キャノンの自社株買い実績を評価する

自社株買い+企業名での検索トップはキャノン

Googleでは検索キーワードの人気を調べることができます。自社株買いと企業名を含む検索キーワードを探すと、次のような企業名が出てきました → キャノン、三井物産、ガンホー、みずほ、ユニ・チャーム、トヨタ、NTT、任天堂、ドコモ、三菱商事、野村證券。まず、キャノンから見ていきます。

キャノンの発行済株式数は2001年から減っていない

2001年まで遡って調べましたが、キャノンの発行済み株式数が減った年はありませんでした。むしろ、2002~2005年に微増しています。なぜキャノンが自社株買い検索のトップに出てくるのでしょうか。

キャノンは自社株買いしても、消却していない

発行済株式が減るには自己株式の消却が必要

発行済み株式数が減るためには、(1)自社株買い、(2)消却 という2ステップが必要です。発行済株式数の減少はこの2つが行われたことを示しています。

自社株買いはしたが消却しない場合、発行済み株式数は変わらず、自己株式が増えていきます。キャノンもこれに当てはまります。下のグラフは、キャノンの『実効株式数=発行済み株式数ー自己株式数』の推移です。2007年から積極的に自社株買いしているようすが分かります。

なぜ消却せずに自己株式で持つのか

自己株式とは、自分で自分を所有している不思議な状態です。なぜこんなことをするのでしょうか?会社側は、将来のM&Aに備えるなどともっともらしいことを言いますが、私は株主還元への意識が低いことの表れと捉えています。自己株式を保有する背景には、困ったときには自己株式を売ればいいという考えがあります。そして困ったときは、だいたい株価が低いときです。例えば、株価が3000円のときに自社株買いしたものを、株価2000円のときに売ると、株主還元が幻だったどころか、1株あたり1000円の損害を会社に与えます。以上の理由から、私は自社株買いするが消却しない会社に対して不信感を持たざるを得ません。

キャノンは自社株買いや増配以前の問題として、業績が伸び悩んでいる

キャノンの増配や自社株買いが注目されるようですが、過去15年間の根本的な問題は本業が伸び悩んでいることです。売上は年率2%しか伸びず、利益率も改善せずに結果として株価は2001年末の3000円から2015年末の3600円まで微増しただけです。株価と配当を合わせたリターンは年率3.5%という寂しい状況です。

まとめ

キャノンは積極的な株主還元によって株価を維持しようとしているようですが、それは新しい投資先がないことの表れでもあると思います。

経営者として著名な御手洗さんは1995年から社長、2006年から会長を勤めています。2015年の報酬は2.88億円だったそうですが、キャノンの長期的な業績を見る限り、御手洗さんにその価値があるとは思えません。

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