投資家として長く続けるために

投資家としての経験値を謙虚に受け止める

22000円という日経平均が絶対的に高いかどうかの議論はさておき、少なくとも3つの追い風を受けていると思います。(1)好景気、(2)世界的な低金利環境、(3)日銀による株式ETF購入。つまり、現在の株価はこの3つの追い風を既に織り込んでいるのかもしれません。そうなると、現在の価格からさらに上値を達成するためには、織り込まれている以上の材料が必要となります。

次の株価支援材料・抑制材料が何になるのかは良く分かりませんが、自分が運用してきた相場環境を冷静に見直す必要があるなと感じています。私は、2006年夏に機関投資家に就職して株式投資と出会いました。2009年夏に退職するまでの3年間は日経平均が16000円から8000円を割り込むような大幅な下落相場でした。対ベンチマーク相対評価される環境下で、保守的な運用のおかげで良い成績を残すことができました。しかし、アナリストとして勤務しながらお金や経済成長について考えすぎたあげく自爆気味に疲れてしまい、2013年末まで投資から離れていました。そして2014年から個人投資家として活動した間は、16000円から20000円の大きなレンジ相場になっています。

私は投資家として、2009年から2013年のような長期的な相場低迷や、2013年の急激な上げ相場を経験したことがありません。さらに、個人投資家としては2006年から2009年のような急激な下げ相場を経験したこともありません。こうして振り返ってみると、経験していないことだらけというのが正直な感想です。

個人投資家として長期低迷相場に耐えられるのか?

個人投資家は絶対リターンを出す必要があります。仮にある年に日経平均が-20%で、自分が-10%であったならば、機関投資家なら褒めてもえるかもしれません。しかし、個人投資家として相対リターンは全く無意味なことです。金融危機の後、2007年から2013年まで日経平均の回復には6年間もかかっています。もし仮に今回下げ相場が訪れるとすれば、中央銀行は金利を下げて金融緩和する余地がないため、さらに株価の低迷が長期化する可能性すらあります。最低5年、長くて10年耐える準備ができているのでしょうか?そんな思考実験を行っては、なかなか個人投資家も大変だなと思うのです。

心の準備、体の準備、資金の準備をお忘れなく。

Happy Investing!!

ある銘柄にいくら投資すべきか?ケリーの公式

投資先をみつけただけでは稼げない

現在の市場価格が本質価値に比べて大幅に割安と思われる投資先を見つけることは大切です。しかし、それだけでは稼ぐことはできません。実際にその企業の株式を購入し、市場の価格変動に惑わされることなく保有し続け、購入価格より高値で売却して初めて利益が確定します(配当金をもらえる場合もあります)。

投資先と、十分な安全域を確保した購入価格が分かったとして、次に問題になるのは、一体いくら投資すべきかということです。

ケリーの公式とは何か

次のコインを投げる賭けについて考えてみましょう。

参加料は100円です。コインを投げて、金額が記載された面が表になれば参加料100円に加えて200円もらえます。しかし、金額ではない面が表になれば、参加料の100円は没収されます。両面が出る確率は50%ずつとしたとき、この賭けには資産の何%を賭けるべきでしょう?

損益 x 確率を合計した期待値が0を上回っているので、この賭けには参加すべきです。そして、1回に資産の何%を賭けることが最適かについては、ケリーの公式が答えてくれます。

ある賭けを繰り返し行った場合に資産を最大化するために賭ける資産の割合 = エッジ / オッズ

今回のコイン投げの場合、 エッジ(50)/ オッズ(200) = 1回に資産の25%を賭けることが最適。ということが分かります。

株式投資への応用

例えば、以下の場合を考えてみましょう。

時価総額100億円で取引されている企業がある。普通の事業環境下での本質価値は200億円だと考えている。景気後退などに見舞われた場合、本質価値は50億まで低下する可能性がある。厳しい不況が続いた場合は、破産する可能性もある。では、この会社に資産の何%を投資すべきでしょうか?

エッジ / オッズ = 資産の60%を投資せよとのお告げです。。。そんなに投資するの怖いと思うのが普通の反応だと思います。しかし、上記コイン投げと比べると、勝率が50%に比べて75%と高いことが分かります。自分の考える確率が間違っているだろうか?など様々な考えが頭をよぎりますが、ケリーの公式に当てはめるといくら賭けるべきかと知っておくのは有益だと思います。

実践者:チャーリー・マンガ―

ウォーレン・バフェットの相棒、チャーリー・マンガ―はケリーの公式を完全に実践しています。彼が自らのヘッジファンドを運用していたときには、投資先はなんと2社。資産の40%と50%を投資していたとか。景気後退時に市場価格が1/3に減ったこともあったようですが、鉄の精神力で保有を続け、最終的には大儲けしたそうです。

集中投資した方がよいことは分かっていても、集中投資するほど日々の価格変動が大きくなります。日々の価格変動が関係ないことを頭で理解しつつも、私などはまだまだ影響を受けてしまいます。認知的整合性に欠けていることは認識しながらも、含み益が増えれば嬉しく、含み損を抱えれば落ち込んでしまいます。ご参考までに、ウォーレン・バフェットは、一つの投資先に資産の最大40%を投資していたそうです。しかし、そのような場合は滅多になかったと語っています。

ごく少数の、非常に有利な投資機会に、大きく賭ける。。。少しでも実践できるように頑張ります。

Happy Investing!!