長期業績レポート
5631 日本製鋼所
メモ
日経平均の機械セクターは16社
今回から、長期業績レポートは機械セクターを扱っていきます。日経平均には機械セクターから、次の16社が採用されています。
私は2006年から2009年まで、キャピタル・グループという機関投資家のアナリストとして、機械セクターを担当していました。どの企業も、IR取材、経営陣への取材、工場見学など思い入れの深い企業です。
日本製鋼所の思い出
原子力ルネサンス
2007年ごろ、投資の世界では「原子力ルネサンス」という言葉が流行っていました。中国を中心とする新興国の経済発展によってエネルギー需要が高まるなか、原油の生産が頭打ちになるという「ピークオイル」説と相まって、原油価格は1990年代末の1バレル$20から$100以上に高騰していました。膨大なエネルギーを賄えるのは原子力発電しかないという論理展開で、1979年のスリーマイル島原子力発電所事故や1986年のチェルノブイリ原発事故以降は新設が減っていた原子力発電所が再び増えるという見通しだったのです。2006年の東芝によるウェスティングハウス買収も、このような時代背景に後押しされて行われたのでしょう。
ヤカンを作れるのは誰か?
原子力発電所の仕組みそのものは単純です。原子力発電にはPWRとBWRという2種類ありますが、要は膨大な核分裂エネルギーを制御してお湯を沸かし、蒸気でタービンを回して発電します。バカでかいヤカンのようなものです。圧力容器と言われるこのヤカン、福島原子力発電所事故で耳にした方も多いと思います。
問題は、そんなバカでかくて危険物質を中に入れることができるヤカンを作ることです。そんな世界でも数社しかない技術と経験を持っているのが、日本製鋼所です(製品リンク)。作り方はいたって原始的です。鍛冶屋が熱した金属棒をトンカントンカンやって包丁を作ったのと原理的には同じですが、これまたバカでかい規模で行います。14000トンのプレスを使って、チェーンで大型鋼塊をグルグル回しては叩いていきます。
このように、我々の生活を支えてくれていながら、まず目にすることのない光景や人々に触れることができるのは投資の醍醐味だと感じます。工場見学を行っている企業も多いので、是非参加をお薦めします。身近なものがどうやってできているか知ると目から鱗のことが多いです。
投資と政治リスク
福島原子力発電所の事故は、日本製鋼所の作った圧力容器の問題ではなく、「原発安全神話」に基づき安全対策を怠った結果だと認識しています。そのようなお役人のミスによって、素晴らしい技術が発揮される機会が失われてしまうことが残念でなりません。政治家は資本の論理では動いていないので、投資家の立場で原子力発電のような政治リスクが大きい事業に投資することは難しいなと感じます。
Happy Investing!!