長期業績レポート(ヤマハ)

長期業績レポート

7951 ヤマハ

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ひとくちメモ

ピアノや音楽教室で有名なヤマハのルーツは、明治20年(1897年)に山葉さんがオルガン製作に成功したことに遡る。その後、明治30年(1907年)に日本楽器製造株式会社を設立。昭和24年(1949年)に東京証券取引所に上場して、昭和29年(1954年)に音楽教室を始めている。つまり、ヤマハの主力事業がうまれてから、既に60年が経とうとしている。

超長期での株価の動きをみてみよう。1985年から現在に至る30年間、1000円~3000円というレンジの中で、景気に合わせて行ったり来たりしているという印象だ。今回の長期業績レポートを見ても、直近15年間でヤマハは売上を伸ばすことができていない。

言葉より先に音楽が合ったと言われるほど、音楽事業は人間の根源的な欲求を満たすものだと思う。だからこそ、今後20年で楽器を演奏するという習慣がなくなる可能性は絶対ないと言い切れる。そうした変化の少ない魅力的な事業領域で世界的シェアを獲得できていることは評価できる。これから新興国が経済成長して生活に余裕が出てくれば、文化的支出が増えるだろう。日本の高度経済成長期に一家に一台ピアノを持つのが流行したように、事業環境としては追い風が吹いていると思う。今後に期待できる企業の一つだと思う。ちなみに、楽器の世界市場規模は8600億円。ヤマハのシェアは25%だそうです。

 

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東京オフィスの空室率データを見て考えた

不動産ビジネスには3つの変数しかない

不動産ビジネスで起業する友人の手伝いをしている関係で、これまであまり縁のなかった不動産関連データに目を通すようになった。

不動産ビジネスについて考えてみよう。費用側は、ほとんどが固定費だ。一度物件を購入すれば減価償却費が決まり、借入による金利負担も変動か固定金利かの違いはあるが、固定費であることには変わりない。一方の売上=賃料 x (1 – 空室率)なので、(1)物件の購入価格、(2)賃料と(3)空室率という3つの変動要素で収益性が決まってしまうという、単純なビジネスだと思う。

私が事業を評価するとき、その企業がどの変動要因をコントロールできるかを重要視している。これが競争優位性の源泉だと思っているからだ。不動産ビジネスでいえば、物件の購入価格は安くならないと買わないと決めて我慢できればコントロールできる。しかし、賃料を下げれば空室率は下がるが、賃料を上げれば空室率も上がってしまうので、賃料と空室率について企業がコントロールできるとは評価できない。結局、不動産ビジネスはどんな物件をいくらで買ったかという時点で、ほぼ勝負がついているのではないだろうか。

その意味では、私が行っている上場企業投資と似ていると思う。上場企業投資は、どの銘柄をいくらで買うかをコントロールできるのみで、少数株主の立場からはその他一切コントロールできない。だからこそ、以前このブログで書いたように、上場企業投資は付加価値が薄いことを自覚しなくてはいけないし、企業価値評価に注力するバリュー投資戦略を採用することにしている。

現在の東京のオフィス市況

代表的なデータに、三鬼商事が月次で発表している日本の主要都市のオフィス市況データがある。長期的にこの統計を見ていくと、空室率と賃料のきれいな相関性が見えてくる。

空室率6%を境に、それ以上であれば平均賃料は下がり、それ以下であれば平均賃料は上がる。そして、空室率は6% プラスマイナス 3%、つまり3% ~ 9%の間で振り子のように行ったり来たりする。オフィスビルを建築することを考えてみると良く分かる。空室率が下がると、新規オフィスの供給は止まるが、急には止まれない。なぜなら、今供給されてくるビルは数年前に計画されたものだからだ。

例えば、東京では2018-2020に大型オフィスが多数完成するが、その多くは2013年にアベノミクス開始ごろに計画されたものだからだ。5年ほどの年月がかかってしまうので、足元の景気動向だけでは止まれない。その結果、次のような不動産ビジネス循環ができる。

景気が回復する > 空室率が下がり始める > 賃料が上がり始める > 新規オフィス供給計画が出る > 4,5年先までは供給されない > 新規供給までの間、空室率は下がり続ける > 賃料は上がり続ける > 景気回復から4,5年経ち、景気減速局面になって新規オフィスが供給され始める > 空室率が上がる > 賃料が下がる > オフィス供給が止まる

実際の統計データもこれに近く、前回は2003年~2008年までが回復期、今回は2013年~2018年が回復期になっている。分かりやすい5年周期だから、今後は不動産市況は冷え込む確率の方が高いような気がする。「不動産セクターは、新規オフィス計画が発表されてから投資して、4年持って売るということを繰り返せばいい」というのが勝ちパターンだとは思うが、それを実践するには強い精神力が要求される。何しろ、10年に1回くらいしか投資のチャンスが訪れない。分かってはいても、2回半もオリンピックが過ぎるのを寝て待てる人がどれだけいるだろうか。また機関投資家だったとしたら、「私は10年に1回しか投資しません」と豪語してお金を預けてくれる人がどれだけいるだろうか?

行動している方が賢く見えてしまうという人間の悲しい習性がある限り、不動産投資の勝ちパターンは残り続けるだろうし、長い時間軸で勝負できる人は勝ち続けるだろう。偉そうに言っている私も、月次やひどいときには日次の損益で一喜一憂してしまう行動を反省することにします。

Happy Investing!!

 

長期業績レポート(凸版印刷、大日本印刷)

長期業績レポート

7911 凸版印刷
7912 大日本印刷

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ひとくちメモ

本日取り上げた印刷会社大手の2社は、どちらも過去15年間投資すると損をしてしまいました。印刷業界全体が縮小傾向なので、大手はその影響から逃れることが難しいことが良くわかります。小規模な企業であれば、素早く方向転換することができるかもしれませんが、大手はなかなかそうはいきません。温暖な気候に適応しすぎで環境変化に負けてしまった大きな恐竜と、生き残った小さな哺乳類の話を思い出します。

私が尊敬する個人投資家の一人である角山さんが、「砂漠に咲く一輪の花」と称して、衰退産業の勝ち組企業を取り上げています。例えば、印刷業界でも、医療品のパッケージ印刷に特化した朝日印刷のようなキラリと光る企業があります。衰退産業で優れたビジネスモデルを提示することができれば、競争相手が弱いので圧勝する可能性があります。業界が悪いから、、、と先入観で決めつけることなく、事業単位でしっかりと評価していきたいです。

Happy Investing!!

TECH::CAMPを終えて

私は、個人投資家と並行して副業を行い、安定収入源を確保することにしています。4月から起業の手伝いをしている一環として、プログラミング教室「TECH::CAMP」に通い、ウェブサービスのプロトタイプを作成することができました。

副業する理由

私は過去3年、個人投資家として生計を維持できるだけの収益を上げています。しかし、それは結果論でしかありません。毎年のように株式投資で稼げる保証はありませんし、逆に毎年稼がなくてはいけないと思ってしまうことは危険な発想だと思っています。私は株式現物買いしか行いません。つまり、株式投資で稼ぐためには、まず株式を買わなくては始まらないからです。株式市場は、熱狂と悲観の間を揺れ動く人間心理を映しています。企業の適正価格を大きく超える価格で株式が取引されていることもあれば、逆に大幅に安く取引されていることもあります。そのような現実がありながら、常に株式投資で稼がなくてはならないから、市場の高い安いに関わらず、常に株式市場に投資しなくてはならないと思ってしまうことには問題が多いと思います。

割高だと思うのであれば現金比率を高くして株価が安くなるのを待てばいいというのが正解ですが、実践するのは簡単ではありません。過去の経験上、市場が高値を付けてから安値に以降するまでには1.5~2年ほどの歳月がかかります。2015年夏に高値をつけた日経平均に照らせば、市場全体が安くなるのは2017年末から2018年夏かもしれません。もちろん、市場全体が調整する間にも割安な個別株式を見つけられることはありますが、総論としては、2年くらいは難易度の高い相場環境が続くことを想定してます。私は家族もいるので、毎月の固定費としてキャッシュが出ていきます。正しいと頭では分かりながらも、ただ座して投資資金が減っていくのを見ているのは、私にとっては精神的に厳しいものです。買うことを正当化するような企業価値評価を行ってポジションをとってしまった痛い経験もあります。

そこで、ここ1年ほどは、副業としてアルバイトをして週の半分ほど働き、ビジネス内部の動きに触れ、投資から離れた人間関係を気づき、何より安定収入を得ることで、投資における長期的な成功に不可欠な精神的安定を得られることがわかってきました。

2017年4月から友人の紹介で起業を手伝う

2017年3月までは、友人が取締役を務めるちとせバイオエボリューションというバイオベンチャーで、補助金申請の手伝いをしていました。4月からは、高校同級生の紹介で起業を手伝っています。バフェットの言葉に、「私は事業家だから、より優れた投資家になれた。私は投資家だったから、より優れた事業家になれた」というものがあります。たびたび紹介してきた、IT起業家からファンドマネージャーに転じたモニシュ・パブライも同じことを言っています。

今回の起業手伝いは、企業経営を身近に参加できるチャンスとして楽しみです。このようなチャンスを頂けて、とても有り難いことです。

ウェブサービスを作るには

本サイトはウェブエンジニアの方に開発を頼むのですが、最初の打ち合わせで、発注側が全くウェブサービスを理解していない状態で発注すると、共通言語がないために意思疎通に苦しみ、時間と費用が無駄になるであろうことが予想されました。

そこで、(1)エンジニアとの共通言語を学び、(2)投資家などに見せることのできるプロトタイプを創る、という2つの目的をもって最近増えているプログラミング教室に通うことにしました。幸い通う時間はたくさん確保できますので、TECH::CAMPという通学型を選択しました。

TECH::CAMPの感想

プログラミング言語の習得は、普通の言語習得と同じだと思います。カギは反復練習です。カリキュラムはよく作りこんであり、3度くらい繰り返すと、かなり理解が深まりました。ここまで10日くらいかかりました。そこから自分たちのウェブサービスのプロトタイプづくりに進むことができ、2週間ほどでRuby on Railsでのプロトタイプをウェブにアップすることができました。

TECH::CAMPの一か月だけで本格運用できるウェブサービスを作れるとは思いませんが、(1)他人にアイディアを伝えるプロトタイプを作り(動いているものを見せないと、なかなか他人にイメージを持ってもらえません)、(2)開発を頼むエンジニアの人が何を言っているのか理解できるようになります。

我々の最初の打ち合わせでは、プログラミングを理解しない顧客からのざっくりとした発注に、エンジニアも不安になっていたのことでしょう。大きなバッファーを見込んだ見積もりになるのは仕方なく、500万という見積もりを受けました。プログラミンを知らない顧客は、なぜ材料費ゼロなのに500万もかかるんだ?とこちらも疑心不安になります。お互いに不信感を持ってしまうという、良くない状態です。プログラミングをかじったことで、今は何が難しいかを理解することはできます。そのうえで、なぜ500万が高いと思うかも説明することができます。例えば、素人の私がつきっきり正味1週間でプロトタイプを作ったのです。プロの人であれば、似た事例を多数扱ってきているはずです。現在はデザイン料込みで200万とお願いしていますが、実際にいくらに落ち着くのか楽しみです。

いずれにせよ、TECH::CAMP代 13万 + パソコン代 9万 + 時間 2週間 で エンジニアの方々との話し合いがとてもスムーズになり、開発コストが少なくとも100万円は削減できるでしょう。とてもよい費用対効果でした。TECH::CAMPの創業のビジョンである、「難しいと思い込まれているプログラミングを多くの人に学んでほしい」は十分に達成できる仕組みだと思います。敷居の高いプログラミングを身近にして頂き、ありがとうございました!

長期業績レポート(三井造船)

長期業績レポート

7003 三井造船

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ひとくちメモ

kabutan.jpでは、三井造船の株価を1950年までさかのぼることができます。1950年1月に60円だったので、67年経っても株価が3倍にしかなっていないことに衝撃を覚えてしまいます。複利で年率1.7%のリターンしか出ていません。配当利回りが平均1.3%あったとしても、合計年率3%。期間を通しての銀行定期預金にも大幅に負け越していると思います。

私は、会社の長期業績を決める要素は、(1)事業環境 x (2)経営陣の能力 だと思っています。

(1)に関していえば、1990年に世界の船舶供給量の35%を担っていた日本の造船業界は韓国、中国の大型造船所の台頭を受けて、競争力を失っていきます。2012年の日本の建造シェアは15%に低下しています。造船は労働集約型ビジネスなので、人件費の上がった国では勝ち目がないと思います。

(2)に関していえば、このサイトでもたびたび指摘しているように、経営陣と株主の利害が一致していないことが、多くの日本企業の問題だと思っています。

上記の2016年3月末の大株主一覧を見てもわかるように、三井グループ各社(三井物産、三井生命、三井住友銀行)と信託口座(年金基金)がほとんどです。香川の地銀である百十四銀行も、三井造船が香川県高松市に造船所をもっているために、お付き合いで株式保有しているのでしょう。つまり、株主の中に純粋に株価を上げて稼ごうと思っている人が少ないのです。これでは、ガバナンスの改善も期待できません。

次に経営陣を見てみましょう。私が注目するのは、果たして株主の利益を代表して行動してくれる経営陣かどうかというところがポイントです。

会長の加藤さんは1973年から43年在社していますが、83000株しか保有していません。一株170円として、1400万円です。社長の田中さんも、1973年から43年在社していますが、64000株しか保有していません。一株170円として、1100万円です。副社長の山本さんの保有株式はさらに少ないです。

一方の役員報酬はというと、取締役14人で3億円、平均年収2100万円です。なぜ、年収2000万円以上ももらっている経営者が、1000万円少々しか自社株式を保有していないのでしょう??私には、株価が上がる気がしないからとしか思えません。自分が一番会社の内情をしっているわけですから、企業価値の向上=株価上昇に自信があれば、買いますよね。。。

三井造船の経営陣の個人収支にとって最も大事なのは、おそらく給与を守ることであって、株価は2の次でしょう。その事を裏付ける上のようなリリースが、4月28日に発表されました。

2017年3月期の度重なる業績下方修正の責任を取って、経営陣が給与を一部返上するという内容です。社長は、月額報酬の30%を3ヵ月に渡って返上するそうです。つまり、30% x 3ヵ月 = 月額報酬の90%。年収2100万とすれば、わずか150万円に過ぎません。冗談かと思うような少額です。

2016年3月期決算時点では2017年3月期の業績予想は営業利益で220億円と発表されていました。それが、2017年3月期の実績は83億円と、約140億円も下振れているのです。その責任の取り方が、わずか150万円の減俸とは、本当に株主をバカにしていると思います。

しかし、時価総額1000億円以上の大企業が、真面目にこのようなリリースを出しているのです(IR部門は止めないのでしょうか。。。いや、止めれないんでしょうね)。おそらく株価よりも給与の方が自分の懐にとって大事な三井造船の経営陣にとって給与カットを示すということは、何よりの誠意を見せているつもりなのでしょう。

ちなみに、AppleのSteve Jobsは1997年から2011年まで、14年間年棒$1で働いていました。その一方で、550万株を保有しており、その価値は1997年に一株$3から、2011年には$300まで上昇していました。保有株式の価値は、16億円から1600億円になったのです。

株主と利害が一致した状態で働いてくれる経営陣と同じ船に乗りたいものです。

Happy Investing!!

長期業績レポート(NSK、NTN、JTEKT)

長期業績レポート

6471 NSK
6472 NTN
6473 JTEKT

日経225採用企業の長期業績レポート一覧

ひとくちメモ

本日取り上げた3社は、どれもベアリング業界に所属しています。同業他社を比較するのは、勉強になることが多いです。それは、業界の追い風・向かい風の影響が各社ともに同じと考えられるため、各社独自の競争力の差が明らかになるからです。

違う業界に属している企業の独自競争力を比較をするためには、まず業界そのものが追い風・向かい風をどれほど受けているのかによってゴルフでいうところのハンディをつけて業績を評価する必要があり、なかなか難しいです。

さて、ベアリング3社の長期業績を見て、どんな特徴が見つかったでしょうか?

以下、私がポイントと思った点です。

・NSKのトップ経営陣は在任期間が長い。
・NSKの収益性が、利益率5%を超えられないNTNやJTEKTに比べて高い。
・ベアリング業界は景気変動の影響を受けるシクリカル業界である。拡大局面の持続期間は約6年。そこから2年の後退期があるのがこれまでのパターン。2017年3月期は減収減益が予定されているが、2018年3月期にも減収減益が続くのだろうか?

たくさん疑問を持ちながら業績を見ていると、色々な発見があると思います。

Happy Investing!!

長期業績レポート(荏原、千代田化工、ダイキン、日立造船)

長期業績レポート

6361 荏原
6366 千代田化工
6367 ダイキン
7004 日立造船

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メモ

株価 = EPS(一株あたり利益) x PER = 売上 x 利益率 / 株式数 x PER と書くことができます。

まず、株価を長期的に上げるためにはPERの拡大に頼るだけでは無理なので、必ずEPSの上昇が必要となります。次に、EPSを上げるためには、(1)売上を上げる、(2)利益率を上げる、(3)株式数を減らす(自社株買い)、という3つの選択肢があります。

2013年の株価上昇局面で、日本企業はEPSも改善していますが、その多くが(2)利益率の改善によるものだと感じます。不採算事業を切り離したり、コストカットをしたりした結果としての利益率上昇はもちろん素晴らしいことなのですが、ある一定レベルを超えた利益率の改善は持続的なのだろうかと思ってしまいます。

一般的に、日本の大企業の長期業績をみていると、継続的に売上を伸ばす力のある企業が少ない気がします。しかし、より大きな企業へと成長するためには売上成長が重要なのではないかという思いが強い今日この頃です。

本日紹介した企業の中で、ダイキン(6367)は海外競合他社の買収も含めて継続的に売上を伸ばすことができる(14年平均年率+10%)会社です。是非、各企業の長期業績レポートを見比べてみてください。

Happy Investing!!