IRフェアのすゝめ

名証IRエキスポ2017に行ってきました

7月21、22日に、名証IRエキスポ2017が開催されました。私は7月22日(土)に行ってきました。旅費と時間を節約しようと夜行バスを利用した(3800円 vs 新幹線は金券ショップで11000円)のですが、名古屋は距離が近すぎて6時間も眠れない上、2回のサービスエリア休憩でも目が覚めてしまうので安眠の工夫が必要ですね。夜行バスには、4列シート、4列ゆったりシート、3列独立シートなど椅子の配置パターンがあります。今回はちょっとリッチな気分で4列ゆったりシートを選びましたが、やはり隣の人次第で眠りの質が変わります。次回は、安眠対策+3列独立シートしたいと思います。

そんなことより、IRエキスポの話でした。名古屋証券取引所には292社が上場していますが、そのうち95社もの企業がブースを出してくれていました。貴重な週末にありがとうございます。こうしたIRフェアは、社員の方々に直接話を聞くことのできる貴重な機会です。決算説明会や株主総会で登壇する社長や役員の方は、対外的に話をすることに慣れています。現実をよりよく見せる話術に長けていることが多いですし、社員を鼓舞するためには夢を語る能力は重要でしょう。しかし、投資家としての私は等身大の企業の姿を見たいと考えます。そのために一番良い方法は、会社訪問だと思います。例えば、みなさん他人の家に行くと感じる雰囲気があると思います。会社も同じようなもので、会社訪問を重ねると社風を肌で感じられるようになります。ただし、会社訪問は個人投資家の立場では難しいのが現状です(私が難しいと思い込んでいるだけかもしれません)。そこで、代案としてIRフェアをおすすめします。特に普段IRを担当していない社員の方は、よい意味で素朴に質問に答えてくれます。投資対象企業について、財務資料、経営者、社員、競合他社、サプライヤー、顧客、ニュース、書籍など、多面的な意見を集めることでより立体的な姿が浮かび上がってきます。何より、企業をより深く理解できたと感じるときは満足感があります。さらに、自分の理解が正しくその見通しに基づいて株式投資で稼げた時など、中毒的な嬉しさがあります。こうして株式投資ジャンキーになっていくのでしょう。

IRフェアに行ってみませんか

以下、1年を通した主なIRフェアです。是非、足を運んで投資対象企業の社員の方々に話を聞いてみてください。私にとっての株式投資は、株券という紙きれを売買するものではなく、株式会社という生き物を売買するものだと思っています。会社には、当たり前ですが生身の人間が働いています。どんな人が働いているのか?働いている人はどこに満足しているのか?どこに不満を感じているのか?興味を持つほどに会社のことが良く分かりますし、分かってくると楽しいですし、結果として運用成績も向上するのではないかと考えています。Happy Investing!!

2月 東証IRフェスタ

7月 名証IRエキスポ

8月 日経IRフェア

12月 野村IR資産運用フェア

株主総会雑感

株主総会が6月に集中する理由

上場企業への投資家にとって毎年5,6月は忙しいです。3月末決算の企業が多い日本では、本決算が5月に発表され、株主総会が6月に開催されるからです。株主総会は決算日から3ヵ月以内に開催することがルールなので、3月末決算→6月下旬の株主総会 となるのです。

2017年はこれまで3社の株主総会に出席

2017年は、今のところ12月決算の会社1社(総会は3月)と、3月決算の会社2社の計3社(総会は6月)の株主総会に出席しました。同じ株主総会と言っても企業によって違いがあり、定性評価のための貴重な情報源だと思っています。

① 日本管理センター@東京国際フォーラム

株主からの活発な質疑応答が印象的。10人以上質問していた。CFOの方は、「ここ数年は株価が伸び悩んでいるが、弊社の株主からは株価についての質問が一切出ないのでありがたい」とコメント。株主総会では、会社説明会で良く顔を見かける個人投資家の方も複数出席しており、事業内容をよく調べ理解している真面目な個人投資家が多い印象を受ける。総会後は立食形式で経営陣との懇親会。経営陣とはろくに話さず、食べ物にむらがる株主(主に高齢者)が多いのは残念だが、直接経営陣の方々とお話しする機会を作ってもらえるのは嬉しいし、オープンな社風を感じます。お土産はなし。

② トランコム@名古屋

ヤマトの業績下方修正からの値上げ要請など、ニュースの多い物流業界の企業。業績は伸び悩んでおり、心配する株主から活発な質問が出ると期待して名古屋まで出かけました。200人以上参加した総会でしたが、なんと質問は3回だけ。そのうち2回は私で、残り1回は、取締役の選任について「みなさんから一言づつ」という質問とは言えない内容。あまりに質問が出ないことに逆に自分が驚いてしまい、質問をしてはいけないかのような場の空気に負けて2回で質問を止めてしまったことが反省点でした。私が2回目に質問している最中には、おじいさん達が周りに聞こえるような声で私語を始める始末で、株主の質が低いと感じざるを得ません。なぜ質問もする気がない株主が大量に出席しているかと言うと、「お土産」がもらえるから。今年はバームクーヘン。多くの株主は、バームクーヘンをもらってさっさと家路に着きたいのでしょうか。それなら、お土産だけもらって参加せずに帰ればいいのに。私は、業績を上げて株価を上げることでリターンを得るという株式投資の王道に興味を持たない株主を集めてしまう、株主優待とお土産が大嫌いです。

③ エイジス@幕張

棚卸サービスを提供する会社。本社が幕張駅から遠い上に、ボロくてビックリしました。取引先だったスーパーが閉店したところを、居抜きで本社にしたとか。徹底したコスト意識を体感できます。そんな会社ですから、もちろん総会のお土産はなし。つまり総会に出席する株主は事業に興味がある人だけです。質問もまともな内容が6問ほどあったでしょうか。帰り道に20年以上も株式を保有しているという株主の方と長話できたことが嬉しかったです。会社の歴史を良く知る方で、勉強になりました。

まとめ

いかがでしょうか?たった3社の株主総会でも、これだけバラエティに富んでいます。是非、株主総会に足を運んでみてください。自分の五感を総動員して、社風や集まっている株主の様子を観察してください。そして、「この人たちと同じ船に乗り続けたいのか?」と自問自答してみてください。数字を超えて企業を生き物として感じられるようになるので、楽しいですよ。

Happy Investing!!

日経平均採用企業の長期業績から見えること

2002~2016年まで14年間の投資リターン

【参考ファイル】日経平均採用銘柄長期リターン

2016年11月に日経平均採用225社の長期業績レポートをまとめ始め、先週ようやく終了しました。225社の中には合併した企業もありますので、15年間の業績を比較できる企業は195社ありました。

例えば3月決算の会社であれば、2002年3月末に購入して2016年3月末まで14年間保有した場合(配当再投資)のリターン分布は以下の通りです。平均値は年率4.7%、中央値は年率4.8%でした。しかし、日経平均の同期間のリターンは年率3.0%と大きく劣後しています。これはどうしてでしょうか?

14年投資リターン(配当再投資)分布

理由の一つは、日経平均には配当が含まれていないこと。二つ目には、日経平均は構成銘柄の平均値ではなく、株価の絶対水準によって構成比重が決まっていることも関係しています。例えば、ユニクロを展開するファーストリテイリング(9983)の株価は36000円と絶対水準が高いため、225社の一つに過ぎないにも関わらず、日経平均における寄与度は8%以上もあります。逆に時価総額ではトップのトヨタ(7203)の寄与度は2%しかありません。

出典:PRESIDENT Online

投資リターントップは楽天だが、採用時期が遅すぎた

投資リターン上位と下位の10社をみてみましょう。1位は楽天で、14年間のリターンは21倍と素晴らしい数字です。しかし、日経平均に採用されたのは、高成長が終わった2016年になってからでした。日経平均に採用されるということは、大企業になったということです。しかし、残念ながら日経平均採用後も高成長を続けることができる企業はほんの一握りです。

楽天の株価(出典:kabutan.jp)

売上成長率は平均年間3.1%。今後はもっと下がるだろう。

次に、日経平均採用企業の長期売上成長率を見てみます。14年平均年率10%以上で売上を伸ばせた会社は8社しかなく、平均値は3.1%、中央値は2.5%です。GDP成長率は上回っていますが、これが大企業の実態です。今後は人口減少からますます需要が減少するでしょう。その中で、日経平均採用企業の売上成長率は1%台に低下すると考えるのが妥当ではないでしょうか。高い成長率を想定して企業へ投資する際には、根拠を確認する必要がありそうです。

成熟企業といえば株主還元するはずが・・・

成熟企業の売上成長率が低いのは仕方がないことです。業界内でカッコたる地位を築き、シェアも高いことから競争が限定的で潤沢なキャッシュフローを創出し、そのキャッシュフローを株主に還元してくれればいう事はありません。株主還元の手法と言えば、配当と自社株買いですが、現実はどうなっているのでしょうか?

下に株数の変化をグラフにしました。平均値が年率-1%ということは、年に1%づつ発行済み株式数が増えたということです。リーマンショックを挟み、安い株価を利用して自社株買いをしたいところでしたが、逆に本業が痛んでしまった企業が多く資本調達に追われてしまった様子がわかります。

まとめ:日本の大型株への投資は難しい

日経平均採用企業は、日本を代表する225社です。私であれば、こうした大企業は成熟企業なので高い成長率は求めません。代わりに、潤沢なキャッシュフローを元にした、株主還元に投資リターンの源泉を求めます。

しかし、長期業績レポートをまとめて改めて感じることは、株主還元が上手い会社は非常に少ないということです。日本の経営者の多くは叩き上げとして、社内で頭角を現して出世します。ある特定事業のオペレーションには精通しているかもしれませんが、経営者の最大の仕事は限りある資本をどのように分配するかということです。資本配分の訓練や経験のある経営者が日本には少ないため、株主還元の巧拙が投資リターンを決定付ける成熟局面での日本大型株リターンは低くなってしまうように感じます。

改めて日本の大型株への投資は難しいなと感じました。個人投資家の強みである資金量の小ささを活かすべく、時価総額の低い企業群の開拓を続けることになりそうです。

Happy Investing!!

長期業績レポート(東京電力、中部電力、関西電力、東京ガス、大阪ガス)

長期業績レポート

9501 東京電力
9502 中部電力
9503 関西電力
9531 東京ガス
9532 大阪ガス

日経225採用企業の長期業績レポート一覧

ひとくちメモ

2016年11月にはじめた日経225採用銘柄の長期業績レポートですが、いよいよ今回で最終回です。有終の美を飾ってくれるのは、毎日の生活でお世話になっている、電力とガス会社です。

日本では、電力会社10社が地域独占的に電力を供給するという、世界的にも珍しい(時代遅れな)仕組みを採用し続けています。現状を維持したい電力会社は「電力を安定的に供給するには現行の供給体制維持が不可欠」と当然に主張しますが、ヨーロッパなどでは国境を越えた電力取引も当たり前に行われている現実を見ると、電力会社の主張には首をかしげしまいます。

地域独占ということは電力会社同士は競争する必要がなく、横並びな発想になるのかなと想像します。ふと、東京電力、中部電力、関西電力の配当金額を比べてみると、各社とも年間60円配当を基本にしていることに気が付きました。まさか、配当水準まで横並びなのかと思い、電力会社全10社の配当金額の推移を調べてみて、驚きました。

上の表から分かるように、福島原発以前の日本の電力会社、本当に配当水準まで50円~60円で横並びだったのです!!!!東京電力は2007年3月期、2008年3月期に他社を一歩リードする70円配当、65円配当を行っていますが、「電力業界のリーダーは俺だぜ!」という井の中の蛙の叫びに聞こえます。日本に10社しかない狭い業界で、生活必需品を提供しながらお互い競争もしないというぬるま湯の中で、お互いに顔を見合わせながら配当水準まで一定にしていたことにはショックを受けました。一体何を目指して経営しているのか、理解に苦しみます。

2012年3月期以降は、配当水準にバラつきが出ています。安定配当を維持している3社(中国電力、北陸電力、沖縄電力)とその他です。他の先進国では当たり前の発送電の分離も2020年4月からようやく導入されます。電力会社の横並び体質がどこまで変わるのか、楽しみです。

Happy Investing!!