投資家にコントロールできること

コントロールできることに注力したい

現実世界は、自分がコントロールできることとできないことで構成されています。そしてこの世で起きるのほとんどのことは、自分のコントロール外にあります。例えば自分が挨拶をしたからと言って、相手が挨拶してくれるとは限りません。しかし、相手が挨拶しなかったという現実をどのように受け止めるのかはコントロールできます。同じ現実に直面しても、「ちょっと聞こえなかったのかな、次はもっと大きく挨拶しよう」と解釈する人もいれば、「あの人は自分のことを嫌っているのではないか」と解釈する人もいるでしょう。

自分でコントロール可能な領域を見極め、その領域に関してはしっかりと手綱を握ってしていくことが大切だと思っています。そして、それ以外のコントロールできない部分に関しては、流れに身を委ねる勇気を持ちたいものです。

上場株式の少数株主にコントロールできること

では、個人投資家のような上場株式の少数株主にコントロールできることは何でしょうか?私は、4つのしかないと思っています。①いつ、②どの銘柄を、③いくらで、④どれだけ 買うかというシンプルな勝負です。

①+②=企業の本質価値

①と②は企業の本質価値を表しています。例えば、トヨタ自動車を例にとります。トヨタ自動車の株価は、2008年、2013年、2016年に6000円でした。同じ株価だったからと言って、トヨタ自動車の本質価値が一定であるとは考えにくいです。もしかしたら、2008年の本質価値は一株4000円だったので、6000円の市場価格は割高だったかもしれません。2013年の本質価値は一株6000円だったので、妥当な金額だったかもしれません。そして、2016年の本質価値は9000円まで上昇しているので、一株6000円で購入しても割安だったのかもしれません。

チャート画像
トヨタ自動車の株価 (出典:ヤフーファイナンス)

大切なのは、自分が本質価値を評価できる企業と、できない企業を選別することです。私には、世の中のほんの一握りの企業の本質価値を評価する力しかないと自覚しています。謙虚に、分からないことを分からないと言えるかどうか、投資家のコントロール能力が問われます。例えば、仮想通貨市場が盛り上がっています。しかし、ビットコインの本質価値を論理的に説明できる人はあまりいないと思います。市場価格が上昇しているから買うというのは投機であって、もちろん投機を否定はしませんが、投資とは別物だと思います。

出典:ビットフライヤー

③+④=投資実行

企業の本質価値を算出できた一部の企業に対して、いくらで投資すればいいのでしょうか?本質価値が一株5000円として、4000円なら投資するのか、3000円なのか、2000円なのか。どれだけの安全域(つまりは上値余地)を求めるかは投資家が決めるしかありません。そして、その安全域が確保されるまで待たなくてはなりません。

現在のように株価が上昇してくると、当然広い安全域を確保した投資が難しくなります。上昇相場についていきたくて、投資がしたくて安全域を緩めたくもなります。そんな自分への警鐘も兼ねて、書きました。待つのはつらい!株価が割安になるまで冬眠できる仕組みが欲しいです。

投資はシンプルだが、簡単ではないというバフェット氏の言葉を噛み締める日々です。

Happy Investing!!

インセンティブの大切さ

チャーリー・マンガ―の金言

I think I’ve been in the top 5% of my age cohort all my life in understanding the power of incentives, and all my life I’ve underestimated it. Never a year passes that I don’t get some surprise that pushes my limit a little farther. – Charlie Munger

私は、インセンティブの重要性を理解することにかけては同年代の上位5%に入っていると自負している。そんな私でも、毎年のようにインセンティブの重要性を過小評価していたことに気付かされる。ー チャーリー・マンガ―

サラリーマンのインセンティブ

投資家仲間と、「投資家がサンタさんへお願いするとしたら」というトピックで盛り上がりました。大量保有ルールの変更、競争過多な業界での再編、失敗を嫌う文化の刷新、株式持ち合いの解消、生え抜き社長文化の刷新など、色々なアイディアが出ました。私は、「日本企業の終身雇用制度を止めること」を提案しました。すると、「終身雇用制度は実質的に壊れている」、「残っている人は、居心地が良いと思っている」という意見をもらいました。私は日本企業で働いたことがないので、思い込みで話してしまっていたのかもしれません。

特に興味深かったのが、日本企業は会社都合で辞めた場合の退職金は手厚いが、自己都合になると80%カットになることもあるという点です。例えば、50歳の方が、60歳定年退職で5000万円の退職金をもらえるとします。自己都合で80%カットであれば、50歳で転職した場合には1000万円しか退職金がもらえません。差額の4000万円(5000万ー1000万)/ 10年(60歳ー50歳)=年間400万円 以上のメリットなければ経済合理性からは転職できないことになります。

大企業に勤めている人ほど、年収や退職金も高いはずです。さらには大企業なので組織がなくなることも考えにくいとなれば、ますます転職するインセンティブがなくなります。多くの人は、想像しうる未来(多くの場合は現状の延長線上)に合わせて合理的に行動しているのです。

まずインセンティブを変えよう

「人材の流動性を上げよう」や、「終身雇用制度をやめよう」という掛け声では何も変わらないということです。それを支えるインセンティブに手を付けてこそ、初めて人間は動くのです。例えば、退職金制度を廃止にすれば、大きなインパクトがあるでしょう。

アメリカのFedEx社(貨物運送)での実話を紹介します。FedEx社は、朝までに荷物の仕分けが間に合わなくて困っていました。色々な取り組みをしてみても結果が出ません。そこで、夜間シフトの労働者に対して時給支払いから、仕分けが終われば支払う形態に変えたところ、一気に問題が解決したそうです。時給では、労働者のインセンティブは長時間働くことになります。かかった時間に関わらずに仕分けが終われば支払う成果型に変えたことで、労働者に初めて早く作業を終えるインセンティブが芽生えたのです。

日本の労働者の潜在能力は、インセンティブによって押さえつけられているように感じます。扶養控除で人為的に年収103万以上稼ぐと手取りが減らすなど、勤労意欲を阻害する以外の何物でもありません。より多くの方々が力を発揮できるインセンティブが広まるように、サンタさんにお願いしたいです。

Happy Investing!!