AI(Artificial Intelligence)より、AA(Artificial Alien)の方が納得できる

AIによってチェスに何が起きたか?

AIやRPAという言葉をよく耳にするようになってきました。私など、つい半年前まで「RPA?」という感じでしたから、技術革新と普及スピードは速いものです。これら技術について、単純作業が代替されることで多くの失業者を産む可能性がニュースに取り上げられていますが、果たしてどのような影響を与えるのでしょうか?

我々を取り巻く構造的な技術変化を理解したく、Wired Magazineを創業したKevin Kellyさんによる、The Inevitableという本を読んでいます。

この本に、AIとチェスの事例が出てきます。1997年に、IBMのディープブルーというAIが、当時の世界チャンピオンGarry Kasparovさんに勝ちました。私はこのイベントを、将棋、囲碁と続く、機械優位性証明の歴史の始まりとして認識していました。しかし、現実はもっと複雑でした。チェス業界はその後、機械 vs 人間の個人戦ではなく、フリースタイルと呼ばれる、機械を利用しても良い勝負に傾倒していったそうです。例えば2014年のフリースタイル選手権では、AIが42勝に対して、AIと人間のタッグチームが53勝したそうです。飛行機のパイロットのように、操縦の大半は機械が行いながら、機械の弱点を熟知した人間が必要箇所だけ介入するというスタイルのようです。本書が発行された2016年時点で一番強いチェスプレーヤーは、Intagrandという、複数の人間と複数のAIのタッグチームだとか。自分のイメージするチェスからはかけ離れていますが、AI勝利後の業界推移が興味深いです。AIを否定して人間戦にこだわることなく、AIの良さと人間の良さをうまく取り入れているところに好感が持てましたし、何よりAIとの直接対決では人間が負けてしまうという現実から目をつぶっては仕方ありません。

さらに驚いたのは、人間チェスプレーヤーのレベルまで上がったということです。機械に負けたゲームとしてチェス人気が衰えるどころか、強い機械と気軽に対戦できるようになったことで、逆にチェス競技人口は増えたそうです。現在は、チェスの最高位であるグランド・マスターの人数が、1997年当時の2倍に増えたそうです。特に、ポイントランキング1位のMagus Carlsenさん(今日でも1位を維持しています)は、AIと練習を繰り返した1990年生まれのノルウェー人です。この話を聞くと、将棋界を席巻している藤井聡太さんを思い出します(2002年生まれ)。藤井さんは練習方法について、次のように述べています。

Q: 練習方法を教えてください。
A: 一人で練習することが多いです。もっぱらリビングのパソコンで、AIソフトなども利用しながら、練習をしています。
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AI(Artificial Intelligence)より、AA(Artificial Alien)の方が納得できる

AIと練習を重ねた若者の打ち手は、古参のプレーヤーには異質に映ると想像します。Alpha Goが世界トッププレーヤーを破った囲碁の世界でも、永く信じられてきた定石に変化を与えているようです。

我々は、他者がいて初めて自分について認識できます。もし世界に自分一人しかいなかったとしたら、自他の認識すら生まれていないでしょう。私は東京生まれですが、他の地方で育った人と触れることで初めて、東京の特徴に気が付きます。海外を訪れ、外国人と話してみることで、日本の常識、世界の非常識に気付かされることもあります。さらに人類について知るには、違う認知構造を持った異星人に出会うことが必要だろうと思っていました。

The Inevitablesの記述を読んで、AIはその疑似体験を与えてくれている、ということに気付きました。今後のAIの進化と普及によって、人類は本質的に異なる視点からの思考に触れることでしょう。チェス、将棋、囲碁の違いが分かるトッププレーヤーは、既に未知との遭遇体験を持っているはずです。それが、現在ゲームの枠を超えて社会レベルで進行しています。生活習慣や商習慣を変えることを要求され、社会ストレスも大きいことでしょう。しかし、AIをAA(Artificial Alien)だと思い、他者から学ぶ気持ちをもって接することができるかどうか。機械が出した結論だと色眼鏡で見ることなく、良いものは良い、と合理的に判断して採用できるかどうかが、ポイントになると思いました。一体どんな未来になるのか、より高い次元での人間と機械のコラボがますます楽しみです。

Happy Investing!!

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