日経平均先物を売って学んだこと

日経平均を空売りするには

日経平均株価(出典:kabutan.jp)

2016年後半からの株価上昇で、私の基準で割安と思える株は少なくなりました。このサイトでは日経平均採用銘柄の長期業績レポートをまとめていますが、長期的な利益成長実績の乏しい会社でもPER20倍は当たり前という状況です。

株価が価値よりも高いと思うときはどうすればいいか?答えは簡単で、株価が価値より低くなるまでひたすら待つしかありません。何もしないで投資余力を残しつつチャンスを待つのは、投資でおそらく一番重要かつ難しいことです。自分は値上がりすることのない大量の現金を抱えていながら、市場に参加している人が株価上昇を楽しんでいる姿を見るのは、気分の良いものではありません。しかし、これは長期的に高い運用成績を残すためには必要不可欠です。

私は、2015年夏に日経平均が2万円を超えたあたりで、保有株式を全て売却してポジションを100%現金にしました。おかげで株価下落を回避でき、2016年夏頃から投資を再開したことで満足のいくリターンを得ることができました。再び日経平均が2万円を目前にしている現状で割高だと感じているのであれば、また現金比率を高めればよいと思われるかもしれません。しかし、現在は大きな含み益を抱えた保有株式があるので、現時点で売却によって利益を確定して税金を払いたくはないのです。そこで、ヘッジファンドのロング・ショート戦略ではありませんが、「保有株式はそのままに、市場全体の下落リスクをヘッジすることはできないか」、と欲を出してしまいました。

日経平均の下落に備える方法は2つあります。

(1)インバース型ETFを買う

例えば、NEXT 日経ダブルインバース・インデックス(1357)という商品があります。日経平均の-2倍の値動きに連動することを目指しているので、例えば100万円分のリスクをヘッジしたいのであれば、この商品を50万円購入すればいいということになります。

NEXT日経ダブルインバース・インデックス(出典:kabutan.jp)

実際の値動きを見ると違和感を感じます。例えば、日経平均は2015年夏に2万円越えで、現在は2万円手前。インバース・インデックスからすれば、現在の方が2015年夏よりも高くなっているはずです。しかし、上の値動きを日経平均株価と比べてみると、そうなっていないことは明らかです。この商品の問題は、長期的に日経平均の値動きと乖離してしまうことです。目論見書にも次のような記載があります。

私は今後1年以内に日経平均が下落する可能性が高いと考えているのであり、短期的なことは分かりません。待てば待つほど負けていくインバース型商品では、私の用途には合いません。

(2)日経平均先物を売る

先物取引は、インバース型商品のような長期投資するとヘッジがズレる問題はありません。一方で、こちらの問題は課税方法にあります。

株式取引による税金は分離課税されます。しかし、先物は総合課税で雑所得として課税されます。課税するための分類が違うと、損益通算することができません。つまり、仮にヘッジが上手くいき、保有株価は下落したが、先物取引で儲かったとします。本来であれば株式での損失と先物の利益を相殺したいのですが、税法上はそうできないのです。

税金の問題はありますが、ヘッジがズレる方が大きな問題だと思うので、長期的に日経平均株価の下落に賭けるのであれば、日経平均先物を利用したほうがいいと思います。

日経平均先物を初めて売ってみました

日経平均株価(日足、kabutan.jp)

実際には、上記のような取引をしました。

結論としては、先物を持ち続けるのは精神的に非常に苦しかったです。その最大の理由は、自分自身が本来いくらであるべきかを分かっていないことです。日経平均が2万円では高いとは思っていますが、では適正水準が15000円なのか、16000円なのか?個別株式に投資するときには持っている根拠がないのです。価値の根拠という浮き輪がないままに市場の渦に飛び込んでしまい、値動きによる含み損益に翻弄されてしまいました。普段は見ないようにしている株価を頻繁に見てしまい、ただただ精神的に疲れる日々でした。

我慢に我慢をして、なんとか損益トントンで先物投資を終えることができ、本当にホッとしています。ようやく平穏な日々が帰ってきました。バリュー投資家として目標としている、ウォーレン・バフェットは、空売りについて次のように述べています。

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我々が取り組んだ空売り投資はどれも最後にはうまくいったが、とてもつらい経験だった。株を買って稼ぐほうがはるかに簡単だ。さらに、空売りは大きな損失リスクがあるために大きなポジションを持つことができないので、結果として大きな利益を上げることもできない。(ウォーレン・バフェット、2001年年次報告書より)

“Everything we’ve ever thought about shorting worked out eventually, but it’s very painful. It’s a whole lot easier to make money on the long side. You can’t make big money shorting because the risk of big losses means you can’t make big bets.” – Warren Buffett
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実際に自分でやってみてようやく、この言葉の意味を噛み締めました。どうして失敗してみないと学べないのか、達人の言葉から学べないのかと、自分の無知というか傲慢さが恥ずかしくなります。売りポジションがなくなってみると、買いポジションだけ持っていることでなんと心が落ち着くことでしょう。気がつくと、ロング側でもっとリスクが取れるようになった自分がいたので、全く無駄な経験ではなかったのかもしれません。

Happy Investing!!

四季報を通読しました

3月17日に四季報が発売されました

参考リンク】四季報通読のすゝめ

私は年に4回の四季報発売を心待ちにしています。四季報の一冊には、日本のすべての上場企業がまとまっています。日本株投資をしている私にとって、すべての選択肢を手元に置けることには安心感があります。泣いても笑っても選択肢はこの一冊の中にしかないと実感することで、余計なことを考えなくてすむように思います。

四季報通読を終了しました

3月19日はスタバやサイゼリヤに缶詰になり、四季報を通読しました。計8時間くらいかかったでしょうか。これまでは1000番台から読み始めて、9000番台に行く頃には疲れて適当に見てしまっていたので、今回は趣向を変えて逆に9000番台から始めてみました。終わったのは夜11時回っていたのですが、早く終わりたくて1000番台はちょっと適当に見てしまったことは否めません。

約4000社の中から、約300社を調査対象としてピックアップできました。次の四季報発売まで90日(実働60日)あるので、1日5社(300社 / 実働60日)の分析を続けていこうと思っています。

四季報通読の意味

私は、四季報通読が野球における素振りのようなものだと思っています。通読したからすぐに儲かるとは思いませんが、すべての選択肢に目を通すことで、①世の中には多様なビジネスモデルがあること、②バリュエーションには大きな振れ幅があること、などを実感できると思っています。多様な企業群を生み出してくれる資本主義に感謝するとともに、バリュー投資家として市場価格と企業価値の差違を探していく気持ちが新たになります。

私が大きな収益を上げてきた投資先は、ほぼ全て四季報から見つけてきました。1冊税込み2060円という価格で、大きな価値を頂いてきました。東洋経済新報社のみなさま、本当にありがとうございます!

Happy Investing!!

長期業績レポート(総合重機 その2)

長期業績レポート

6302 住友重機械
7011 三菱重工業
7012 川崎重工業(日経平均には採用されていません)
7013 IHI

日経225採用企業の長期業績レポート一覧

メモ

参考】長期業績レポート(総合重機 その1)

総合重機の決算資料を見ていると、多種多様な事業をどのように管理するのだろうかという疑問を持ちます。

みなさんが、事業を運営していると想像してください。経営者の最大の仕事は、資本配分です。余剰資金が100円あったとして、いくら、どの事業に投資すべきでしょうか?魅力的な投資先がないのであれば、資金のうちいくらかは株主に配当して返すべきでしょうか?それとも、多くの投資機会があるので、さらに借入や新株発行して手元の余剰資金以上に投資すべきでしょうか?

事業が1つか2つしかないのであれば、判断できる気がします。例えば、ファミリーレストランを直営展開しているとすれば、出店エリア分析に基づき、新店を出す判断はできそうです。しかし、総合重機はそうはいきません。例えば住友重機械には6つのセグメントがあり、それぞれのセグメント内にも多くの事業があります。一体どのように優先順位を決めるのでしょうか?

中期経営計画にみる、住友重機械の事業ポートフォリオ管理方法

まず、住友重機械の1998年度から2016年度までの中期経営計画のまとめを決算資料から抜き出しました。

躍進07(2005-2007年度)

グローバル21(2008-2010年度)

イノベーション21(2011-2013年度)

中期経営計画2016(2014-2016年度)

出典:2016年3月決算説明会資料

長期的な推移を見る重要性

20年近い変遷を見て、どのような感想を持ったでしょうか?例えば、直近の中期経営計画2016だけ見たならば、目標値を全て達成していて素晴らしい!と思うかもしれません。しかし、過去にさかのぼることで、よりよく現在の立ち位置が見えてきます。

住友重機械は2001年末に株式が額面50円を割れて取引されるほどの経営危機にありました。全従業員が給料カットを受け入れ、財務健全性を回復させていきました。スリムになったところにリーマンショック前には好況の追い風が吹き、躍進07ではROIC10%の目標を軽々と達成しました。

しかし、ここからはなかなかROIC10%の目標をクリアできなくなります。経営危機が過ぎ去ったことで、スリムになった事業に贅肉が付き始めたのでしょうか?挙句の果てには、中期経営計画2016ではROIC10%の目標の方を7%へと下方修正してしまいます。これまで長く掲げてきた10%目標とは何だったのでしょうか?

今回の中期経営計画はめでたく各目標値をクリアできそうです。ROIC7%に居心地がよくなってしまうのか、これからどこへ向かうのか次の中期経営計画が楽しみです。

Happy Investing!!

 

長期業績レポート(総合重機 その1)

長期業績レポート(総合重機)

6302 住友重機械
7011 三菱重工業
7012 川崎重工業(日経平均には採用されていません)
7013 IHI

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メモ

総合重機メーカーとは、要は金属で自動車(プリウスの車両重量は1.3トン)や建設機械(売れ筋の油圧ショベルは20トン)より重いものを作っている会社です。

主な製品

三菱重工のホームページから主な製品を抜粋させて頂きました。とにかく、重くて大きいです。男心をくすぐる製品ばかりです。

エネルギー(風力発電所の羽根+ローター+ハブ:50トン)

出典:三菱重工業

航空(ボーイング787:160トン)

出典:三菱重工業

宇宙開発(H-2A型ブースター4基搭載:445トン)

出典:三菱重工業

船舶・海洋(大型船舶エンジン:2000トン)

出典:三菱重工業

投資先としての総合重機メーカー

個人的にはとても惹かれる製品群を作っている総合重機メーカーですが、投資先としては魅力的なのでしょうか?

まず、現在の時価総額などを上にまとめました。時価総額では三菱重工が1兆5000億円と頭一つ抜けていて、それを残り3社は5000~6000億円です。売上対比では、住友重機械工業が高いバリュエーションで取引されている(=市場評価が高い)ことが印象的です。

製品を見ているだけで楽しいので、明日からはしばらく総合重機メーカーについて考えていきます。

Happy Investing!!

 

長期業績レポート(オークマ、アマダ)

長期業績レポート

6103 オークマ
6113 アマダ

日経225採用企業の長期業績レポート一覧

メモ

今回の長期業績レポートで取り上げた機械セクターの2社は、工作機械メーカーです。

工作機械とは何か

現代生活は、自動車など金属製品に囲まれています。プラスチック製品も多いじゃないかと思われるかもしれませんが、金属の金型に樹脂を流し込んで作っているので、やはり金属加工が必要になります。

工作機械は金属を加工するための道具です。機械を作るための機械であることから、「マザーマシン」と呼ばれることもあります。普段の生活で目にすることはありませんが、工場で大活躍して現代生活を支えてくれています。

旋盤工
(c)MASAAKI HORIMACHI/SEBUN PHOTO
出典:amanaimages

金属を加工すると聞いてイメージするのは上の写真のような旋盤工かもしれません。しかし、手作業では大量生産に限界があります。

そこで、1970年代からNC(数値制御)できる工作機械が主流となりました。パソコンのようなディスプレイが付帯された下のような工作機械です。

Image result for オークマ 工作機械 写真
出典:名古屋大学

需要の変動が大きい

みなさんが製造業の経営者だとして、どんなときに工作機械を買いたいと思うでしょうか?そんなに壊れるものではないので、工場の新設や増設のときが多いと想像できます。では、どんなときに工場の新設や増設をするでしょうか?景気の良いときです。つまり、工作機械の需要は景気の影響を強く受けてしまいます。

オークマの連結売上高
オークマの一株利益(EPS)

上にオークマの売上高とEPSの推移を長期業績レポートから抜粋しました。リーマンショックの前後では、売上が2008年3月期の2140億円から、2010年3月期には600億円まで、2年で70%も減少してしまいました。外部環境の影響が大きいので、経営するのが大変そうです。

景気サイクルのどこにいる?

工作機械メーカーへの投資には、景気サイクルの見通しが不可欠です。売上やEPSの動きを見ると、景気のピーク近くで投資すると確実に損をすることが想像できます。現在は景気サイクルのどこにいるのでしょうか?収益は2010年3月期を底に、6年間拡大局面が続いてきました。

2017年3月期には減収減益の会社予想が発表されていますが、まだまだ黒字です。過去2回の景気後退局面では、工作機械メーカーは軒並み赤字に陥りました。今回は違うのでしょうか?

Happy Investing!!

 

長期業績レポート(日本製鋼所)

長期業績レポート

5631 日本製鋼所

日経225採用企業の長期業績レポート一覧

メモ

日経平均の機械セクターは16社

今回から、長期業績レポートは機械セクターを扱っていきます。日経平均には機械セクターから、次の16社が採用されています。

私は2006年から2009年まで、キャピタル・グループという機関投資家のアナリストとして、機械セクターを担当していました。どの企業も、IR取材、経営陣への取材、工場見学など思い入れの深い企業です。

日本製鋼所の思い出

原子力ルネサンス

2007年ごろ、投資の世界では「原子力ルネサンス」という言葉が流行っていました。中国を中心とする新興国の経済発展によってエネルギー需要が高まるなか、原油の生産が頭打ちになるという「ピークオイル」説と相まって、原油価格は1990年代末の1バレル$20から$100以上に高騰していました。膨大なエネルギーを賄えるのは原子力発電しかないという論理展開で、1979年のスリーマイル島原子力発電所事故や1986年のチェルノブイリ原発事故以降は新設が減っていた原子力発電所が再び増えるという見通しだったのです。2006年の東芝によるウェスティングハウス買収も、このような時代背景に後押しされて行われたのでしょう。

WTI原油価格(出典:macrotrends.net)

ヤカンを作れるのは誰か?

出典:三菱原子燃料(株)

原子力発電所の仕組みそのものは単純です。原子力発電にはPWRとBWRという2種類ありますが、要は膨大な核分裂エネルギーを制御してお湯を沸かし、蒸気でタービンを回して発電します。バカでかいヤカンのようなものです。圧力容器と言われるこのヤカン、福島原子力発電所事故で耳にした方も多いと思います。

鍛造中の写真(出典:日本製鋼所)
鍛冶屋も小規模で鍛造中(出典:worldfolksong.com)

問題は、そんなバカでかくて危険物質を中に入れることができるヤカンを作ることです。そんな世界でも数社しかない技術と経験を持っているのが、日本製鋼所です(製品リンク)。作り方はいたって原始的です。鍛冶屋が熱した金属棒をトンカントンカンやって包丁を作ったのと原理的には同じですが、これまたバカでかい規模で行います。14000トンのプレスを使って、チェーンで大型鋼塊をグルグル回しては叩いていきます。

このように、我々の生活を支えてくれていながら、まず目にすることのない光景や人々に触れることができるのは投資の醍醐味だと感じます。工場見学を行っている企業も多いので、是非参加をお薦めします。身近なものがどうやってできているか知ると目から鱗のことが多いです。

投資と政治リスク

福島原子力発電所の事故は、日本製鋼所の作った圧力容器の問題ではなく、「原発安全神話」に基づき安全対策を怠った結果だと認識しています。そのようなお役人のミスによって、素晴らしい技術が発揮される機会が失われてしまうことが残念でなりません。政治家は資本の論理では動いていないので、投資家の立場で原子力発電のような政治リスクが大きい事業に投資することは難しいなと感じます。

Happy Investing!!

バフェット氏の株主への手紙(2016年版)を読んで

バフェット氏の株主への手紙

Bershire Hathaway社を率いる稀代の投資家ウォーレン・バフェット氏は、年に1回、株主に向けて手紙を書きます。毎年12月で終わる会計年度を振り返る内容で、2月下旬に発表されます。Berkshire Hathaway社のホームページで、1977年から2016年まで40年分が公開されています。毎年20ページ以上に渡って世界最高の投資家の考えに触れることができるため、投資家にとっては必読書だと思っています。

原文は英語ですが、和訳されている方のサイトを発見しました。betseldom様、ありがとうございます。

2016年の手紙が発行されました

待ちに待った2016年の手紙が、2月下旬に発行されました。心に残った点を紹介させて頂きます。

① 自分が掲げた目標と達成度を開示する姿勢

手紙の冒頭には毎年、Berkshire Hathaway社のBPS成長率、株価リターンと、インデックス(配当込S&P500)リターン比較がのっています。バフェット氏は、経営者の仕事は「長期的に企業価値を上げることであり、それは結果として株価に反映される」と明言しています。さらに自分への評価基準として、「配当込S&P500を上回るリターンを目指す」ことも明言しています。

手紙の冒頭で、バフェット氏は自ら掲げた目標に対する達成度合いを、誰もが理解できる形で明示しています。本当に潔く、フェアで、カッコいいと思います。

Berkshire Hathaway

② 複利効果のすさまじさ

上記の表で、過去52年にでBerkshire Hathaway社のBPSは年率19.0%、株価は年率20.8%で増えたのに対して、配当込S&P500は年率9.7%で増えました。19.0%、20.8%、9.7%と並べると、19.0%と20.8%など大差ないように感じてしまうかもしれません。

しかし、52年の複利グラフにしてみると、その差は一目瞭然です。1965年頭に$1投資したとすると、2016年末にBPSは$8843に、株価は$19725に、S&Pは$127にそれぞれ増えています。S&Pにインデックス投資しているだけでも100倍以上に増えて嬉しいね、という見方もできますが、Berkshire Hathaway株はその感になんと20000倍に増えています。1年で10%の違いが50年積もり積もると、とんでもない差が生まれるのです。

BPSと株価の違いに至っては年率2%以下です。それでも50年積もり積もると、倍以上の差がついてしまうのです。長期的な資産形成においては、たかが数%と思わずに手数料を節約する努力がいかに大切か、再認識させられます。

複利効果はとにかく時間がかかるので、人間が体感することは難しいのです。実際に計算してみると、目を疑うような結果が出ることが多いです。私も長い時間軸を持って、小さなリターンを積み上げて大きな複利効果を上げていきます。

② アクティブ投資は難しい

Berkshire Hathaway

バフェット氏は2008年から10年間の賭けを行っています。ヘッジファンドと市場インデックス、10年間のリターンが高いのはどちらかという賭けです。バフェット氏はもちろん、インデックスに賭けています。Protege PartnersのTed Seidesさんが選んだヘッジファンド5社の平均リターンと競争しているのですが、9年たった2016年時点では、インデックスが年率7.1% vs 2.2%で圧勝しています。

年率7.1%で9年間運用すると、 $1.00  → $1.85
年率2.2%で9年間運用すると、 $1.00  → $1.22

2017年を残すのみですから、既に50%以上開いてしまった差をヘッジファンドが取り戻すことはほぼ不可能でしょう。

バフェット氏は多くのアクティブ・ファンドマネージャーが、手数料分の仕事をしていないと批判しています。市場の仕組み上、インデックス投資家は市場平均リターンを手にします。そして、アクティブ投資家全体ではやはり市場平均リターンになります。アクティブ投資家の誰かが市場リターンを上回っているという事は、誰かが市場リターンを下回っているのです。

私は、個人投資家として個別株式に投資しています。市場平均リターンを上回ることができると思っていますし、過去3年間は結果も伴ってきました。しかし、果たして本当に自分に競争優位性があるのでしょうか?この点については、冷静に見極める必要がありそうです。

Happy Investing!!

長期業績レポート(長谷工)

長期業績レポート

1808 長谷工

日経225採用企業の長期業績レポート一覧

メモ

長谷工は、おそらく日経平均採用企業の中で、過去15年間に最も新株発行をした会社だと思います。分割調整後ベースになりますが、2002年から2016年3月期末にかけて、発行済株式数が4300万株から3億株まで7倍に増えています。

株価の決定要素を確認してみます。
株価 = 一株利益(EPS)x株価収益率(PER)
EPS  = 利益 / 発行済み株式数

つまり、発行済み株式数が15年間で7倍に増えると、EPSを年率約15%押し下げる要因になってしまいます。以下、株価の動きです。

長谷工の株価(出典:Kabutan)

なぜこんなことになってしまったのでしょうか?

過去の失敗へのしがらみのない経営陣とステークホルダーの協力があれば、企業は潰れない

長谷工はバブル期の過剰投資の切り離しが遅れて1995年3月期に赤字になり、1998年3月期にメインバンクの大和銀行(現りそな銀行)専務の職にあった岩尾さんを副社長に迎えます。

長谷工の経営陣(2006年3月期有価証券報告書より)

1999年5月から、生え抜きの合田社長に変わって建設省出身の嵩さんを社長、岩尾さんを副社長とトップを外部人材に完全に切り替え、膨大な累積損失の処理が始まります。あまりに危機的な状況に、トップを完全に切り替えることができたことが長谷工復活の一因かと思います。銀行団も債務株式化(デット・エクイティ・スワップ)を受け入れ、1995年から20年という時間をかけて、優先株を全て消却することに成功します。

辻社長の言葉(出典:経済界の記事より)

長谷工の事例からは、企業再生に必要な要素が見えてくる気がします。

① 過去へのしがらみのない経営陣に刷新すること
② 株主、金融機関、取引先、従業員の協力が得られること

現在大きな課題を抱えている企業群はどうでしょうか?生え抜きの経営陣はダメだと決めつけるつもりはありませんが、東京電力や東芝の新経営陣は、どれほど上の要素を満たしているのでしょうか、

Happy Investing!!