投資信託の地雷原を安全に進むために

投資信託を選ぶのは、個別株を選ぶより難しい?

昨日、久しぶりに投資セミナーを開催しました。『投資の基本』と題して、複利効果や長期投資に向いた金融資産の分類などについてお話ししました。参加者の方々、ありがとうございました。

質疑応答では、具体的な投資方法についてアドバイスしました。参加者の方は、楽天証券で投資信託の購入を始めたということでした。「投資信託の選び方も難しいんですよね」と言いながら、楽天証券ホームページの投資信託一覧を見て驚きました。下図です。

出所:楽天証券

なんと、楽天証券だけで2,500本以上の投資信託を扱っているのです!

一体、日本にはいくつの投資信託があるのだろうかと、一般社団法人投資信託協会のホームページにいきました。すると、2017年11月末時点で、6,200本以上の公募投信あるということです。あまりの多さに驚いてしまいました。

私は個人投資家として日本の個別株を中心に運用しています。約3,600社の上場企業から、これはと思う会社を選んでいきます。電話帳のような四季報を通読していると言うと物珍しがられます。しかし、お手軽に見える投資信託への投資も、実は全上場企業より多い中から選ばなくてはならず、母数が多いだけにもっと難易度の高い可能性があることを自覚した方がいいと思います。

地雷原を安全に通行するために

個別株を調べる興味も時間もない99%の人にとっては、投資信託やETFの長期分散積立投資が王道だと思います。しかし、せっかく王道を進もうと思っても、前述のように投資信託の数が多くて、どの商品を買ったらよいか迷うはずです。個人的には、その大半が長期投資に適さない商品だと思います。まさに投資信託は、初心者投資家から手数料を奪い取ろうとする地雷原という感覚です。非常に残念です。

楽天証券の場合ですが、取扱い2,500本のうち、長期投資に適していそうな投資信託は50本くらいしかないと思いました。正解が2%しかない訳で、なかなか髙いハードルです。地雷原を安全に通行するためにも、自分でしっかり準備するか、資産運用アドバイザーを味方につけることをおススメします。

Nagatomo Investmentsでも個別サポートサービスを始めましたので、お問い合わせください。

また、次回のセミナー(3月予定)では、長期分散積立投資という王道をベースに、具体的な商品の選び方を取扱います。お楽しみに!

Happy Investing!!

永守氏に学ぶ買収戦略

永守氏の買収実績

日本電産の永守氏は、これまで57件の買収を行ってきて、1件も失敗(減損)がないそうです。海外大型買収をしては減損することが多い日本企業の中では稀有な存在です。日経新聞に、そんな永守氏の年賀状について書いてありました。毎年買収したい相手先企業トップ宛てに、「もし会社を売る気があるなら、声をかけてほしい」と数十通の手紙を書くそうです。結果として、ある企業を買うと決めてから実現するまでに平均5年、最長16年かけているそうです。

日本電産の会社HPには、M&A年表が開示されています(リンク)。まとめると、以下のようになります。1984年から2017年まで、33年間で57件の買収を実行しています。平均すれば、1年で1.7件というスピードです。

株式投資に当てはめると

永守氏の買収戦略から学べることは、これはという目を付けた企業を長年に渡って観察しながらラブコールを送り続けるという待ちの姿勢です。投資銀行の持込案件に飛びつく真似はせず、記事にも「『今買わないと後悔しますよ』というのが彼らのセールストークだが、後悔なんかしたことはない」そうです。

上場株式投資は、相手にラブコールをする必要がありません。市場価格を払えば、いつでも株式を売買することができます。私は、この流動性の高さがもろ刃の剣だと思っています。流動性が低ければ、簡単には売れないので、よくよく調べてから購入に踏み切るでしょう。しかし、株式投資は「100株だけ」、という感覚で気軽に手を出しかねません。価格についても、「株価が下がったら損切ればよい」という発想になりがちです。筆頭株主になって企業再生することを前提とした買収とは必死さが全く異なるのです。

一方、私が考える上場株式投資の利点は、流動性の高さ故に投資行動を間違える参加者が多いことです。企業間の買収では、プロ同士のやり取りなので、価格が大きく外れていることは滅多にないと想像します。しかし、初心者から機関投資家までが同じ土俵で勝負する上場株式投資では、感情に流された価格付けが横行します。悪いニュースは過度な投げ売りを招いたり、逆に良いニュースには過度な期待から株価が急騰することもあります。企業価値評価と、自分自身の感情コントロールが前提になりますが、相手に対して優位に立てることが多いのではないかと思っています。

どうすれば投資で勝ち続けられるのか?実際に数十年という永きに渡って勝ち続けてきた人達の投資戦略を参考にするのが一番だと思っています。

Happy Investing!!

セミナー開催のお知らせ(1月30日)

2018年の第1弾として、5回シリーズのセミナーを開催します。

第1回 投資の基本     (1月30日)
第2回 ETF積立投資 実践編(3月上旬予定)
第3回 個別株投資 入門編 (3月下旬予定)
第4回 個別株投資 中級編 (4月上旬予定)
第5回 個別株投資 上級編 (4月下旬予定)

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第1回 投資の基本

2017年より給与所得者も加入できるようになった、iDeCo(個人型確定拠出年金)の利用を念頭に、投資の基本をお伝えします。ETFでほったらかし長期積立投資を目指す方も、個別株で高い運用リターンを目指す方も、最低限知っておいて欲しい内容をまとめました。

特に、次の3点の理解を目指します。

① 複利効果
② 金融資産の3分類
③ iDeCoをオススメする理由 

対象者:(1)投資に興味はあるが、具体的に何から始めたら良いか分からない初心者
    (2)投資は行っているが、投資戦略の方向性を再確認したい経験者

詳細

日時:1月30日(火) 19:00 – 21:00
場所:東京都千代田区神田錦町2丁目9番地 岡田ビル 201号室 (大手町駅5分)
料金:2,000円(当日払)
申込:info@nagatomoinvestments.com (先着5名)

 

ご参加をお待ちしております。

Happy Investing!!

波及効果を考える

中国で天然ガス不足という記事

日経新聞の朝刊8面に、中国で天然ガス不足という記事がありました。天然ガスは世界的に供給過剰とされているが、中国政府による石炭利用制限により、代替する天然ガスの不足や価格高騰が全土に広まっているという内容です。

波及効果を考える

中国では、大気汚染が問題になっていました。その原因の一つは、エネルギー源としての石炭利用が多いことにあります。そこで、環境問題改善のために、政府は石炭利用に制限をかけます。問題は、この後にどういうことが起きるかです。その波及効果についてどれほど論理的想像力が働くかは、株式投資において大きな差を生むように思います。

中国は経済成長率が高い国です。現代生活において、経済成長することはエネルギー消費量の増加につながります。つまり、中国のエネルギー消費量は将来にわたって拡大していく確率が高いです。その一方で、政府は石炭利用を制限しようとしています。この結果として、どうなるでしょう。

波及効果① 

下の表のように、石炭火力発電は中国の発電量の80%をまかなってきました。それが2016年には66%にまで低下しています。石炭火力発電に関与している企業にとってはネガティブですが、代替発電方法を提供できる企業にとっては追い風です。代替電源のうち原子力発電や水力発電は、稼働までに時間がかかります。太陽光はクリーンですが、出力が低いので石炭火力を置き換えるベースロード電源となることはできません。今求められているのは、短期間で立ち上げることができ、出力が高く、かつ石炭よりもクリーンなエネルギー源だと推察できます。ここまで推察できれば、高効率のガス発電に対する需要が増加する可能性が高いことが予想できます。

出典:Wikipedia

波及効果②

ガス発電所が増えるとどうなるでしょう?当然、天然ガスの需要が増えます。世界的には天然ガスが余っていても、ガスは簡単に移動することができません。LNGという形で、超低温輸送することになります。LNGタンカーの建造にも数年かかりますし、港の受け入れ態勢、港からの運搬手段(パイプラインとか)も必要です。世界のどこかにガスはあるが、それを需要地まで運べないということが一番の問題なのかもしれません。短期的な需要の増加に供給が対応できないと、価格は上がります。これが日経新聞に出ている記事の背景だと思います。

出典:日経新聞

分かってしまえば、中国政府による石炭規制ニュースから天然ガス価格が上昇する論理展開は、当たり前に聞こえます。難しく、また投資を面白くするのは、それを不確実な未来に向けて行うことです。時々、高い確率で波及効果を予想できる事態に遭遇します。市場価格がその波及効果を織り込んでいないときは、大きく稼ぐチャンスであることが多いです。

波及効果③

さらなる波及効果を考えてみましょう。価格が上昇すれば、供給が増加します。天然ガスインフラ設備への投資は増えるでしょう。また、中国国内や近辺でガス田を開発できれば、輸送コストも抑えられます。

さらに中国の天然ガス需要が高まるのであれば、供給過多と言われる世界市場価格にも影響があるかもしれません。世界的に天然ガス価格が上昇すれば、天然ガスを原料としている企業にとっては調達コストが上がってしまうので減益要因になるかもしれません。日本のガス会社など、割高な天然ガス価格での長期契約を批判されることが多いのですが、これから恒常的に天然ガス高が続くのであれば、長期契約が良い経営判断だったと言われるようになるかもしれません。

論理的空想にふける時間を

あるニュースを聞いたときには、波及効果を考えることをおススメします。波及効果にはいくつかのパターンがあるので、慣れてくると思います。自分の考えた波及効果が現実になると嬉しいですし、違っていたとしても学びがあります。何より、小説より奇なる現実世界と向き合う投資が面白くなると思います。

良い投資アイディアほどシンプルなものが多いと思います。自分の子供にも説明できる投資アイディアが良いものであると言う格言もあります。しかし、①当たり前の事実をつなぎ合わせて確度の高い推察を行い、②その推察に基づいて大きなチャンス(推察が現実化したときに予想される価格と、現在の市場価格の乖離が大きい)と判断すれば大きな資金を投資して、③推察が現実化するまで待ち続け、途中で市場価格が推察と逆に向かうことに耐える ことは簡単ではありません。

“Investing is simple, but not easy” – Warren Buffett

Happy Investing!!