オマハ詣で(その4)

UBERの便利さに驚いた

バークシャーの年次総会当日は、会場近くで駐車場を確保できる見通しが立ちません。そこで、人生初めてUBERを利用しました。早朝に捕まるのか、などの心配は全くの杞憂で、配車からものの5分で宿泊先の前に来てくれました。こちらの準備が間に合わないほどのスピードです。事前登録したクレジット決済のため、支払時間もなく到着してから時間ロスもありません。運転手と乗客が双方に評価する仕組みになっているため、運転手の方もとてもフレンドリーでした。

結局、年次総会当日だけでUBERを5回は利用しました。①配車までの時間を心配しなくて良い点、②あらかじめ価格が明らかになっている安心感、③タクシーより安いことが多い価格競争力 によって、既存のタクシーとはくらべものにならない付加価値を実感しました。UBERに慣れてしまうと、待ち時間に対するストレスや価格の不透明感から、タクシーは乗れなくなりますね。

2017年12月の東洋経済の記事によれば、77か国で1日1000万回利用されているとのことです。

日本のタクシー業界の現状

日本では、UBERを使うことはできません。タクシー業界の反対や、規制緩和が進まないことが背景にあるようです。しかし、アメリカで体感してからは、UBERを使わないことのデメリットばかり見えてしまいます。

下がり続けるタクシー需要

出典:http://www.taxi-japan.or.jp/pdf/toukei_chousa/eigyousyuunyuu_suii.pdf

UBER以前に、日本のタクシー需要は右肩下がりです。バブル期に30億人以上あった輸送人員は、15億人を下回っています。

なかなか減らないタクシー供給

出典:http://www.taxi-japan.or.jp/pdf/toukei_chousa/jigyousya_syaryou_suii29.pdf

不思議なことに、需要が半減したにも関わらず、日本のタクシー台数は25万台から23万台に10%程度減っただけです。タクシー業界は明かな供給過多であり、UBER以前に経営が厳しいことが想像できます。私が知る限り、日本のタクシーサービスは20年前から全く変わっていません。つまり、需要が長期間減り続けても新しいサービスを提供して付加価値を上げようとはせず、供給を減らすこともしなければ経営が苦しくなるのは当たり前でしょう。

このような統計を見ると、あまりタクシー業界に同情する気にはなれません。むしろ、現在の経営環境でも事業を続けられるということは、逆に言えば20年前は途方もなく儲かっていたと想像します。

ユーザーのコスト

デメリット① 待ち時間

仕事でタクシーに乗ろうと思っても、なかなか空車を拾えないことがあります。UBERであれば、配車を確認してから外に出るので、路肩での待ち時間はありません。ギリギリまで作業することが可能です。仮に15億人が路肩でタクシーを平均5分間待つとします。75億分=125万時間 です。タクシーは乗って急ぎたい人が多いですから、時給4000円換算で5000億円の経済コストが発生しています(比較のため、タクシー業界の総運賃収入は1.7兆円です)。

デメリット② 決済時間

仕事でタクシーに複数人で乗ると、1人が支払するのを、残り全員が待つという無駄な時間が発生します。スイカ支払で改善されたとは言え、事前登録クレジット決済してくれるUBERには遠く及びません。上記の例から、仮に支払に1分かかっているとすると、1000億円の経済コストと考えられます。

UBERやAirbnbを排除する国

今回のオマハ旅行では、UBERやAirbnbの恩恵をフルに受けることができました。Airbnbを通して普通の民家に泊まることができ、アメリカならではの広い庭を体験できるなど、ホテルにはない貴重な体験でした。バークシャー年次総会の時期はオマハ中のホテルの価格が高騰するわけですが、Airbnbを通して3人で2泊2万円という内容でした。1人1泊3000円。素晴らしいコストパフォーマンスです。

消費者として、選択肢が多いことは豊かさだと思います。ホテルに泊まりたい人は、少し高い料金を払って、良いサービスを受ければいいと思います。しかし、Airbnbのおかげでこれまでは考えられなかった宿泊体験ができるようになりました。UBERも同じです。行政認可されたタクシーに安心する人は、利用すればいいと思います。業界の都合を優先して一律に規制してしまう日本のやり方は、本当に残念です。あるサービスを利用するかどうかは、消費者が決めればいいことです。

Happy Investing!!

オマハ詣で(その3)

オマハは実店舗見学に最適な街

“20 minute city”と呼ばれるオマハは、市内のどこに移動するにも車で20分以内で行けます(空港を含む)。この利便性を利用して、実店舗見学を行いました。

・Walmart
・Home Depot
・Whole Foods
・Chipotle Mexican Grill
・Nebraska Furniture Mart
・Costco
・ショッピングモール

店舗を見ていると、自分の肌間隔がどのように経営指標に反映されているのか、財務状況が知りたくなります。

米国企業も調べるようになった

私はこれまで、バフェットの「理解できる企業に投資せよ」という教えを守ろうとするあまり、日本企業にばかり投資してきました。米国企業の年次報告書を真面目に読んだこともありませんでした。私が米国企業を調べたところで、競争優位性は全くないと感じていたからです。

それが、今回のオマハ詣でのおかげで変わりました。自分に競争優位性があるかどうか、調べることで稼げるチャンスが増えるかはさておき、まずはシンプルにもっと知りたいな、と思えるようになりました。私にとって最大の課題は、ゆっくりでもいいから一定の成長スピードを長期間持続させて、一つのことを続けることだと認識しています。その結果として、長期的な複利効果が発現します。しかし、あまりに稼ごうとする意識が強いと運用がつまらなくなる危険性を感じています。個人投資家で4年も経てば、日本のめぼしい企業については一通り調べています(正しくは、調べた気になっています)。そこで、海外企業の同業企業との比較など、新しい視点を取り入れていきたいと思えるようになりました。

米国企業のROEの高さに驚く

米国企業を調べてすぐに気付くのが、圧倒的なROEの高さです。日本企業のROEが低いと指摘されますが、その差は歴然としています。日本であれば、景気循環を通して継続的にROE10%を上回る企業は稀だと言ってよいと思いますが、米国ではそれがむしろ普通です。日本企業に慣れた目で米国企業を見ると、正直眩しすぎると感じるくらいです。逆に、米国を主力にしている運用者が日本企業を見ると、お眼鏡にかなう会社は少ないだろうと想像します。

日々お世話になっているIT業界の覇者のほとんど(マイクロソフト、アップル、グーグル、フェースブック、アマゾン)がアメリカ発である事実だけを見ても、米国企業を調べる価値があると思います。なぜ、米国企業は強いのか?日本企業とはどこが、どの程度違うのか?このような質問に答えられるようになると、より投資家として成長できると思います。

より広い視点を与えてくれたバークシャーハサウェイの株主総会に感謝で一杯です。また来年も参加したいです。

Happy Investing!!