーンに依存する経済構造になっていれば、自分に跳ね返ってくるような相手を苦しめる政策はとりづらいだろうと思ってきた。相互依存が高まることが、最大の安全保障になると思ってきた。ところが、人的交流が活発故にウィルスの拡散も世界規模になってしまうとは、とんだ盲点だった。

Guggenheim InestmentsのCIO, Scott Minerdさんが書いたブログ投稿を紹介したい(リンク)。彼は、コロナウィルスのリスクが過小評価されていると主張していて、特に致死率の計算方法がおかしいと指摘している。多くのメディアでは、感染者6万人に対して、死者1400人であれば、1400 / 60000 = 2.3%で低いから、過度に心配しないように、という風潮だ。しかし、Scottさんが指摘するように、6万人を母数とすることは間違っている。6万人の中には、これから死亡するかもしれない人と、これから治癒すかもしれない人が含まれているからだ。正確な致死率を計算するなら、死亡した人 / (死亡した人+治癒した人)とするべきだ。

世界中の感染者数をチェックするのに便利なサイトはこちら。以下のテーブルに2月17日時点の情報をまとめてみた。すると、一般的に聞く致死率は、2.5%、上で説明した本当の致死率は14%ということになる。2.5%と14%では、死亡者の多くが高齢者だとは言え、リスクが全く変わってくる。

コロナウィルスと危機管理

日本のメディアを見ると、コロナウィルスのニュースが増えて来たと感じる。和歌山県の医師など、感染経路の分からない患者が出ていることは、危険な状態なのではないか。今回の日本政府の対応を見ていると、日本は危機管理が苦手だと感じる。日本人が気質として苦手なのかは良く分からないが、2011年の東日本大震災からの原発事故の記憶がよみがえる。

原発事故のとき、最悪のケースでは東京圏にまで放射性物質が降り注ぐ可能性があった。SPEEDAなど、情報を隠す政府。市民の不安を煽りたくないからという理由だったのかもしれないが、明らかに不安になるべき状況なのだから、そんな配慮は逆に迷惑だと思う。東京在住の外国人の友人は、原発事故の一報のあった次の日の始発の新幹線で大阪に避難していた。友人は、東京を脱出する人で新幹線に乗れないことを心配していたそうだが、実際にはガラガラで驚いたらしい。その翌日には、韓国に避難していた。確率が低いかもしれないが、起これば致命的なダメージを受ける可能性がある場合、ひとまず逃げることが正しい選択だと思う。まず過剰と思われても安全を確保してから、次の一手を考える方が良いと思う。

今回のコロナウィルス。致死率が低いようだが、正直良く分かっていない。最悪のケースは、実際には致死率が高く、日本国内で蔓延してしまうこと。まさに、確率は低いかもしれないが、起これば致命的なダメージを受けてしまう。期待値を計算している場合ではなく、まず厳しめの対応をとるべきだと思う。日本政府は武漢から日本人を帰国させる飛行機の手配が諸外国に比べて早かったが、帰国した人を隔離しなかったことに驚いた。検査も拒否して自宅に帰った人もいたと報じられていたが、むしろ国内に感染を広げてしまっているだけなのではないか。カナダでは、アメリカと同様にチャーター便は出すが、帰国者は2週間の潜伏期間の間、基地で隔離生活だ。アメリカやオーストラリアは早くから中国からの入国者を拒否した。確率は良く分からないが、起こると致命的なダメージを受けるかもしれない事態に際して、まず厳しめに対応するということが出来ている国と、出来ない国。この違いはどこから来るのだろう。

クルーズ船にしても、健康な乗員乗客まで感染者と缶詰にして感染を広げてしまった後に、下船させますと。。。いや、余計に感染を広げてしまっただけなのでは?台湾政府は、感染経路の見えない日本への渡航に「注意」を喚起している(リンク)。台湾としては当然の対応だろう。対応の初動が遅れてしまったために、今後他国からも日本に対して渡航禁止令が出るかもしれない。日本は列車ダイヤなど平常時運転が大の得意だが、その反動として、こうした非常事態の危機管理が苦手だということなのだろうか。大事になりませんように。

追記:内閣官房のHPには、次のような文章があった。「我が国において、現在、流行が認められている状況ではありません」とあるが、感染経路が分からない患者がいるのだから、流行しているのではないか?政府が本当のことを言っていないという疑心暗鬼が、不安を増幅する。さらに、流行が認められる状況になってから止める方がよほど困難なのだから、流行する前にできる限りのことをした方がよいと思うのだが。

PSG Group (Piet Mouton)インタビューを聞いて

スイスの投資家、Rob Vinallという方をご存知でしょうか?RV Capitalという長期集中投資ファンドを1人で運用しており、バフェットさんやマンガ―さんと同様、私が理想とする運用体制を実践している方です。

Robさんは毎年スイスで年次総会を開いているのですが、そのyoutube動画は学びが多くお薦めです。2020年の動画が公開されているのですが、中でも南アフリカのPSG Groupという持ち株会社の2代目社長、Piet Moutonさんとの対談が印象に残りました。PSG Groupは南アフリカ最大の銀行、Capitec Bankなどを保有していますが、事業の立ち上げ段階から投資している点でユニークです。まだ海のものとも山のものとも分からない案件の中から、どのように選別しているのか、という質問にたいしてこう答えていました。

1、大きな潜在市場規模。小さい企業を作るのも、大きな企業を作るのも、手間は変わらない。となれば、成功した時のアップサイドが大きい分野、つまりは潜在市場規模の大きな分野を選びたい。例えば、金融、教育、エネルギーなど。

2、弱い既存プレイヤー。既存プレイヤーが怠惰な分野を好んでいる。政府サービスを代替することも魅力的(教育分野で実践中)。なぜ、後発銀行であるCapitec Bankがこれほど伸びたか。例えば、南アフリカの既存銀行の窓口は平日9時から15時までしか空いていなかった(日本の銀行と同じ。。。)し、中心部にばかり店舗があって、労働者にはアクセスが悪かった。Capitec Bankは、月~土の朝7時から夜7時まで店舗を開けているし、顧客アクセスの良い地域への出店を心がけた。

3、斬新なコンセプトを持つ経営陣。経営陣が既存プレイヤーと全く異なる発想を持っていることを重視している。例えば、Capitec Bankは小売り業の発想を銀行に持ち込んだ。小売店舗に行けば、店員が「お困りですか」などと声をかけてくる。同様に、Capitec Bankでは支店長が入口の一番近くに座っている。支店長は一番銀行のことを分かっているわけだから、一番に顧客の要望を聞き、適切なサービスに誘導すべきだと考えている。インタビューからは外れますが、Third Placeという発想をカフェに持ち込んだスターバックス、店舗がない小売業というコンセプトのAmazon、サーバーを保有しないというコンセプトのクラウドサービス、確かに大きく伸びた会社は、既存コンセプトをより良く実行するだけではない、斬新な発想を持っていると感じます。

英語にはなりますが、優秀な経営者の考えに触れることができる、素晴らしい動画です。

Robさん、ありがとうございます。

大都市の中のスキー場

トロント都市圏人口は600万人です。東京や大阪など日本の大都市と比べるとだいぶ見劣りしますが、大都市と言って差し支えないと思います。

そんな大都市の中に、なんとスキー場があります。Earl Bales Parkという大きな公園の一部となっている、North York Ski Centreです。リフト1本にコースが3本。高低差も少なく可愛いスキー場ですが、車があれば自宅から10分でスキー場です。

北の大都市ならではの醍醐味。カナダの冬は長く厳しいという評判ですが、長くて厳しい冬ながないとできないこともあります。冬になると街中に突然出現するスケート場もお薦めです。

 

学校ストライキ

2019年8月からオンタリオ州と教師労働組合が労働契約に合意できないでいるそうです。これまで何度か1日ストライキが行われてきましたが、今週からはなんと週2日のストライキ。。。子供は喜んでいたりもしますが、共働き家庭の多いトロントですから、子供の世話にてんてこ舞いでしょう。しかも、トロントでは自立していない子供を自宅に留守番させることができません。明確な年齢規定はないようですが、12歳くらいまではダメでしょう。日本の感覚で留守番させていると、保護者の責任を果たしていないとみなされてしまうそうです。学校のありがたみを感じる2日間になりそうです。

日本では、教師のストライキによって学校が休校になるとは、考えにくいと思います。しかし、オンタリオ州知事が2018年に変わったことで、実生活に目に見える大きな変化が起きています。日本では、誰が区長、知事、首相になっても、教育現場に大きな変化が起きた記憶がありません。教育の継続性という意味では好ましいことですが、政治と実生活の関係性を感じにくい面もあります。財政縮減を公約に掲げる知事を選ぶとこうなるよ、ということで、実に分かりやすいです。そして、ストライキになることで実生活に影響があり、そうなってようやく有権者も政治に関心を持てるのだと感じました。

書評:The Three Rules (by Michael Raynor & Mumtaz Ahmed, 2013)

The Tree Rules: How Exceptional Companies Think

著者について

二人ともデロイトのコンサルティング部門の方です。

内容について

同じ事業領域にある企業を比べると、ずば抜けた企業、良い企業、普通の企業があることが分かる。長期的なROAやROEの推移、長期的な株主リターンを比べてみれば、その差は一目瞭然だ。もちろんずば抜けた企業を長期保有したいわけだが、どうすれば見分けることができるのか?持続的な競争優位性を発揮する企業には、3つの共通点があるというのが本書の主張。

1、Better before cheaper 価格を下げる前に、付加価値を上げることに集中しているか?

2、Revenue before cost 売上を上げることに集中しているか?ROAを上げるためには、売上を上げるか、費用を下げるか、資産を下げるか、の3つの選択肢しかない。ずば抜けた企業は多くの場合、売上を上げることによって、高いROAを維持している。さらに、売上を増やすためには、価格を上げるか、量を上げるかという選択肢になるが、多くの場合、価格を上げることによって増収を達成している。値上げできるということは、つまり#1の付加価値が高いと認められている証拠に他ならない。

3、There are no other rules 3つのルールと言っておきながら、最初の2つ以外にはありません!という話。

まとめ

長期的に繁栄する企業は、価格決定力があることが多いという話。価格決定力を付けるために、付加価値を高める不断の努力を行っているかどうか。そんなことは当たり前だけど、当たり前なことを当たり前に続けることが、どれほど難しいことか。。。